トクベツな学園に入学した普通な私、何故かトクベツ側のみんなから迫られる!?~ただ私は平穏に学園生活を過ごしたいだけなのに~   作:青いバケモノ

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十六夜姫華とのデート③

「全然良いですけど…急ですね…」

 

「お父様が、私《わたくし》が男と遊んでるんじゃないかと、疑っていますのですわ。ほんと、やれやれですわ。過保護な父を持つと、友達と遊ぶことすら大変ね。」

 

「きっと、かわいい娘が心配なんですよ。」

 

 

 十六夜さんが娘とか、お父さんは本当に鼻が高いだろうなぁ。過保護になっちゃうのも、ちょっと分かる。

 

 

「………夏子さんからの褒め言葉は、なんだか口説かれているように感じますわ。」

 

「え、なんで……それって、良い事です?」

 

「それは…どうかしらね。ただ、少なくとも悪いことでは無いですわ。」

 

「それなら良かったです……でも、本心ですよ?口説くなんて、そんな…」

 

「口説いていないという弁解をするふりをして口説いていますわね。」

 

「えっ、なんで!?」

 

 

 口説いていないという弁解をしてるのであって、ふりじゃないよ!本当に本心だし……

 そもそも、口説くって男の人が女の人にやるもの、じゃないの?…私の偏った漫画の知識じゃ参考にならない……あと、男とか女とか、今の時代にそんなこと言ったら怒られそうだからこのことは考えないようにしよう…。

 

 

「一旦、夏子さんが私を口説いているという話は置いておいて…」

 

「口説いてないですって!」

 

「さ、ツーショ、撮りましょう。どんなポーズにしますの?」

 

「え、ポーズ…?普通に、ピースを…顔の横に…」

 

「普通すぎますわね。それも夏子さんの良い所ではありますが…味気ないですわ。」

 

 

 普通でいいじゃん!普通で!私は超普通だから。普通のポーズしか出来ないし、普通のポーズしか思い浮かばないよ!

 

 

「そうね…私《わたくし》が自撮りするような形で撮りますので、夏子さんはもっと私に近づいてもらいますわ。あとは、手を握って──」

 

 

 十六夜さんの言う通り近づき、そのまま手も握る。そして、十六夜さんが、握っている手を私たちの顔の間に挟む。

 なんともまぁ、可愛らしいポーズだこと。……これ、私邪魔すぎない?ここにいるのが、むっちゃんや、神無月さん、小望さん、如月さんだったら十六夜さんに負けず劣らずの顔の良さで、映えるだろうけど…

 ただ、ここにいるのは私だ。可愛らしいポーズに、顔も近く、相手はあの十六夜さん。私がいていい場所じゃないでしょ……

 

 

「それじゃあ撮りますわよー!」

 

 

 はい、チーズ!や、1+1はー?とかの掛け声はなく、2、3秒経ってから「パシャ」という音がした。やっぱり、今どきのJKは、はいチーズ!とか言わないんだね…勉強になるなぁ。

 私もJKのはずなんだけどね。

 

 

「…いいわね。よく撮れていますわ。ほら、夏子さん、可愛いわよ。」

 

「………かわいいのは十六夜さんじゃ…?」

 

「確かに私《わたくし》も最高級にかわいいですわ。ただ、あなたもかわいいじゃない。」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

 

 お嬢様も、お世辞とか言うんだ…意外だ。特に、 十六夜さんはお世辞とはほど遠い性格だと思ってた。そして、相変わらず自己肯定感が高い。そしてそれがちゃんと事実なのもすごい。

 

 

「お世辞じゃないですわよ?」

 

「思考盗聴されてる!?」

 

「……あなたのこと、段々分かってきた気がするわ。」

 

 

 これは、頭にアルミホイル案件!?……いや、多分、私の思考回路が単純すぎるんだと思う。よくむっちゃんにも思考盗聴されたし。……まぁ、むっちゃんは天使だから思考盗聴出来てもなんらおかしくは無いんだけどね?

