トクベツな学園に入学した普通な私、何故かトクベツ側のみんなから迫られる!?~ただ私は平穏に学園生活を過ごしたいだけなのに~ 作:青いバケモノ
「それじゃあ、行きますわよ。夏子 文月!」
「あ、本当にガチで行くんですね…」
「当たり前でしょう?」
今は、六時間目の授業も終わり、その後のSHRも終わり、放課後。普通に帰ろうとしていたら、十六夜さんに引き留められた。
なんか、私が放課後友達と遊びに行くなんて、あまりに異変すぎて…実感が湧いていなかったけど、本当に、本当に行くんだ…引き返さなくていいんだよね?
「今度は私ともあそぼーね!」
「もちろん私もね!」
「楽しんできてね、みっちゃん。」
なんか、実感が湧かないことだらけだ……もちろん、神無月さんとも、小望さんとも、むっちゃんとも、遊びに行きたい。今度行こうね。うん。だから誘ってね?………私から誘うことは出来ないからさ…お願いね?(他力本願)
取り敢えず、今は目の前の事に集中しよう。
「う、うん。それじゃあ…行ってくるね…」
「死ぬほど楽しませてあげるわ。私の…十六夜の名にかけて!」
高校生になって初めての友達とのお出掛け。しかも、相手はむっちゃんではない。……何が起こるか分からなくて怖さもあるけど…兎にも角にも、楽しむぞ!
§
今は、東京へ向かってる電車の中。流石は東京駅行きだ。思ったよりもぎゅうぎゅう。
東京駅まで数分とはいえ、キツイ。主にストレスが…
「……楽しませるとは言ったものの、私達《わたくしたち》、ちゃんとお話ししたのは今日が初めてですわよね。あなたの好みとか、よく考えたら分からないですわ。」
「…」
そうだよね?めちゃくちゃ自信満々だったけど、私達今日が初対面だよね?
いや本当に、なんでそんな自信満々だったの……いやまぁ、それも十六夜さんらしいけど…
「夏子さん、あなたは、東京駅で何かしたいことあるかしら?」
「東京駅……あの、十六夜さんは知らないと思うんですけど…星の戦士の、ピンク一頭身の、あの可愛いキャラのグッズとか、見たいかも……です。」
……つい、本当に私が東京駅でやりたいこと言っちゃったけど…大丈夫だよね?なんか、こういう時は言っちゃダメ、とか、変なルールとかないよね?
陽キャ界隈、何があるのか分からないから……いや、十六夜さんの場合、お嬢様界隈か…?
私は本当に、言葉をそのままでしか受け取れないから。質問には、本音でしか返せないからね?
「良い趣味してますわね!実は私も、大ファンなのですわ!」
「……え、十六夜さんが?」
「ええ。小さくてまん丸で、それでも頑張って戦う姿には胸に響くわ。それに、「星の」なんて2つ名、かっこいいじゃない。」
「……分かる…!」
「星の」とかいう考察の余地がありまくりな二つ名、かっこよすぎる…!他にもかっこいい要素はたくさんあるし、もちろん可愛い要素もたっっっくさんある。
かっこよくて可愛い、最高のキャラだ。そりゃあ好きになる。
「敵を無表情でボコボコにする姿も…憧れますわ。味方が敵になっても、ボコボコに出来るあの精神力も…憧れますわ。」
「……分からなくはないけど…」
ボコボコって…いやまぁ、ボコボコにしてはいるけどさ…
そんなこんなで、星の戦士の話をしていたら、いつの間にか東京駅についていた。楽しい時間って、本当に一瞬。
「あら、もう東京駅ですの?お話していますと、時間も一瞬で過ぎますわね。」
「私も、一瞬に感じた。」
一瞬だった。その理由は、紛れもなく十六夜さんのお陰だ。今日が初対面なのにも関わらず、ここまで私が楽しく会話出来るだなんて思っていなかった。
高校に入ってからの私が成長してるのか、十六夜さんの話術が凄いのか、…まぁ、明らかに後者だよね…
「夏子さんは、東京駅慣れてますの?」
「5回くらいは行ったことあるから、なんとか迷わないくらいには…」
「その五回は、全て玲美さんと?」
「うん。」
「本当に仲が良いのね…私には、そういった親友がこれまでにいなかったからちょっと羨ましいわ。」
親友……十六夜さんも、私とむっちゃんレベルではないとはいえ、如月さんと「特別」仲が良いように見えるけど……こんなこと言ったら、十六夜さんと如月さんに怒られそうだけど……
「………如月さんは親友じゃ…?」
「…何言ってるのよ…凛は腐れ縁よ。友達でもなんでもないわ。強いて言うなら…ライバル、といった所かしらね。」
「ライバル…」
逆に、私にはライバルがいないな…
むっちゃんはそもそも種族が違うし。妹も…私より頭良いし。でも、ゲームは…同じくらいで、運動も同じくらい。…もしかして、妹がライバル…?
