トクベツな学園に入学した普通な私、何故かトクベツ側のみんなから迫られる!?~ただ私は平穏に学園生活を過ごしたいだけなのに~   作:青いバケモノ

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 私、夏子 文月《なつこ ふみつき》は、月読命《つくよみ》女学園に通う、昨日始業式を終えたばかりのピチピチの高校生!

 中学生時代は色々あって、友達も一人しかいないようなボッチで……
 だからこそ、高校生は楽しく過ごすぞー!


 私の目標は、高校生活を普通に楽しく、なんのアクシデントも起きず、唯一の親友、むっちゃんと過ごすこと!




 って、昨日の朝までは思ってたのに…




 §


「おはようむっちゃん!」

「おはようみっちゃん……」

「どうしたの?なんか元気無い?」


 今私が挨拶した、むっちゃんとは、中学時代からの、唯一の友達…親友の、玲美《れいみ》 睦月《むつき》。ふわふわしてる、ショートでピンク色の綺麗な髪。中学生の頃はロングだったのだが、最近思い切ってショートにしたらしい。正直、ロングもショートも国宝級にかわいい。
 身長は私と同じ160㎝前後で、私と同じくらい、胸が大きい。

 むっちゃんという呼び方は、むつき→つを小さいつに変える→むっちゃん。このような成り行きだ。むっちゃんの、みっちゃん呼びも、同じ理由だ。


「ついに、この時が来ちゃった…」

「?どういうこと…?」

「……その前に、みっちゃん、髪似合ってるね。」

「え、そう?…ありがとう。」


 私は、中学生までは水色のロングだったが、高校生になるということもあり、むっちゃんと一緒のタイミングで髪を大幅チェンジした。水色ロングから、青髪ショートに。


「うん。やっぱり、前々から思ってたけど、みっちゃんはショートが最高に似合うよ!」

「あ、ありがとう…むっちゃんも、ショート、最高に似合ってるよ!かわいさが増大した!ロングの時はお姉さん系というか、大人な感じもあって、美しいという感想を一番に抱くような髪型だったけど、ショートになったことにより、美しさは健在で、そのままかわいさ、かわいらしさがめっちゃアップした感じ!それと―――」

「も、もう伝わったよ!み、みっちゃんは私を褒め殺しする気なの?」

「い、いや全部純粋な本音です!!」

「やっぱり褒め殺しする気なんだ!」

「なんで!?」


 褒め殺しって……こんなの、まだまだ序の口だよ。そのショートがいかにむっちゃんとマッチしてるのか、むっちゃんのスタイルの良さと、ピンクショートの相性とか、色々ということはあるのに…


「それじゃあ、本題に戻るね。………みっちゃんは、私が何をしたら、私のこと嫌いになる?」

「え?」


 唐突すぎる、質問。私がむっちゃんを嫌いになる?そんなこと、あるわけない。


「そんなこと無いと思うけど……むっちゃんがむっちゃんではなくならない限り、嫌いにはならないよ。」


 むっちゃんは、天使だ。
 天使は、悪いことをしない。つまり、私がむっちゃんを嫌いになる…犯罪とかに手を染めた場合、それはむっちゃんではない、何者かに変わってしまった、という事。


「えーっと、つまり、どういう事かな?」

「犯罪に手を染めたら、かな。」

「それだけ?」

「うん。」

「あり得ないけど、私がみっちゃんの陰口を言ってたりしたら?」

「私がむっちゃんに対して何かしちゃったんだな…ってなって死ぬだけで、嫌いになるかは分からない…かな。」

「死なないでね!?」


 でも実際、唯一の友達であり親友のむっちゃんにすら嫌われたら、普通に死にそうではあるけどね……むっちゃん、一生私の親友でいてね?


「………実はこの、私たちがこれから通う月読命女学園って、ちょっと普通じゃなくて…」

「普通じゃない?」

「特別な人しか入学できない学校で…」

「特別な人……じゃあ、なんで私が?」


 むっちゃんなら、どこからどうみても特別な人間だからまだわかる。
 私は?どこからどうみても平々凡々な一般人ですけど?


「それは……むっちゃんも、特別、の枠に入ってるからで…あと、お父さんの権力をちょっと使って…」

「うん?」

「でもでも!みっちゃんの学力は本物だよ?学力は、本当に、みっちゃんの努力の結果で…」

「そ、それはよかった…」


 高校受験のために、死ぬほど勉強したから、それが意味なかったのかと思った……ちゃんと、意味のある勉強だったのなら問題はない。


「……月読命学園への入学申請を、みっちゃんの分もしておいたの。お父さんから、私たちが通ってた中学の校長にお願いして。」

「?…うん。」


 なんか………頭が追いついてこないぞ?…でも、今の所別に何か私にとって悪いところ…無いよね?結局合格してるんだし。


「だから、ネットにも月読命学園の情報とかなかったんだ…。むっちゃんに言われる通りに書いた、あの入学届は?」

「それは、私がお父さんに頼んでもらった、本物。あの後、私が校長先生に直接渡して…」

「うーん……結果論で言うと、何も私に悪いこと、ないよね?合格出来てるし。」

「問題はここからで………さっきも言ったけど、月読命女学園は特別で……月一でテストではない、ミッションが各々に配られるの。」

「ミッション?」


 テストにプラスしてもう一つ学力以外を図るテストってことかな?


「そのミッションをクリアでいなかったら……その、赤ってのが付いて…最悪、退学になる危険性が出てくるの。」

「へー…………退学???」


 退学って、あの、学校から退場させられる、あれですよね?