 

 

「それじゃあ、この写真をお父様に送っておきますわね。……あ、夏子さんもこの写真欲しいかしら?」

 

「あ、欲しいです。」

 

 

 私もお母さんに送ろう!

 お母さんは、こういうのが一番喜ぶ。もちろん、私が何をプレゼントしても喜ぶだろうけど、何よりも、私や妹が友達と楽しそうにしてる姿が一番好きらしい。ほんと、お手本のような「母」だ。

 

 

 それから、電車に乗り、池袋まで向かった。30分間電車に揺られるのは、ちょっとキツかった。

 

 

「着きましたわね!池袋!」

 

「着きましたね…」

 

「某オタクの聖地はそう遠くありませんわ。暗くなりすぎる前に、とにかく急ぎましょう!」

 

「は、はい!」

 

 

 い、忙しい…!学校終わった後で時間が少ないから仕方がないけど、体力が無い私には少しキツイ…本当に私には体力が無いな…昔はまぁまぁあったのに…。

 

 

「着きましたわ!」

 

「思ったよりもずっと近かった…」

 

「さぁ!早速入るわよ!」

 

 

 外から見ると、本当にデカくて高い。何階建てなんだ…?これ…。

 

 

「やはり最初に行くべきは…三階ね!」

 

「三階…?」

 

 

 急に三階、と言われても何があるのか分からない…でも、やはりって言ってるし、多分十六夜さんが好きなジャンルが沢山ある所なのだろう。

 とりあえず、私は何も言わずに付いていく。…あ、階段の所に書いてある。三階は―――

 

 

「三階は、漫画がたっっっくさんある所よ。」

 

「漫画!」

 

 

 この、オタクの聖地と言えば、グッズってイメージの方が強かったけど、流石は世界最大。漫画も沢山あるらしい。

 

 

「ここよ!早速見ていきましょう!」

 

「はい!」

 

 

 とは言っても、今欲しい漫画とかないんだよな…とりあえず、十六夜さんについていようかな……なんか、今日の私、十六夜さんの金魚のフンすぎない?

 

 

「…夏子さんは、見たいジャンルとかありませんの?」

 

「私は……鬱とかホラーとかバトル系以外なら大体好きです…」

 

 

 恋愛系とか、ゆるふわ系とか、日常系とか、そういう、あんまりドキドキしないものが良い。恋愛系は、ある意味ドキドキはするけど。

 

 質問に答えたあとは質問で返すべき。これが、私の知ってる会話術!早速実践だ!

 

 

「十六夜さんは、どのジャンルが好きなんですか?」

 

「私《わたくし》は…そうねぇ、強いて言うのならば、恋愛系ですわ。」

 

 

 恋愛系…なんか、意外…でもないか?

 そもそも、十六夜さんが漫画に興味がある、という時点で超意外だから、正直どのジャンルが好きでも意外だって思うと思う。

 

 

「十六夜家という事もあって、私《わたくし》自身が恋愛というものを体験したことが無いのが大きいですわ」

 

「家の方針で出来ないんですか…?」

 

「……あまり、そういうことでは無いのですのよ。私《わたくし》にはお兄様がいますので、家の後継ぎなどの心配はいらなかったのですわ。」

 

「お兄様……」

 

 

 十六夜さん、兄弟いたんだ……単純に考えて、十六夜さんの男verとか、圧倒的に、絶対的に、ハイスペックなんだろうな……

 

 

「私《わたくし》の話はどうでもいいのですわ!ほら、これとか、夏子さんが好きそうですわ。」

 

「のんのん日常…あ、これ、知ってます。アニメで見ました。めっちゃ好きです」

 

「やっぱり知ってましたか…超人気作ですもんね。」

 

 

 のんのん日常は日常系の中でもトップレベルで知名度が高い。もちろん、私でも知っている。

 

 それから、少し十六夜さんのもとを離れて本棚を一つ一つ回る…が、特に買いたいと思うものは無かった。

 

 

「………どうしましょう…」

 

「…」

 

 

 何やらお悩みの様子の十六夜さん。…こういう時って、話しかけても良いのだろうか…?……分からないから、とりあえず十六夜さんの隣に立っていようかな…

 

