八男で妾腹の俺に才能ありすぎて、みんなギスるか曇るか狂信する話 作:馬路まんじ……?
俺に才能がありすぎて、神父が『神の子』扱いし、アホの父親が『次期当主』扱いしてくる地獄。
それにより……責任を負いたくない中身凡人の俺は、思わず言ってしまった。
「やめてくれ。俺はただの人だ」
『!?!?!?!?!?』
あ、喋っちゃった!!!
――そのあとはもう大騒ぎだ。
神父は感涙して「うおおおおおおおおッッッ新たな神話の始まりだあああああ~~~~! 私記録しますッ! 〝神に造られし子は決して驕らず、赤子の身にて『自分はただの人間である』と言い放ちました〟ァッ!」と本を書き始め、パッパは「やはり天才ッ! 当主確定!」と俺を胴上げし、民衆たちは『とんでもない天才守護者が領地に生まれた……ッ!』と、大層喜んでいる始末。
やがて、教会の偉い人たちが駆け付けたり、領地中に俺の噂が広まった果てに――、
「わはは! そろそろお腹空いたから帰るぞ、我が子にして神の子にして次期当主なエイトよ! ほれっ、
『ッ…………!』
俺は、一旦屋敷に戻ることになるのだった。
本妻や兄たちに、死ぬほど睨まれながら……!
◆ ◇ ◆
で。
診断の儀から数時間後。
トーブレス家の豪奢な居間にて。
「酒もってこーーーい! わはは、我ご機嫌!」
『…………』
「わはは、わははは! エイトわはは! 我が子わはは! トーブレス家安泰わはは!」
『……………』
……家の空気は死んでいた。
唯一笑っているのは、俺を腕に抱いてほっぺぷにぷにしながら飲酒するジジイ、現当主のトーレスだけだ。
こいつもう無敵かよ。
あと、
「だ、旦那様。わたしの席、旦那様の右脇でよろしいのですか? わたし、しがないメイドで……ふっ……!」
「何を言うのだナリア! 次期当主にして神の子エイトを生んだそなたは、これより本妻となるのだッッッ!」
「っっ……はいっ……! ふふっ……!」
マ、マッマの様子もなんかおかしい。
遠慮がちな愛想笑いはいつも通りだ。
しかしたまーに、隅に追いやられた紅髪の本妻『ネトーラ・フォン・トーブレス』さんのほうをチラッチラッと見ては、仄暗い笑みを浮かべていた。
ひえええええ……! マッマから『女』を感じる……ッ!
「っ、あなた! 先ほどの発言を撤回してください!」
おお、ネトーラさんがついにキレたぞ。
「わ、わたくしの子であるワンスたちを押し退け、そんな妾の子供を当主にですって!? しかも下賤の女を本妻に!? ふざけないでくださいまし!」
おーーいいぞいいぞ。エイトくんはネトーラさんを応援します。
責任ある立場とかイヤだからねぇ~~。
「あん? 私はふざけていないぞ。あと怒鳴るように話すのはやめろ。そういう態度はよくないって学校の先生が言ってたぞ!」
……逆になんでパッパは責任ある立場してるんだ???
「っ、トーレスッ! わたくしは、王家『ラーレル家』から嫁いできた、第三王女なのですわよ……!?」
え、マジで?
「ふふんっ。そんなわたくしや子供たちを邪険にしたらッ、いくら有力な辺境伯のあなたでも、王家が許しませんからね!? 特に父王は孫のワンスを溺愛してるんですから! 徹底抗議したらどうなるか!」
おー、それはたしかに怖いな。
これは考えなしなパッパのことだ、『じゃあやめるか! 前言撤回!』と言いそうだが、
「むむ、王家なんぞ怖くないぞ?」
「な、なんですって!?」
なんですって!?
「だって、国教たる『ノーイワン教』の偉い連中が、こぞってエイトの味方になってくれると言ったからなぁ! わはは!」
「っ!?」
って、おいおいおいおいおいおい……!
それって、
「お、王家と教会で、戦争が起きますわよっっっ!?」
「知るかっ。わはは!」
わはは、じゃねーーーよ!
なんか俺が才能ありすぎるせい(+親父がアホすぎるせい)で、国が真っ二つになろうとしてるんだけどー!?
「そんなっ……そんなことになれば、わたくしの生まれた『ラーレル王国』が滅茶苦茶に……」
「むむ? なんだネトーラよ、戦争になるのが怖いのか? 先に王家の名で怖がらせてきたくせに、ヘンな女だなー。バカ女か?」
「なっ!?」
アホ親父さん!?
「戦争が嫌なら、王家に抗議せず、才能あふれるエイトを黙って次期当主と認めればよかろう! わはは、万事解決!」
「なッ、なぁ……ッ!?」
ア、アホ親父さんーーー!
なにアホが三周して口が回ってんだよ!
奇跡の完全論破しちゃったけど、デリカシー絶無で、それじゃあネトーラさんの気持ちがグチャグチャのままなんだよ!
奥さん論破したらダメだろアホ!
「くぅぅぅぅッ、なんて屈辱をォッ……!」
あーあー。
ネトさんめっちゃ涙目になってるし、このままじゃ葛藤の末に王家に抗議まったなしだぞ?
マジで戦争になるぞ?
い、一体どうすれば……。
『ご安心くださいエイト様。策、わたくしにございます』
え、急になに!? 脳内に声が!?
『わたくしの名はアイ。エイト様の【神才】が一つ、【
お、おおっ。それはまた便利な能力を。
でどうすればいいんだ? どうしたらネトさんを宥めて、国と宗教の戦争を止められる!?