「こんなこと言ったらみっちゃんに申し訳ないけど……まさか、みっちゃんが合格すると思ってなったの。みっちゃんだから、じゃなくて、あの中学に通ってて、この学園に通える人なんて、いると思ってなったの。」

「……だから、あんなに滑り止めを受けさせてたんだ…」


 この女学園は特殊で、国公立も滑り止めとして受けることが出来るらしいとのことで、国公立の滑り止めも、私立の滑り止めも、両方に行ってたんだけど……因みに、どっちも合格はしてます。いえい。


「本当にごめん!!!こんなリスクのある学園に通うことになっちゃって。私が、もっと早く、真実を伝えておけば………でも、私も……みっちゃんと、同じ高校…学園に、通いたかったんだ。」

「………」


 退学のリスクは、確かに厳しい。だけど――――


「私にとっては、退学のリスクより、むっちゃんと別の高校になるほうが、リスクだよ。」


 私をどん底から救ってくれた、天使。それでいて、唯一の友達。
 私は、とっっっっに、むっちゃんに依存している。


「…本当にごめんね。」

「むっちゃんが謝ることなんて何もないじゃん。寧ろ、私を同じ学校入学出来るようにしてくれてありがとう。」

「みっちゃん……」


 正直、まだ全然話に追いついていない。
 だけど、私とむっちゃんは同じ学校。それだけ分かっていれば、大丈夫だ。



 §



「あ、みっちゃん。昨日ぶり〜」

「昨日ぶり~!」


 むっちゃんに会えたことに対して感極まり、座っているむっちゃんを抱き締める。最近は春休みで長い間会えてなかったから。昨日会ったくらいじゃ、足りない。

 昨日も言ったけど、むっちゃんは、天使だ。人じゃない。人なら誰しもが持ってるであろう、闇の部分を持っていない。欠点を、持っていない。
 最初は、良い子を演じてる。100%裏がある。
 そう思っていた時期が私にもありました。
 ……そう、私にも、バカな時代があったのだ。……いや、私はずっとバカか。


 そして私は、中学三年生の、約一年間過ごし、思い知らされる。むっちゃんに裏などない。悪の部分など、一つもない。
 つまるところ、人間ではなく、天使だ、と。


「高校生になっても仲良くしてね!!私、一人は嫌だから!一人とか耐えられないからね!?体育の授業とか!ペアを作る授業とか!一人は嫌だよ!!」

「大丈夫だよ。だって、みっちゃんがこの学園に通っちゃうことになったのは、私のせいだもん。ミッションも、私の全てをかけて手伝うよ。」

「私はこの学園に来たこと、後悔してないよ。だから、私のせい、だなんて言わないで?」

「…うん。ありがとうね?みっちゃん。」


 本気だと思われていない。
 でも、本気なんだよ。私は、一生むっちゃんの隣にいたいし、むっちゃんも、一生私の隣にいて欲しい…。


「…むっちゃん、むっちゃんは、一生私の隣にいてね?」

「えっ!?」

「そして、私が困ってる時、手を差し伸べて、優しくして?私も、出来る限りのことはするから。」

「あ、始まってたんだ…みっちゃんの、いつもの。」

「え?なんの事?」

「ううん。なんでもないよ。ただ、みっちゃんは、本当に私の事好きなのかな〜って。口だけじゃないのかな〜って。」

「いやいや、そんなのもう。だれっっっよりも愛してますよ。」


 人間が天使を愛するのは、当たり前だ。天使が嫌いな人間なんて、人間じゃない。それは悪魔だ。


 そんなことを考えていたら、教室に先生が入って来た。


「えー、昨日の始業式でも言ったと思うが…君たちのクラスを担当することになった、田中だ。女学園なのに担任が男かよって思った人もいるだろうが、まぁ、先生が決めたわけじゃないんだ。文句はお偉いさんに言ってくれ。それでは、よろしく頼む。」


 めちゃくちゃ死んだ魚の目をしている先生だ。今時珍しい黒髪で、センター分け?のような感じで、男の人にしては長い髪だ。そして、感情が一切表に出ていない。


「早速だが、今日の日程は、特にない。ミッションが配られるのも、明日だ。各々クラスで自由にしろと言われている…ので、まぁ、自己紹介でもしてもらおうか。それじゃあ一番から──」

「せんせー!自己紹介って自由にやっていーんですか?」

「いい質問だな、神無月。じゃあ…名前、入りたい部活、趣味とか好きな物、事。そんな感じでいいぞ。まぁ、適当にな。それじゃあ一番から、立って自己紹介を始めてくれ。」


 そうして、一人一人、自己紹介が始まる。

 一番から、31番まで。私は22番なので、最初でも最後でもない、最高の位置と言えるだろう。
 因みに、むっちゃんは31番だ。



 §



「夏子 文月です。部活は、入るつもりはありません。好きなことは、友達と遊びに出かける事です。三年間よろしくお願いします。」


 ……なんとか、自己紹介は出来た。うん。変な所はなかったはずだ。…うん、大丈夫。
 めちゃくちゃ緊張した~。心臓バックバク。でも、先に言いたいこと考えてたから、なんとかなった…


「玲美 睦月です。部活は…今の所、入るつもりはないです。趣味は、お話すること…かな。三年間、よろしくお願いします。」


 凄い、優しい声で、聴いてるだけで天に昇ってしまいそうだ。…それにしても、趣味がお話って…流石はむっちゃんだ。
 ここが女学園じゃなかったら、今頃クラスの男子はみんなむっちゃんに釘付けだっただろう。うん。天使に対してガチ恋する、哀れな男共が大量発生するところだった。危ない危ない。



