闇堕ち地球連邦が行く銀河大戦2205 作:末弟(特異点)
「現在、ボラー侵攻軍は複数の梯団を形成し国境地帯に浸透、抵抗を排除し敵巨大要塞へ向けて行動中です。先日進発した補給艦隊はWP-305を通過、哨戒艦隊を分離しつつ集積予定宙域に向け順調に航行中です」
「工作艦をもう1個艦隊増派しろ。増援艦隊の出撃スケジュールを早める」
「待て待て、待つんだ!今出撃させた所で前線の受け入れが間に合わん!送れるとしても各艦隊に5個任務部隊100隻ずつが限界だ。例え工作艦を増派したとて、貴官の言う様な方面軍規模の派遣は補給不足で大変な事になるぞ!」
地球連邦防衛軍の全てを司る総括司令部。その最高司令部を、綺羅星の階級章を身につけた男達が部屋を埋めつくしている。
普段ならば地球連邦軍全般の情報を集約、分析し指示を出すその部屋は、今や喧喧囂囂の会議室と成り下がっていた。
「しかしだな室井大将、春藍の2番艦…青藍だったか?あれは既に完熟航行を済ませると聞いている。春藍級が2隻もいれば1000隻規模のボラー艦隊すら撃退出来るだろう」
「だからと言って青藍を投入するなど有り得ん。そもそもだ、彼の艦隊は部隊として編制が完了しているだけであって戦力として編成でいている訳では無いのだぞ!」
「とは言え訓練は7割方終了いていよう。残りは艦隊行動の訓練とでもしてボラーへの道中で訓練すればいいでは無いか」
「樋田大将、貴様はどうやら侵攻軍の損耗率を知らないらしいな」
その中でも特に目立つのがこの2人の大将だった。両者は士官学校の同期であり、腐れ縁とも言える関係にあった。強力な一撃を好む樋田大将と安定的な作戦を好む室井大将は、考え方こそ対立的だが関係性自体は良好である。
そして両者とも、いや、地球連邦軍の将校の殆どは、熱意の差こそあれども反異星人主義を標榜している。
「増援を派遣するのは、まぁ良い。私としてもボラーは早期に潰したい。しかしだ、青藍の第8艦隊は主力艦の殆どが有人艦なのだよ。それにネクスト・アナライザー計画による無人化が反映された艦艇群が1週間後にロールアウトして無人化艦隊が編制される。その事は知っているだろう」
「では、巨大要塞を攻略するのは早くて3週間後と?それでは時間をかけ過ぎだ。ボラーの生産力は我が国にも引けを取らないのだぞ!3週間後の敵戦力はどこまで膨れ上がっているだろうな?」
ボラー連邦の強みはその圧倒的な生産力である。ボラー連邦の造船所の生産力は2日に1隻、領内各地の造船所を総合すれば時間断層工場と同等の建造速度を発揮する。
ガミラス軍によって撃破されたはずの1個軍が1ヶ月後には倍になって戦線に復帰していることすら確認されているのだ。
「無人艦艇群との合流まで耐久すればいいだろう。その頃には第8艦隊も戦力化が済んでいる。なにより、防御シフトならば例え3倍の敵に襲われようと耐え切れる」
「…ちっ!最大の戦力で最大の戦果を、が貴様の座右の銘だったな。良いだろう。ボラーへの攻勢は3週間後、敵巨大機動要塞とその取り巻きの艦隊を主目標とする。ただし、工作艦隊を1個艦隊と補給艦隊を2個艦隊を先遣、2週間後までには3個無人化艦隊600隻を戦線に投入する。第8艦隊が合流次第作戦開始だ。異論は無いな?」
「ふむ、ありがとう友よ。無人化艦隊は、まぁ出来る限りだがな」
斯くして、ボラー連邦軍主力の撃滅を目的とした作戦は承認され、ボラー侵攻軍にはガトランティス戦役時に匹敵する大艦隊が軽々しく増援として派遣されることと相成った。
対するボラー連邦軍も巨大機動要塞「ウライ」の守りを固めるべく、半壊したバルムミャン中将麾下の第12親衛打撃艦隊422隻を中核に、地球艦隊との戦闘で損害を負った諸艦隊を糾合した集成艦隊375隻及び新編の4個艦隊1600隻を加えた大艦隊を編制。これをウライ要塞防衛艦隊として地球艦隊との一大決戦へ備えていた。
◇◆◇◆◇◆◇
ウライ要塞が防衛するミロフ恒星系は、赤色矮星を主星とする星系である。イルソルスカ連星系の傍に位置し、その影響によりハビタブルゾーン内部に2つの岩石惑星と1つのガス惑星が存在し、それより外側の領域には重力圏いっぱいまで小惑星の円盤が広がる特異な恒星系である。
この特異な環境は豊富な足場を活かした物流の要として活用されており、今日に至るまでボラーの経済を支える重要な拠点のひとつだった。首都への航路に接続する次の大規模拠点へ一直線に向かえるという地理的特性もまた、ボラーと地球、民事と軍事の両方から価値が認められていた。
10月27日、春蘭以下片岡宙将率いる地球艦隊約1500隻はこの日、ミロフ星系への最大の入口かつ小惑星帯における唯一の艦隊通行可能区域であるミーヴァ海峡へと軍を進めていた。
「全艦予定地点にワープアウト。異常なし!付近の宙域に有意なオブジェクトは認められず」
「レーダー最大出力、警戒を厳に。各艦隊は所定の計画に基づき任務部隊単位で陣形を再編しろ」
「無人化艦隊は紡錘陣形で前進。艦載機展開、海峡の掃海を実施せよ!」
「艦隊行動をフェイズ3へ。全艦隊は円盤上方へ進出。下方向からの奇襲に留意せよ」
ワープ直後、地球艦隊は第12親衛打撃艦隊との会戦から得た戦訓を元に考案された片岡ドクトリンに基づき、任務部隊規模での艦隊機動へと移行した。
「レーダーコンタクト!ミロフIII周辺に大質量を確認!」
「光学でも要塞を視認しました!あれが機動要塞ウライか…」
《small》『長距離探査に揺らぎがあります。隣接星系での何らかの質量体が移動しているもの見られますが...』《/small》
《small》『海峡周辺にあっては機雷及び小型艦とみられる反応を確認』《/small》
《small》『A-03、A-04、A-05が海峡に突入。掃海作業を実施します』《/small》
「敵艦隊は補足できたか」
「レーダー、光学共に確認できておりません。司令官殿」
「艦隊周辺に重力震を検知!大量の質量体によるワープ反応です!我が方を半包囲しようとしている!」
「全艦有機防御!艦載機は全機射出し艦隊防空に備えよ!」