八男で妾腹の俺に才能ありすぎて、みんなギスるか曇るか狂信する話 作:馬路まんじ……?
転生ってあるじゃんね。俺したわけ。
トラックに轢かれてぶっ飛ばされながら、
『神様いるなら来世ください!』『次があるなら美少女いっぱいな中世ナーロッパ的世界にドロップしてください!』『その上でめっちゃ才能ください!』『もうモブ人生は嫌なので特盛でください!』『顔面偏差値もください!』『お金持ちに生まれたいです!』『でも社会的責任はいらないから末っ子にしてください!』
と願いまくった。
そしたらなんと、本当に転生できちゃったよ。マジで?
「ほう、元気に生まれたか! 白い髪は私譲りだな! がはは!」
「だ、旦那様は加齢による白髪では……あっ、なんでもないです」
「ふふん、そうかしこまるな。下等な男爵家出身のメイドの身で、大儀であったぞ! 頑張ったな!」
「あはは……」
ガハガハと笑う偉そうなジジイ(なんも考えてなさそう)と、俺を抱いているメイド服の女性(ずっと愛想笑いしてる)。
この二人が俺のパッパとマッマか。
ふーむ。どうやら貴族家の妾腹として生まれたらしいな。
ちょっと面倒な立ち位置だが、まぁ許容範囲か。
「よし。ではこの辺境伯家が当主、トーレス・フォン・トーブレスが、八男たる我が子に名をつける!」
おお、俺に名前が付けられるらしい。
八男かぁ。貴族家とはいえ流石に考えなしな子供の数だが、それはともかく、どんな名前をくれるんだ?
「この子には、エイトと名付ける!!! 八男だからエイトなのだ、がはは!」
…………マジかよこのオッサン。
◆ ◇ ◆
こうして貴族としての日々が始まった。
まぁ俺は赤ちゃんだし、なにより妾の子だ。
特に教育を受けることなくバブバブ過ごしている。
今日もメイドな母に抱かれ、広い庭園の隅っこで日向ぼっこだ。あったけ。
「よしよし。エイトは大人しい子で助かります。……あまりうるさくすると、奥様に嫌味を言われますから……」
疲れてた顔してるな~~ママン。ほっぺよしよし。
「あら、励ましてくれてるんですか? ってそんなわけありませんか。赤ちゃんですし」
彼女の名はナリア・フォン・ガーランドという。
栗色の髪をおさげにした、『ちょっと美人なモブメイド』って感じの人だ。
親父は考えなしだからなぁ。脳死で手を出されて、俺がデキちゃったらしい。すまんね。
「はぁ……。我が男爵家にもっと権威があれば、抗議の一つもできたんですけど……。まぁ仕方ない、仕方ないことです」
弱っている様子のマッマ。
むべなるかな。屋敷だと、ヒステリックっぽい本妻さんにグチグチ色々言われたり、俺の兄らしき十代の少年たちに、〝父を誘惑した淫売〟だの言われてるからな。
酷い話だよ。エイトくんはマッマを応援してます。
「マッマ、がんば」
「え!?」
あっ。
「あ、あぅー! あうあうおぎゃぎゃあああー!(俺は赤ちゃん! 喋れない赤ちゃん!)」
「びっくりした……。一瞬、エイトが『ママ頑張れ』って言いかけたように聞こえました。わたし、そんなに疲れてるんですかね?」
「おぎゃー!(そうだよ!)」
おうふ、あぶねーあぶねー。
俺の中身は転生者だ。だからとっくに喋れたりするんだが、赤ちゃんが話したらキショいからなぁ。
マジで悪魔がいるらしい世界だし、悪魔憑き扱いされて殺されたらシャレにならん。
「ふふ、エイトは賢い子ですからね。つい話してもおかしくはないと思ってしまいました。どうかトーブレス家のお兄様たちのようにならず、優しい子に育ってくださいね?」
「あーい」
言われなくてもならんて。
中身はネットでしか喚けない日本人だから、差別主義者の貴族は無理だよ。
なお本妻や兄たち、俺についてはガン無視な模様。
流石に赤ちゃん罵っても仕方ないしな。
寝たふりしてあげるから、お互い不干渉といこうじゃないか。ははは。
◆ ◇ ◆
そうして一か月。
母の扱いは多少悪くも、特にトラブルもなく過ごしていたある日。
俺はこの世界の国教『ノーイワン教』の大聖堂に連れていかれた。
親父曰く、
「よいかエイト! 悪魔や魔獣、そして魔人と戦うために、創造神は我ら人間に【神才】を宿した! 生後一か月経った新生児はすべからく、【神才】がいくつあるか教会で診断してもらうのだ!」
とのこと。
……又聞きしたとかじゃなくて、俺に直接、ツバ飛ばしながら教えてくれてる最中だ。
「わかったかエイトッッッ!? おまえは母体が下等だが、私が偉大だから天才だと信じてるぞ!!! わかったら返事は!?」
「あーう!」
「よしわかってるみたいだな! 天才!」
普通はわかんねーよ赤ちゃんだぞボケ!