 この自己紹介で、特に私が印象に残ったのは――――



「お初にお目にかかりますわ。十六夜《いざよい》 姫香《ひめか》と申します。部活動は、入るつもりはありませんですわ。趣味は………多趣味ですので、たくさんありますわ。以後、お見知りおきを。」


 思わず目をそらしてしまうレベルで綺麗な金髪のお嬢様。ロングではあるが、お嬢様あるあるのクルクル縦ロールではない。というか、本当に、金色に光って見える……身長は…私より、ちょっと大きいくらい?
 お嬢様って、人生で初めて見た…


「神無月《かんなづき》 瑠奈《るな》でーっす!部活は~遊びたいので入りません!趣味は楽しいこと!青春を謳歌するために、友達に紹介されたこの高校に入ったら、女学園でした!恋したかったです!!以上!」


 薄紫色の髪で、ショートの元気な子。髪を右側にだけちょこんと結んでいる。なんていうんだっけ、そういう髪型…サイドツインテとかだったっけ……まぁ、そんな感じの髪型だ。背はちっちゃくて、そのちっちゃい体のどこに収納しているのか分からないパワフルな子だ。


「如月《きさらぎ》 凛《りん》です。部活は入りません。趣味は、姫香をボコボコにすること。以後よろしく。」


 これまた、今時珍しい黒髪ロングの、ザ・クール系って感じの人だ。身長は、私よりちょっと大きいくらいで、スタイルが良い。ボディーガードとかにいそうなスタイルの良さだ。そして、その立ち振る舞いから、ずっと威圧感を放っていて、正直怖い。


「なんですって!?凛!あなたが私《わたくし》に勝っている点など……す、少ししかありませんわ!身の程を弁えなさい!」

「今は自己紹介中よ?他の人の邪魔をしないでもらえないかしら。あなたのせいで、進行が遅れてるわよ。」

「……二人とも座って。はい次。やりづらいだろうけど、次、普通に、やっていいぞ。」


「14番の~小望《こもち》 愛華《あいか》ちゃんです!あいちゃんって呼んでね!小さく望む、とかいてこもちと読むけど、あたしは大きくなることを望んでます!精神的にも、肉体的にも、権力的にも、全て上を目指して歩いてます!えーっと、…田中っち、何言えばいいんだっけ?」


 茶髪ロングのザ・ギャル。髪もなんかおしゃれなやつで結んでいて、なんか、おしゃれ上級者って感じだ。そういうところも含め、ギャルだ。ギャル怖い。


「……もう色々と伝わった。座っていいぞ。」

「はーい。」

「……さっきから、やりづらいだろうが…次、普通に、やってくれ。」



 十六夜《いざよい》 姫香《ひめか》
 神無月《かんなづき》 瑠奈《るな》
 如月《きさらぎ》 凛《りん》
 小望《こもち》 愛華《あいか》
 この4人だ。
 言い方は悪いが、明らかに異質。死ぬほど目立ってる、4人だ。



「自己紹介は終わりだ。次は……何したい?意見がある人は言ってくれ。」

「椅子取りゲーム!!!!」

「淹れたての紅茶が飲みたいですわ。」

「ジャンケン列車!」

「…子供かお前ら。途中お嬢様混ざってたが。」

「……席替えとか、どうですか?先生。」


 席替え!!この、素晴らしい提案をしたのは、猗窩……じゃなくて、天使ムツキエルだ。流石はむっちゃん。あの飛び交う言葉の中に、簡単に踏み込んでいく。私だったら、発言なんて出来っこない。


「席替えか…分かった。席替えをしよう。意見ありがとう。玲美。」

「いえいえ~」

「睦月ちゃんがかわいいからって、ひーきですか!先生!」

「………それじゃあ、黒板に図、書くから。そこに、ジャンケンで先生に勝った人から順に自分の名前を書いてけ。複数人で勝った場合は、その中からジャンケンで決めろ。」


 華麗に神無月さんの口撃を無視する先生。そんな先生に、神無月さんは不満そうに、頬をぷくっとさせていた。



「…勝った。じゃあ私は…ここにするわ。」



 如月さんが、真ん中の一番後ろの左側の席を取った。



「ふふん、私《わたくし》に掛かればジャンケン程度、お手の物ですわ。」

「私の方が先に勝ってるけどね」

「いちいちうるさいですわ。凛。それじゃあ私は…凛の1個前に席にしましょうかしら。これで、凛より前。つまり、凛より上ですわ。」

「…アホらし。」



 十六夜さんが、如月さんの前の席に。



「やったー!次は私~!じゃあ~…睦月ちゃ~ん」

「どうしたの?神無月さん。」

「睦月ちゃんはどの席にするつもりなの~?」

「私はー…」


 むっちゃんは、私の方を見ながら困ったような顔をしている。……これは…私と近くの席にしたいってことであってるよね?天使の考えることは分からないけど、そうだとい信じていいよね!?

 天使が私の隣に座りたがってる、そんな嬉しさの余韻を楽しんでいたら、何やらむっちゃんは神無月さんに対して耳打ちをしている。
 耳打ちされ終わった神無月さんが、私の方に近づいてくる。
 ………え、何?むっちゃん、何を言ったの!?