いやいや、妹がライバルとか、虚しすぎるでしょ…
「私には…逆に、ライバルがいません…」
「…そうね……ならば、私《わたくし》があなたのライバルになって差し上げても、よろしくてよ?」
「え、あ、え、ライバル…十六夜さんが…!?」
「なによ。嫌なのかしら?」
「そ、そんな訳ないじゃないですか!嫌だなんて…何様だ!って話ですよ!十六夜さんにそう言われて、光栄です!!」
突然のことに驚いて、「光栄です」だなんて…… 「私《わたくし》があなたのライバルになって差し上げても、よろしくてよ? 」に対してのAIみたいな回答をしてしまった。
「で、でも、ライバルって、その…なんの…?」
「……夏子さんの得意なことはなんですの?」
「特には……ゲームとかですかね…」
勉強も嫌いでは無いけど…あの十六夜さんと勉強対決なんて、身の程知らずなんてもんじゃないし、得意かって言われると……って感じだし…
「……まぁ、何で競うかはこれから決めていけばいいのですわ。とりあえず、今は目の前のことを楽しみましょう。」
話しながら歩いていたら、いつの間にか星の戦士カフェに着いていた。
このキャラは、「食べて寝る」が大好きなキャラだから、「カフェ」なのだと思う。カフェとは書いてあるけど、グッズ7割食べ物3割といった感じだ。
「かわいい!まん丸一頭身かわいい!」
「単体のグッズは全部持っていますので…この、ランダムタイプのグッズを5つ買うわ!」
「かわいい!私も一つ買います!あとは…せっかくのカフェなので、これも!」
「分かりやすくテンション上がってますわね。」
「はっ!…見苦しい姿を…申し訳ございません…」
大好きなキャラが目の前にあって、テンションが上がりすぎてた……変に距離感も近くなっちゃって…大丈夫?引かれてない?変なこととか言ってなかったよね?
「何言ってるのよ…私とのデート、楽しんでもらえてるなら何よりだわ。」
「…………デート…?」
デート…デートって、何?デート、私の認識がおかしいのか…?えーっと、デートねデート。
「……デートとは、恋愛感情のある相手、またはその可能性のある相手、との遊びのことらしいですよ。友達との遊びや用事とは違うという事です!」
「ふふ、冗談よ。そんなに取り乱して…本当に私《わたくし》の事が好きなのかしら?」
「えぇっ!?いやその、そんなことを十六夜さんみたいな、綺麗で頭の良くて礼儀正しい人に言われたら誰だって取り乱しますよ!」
「……口説いてるのかしら?」
「なんで!?」
小望さんじゃあるまいし…私の恋愛対象は女の子じゃない。……あれ?でも、男の子でも無いよね………よくよく考えてみたら、好きな人出来たことないんだし、女の子の事が好きなのか、男の子のことが好きなのか、分からないじゃん…
「私《わたくし》が美しすぎるとは言え、今日会ったばかりの相手を口説くなんて…」
「口説いてません!!」
ダメだ。分からない。
陽キャ…お嬢様キャラの思考が、分からない。
いやこれは本当に誰にも分からなくない?なんだよお嬢様キャラって。聞いたことないよ。
「ふふ。思ったよりも面白いのですわね、夏子さん。」
「え、……褒めてもらった、と受け取って良いんですよね…?」
「もちろんですわ。」
面白い人なんて言われたことない………と思ったけど、つい先日小望さんが言ってた…?気がする。
もしかして私って、面白い!?……いや、調子に乗るのはやめろ、私。その調子に乗りやすい性格でどれだけ痛い目見てきたんだ、学べ!