と思うが、まぁ父トーレスのことだから、何も考えてないんだろう。
この人のことが三周して好きになってきたよ。
「なお【神才】は通常一つ! 稀に二つッ! しかし、我が家の長兄にして次期当主・ワンスのように、三つ宿していることもあるぞ! エイトも頑張れええええええええ! 気合で八個宿せええええええええええ! さぁ神父やれーーーッ!」
「へ、辺境伯様。【神才】の数は生まれつきで、気合では増えませんので……。それに【神才】八つは歴史上、教会の大聖人『ノーイワン』様しかおりませんし、あと他のご家族もいるので大声はやめてください」
「わかった!!!!!」
「……」
四周してやっぱダメだわパッパ。
大声やめろ言われてるやろがい。
「で、ではエイトくんの【神才】数を見ます。奥様、彼を差し出してください」
「あっ、奥様じゃなくて、わたし妾です……」
「……そうですか」
神父さんはずっとドン引きな模様。パッパのせいで恥ずかしい限りだ。
この『診断の儀』は平等かつ神聖なもので、辺境伯領の多くの領民のほか、本妻や兄たちもひねた顔で見学しにきた。
家族全員で出なきゃいけない習わしのようだ。おかげでいじわるな本家家族は、領民たちから『辺境伯の血、大丈夫か?』って目で見られてキレそうになっている。かわいそ。
「チッ。下民共がこの俺ワンスを見下すなよ……! いずれ家督を譲られた日には、愚鈍な親父を排除して……」
聞こえてるぞーワンス兄さん。
まぁ、親父は「おらッ神父ッさっさと診断しろー!」と喚いていて、なんも気にしてないが。
「ごほんっ。ではエイト・フォン・トーブレスよ、汝に与えられし祝福の数を具現いたす」
おっ、いよいよ始まるか。
一つだと馬鹿にされるからなぁ。二つくらいあればいいか。
「では心せよ。【神才】発動――【
青く輝く神父さんの目。これが彼の【神才】とやらか。
彼の眼光に照らされた俺の胸から、星のような光の玉が浮かび上がった。
「現れる星玉の数こそ、エイトくんの【神才】の数! さぁ、一つ……二つ……!」
おおっ、二つ出てきたぞ。
ラッキー。俺ってば恵まれてるっぽい。
「ぬっ、三つ……え、四つ……?」
えっ?
「いいいっ、五つ、六つ……!?」
え、え、え!?
「七つ……や、八つぅううッッッ!? ここここここれは奇跡だぁああああ~~~~ッッッ! 教会の大聖人『ノーイワン』様以来ッ、千年ぶりのッ、【神才】最多保持者が現れましたぞぉおおお~~!」
……えええええええ~~~~?
マ、マジで!? いやたしかに俺、死ぬ寸前に『才能めっちゃ欲しい!』って神に祈ったけど!
それにしてもこれはやりすぎじゃっ、
「うぉおおおおおおお我が息子よぉおおお~~~!」
「おぎゃぁー!?(親父!?)」
泣きながら抱き着いてくるパッパ。そのままワッショーイッと抱き上げられた!
神父のほうを見るが、騒ぐ父親を咎めない。むしろ「神の子だああああ!」と大声でわめいて、狂喜乱舞していた。
そして遅れて民衆たち。しばらくポカンとしていたが、「才が、八つも……!?」「そんなの前代未聞じゃないか!」「そんな子が領地にいれば、もう二度と魔獣や敵国が侵入してくることもないんじゃ……!」と、徐々に熱を高め、やがて『神の子、エイト様ーーー!』と騒ぎ始めた!
そして……そして。
呆然と固まっている、辺境伯家の本妻や兄たち。
彼らの様子に一切気付かず、アホの父トーレスは、俺を掲げてこう言い放った。
「ワンスより次期当主権を剝奪し、これよりエイトを、新たな当主候補とする!!!」
………マジかよこのオッサン!
お、俺みたいなのを神の子で当主扱いとかッ、
「――やめてくれ。俺はただの人の子だ」
『!?!?!?!?』
あっ、喋っちゃった!
神話創造/あるいは家督血みどろRTA