「んー………」

「な、なんですか………?」

「んー………私、誰だか分かる?」

「え、か、神無月、瑠奈さん?」

「………ふーん。まぁいいや。じゃあ私はー、ここ!」


 神無月さんはそう言うと、1番左下の席に、自分の名前を書いた。…なんというか、まぁ、予想通りの場所だ。

 最後はもちろん―――



「あ、私の勝ち~!」


 小望さんだ。


「どこが空いてんだっけ〜?………ん~、じゃー、ルナっちの隣で!」


 ルナっちとは、神無月さんの事だろう。こんな親しく呼んでるということは、中学が同じだったとか?…少なくとも、顔馴染みではあったのだろう。


「ルナっち?」

「そそ。ルナっち。ダメだった?」

「いや、全然おっけー!じゃあ私は〜…もちちって呼ぶね!」

「なにそれかわいー!」


 全然違った。初対面らしい。
 ヨウキャ、コワイ。
 昔の私でも、あんなパワフルじゃなかったよ…神無月さんと小望さんは陽キャの中の陽の部分を担当してる、生粋の陽キャなのだろう。

 因みに、二人が話しているうちに、「よし、じゃああいつらは無視して次ジャンケンするぞ。」と田中先生が言い、席決めが続いていた。



「あ、…私の一人勝ち?」



 お次はむっちゃんだ。恐らく、むっちゃんは隣が空いてる席にしてくれるだろう。なぜなら、私がいるから!

 となると……1箇所しかない…



「じゃあ、ここでお願いします。」



 やっぱり、ちゃんと隣が空いてる席にしてくれた。……だが、そこは───


「睦月ちゃんだー!」

「よろしくね〜。」

「よろー!玲美ちゃん!」


 神無月さんと、小望さんの、前の席。何故かみんな避けていた場所。だからこそ、この終盤でも、隣同士の席が空いている。

 よし!あとは私が引くだけだ!!

 一人、また一人と勝っていく中…私は、負け続けた。


 結局――――


「最後の一人は…夏子だ。申し訳ないが、今空いてる最後の一つの席に座ってくれ。」
「……はい。」


 私は、最後まで残ってしまった。
 なんで私はこんなに運ないかなぁ…


「じゃああとは各々自由にしろ~。クラスメイトと交流を深める時間だ。犯罪以外何しててもいいぞ。先生は職員室で休んでるから。それじゃ。」


 犯罪って……先生は私たちのことをなんだと思ってるんだ。

 まぁでも、別にいい。だって、最後まで、むっちゃんの隣の席は取られなかったからね!
 最後まで残ってたけど、むっちゃんの隣は取れた。
 運がいいのか悪いのか…


「最後までむっちゃんの隣の席残ってて良かったよ…」

「私もだよ。みっちゃんと隣の席になれて嬉しいな」


 みっちゃんは、私に向かって天使のような笑顔で笑いかける。うっ、やめてくれ…そんな顔されるとこれから先、一生みっちゃんに貢がないといけなくなる…


「きっと、むっちゃんが神々しすぎて、誰も自分で選ぶことが出来なかったんだよ…」

「うん、違うんじゃないかな?」

「なんせ、むっちゃんは天使だから!」

「私は人間だよ?」


 そう、天使だから。まだむっちゃんを天使だと知らないクラスメイトの人たちも、ただならぬ神々しさに、気後れしてしまったのだろう。


「何やら面白い会話してるね!玲美ちゃんと、えーっと…」

「夏子文月ちゃんだよ。」

「そう!つきっち!」


 私とむっちゃんが話をしていたら、後ろから小望さんが話しかけてきた。


「それだと睦月ちゃんもつきっちだよ?」

「玲美ちゃんを玲ちゃんって呼べばいいっしょ。いいよね?玲美ちゃん。」

「私は、私だと分かる呼び方ならなんでもいいよー。」

「ありがとー!夏子ちゃんは?つきっちって呼んでもいい?」

「も、もちろんです…」


 私に断るという選択肢はない。そんな、勇気も無い。
 まぁ別に、嫌なわけじゃないからいいんだけどね…でも、騒がしいのは嫌だなぁ…


「じゃあ私は、睦月ちゃんのことをつきちゃんって呼ぼうかな!」

「分かりづら!」

「私は全然いいよー。」

「で、ふみふみはふみふみって呼ぶね。」

「ふみふみ…」


 ふみふみ…そう呼ばれると……思い出す。昔仲良かった、オタク友達の…いや、あの頃はまだオタクじゃなかった。あの子にオタク界へ連れてこられたんだ。
 懐かしいな…また会えるかな、神崎さん。


「ダメ?」


 私が妄想の世界に入っていたら、急に現実に戻された。すぐに妄想の世界に入ってしまう、私の悪い癖が出てしまった…


「い、いや?ぜ、全然。」

「ありがとー」


 ……一旦、近所付き合いは上手く行けそう…だ、よね?…それもこれも、全部むっちゃんのおかげだ。


普通な私と特別な皆

 私、夏子 文月《なつこ ふみつき》は、月読命《つくよみ》女学園に通う、昨日始業式を終えたばかりのピチピチの高校生!

 

 中学生時代は色々あって、友達も一人しかいないようなボッチで……

 だからこそ、高校生は楽しく過ごすぞー!

 

 

 私の目標は、高校生活を普通に楽しく、なんのアクシデントも起きず、唯一の親友、むっちゃんと過ごすこと!