 

「……どうしましたの?」

 

「あ、いや…」

 

 

 十六夜さんを見て固まっていた私に、気づいていたらしい。

 うわ、なんか、恥ずかしい……変なヤツってバレたも同然じゃん…

 

 

「なんか、悩んでるなー、って、思いまして…」

 

「実は、新ジャンルに手を出そうか迷っていまして…」

 

「新ジャンル?」

 

「これよ、これ。いわゆる、「百合」と呼ばれてるジャンルですわ。」

 

 

 百合…聞いたことはある…というか、見たこともある。というか、割と好きなジャンルの一つだ。普通の恋愛ものと何ら変わりないし。

 というか、むしろ、女の子ばかり出てくるから、私にとっては普通の恋愛系よりも百合の方が好きと言えるのかもしれない。

 

 

「夏子さんはどう思いますの?」

 

「めっちゃいいと思う!私、このジャンルめっちゃ好き!」

 

 

 というか、これ、欲しいな。うん。買おう。ここに来たのに何も買わないとか、もったいないもんね。それに、これアニメしか見たことないから、原作も読みたい!

 

 

「夏子さんがそこまで言うのなら…私も買ってみるのも良いかもしれませんね」

 

「百合は、十六夜さんの好きな恋愛系と変わりないから多分好きになれると思います!」

 

「……百合のおすすめとかありません?」

 

 

 おすすめ…やっぱり、最初は過激すぎない、王道系をおすすめするべきなのかな…となると、「柑橘類の総称」の題名の作品をおすすめするべき…かな?でも、あれ結構過激なんだよなぁ…………よくよく考えてみたら、百合系って大体過激な気がしてきた。桜のイタズラもそうだし。ならいいか。

 

 

「じゃあこの、柑橘系の総称、蜜柑がおすすめです。」

 

「そう。じゃあ、買わせてもらおうかしら。」

 

 

 私も欲しかったけど…仕方ない。布教できただけでも良かったと思うべきだ。そう。無理な布教じゃない、正当な布教ができたことを喜ぶべきだ!

 

 

「夏子さんは、これ、どこで知りましたの?」

 

「アニメです」

 

「じゃあ、漫画はまだ持ってない、ということですわね?」

 

「はい。そうですけど……」

 

 

 質問の意図が読めない…

 

 

「そう。じゃあ、今度夏子さんを我が家に招待しますわ!」

 

「えっ!?」

 

 

 十六夜家に!?私が!?

 

 

「え、わ、私なんかが行って大丈夫なのでしょうか…?」

 

「私なんか、って何よ。私《わたくし》が招待したのですから、良いに決まってますわ。よく凛も来ますし。」

 

「如月さんと私じゃ格が違うと言いますか何と言いますか…」

 

「…相変わらずね、夏子さんは。いいのよ、私《わたくし》が招待したのなら、誰でも。拒否できる者なんて夏子さん本人以外いませんわ。…それとも、私《わたくし》の家に来るのが嫌なのかしら?」

 

「い、いえ!そんなことは一ミリたりともありません!!十六夜さんの家に招待されるなんて、光栄です!」

 

「ならば問題ありませんね。また時間が空きましたら、すぐに言いますわ。楽しみにしてなさい。」

 

 

 十六夜家…噂には聞いている、大豪邸…どこにあるとか、どのくらい大きいのとか分からないけど…そもそも、友達の家に遊びに行くということ自体、むっちゃんを除いて初めてだ。…家でのお遊びは、むっちゃんたちも誘ってもいいのかな…?

 

 

「とりあえず、漫画は買えたわね!」

 

「私も気になってた漫画買えました!」

 

 

 十六夜さんが買った漫画の近くにあった、百合漫画。電子版の方で数話見て、面白そうだから買いたいと常々思っていたやつ。こんな機会がないと買えないから、本当に買えてよかった!