「…ところで、これ、どこで食べればいいんですか?」
「ここら辺には椅子はないですので…他のところで食べましょう。私も、他のところで開封したいと思いますわ。今回こそ…コックイワサキを当てるのですわ!」
「え、コックイワサキってハズレ枠じゃないんですか?」
コックイワサキは流石にハズレ枠では…………って、ヤバい!驚いて、勢いに任せて超失礼なこと言っちゃった。コックイワサキの大ファンだったのかもしれないのに!
「あ、すみません。コックイワサキファンもいますよね…」
「…違いますわよ。コックイワサキは、もちろんハズレ枠よ。ただ、私《わたくし》は運が良すぎるが故、コックイワサキだけ持っていないのですわ。全コンプしたい私としては、コックイワサキに出てきて欲しい、という事ですわ。」
ギリギリセーフ………十六夜さんも、コックイワサキはハズレ枠だと思ってたらしい。…いやまぁ、普通に考えて、星の戦士や「よちよち歩く小さいもの」とかいう可愛いもの揃いの中で、一人だけ誰コイツ案件だもん。(※あくまで夏子と十六夜の意見です)
「それじゃあ、次の行き先を決めるために…まずは、東京駅構内にあるスクエアゼロ休憩スペースに行って、雑談でもしましょう。」
スクエアゼロ休憩スペース…?
東京駅周辺については多少は詳しいと思ってたけど、全然だった。スクエアゼロ…知らないスペースだな…
「座るスペースがあって良かったですわね。」
「普段は座るスペース無いんですか?」
「時と場合によりますわ。」
そして、十六夜さんはさっき買ったグッズを五つ膝の上に置く。
「…夏子さん、あなたは、ゲーム、好き?」
「?…はい。」
「ゲームと同等と言える程の趣味はあるかしら?」
「……」
私の趣味。……それは、二次元。いわゆる、二次元オタクだ。いや、私のようなニワカがオタクとか言ったら、オタクに失礼か…ごめんなさい…
とはいえ、私は漫画、小説、アニメが大好きだ。恐らく、ゲーム以上に。ただ……これって、言っていいのかな…お嬢様だし…そもそも、「陽キャ」はアニメとか漫画とか小説とか見ない生き物だし…(※夏子の身勝手な考えです。)
「…言いたくない趣味もありますわよね。それでしたら、私《わたくし》の話をしますわね。」
気を遣わせてしまった……こういう所が、私の悪いところだ……こういう時に黙っちゃう。会話してるのに、会話しない。
直さないと…ちゃんと、喋るようにしないと…そう何度も何度も思ってはいる。思ってるだけで、行動に起こさていない。
本当に…私はダメダメだ。
「私《わたくし》は、好きな物より嫌いな物の方が少ないですわ。小さい頃から沢山のことを習いまして……ただ、特別好きと言えるような物はありませんでしたわ。」
嫌いな物の方が少ないって……流石としか言いようが無い。流石十六夜さんだ。プライドが高い人のも納得のハイスペックお嬢様だ。
「そこで、中学生の頃の私は、習ったことのない…習い事になかった物、をやってみたのですわ。それが───」
綺麗に箱を開けた十六夜さんが、そのまま箱の中身を片手で持ち、私の前に持ってくる。
「この、「ゲーム」でしたのですわ。……かわいいけど、ハズレですわね。夏子さん、これ、あげますわよ。」
「えっ、いや、それは十六夜さんの物なので…」
「大丈夫ですわ。もう、観賞用と保管用で二つ持っていますので。遠慮なさらずに。」
ふふーん!と鼻高々な様子の十六夜さん。この普段時とのギャップ可愛い…じゃなかった。助けてむっちゃん!
こういう時、どうするのが正解なの!?私には、まるで恋愛シミュレーションゲームかのように選択肢が目の前に見えるよ…
1,ありがとうと言い、貰う
2,いやでも…と、遠慮する
3,そんなものより…君が欲しいな☆と言う。
…いや、3。3おかしいだろ!恋愛シミュレーションゲーム馬鹿にしてるだろ!
…でも、冷静に考えてみたら簡単な2択か…貰うか、貰わないか…いや、だから、それをどうするのって話だよね?
お嬢様からの施しは受けるべき…?
いやもう分からん!分からんから…私は───選択肢に4を追加する!!
これが夏子流だ!
「………こういう場合は…十六夜さん的には、貰うのが正解ですか?それとも、遠慮するのが正解ですか?」
「………私《わたくし》、あなたのそういう所好きよ。」