 

 

 

 

 って、昨日の朝までは思ってたのに…

 

 

 

 

 §

 

 

「おはようむっちゃん!」

 

「おはようみっちゃん……」

 

「どうしたの?なんか元気無い?」

 

 

 今私が挨拶した、むっちゃんとは、中学時代からの、唯一の友達…親友の、玲美《れいみ》 睦月《むつき》。ふわふわしてる、ショートでピンク色の綺麗な髪。中学生の頃はロングだったのだが、最近思い切ってショートにしたらしい。正直、ロングもショートも国宝級にかわいい。

 身長は私と同じ160㎝前後で、私と同じくらい、胸が大きい。

 

 むっちゃんという呼び方は、むつき→つを小さいつに変える→むっちゃん。このような成り行きだ。むっちゃんの、みっちゃん呼びも、同じ理由だ。

 

 

「ついに、この時が来ちゃった…」

 

「?どういうこと…?」

 

「……その前に、みっちゃん、髪似合ってるね。」

 

「え、そう?…ありがとう。」

 

 

 私は、中学生までは水色のロングだったが、高校生になるということもあり、むっちゃんと一緒のタイミングで髪を大幅チェンジした。水色ロングから、青髪ショートに。

 

 

「うん。やっぱり、前々から思ってたけど、みっちゃんはショートが最高に似合うよ!」

 

「あ、ありがとう…むっちゃんも、ショート、最高に似合ってるよ!かわいさが増大した!ロングの時はお姉さん系というか、大人な感じもあって、美しいという感想を一番に抱くような髪型だったけど、ショートになったことにより、美しさは健在で、そのままかわいさ、かわいらしさがめっちゃアップした感じ!それと―――」

 

「も、もう伝わったよ!み、みっちゃんは私を褒め殺しする気なの?」

 

「い、いや全部純粋な本音です!!」

 

「やっぱり褒め殺しする気なんだ!」

 

「なんで!?」

 

 

 褒め殺しって……こんなの、まだまだ序の口だよ。そのショートがいかにむっちゃんとマッチしてるのか、むっちゃんのスタイルの良さと、ピンクショートの相性とか、色々ということはあるのに…

 

 

「それじゃあ、本題に戻るね。………みっちゃんは、私が何をしたら、私のこと嫌いになる?」

 

「え?」

 

 

 唐突すぎる、質問。私がむっちゃんを嫌いになる?そんなこと、あるわけない。

 

 

「そんなこと無いと思うけど……むっちゃんがむっちゃんではなくならない限り、嫌いにはならないよ。」

 

 

 むっちゃんは、天使だ。

 天使は、悪いことをしない。つまり、私がむっちゃんを嫌いになる…犯罪とかに手を染めた場合、それはむっちゃんではない、何者かに変わってしまった、という事。

 

 

「えーっと、つまり、どういう事かな?」

 

「犯罪に手を染めたら、かな。」

 

「それだけ?」

 

「うん。」

 

「あり得ないけど、私がみっちゃんの陰口を言ってたりしたら?」

 

「私がむっちゃんに対して何かしちゃったんだな…ってなって死ぬだけで、嫌いになるかは分からない…かな。」

 

「死なないでね!?」

 

 

 でも実際、唯一の友達であり親友のむっちゃんにすら嫌われたら、普通に死にそうではあるけどね……むっちゃん、一生私の親友でいてね?

 

 

「………実はこの、私たちがこれから通う月読命女学園って、ちょっと普通じゃなくて…」

 

「普通じゃない?」

 

「特別な人しか入学できない学校で…」

 

「特別な人……じゃあ、なんで私が?」

 

 

 むっちゃんなら、どこからどうみても特別な人間だからまだわかる。

 私は?どこからどうみても平々凡々な一般人ですけど?

 

 

「それは……むっちゃんも、特別、の枠に入ってるからで…あと、お父さんの権力をちょっと使って…」

 

「うん?」

 

「でもでも!みっちゃんの学力は本物だよ?学力は、本当に、みっちゃんの努力の結果で…」

 

「そ、それはよかった…」

 

 

 高校受験のために、死ぬほど勉強したから、それが意味なかったのかと思った……ちゃんと、意味のある勉強だったのなら問題はない。

 

 

「……月読命学園への入学申請を、みっちゃんの分もしておいたの。お父さんから、私たちが通ってた中学の校長にお願いして。」

 

「?…うん。」

 

 

 なんか………頭が追いついてこないぞ?…でも、今の所別に何か私にとって悪いところ…無いよね?結局合格してるんだし。

 

 

「だから、ネットにも月読命学園の情報とかなかったんだ…。むっちゃんに言われる通りに書いた、あの入学届は?」

 

「それは、私がお父さんに頼んでもらった、本物。あの後、私が校長先生に直接渡して…」

 

「うーん……結果論で言うと、何も私に悪いこと、ないよね?合格出来てるし。」

 

「問題はここからで………さっきも言ったけど、月読命女学園は特別で……月一でテストではない、ミッションが各々に配られるの。」

 

「ミッション?」

 

 

 テストにプラスしてもう一つ学力以外を図るテストってことかな?

 

 

「そのミッションをクリアでいなかったら……その、赤ってのが付いて…最悪、退学になる危険性が出てくるの。」

 

「へー…………退学???」

 

 

 退学って、あの、学校から退場させられる、あれですよね?