 

 

「それじゃあ次は、グッズコーナーにでも行こうかしら?夏子さんは行きたいところあります?」

 

「いえ、特には…」

 

 

 どの階に何があるのかとか、知らないし。さっき階段の所にあったやつも、三階以外覚えてないし…

 

 

「それならば、グッズ買いに行きましょう。」

 

 

 グッズ…私は、あんまりフィギュアとかに興味はない人間なんだよな…私が好きなのは、二次元なのだ。フィギュアって、立体じゃん。三次元じゃん?…いや、フィギュアを否定してるわけじゃなくて…逆に、オタクなのにフィギュア嫌いな私がおかしいのだ。きっと。

 あと、私は数学でも図形が嫌いで、製図も立体系製図は嫌い…と、私は、三次元、立体が嫌いなのだ。三次元(立体)恐怖症!そんな特殊な感性を持ってる私だから、フィギュアが嫌い…というより、苦手なのだ。

 

 アクリルスタンドは、絵がそのまま貼ってあるから、二次元判定出来るから、好きだ。だから、買うなら、アクスタだ。あとは、缶バッジとかキーホルダーとか、家に飾れるものが良い。

 

 

「漫画を買ったせいで、カバンが重いですわ…」

 

「世界最大だから、階段も多いから、移動も大変ですね…」

 

 

 このオタクの聖地に来て、「移動が大変」だなんて一度も思ったことがないよ。私の家の近くのところは、そもそも階段なんてないし。ただ、ここは最大9階まであるらしい。でけぇ。

 今向かってるのは、4階と5階だ。グッズコーナーが2フロアもある、流石は世界最大だ。

 

 

「重くなりすぎない程度に、グッズを買いましょう!」

 

 

 私は、買いたいグッズは山ほどある。キーホルダーに、アクスタに、小さなお人形も欲しい。けど、私はお金に余裕がないから、欲しいもの全部は買えない。

 

 

「夏子さん、何かお揃いのキーホルダーを買いません?」

 

「お揃い……私なんかと、いいんですか…?」

 

「もちろんですわ。お揃いのキーホルダーを学校につけていくというのは、なんか、()()()という感じがしません?」

 

 

 お友達………あ、忘れてた。この十六夜さんとの遊び、私が十六夜さんを「友達」と意識するためのものなんだった。

 十六夜さんはそれを律儀に叶えようとしてくれてるんだ……本当に優しすぎない?そして私、友達運良すぎない?

 

 

「確かに、仲良しって感じがします!」

 

「それなら決まりですわね。」

 

 

 お揃いの、学校につけていくキーホルダー…!なんか、青春って感じがする!この私が青春をエンジョイしているなんて……十六夜さんに大感謝だ。

 

 

「お揃いとなると、無難に、かわいいものがいいですわよね?」

 

「かわいいもの…十六夜さんなら何でも似合いますけど、私にかわいいもので似合うものが思いつきません…」

 

「何言ってるのよ…相変わらず自己肯定感が低いわね…」

 

 

 私は自己肯定感は別に低くない。これが、私に対しての正当な評価だ。低いのではなく、普通に、客観的に見て私自身が低すぎるから、自己肯定感が低いように見えるのだ。

 

 

「十六夜…文月…月読命《つくよみ》…星…月?」

 

 

 十六夜さんが何やらぶつぶつと独り言を言っている。考えるとき口に出すタイプなんだ、十六夜さん。私と同じだ!……私がやるとキモイだけなのに、十六夜さんがやると最高に絵になるな……もはや芸術作品。

 

 

「…星や、月などのキーホルダーはどうかしら?」

 

 

 十六夜さんに対して、変なことを考えていたら、質問が飛んできた。十六夜さんは真面目にお揃いのキーホルダーについて考えてくれてたのに私は何をしてんだ……

 

 

「星や、月…?」

 

「ええ。十六夜、十五夜の翌日の月。文月、7月の旧暦。そして私たちが通う月読命学園。ツクヨミは、日本神話に登場する月の神のことを指しているのですわ。」

 

「おぉ…!」

 

 

 す、すごい。この一瞬で、そこまで考えられるなんて…流石十六夜さんだ。(n回目)

 

 

「私たちには、月に関連することが偶然、本当に偶然にも多いのですわ。なので、月のキーホルダー。どうかしら?」

 