『ふふふ、ご安心ください。アイは〝
〝
俺の【神才】、数が多いだけじゃなくて内容もすごいのかよ……!
こんなのバレたら、それこそ戦争だぞ!?
『解答出ました。まずはネトーラさんに対し、憐れみの眼差しを向けてください』
えっ、あ、ああ。わかったよ。
元々憐れんでたし簡単だ。ちらっ。
「ぐ、ぐぐぅうう……! 父王陛下の願いでなければ、こんなアホ男に嫁がなかったのに……! こんな、わたくしの理想の人と、まったく違う男に――って、なんですかエイト!? その目は、わたくしを憐れんでいるのですか!?」
うお、怒られちゃったぞ。ここからどうするんだ?
『ふふ。アホパッパさんからこちらに意識を移せました。では次は、小さく溜息を吐いて、わたくしに続いてこう言ってください』
わ、わかった。
「……はぁ」
「っ!? な、なんですかその溜息は! あ、あなたまでわたくしを馬鹿にっ」
「――俺ならば、あなたに辛い想いはさせないのに」
「えっ……!?」
えっ……!?
い、言われるがまま言っちゃったけど、なんかこれって……。
『エクセレントッ! さぁ、ここからが本番です。【神才】の一つ、【
え、そんなの使ってどうするんだ?
『いいからいいからっ。今回は複雑なことは考えず、肉体に九歳くらいまで成長するよう念じてみてください。それでイケます!』
イケる……? よくわからんが、むむむっ。
「エ、エイトっ! なにを黙っているのですか!? 天才か知りませんが、調子に乗っているようならッ」
うわっ、ネトさんこっちにずんずん向かってきたぞ!?
『想定通りですッ。見栄っ張りな彼女は、内部に骨子のあるドレススカート装備。それが普段とは違う席に座らされ、また冷静さも失っています。ゆえに、机の角を曲がるとき』
「っ、あぁっ!?」
『スカートが引っかかり、転ぶのですよ!』
うわっ、本当に倒れてきた! このままじゃネトさんが怪我を!?
『さぁちょうど変身完了です! この人妻を受け止めましょう!』
一瞬の光に包まれながら、俺は腕を伸ばした!
倒れ込んでくるネトさん。彼女のやわらかな身体を、およそ九歳児ほどまで伸びた背丈で、抱き止める。
ふぅ。
「大丈夫、ですか? どこかお怪我は?」
「えッ、え……!?」
おっと。俺を見てネトさん、唖然としてるぞ。
無理もないか。いきなり赤ん坊から成長したんだからな。
服装もおくるみから、ゴシックっぽい少年貴族風衣装に変わってるし。
『ちなみに、エイト様の顔面偏差値は80オーバーです』
そ、そうなのか。まぁ神様に容姿もお願いしたからな。
それが?
『そして、元第三王女ネトーラ・フォン・ラーレルの理想の男性は、絶世の美少年です』
………なんだって!?
「あ、あの、ネトさん」
「あッ、ああああああああああッッッ!? だだだだぁっ大丈夫ですわ大丈夫ですわッ! こここっこちらこそ申し訳ありませんエイト様ッ!」
慌てて離れるネトさん。
しかし、俺にはわかってしまった。
彼女の怒りと屈辱に染まっていた顔は、今や明らかに、別の感情で赤くなっていることに……!
これって、まさか。
『はい、これでネトーラさんは
ってふざけんなぁああ!
腹違いの義母を惚れさせる奴がいるかーーー!?
『よかったですねっ。紅髪の美女ネトーラさんは美意識が高く、引き締まったくびれと100cmを超えるIカップバストは、とても十代の子持ちには見えません!』
はぁ!? お、おまえ何を言って!?
『わたくしアイはエイト様の忠実な下僕です! 才能あふれるエイト様を世の頂点にし、その他の弱者男性どもを尻目に、総ての女性をモノにする未来を願っておりますーーーー!』
ふ、ふざけんなクソ人格ッ!
そんな未来を願うな!
『? 優等な遺伝子のオスが成り上がりまくって、メスをゲットしまくるのが世のルールでは?』
おまえ倫理観サバンナなの!?
とにかくこのままじゃ家庭がまずいっての!
「ネトさん、あの……」
「――ぁ、あぁぁぁぁぁっ……!」
と、そこで。
テーブルのあちこちから七人分、脳を壊されたような嗚咽が響いた。
そちらに目を向ければ……。
「は、母上。い、い、今の、エイトに向けた表情は……!?」
……元次期当主・ワンスをはじめとした七人の兄たち。
彼らは頭を抱えながら、『女の顔』にされた母親を見て、凍り付いていた……!
ど、どーすんだこれーーー!?
『弱者男性どもが絶望してる! 面白くなってきましたねぇ!!!』
なに言ってんだおまえ!?
【ここまでの登場人物】
『エイトくん』
才能あふれすぎて地雷。白髪ゴシック風美少年になり、家庭を壊した。
『ナリア』
マッマ。『優秀な息子を産む』というステータスの気持ちよさで、女になった。
『アイ』
脳内AI。脳幹あたり(爬虫類時代の原初脳野)に根付いているため、倫理観が野生動物。
『本妻と兄たち』
母が女になりました。おしまいです。
『父王/教会の偉い人』
娘の子ワンス推しの王族と、神の子エイトくん推しの偉い人。おしまいです。
『トーレス』
パッパ。なんも考えてない。色々あった最中も、上機嫌にワイン飲んだりステーキ食ったりしていた。8時には寝た。無敵。
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