 

 

「こんなこと言ったらみっちゃんに申し訳ないけど……まさか、みっちゃんが合格すると思ってなったの。みっちゃんだから、じゃなくて、あの中学に通ってて、この学園に通える人なんて、いると思ってなったの。」

 

「……だから、あんなに滑り止めを受けさせてたんだ…」

 

 

 この女学園は特殊で、国公立も滑り止めとして受けることが出来るらしいとのことで、国公立の滑り止めも、私立の滑り止めも、両方に行ってたんだけど……因みに、どっちも合格はしてます。いえい。

 

 

「本当にごめん!!!こんなリスクのある学園に通うことになっちゃって。私が、もっと早く、真実を伝えておけば………でも、私も……みっちゃんと、同じ高校…学園に、通いたかったんだ。」

 

「………」

 

 

 退学のリスクは、確かに厳しい。だけど――――

 

 

「私にとっては、退学のリスクより、むっちゃんと別の高校になるほうが、リスクだよ。」

 

 

 私をどん底から救ってくれた、天使。それでいて、唯一の友達。

 私は、とっっっっに、むっちゃんに依存している。

 

 

「…本当にごめんね。」

 

「むっちゃんが謝ることなんて何もないじゃん。寧ろ、私を同じ学校入学出来るようにしてくれてありがとう。」

 

「みっちゃん……」

 

 

 正直、まだ全然話に追いついていない。

 だけど、私とむっちゃんは同じ学校。それだけ分かっていれば、大丈夫だ。

 

 

 

 §

 

 

 

「あ、みっちゃん。昨日ぶり〜」

 

「昨日ぶり~!」

 

 

 むっちゃんに会えたことに対して感極まり、座っているむっちゃんを抱き締める。最近は春休みで長い間会えてなかったから。昨日会ったくらいじゃ、足りない。

 

 昨日も言ったけど、むっちゃんは、天使だ。人じゃない。人なら誰しもが持ってるであろう、闇の部分を持っていない。欠点を、持っていない。

 最初は、良い子を演じてる。100%裏がある。

 そう思っていた時期が私にもありました。

 ……そう、私にも、バカな時代があったのだ。……いや、私はずっとバカか。

 

 

 そして私は、中学三年生の、約一年間過ごし、思い知らされる。むっちゃんに裏などない。悪の部分など、一つもない。

 つまるところ、人間ではなく、天使だ、と。

 

 

「高校生になっても仲良くしてね!!私、一人は嫌だから!一人とか耐えられないからね!?体育の授業とか!ペアを作る授業とか!一人は嫌だよ!!」

 

「大丈夫だよ。だって、みっちゃんがこの学園に通っちゃうことになったのは、私のせいだもん。ミッションも、私の全てをかけて手伝うよ。」

 

「私はこの学園に来たこと、後悔してないよ。だから、私のせい、だなんて言わないで?」

 

「…うん。ありがとうね?みっちゃん。」

 

 

 本気だと思われていない。

 でも、本気なんだよ。私は、一生むっちゃんの隣にいたいし、むっちゃんも、一生私の隣にいて欲しい…。

 

 

「…むっちゃん、むっちゃんは、一生私の隣にいてね?」

 

「えっ!?」

 

「そして、私が困ってる時、手を差し伸べて、優しくして?私も、出来る限りのことはするから。」

 

「あ、始まってたんだ…みっちゃんの、いつもの。」

 

「え?なんの事?」

 

「ううん。なんでもないよ。ただ、みっちゃんは、本当に私の事好きなのかな〜って。口だけじゃないのかな〜って。」

 

「いやいや、そんなのもう。だれっっっよりも愛してますよ。」

 

 

 人間が天使を愛するのは、当たり前だ。天使が嫌いな人間なんて、人間じゃない。それは悪魔だ。

 

 

 そんなことを考えていたら、教室に先生が入って来た。

 

 

「えー、昨日の始業式でも言ったと思うが…君たちのクラスを担当することになった、田中だ。女学園なのに担任が男かよって思った人もいるだろうが、まぁ、先生が決めたわけじゃないんだ。文句はお偉いさんに言ってくれ。それでは、よろしく頼む。」

 

 

 めちゃくちゃ死んだ魚の目をしている先生だ。今時珍しい黒髪で、センター分け?のような感じで、男の人にしては長い髪だ。そして、感情が一切表に出ていない。

 

 

「早速だが、今日の日程は、特にない。ミッションが配られるのも、明日だ。各々クラスで自由にしろと言われている…ので、まぁ、自己紹介でもしてもらおうか。それじゃあ一番から──」

 

「せんせー!自己紹介って自由にやっていーんですか?」

 

「いい質問だな、神無月。じゃあ…名前、入りたい部活、趣味とか好きな物、事。そんな感じでいいぞ。まぁ、適当にな。それじゃあ一番から、立って自己紹介を始めてくれ。」

 

 

 そうして、一人一人、自己紹介が始まる。

 

 一番から、31番まで。私は22番なので、最初でも最後でもない、最高の位置と言えるだろう。

 因みに、むっちゃんは31番だ。

 

 

 

 §

 

 

 

「夏子 文月です。部活は、入るつもりはありません。好きなことは、友達と遊びに出かける事です。三年間よろしくお願いします。」

 

 

 ……なんとか、自己紹介は出来た。うん。変な所はなかったはずだ。…うん、大丈夫。

 めちゃくちゃ緊張した~。心臓バックバク。でも、先に言いたいこと考えてたから、なんとかなった…

 

 

「玲美 睦月です。部活は…今の所、入るつもりはないです。趣味は、お話すること…かな。三年間、よろしくお願いします。」

 

 

 凄い、優しい声で、聴いてるだけで天に昇ってしまいそうだ。…それにしても、趣味がお話って…流石はむっちゃんだ。

 ここが女学園じゃなかったら、今頃クラスの男子はみんなむっちゃんに釘付けだっただろう。うん。天使に対してガチ恋する、哀れな男共が大量発生するところだった。危ない危ない。

 

 

 

 この自己紹介で、特に私が印象に残ったのは――――

 

 

 

「お初にお目にかかりますわ。十六夜《いざよい》 姫香《ひめか》と申します。部活動は、入るつもりはありませんですわ。趣味は………多趣味ですので、たくさんありますわ。以後、お見知りおきを。」

 

 

 思わず目をそらしてしまうレベルで綺麗な金髪のお嬢様。ロングではあるが、お嬢様あるあるのクルクル縦ロールではない。というか、本当に、金色に光って見える……身長は…私より、ちょっと大きいくらい?