「良いですね!最高ですよ!かわいいし、私たちに関係していることだから、思い入れも数倍強くなりますし!」

 

「それなら決まりですわね。早速、夏子さんの分も買っておきますわね。」

 

「……ん?いや、待ってください。流石に、私も払いますよ?」

 

「提案したのは私《わたくし》ですから、私が払いますわ。」

 

「…そ、それなら!むしろ、私のミッションに協力してもらってるんですから、私が十六夜さんの分も払います!!」

 

「ミッションに協力って考えだと、私《わたくし》を友達だと思うことは出来なくなってしまいますわよ?私は、夏子さんのミッションのために動いているわけでは無いのですわ。ただ、一緒に遊んでる友達として、楽しんで欲しいと、そう思って接しているのですわ。」

 

 

 うぅ…優しい…優しすぎる…!人として、出来上がりすぎてる…

 でも、それでもここは譲れない!ここで十六夜さんに……友達に、全額出させるような事は出来ない。そんなの…友達じゃない!

 十六夜さんの魅力は、お金じゃない!!

 

 

「それなら!間をとってお互い自分のを買う、ということにしましょう!奢り奢られの関係なんて、私嫌です!」

 

「……あの夏子さんがそこまで言うのなら、私《わたくし》が折れますわ。…でも、本当に良いのかしら?私、お嬢様ですので、お金には困っていませんよ?」

 

「十六夜さんは…友達だから。お金のありなしなんて、関係ない…です。」

 

 

 友達をお金で見ているのなら、それは友達ではない。私は、そう思う。

 私は十六夜さんの性格、中身を見て友達になりたいと思ったのだ。金持ちだから友達になりたいと思ったわけじゃない。

 

 

「…そう。「友達」というものも、人それぞれですわね…。」

 

 

 私は友達が少ないから…その分、感情とか、色々と、ちょっと重いのかもしれない……友達ってもっとフランクなものなのかな…私にはそういうの、二次元の知識しかないし、分からないよ。

 

 

「それじゃあ早速、買いに行きましょう。二人で、一緒に。」

 

 

 §

 

 

「ここでお別れですわね。」

 

「はい…今日は本当にありがとうございました。」

 

 

 あれから、お揃いのグッズを買って、少しグッズを漁ってから、時間がヤバいということですぐに電車に乗った。

 そして今。私の家からの最寄り駅に着き、改札前に立っている状況だ。そして、改札前といえば―――

 

 

「あの……なんで、手を繋いでいるのでしょうか…?」

 

 

 なぜか、手を繋いでいる。

 池袋から帰りの電車に乗り、空いていたので座ることが出来たのだが、今日一日でいろいろ起きすぎていて、私も疲れていたのだろう。すぐに、寝てしまっていた。そして、駅で十六夜さんに起こしてもらった時には、もう手を繋いでいた。

 

 

「寝ている夏子さんの手が冷たそうだったので、私《わたくし》が直々に温めて差し上げていたのですわ。」

 

「それは…ありがとうございます…?」

 

 

 ありがとうだけど、手汗ヤバそうだから離して欲しい…

 

 

「…相変わらず夏子さんは緊張してますわね。まぁ、相手がこの私《わたくし》ですから、仕方がない事ですわ。」

 

「えっ!?やっぱり手汗ヤバいですか!?」

 

「別に気にしないですわよ。」

 

「私が気にします!」

 

 

 私は、するりと十六夜さんの手から私の手を抜け出させた。もう絶対に誰とも手を繋がない。そう、私は決心した。

 

 

「そんなに私《わたくし》と手を繋ぐのが嫌だったのかしら?」

 

「い、いや!そ、そんなことはありません!微塵も嫌だなんて思ってません!」

 

「ふふ、冗談よ。私《わたくし》と手を繋いで嫌だという人間なんて、凛しかいませんですわ。それじゃあ、また来週会いましょう。」

 

「はい!今日は本当にありがとうございました!」

 

 

 そして、駅の改札を通り、十六夜さんは明らかに高級そうな車に乗って帰っていった。

 

 

 

 

 

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