 お嬢様って、人生で初めて見た…

 

 

「神無月《かんなづき》 瑠奈《るな》でーっす!部活は~遊びたいので入りません!趣味は楽しいこと!青春を謳歌するために、友達に紹介されたこの高校に入ったら、女学園でした!恋したかったです!!以上!」

 

 

 薄紫色の髪で、ショートの元気な子。髪を右側にだけちょこんと結んでいる。なんていうんだっけ、そういう髪型…サイドツインテとかだったっけ……まぁ、そんな感じの髪型だ。背はちっちゃくて、そのちっちゃい体のどこに収納しているのか分からないパワフルな子だ。

 

 

「如月《きさらぎ》 凛《りん》です。部活は入りません。趣味は、姫香をボコボコにすること。以後よろしく。」

 

 

 これまた、今時珍しい黒髪ロングの、ザ・クール系って感じの人だ。身長は、私よりちょっと大きいくらいで、スタイルが良い。ボディーガードとかにいそうなスタイルの良さだ。そして、その立ち振る舞いから、ずっと威圧感を放っていて、正直怖い。

 

 

「なんですって!?凛!あなたが私《わたくし》に勝っている点など……す、少ししかありませんわ!身の程を弁えなさい!」

 

「今は自己紹介中よ?他の人の邪魔をしないでもらえないかしら。あなたのせいで、進行が遅れてるわよ。」

 

「……二人とも座って。はい次。やりづらいだろうけど、次、普通に、やっていいぞ。」

 

 

「14番の~小望《こもち》 愛華《あいか》ちゃんです!あいちゃんって呼んでね!小さく望む、とかいてこもちと読むけど、あたしは大きくなることを望んでます!精神的にも、肉体的にも、権力的にも、全て上を目指して歩いてます!えーっと、…田中っち、何言えばいいんだっけ?」

 

 

 茶髪ロングのザ・ギャル。髪もなんかおしゃれなやつで結んでいて、なんか、おしゃれ上級者って感じだ。そういうところも含め、ギャルだ。ギャル怖い。

 

 

「……もう色々と伝わった。座っていいぞ。」

 

「はーい。」

 

「……さっきから、やりづらいだろうが…次、普通に、やってくれ。」

 

 

 

 十六夜《いざよい》 姫香《ひめか》

 神無月《かんなづき》 瑠奈《るな》

 如月《きさらぎ》 凛《りん》

 小望《こもち》 愛華《あいか》

 この4人だ。

 言い方は悪いが、明らかに異質。死ぬほど目立ってる、4人だ。

 

 

 

「自己紹介は終わりだ。次は……何したい?意見がある人は言ってくれ。」

 

「椅子取りゲーム!!!!」

 

「淹れたての紅茶が飲みたいですわ。」

 

「ジャンケン列車!」

 

「…子供かお前ら。途中お嬢様混ざってたが。」

 

「……席替えとか、どうですか?先生。」

 

 

 席替え!!この、素晴らしい提案をしたのは、猗窩……じゃなくて、天使ムツキエルだ。流石はむっちゃん。あの飛び交う言葉の中に、簡単に踏み込んでいく。私だったら、発言なんて出来っこない。

 

 

「席替えか…分かった。席替えをしよう。意見ありがとう。玲美。」

 

「いえいえ~」

 

「睦月ちゃんがかわいいからって、ひーきですか!先生!」

 

「………それじゃあ、黒板に図、書くから。そこに、ジャンケンで先生に勝った人から順に自分の名前を書いてけ。複数人で勝った場合は、その中からジャンケンで決めろ。」

 

 

 華麗に神無月さんの口撃を無視する先生。そんな先生に、神無月さんは不満そうに、頬をぷくっとさせていた。

 

 

 

「…勝った。じゃあ私は…ここにするわ。」

 

 

 

 如月さんが、真ん中の一番後ろの左側の席を取った。

 

 

 

「ふふん、私《わたくし》に掛かればジャンケン程度、お手の物ですわ。」

 

「私の方が先に勝ってるけどね」

 

「いちいちうるさいですわ。凛。それじゃあ私は…凛の1個前に席にしましょうかしら。これで、凛より前。つまり、凛より上ですわ。」

 

「…アホらし。」

 

 

 

 十六夜さんが、如月さんの前の席に。

 

 

 

「やったー!次は私~!じゃあ~…睦月ちゃ~ん」

 

「どうしたの?神無月さん。」

 

「睦月ちゃんはどの席にするつもりなの~?」

 

「私はー…」

 

 

 むっちゃんは、私の方を見ながら困ったような顔をしている。……これは…私と近くの席にしたいってことであってるよね?天使の考えることは分からないけど、そうだとい信じていいよね!?

 

 天使が私の隣に座りたがってる、そんな嬉しさの余韻を楽しんでいたら、何やらむっちゃんは神無月さんに対して耳打ちをしている。

 耳打ちされ終わった神無月さんが、私の方に近づいてくる。

 ………え、何?むっちゃん、何を言ったの!?

 

 

「んー………」

 

「な、なんですか………?」

 

「んー………私、誰だか分かる?」

 

「え、か、神無月、瑠奈さん?」

 

「………ふーん。まぁいいや。じゃあ私はー、ここ!」

 

 

 神無月さんはそう言うと、1番左下の席に、自分の名前を書いた。…なんというか、まぁ、予想通りの場所だ。

 

 最後はもちろん―――

 

 

 

「あ、私の勝ち~!」

 

 

 小望さんだ。

 

 

「どこが空いてんだっけ〜?………ん~、じゃー、ルナっちの隣で!」

 

 

 ルナっちとは、神無月さんの事だろう。こんな親しく呼んでるということは、中学が同じだったとか?…少なくとも、顔馴染みではあったのだろう。

 

 

「ルナっち?」

 

「そそ。ルナっち。ダメだった?」

 

「いや、全然おっけー!じゃあ私は〜…もちちって呼ぶね!」

 

「なにそれかわいー!」

 

 

 全然違った。初対面らしい。

 ヨウキャ、コワイ。

 昔の私でも、あんなパワフルじゃなかったよ…神無月さんと小望さんは陽キャの中の陽の部分を担当してる、生粋の陽キャなのだろう。

 

 因みに、二人が話しているうちに、「よし、じゃああいつらは無視して次ジャンケンするぞ。」と田中先生が言い、席決めが続いていた。

 

 

 

「あ、…私の一人勝ち?」

 

 

 

 お次はむっちゃんだ。恐らく、むっちゃんは隣が空いてる席にしてくれるだろう。なぜなら、私がいるから!

 

 となると……1箇所しかない…

 

 

 

「じゃあ、ここでお願いします。」

 

 

 

 やっぱり、ちゃんと隣が空いてる席にしてくれた。……だが、そこは───

 

 

「睦月ちゃんだー!」

 

「よろしくね〜。」

 

「よろー!玲美ちゃん!」

 

 

 神無月さんと、小望さんの、前の席。何故かみんな避けていた場所。だからこそ、この終盤でも、隣同士の席が空いている。

 

 よし!あとは私が引くだけだ!!

 

 一人、また一人と勝っていく中…私は、負け続けた。

 

 

 結局――――

 

 

「最後の一人は…夏子だ。申し訳ないが、今空いてる最後の一つの席に座ってくれ。」

「……はい。」

 

 

 私は、最後まで残ってしまった。

 なんで私はこんなに運ないかなぁ…

 

 

「じゃああとは各々自由にしろ~。クラスメイトと交流を深める時間だ。犯罪以外何しててもいいぞ。先生は職員室で休んでるから。それじゃ。」

 

 

 犯罪って……先生は私たちのことをなんだと思ってるんだ。

 

 まぁでも、別にいい。だって、最後まで、むっちゃんの隣の席は取られなかったからね!

 最後まで残ってたけど、むっちゃんの隣は取れた。

 運がいいのか悪いのか…

 

 

「最後までむっちゃんの隣の席残ってて良かったよ…」

 

「私もだよ。みっちゃんと隣の席になれて嬉しいな」

 

 

 みっちゃんは、私に向かって天使のような笑顔で笑いかける。うっ、やめてくれ…そんな顔されるとこれから先、一生みっちゃんに貢がないといけなくなる…

 

 

「きっと、むっちゃんが神々しすぎて、誰も自分で選ぶことが出来なかったんだよ…」

 

「うん、違うんじゃないかな?」

 

「なんせ、むっちゃんは天使だから!」

 

「私は人間だよ?」

 

 

 そう、天使だから。まだむっちゃんを天使だと知らないクラスメイトの人たちも、ただならぬ神々しさに、気後れしてしまったのだろう。

 

 

「何やら面白い会話してるね!玲美ちゃんと、えーっと…」

 

「夏子文月ちゃんだよ。」

 

「そう!つきっち!」

 

 

 私とむっちゃんが話をしていたら、後ろから小望さんが話しかけてきた。

 

 

「それだと睦月ちゃんもつきっちだよ?」

 

「玲美ちゃんを玲ちゃんって呼べばいいっしょ。いいよね?玲美ちゃん。」

 

「私は、私だと分かる呼び方ならなんでもいいよー。」

 

「ありがとー!夏子ちゃんは?つきっちって呼んでもいい?」

 

「も、もちろんです…」

 

 

 私に断るという選択肢はない。そんな、勇気も無い。

 まぁ別に、嫌なわけじゃないからいいんだけどね…でも、騒がしいのは嫌だなぁ…

 

 

「じゃあ私は、睦月ちゃんのことをつきちゃんって呼ぼうかな!」

 

「分かりづら!」

 

「私は全然いいよー。」

 

「で、ふみふみはふみふみって呼ぶね。」

 

「ふみふみ…」

 

 

 ふみふみ…そう呼ばれると……思い出す。昔仲良かった、オタク友達の…いや、あの頃はまだオタクじゃなかった。あの子にオタク界へ連れてこられたんだ。

 懐かしいな…また会えるかな、神崎さん。

 

 

「ダメ?」

 

 

 私が妄想の世界に入っていたら、急に現実に戻された。すぐに妄想の世界に入ってしまう、私の悪い癖が出てしまった…

 

 

「い、いや?ぜ、全然。」

 

「ありがとー」

 

 

 ……一旦、近所付き合いは上手く行けそう…だ、よね?…それもこれも、全部むっちゃんのおかげだ。

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