万物を撃ち抜く魔法《至高の魔弾》 作:ガキパト
あなたは目を覚ますと、柔らかい土の上に転がっていることに気づいた。ぼんやりとしたまま、あなたは辺りを見渡す。
周囲は木々で囲まれており、空は青く太陽の光は穏やかに自身に降り注いでいる。じっくりと観察してみると、木には小鳥が停まっていたり、白毛のウサギが何らかの葉をムシャムシャと食べている。
その光景は、ここはボルテクス界ではないことを如実に示すものだった。あそこにはこんな自然豊かなところなどほぼ無かったし、自然動物が生き延びるような柔な環境ではない。
そうなるとここは何処なのだろうか。あなたは暫く考えてみるが、皆目見当がつかない。なのであなたは小さな相棒に頼ることにした。
――
その場の魔力が一点に集まり始め、どんどん輝きを増していく。あなたはそれがマガツヒのように赤い色ではなく、白い色なのが気になったが、召喚に問題はなさそうなので気にしないことにした。
「わあっ、自然がいっぱい!久しぶりに木を見た!」
召喚されてすぐにあちこちを飛び回るピクシー。ボルテクス界では見渡す限り砂!だったのでさもありなん。こうしてはしゃぐのも別にいいだろう。
一頻りはしゃぎ終えたピクシーを眺めた後、あなたはここは何処なのだろうと疑問を投げ掛けた。
「んー?あたしもよくわかんないけど、ここに来る直前にアマラ深界にいたのは確か!それからよくわかんないゲートに吸い込まれて………今に至るってカンジ」
言われて気づいたが、あなたはアマラ深界で謎の真っ白のゲートに吸い込まれたことを思い出した。それならばアマラ経絡を通じて何処かに飛ばされたということか?しかしこんな場所は見たこともない。
……あなたはふと思いついた。ひょっとするとここはアマラ宇宙の別世界なのかもしれない。少なくともボルテクス界ではないのは確かなので、現状その線が一番ありえそうだ。
現状の整理を終えたあなたは、次にこれからの目標を定めることにした。勝手分からぬ新開地でこれからどのようにしていくのか。
考えた結果、一先ず、もと居たボルテクス界に戻ることを目標とした。ここに来た原因も不明なため帰れるかどうかは不確かだが、あなたは何故か帰ることが出来ると考えていた。一種の勘である。
一応ピクシーにも情報を共有したが、彼女も今の状況を良く理解していないらしい。しかし、あなたと一緒にこの世界を巡ると聞いて楽しそうにしていた。
「またあの時みたいに色んなトコに行くのね?シンはとっても強いから安全だし、知らないトコは何だかとってもワクワクする!」
それなら大丈夫そうだなと、あなたは頷いた。探索はここ暫くはやっていなかったが、昔取った杵柄と言うし、問題もないだろうと考えた。
善は急げ。方針は決まった、なら後は行動あるのみ。早速あなたは適当な方角に向かって歩き始めた。ピクシーはあなたの左肩に座り、うふふと笑みをこぼす。
混沌の王、人修羅が今、大地を踏みしめた。
あなたはすっかり忘れていたのだが、普通全身に光る入れ墨のようなものを彫ったヒトは、一般人からは「うわ!ヤバいコイツ!」と反応される。
小一時間ほど歩き、あなたがこの世界で初めてヒトに会うまで失念していたのだ。おそらく山菜採りをしていたのであろう、草葉でいっぱいの木の籠を背負った青年は、脱兎のごとく逃げ去ってしまった。
「あはは!ねぇねぇ見たあの顔?ケッサクね!」
ピクシーは何かの琴線に触れたのか大爆笑。あなたもあの反応には少しクスッとしたが、途中気になることを呟いていた。
「うわぁ!魔族……じゃない!?でも怖い!」
魔族。悪魔ではなく魔族と言った。この世界では悪魔のことを魔族と称するのか、それとも自分と似たような姿をした、ヒトに恐れられる存在がいるのか。あなたはそれが少し気になった。
とはいえ、それを
しかし、手掛かりの少ない状況で探すのは相当困難であるのは当然のこと。だからあなたは胸に手を当て、己の中から万里の遠眼鏡を取り出した。
ボルテクス界では悪魔の耐性やレベルをアナライズするために使っていたが、これは千里眼のように目的のものを見ることが出来る能力もある。
――魔族を写せ
遠眼鏡は紫色に光ると、すぐに目的のものを写し出した。
目的の魔族は、頭の角さえ除けばほぼヒトと同じ見た目だった。悪魔を想像していたので少し拍子抜けだ。見ている限りヒトと似たような行動をしているので、これが恐れられる所以がわからなかった。
再度遠眼鏡に、魔族らしい行動を写せと命令すると、また新たな魔族を写し出した。
その魔族は、剣を構えた青年に殺されかけていた。その青年に対して魔族は命乞いをしている。一瞬あなたは「命乞いをする種族なのか」と思ってしまったが、その後の光景を見てそれは間違いだと知る。
青年は哀れに思ったのか、剣を鞘にしまい魔族を見逃すことにした。魔族は礼を述べながらその場を離れていく。次の瞬間、魔族は転移をして青年の背後に回ると、貫手で心臓をくり貫いた。
ピクシーは思わず「おぉ、やるじゃん」と呟いていた。あなたもさっきと似たようなことは何度も経験してきた。殺そうとすると命は勘弁してくれと懇願し、見逃すと決めた瞬間に襲いかかる悪魔たちを。無論しっかりと返り討ちにしてやったが。
なるほど、これが魔族。遠眼鏡で青年を喰らう魔族を見ると、あまり悪魔と変わらない存在だなと考えた。悪魔と言っても、ヒトに敵対的な悪魔のほうだが。もし邪教の館で悪魔合体をしても、できるのは幽鬼や外道とかになりそうなヤツ。
自分に角はないので魔族とは思われないだろうが、ヒトに見つかると少々面倒なことになりそうだ。これでは情報集めも芳しくないだろう。この先のことで少しナーバスになっていると、ピクシーが警告した。
「何か近づいてくるよ!」
その言葉通り、あなたは一体の魔族とエンカウントした。
その魔族は燃え尽きた灰のような長髪の、ねじ曲がった角を持つ女の魔族。それはあなたを何の感情もこもっていない瞳で見つめていた。
「ヒトにしては、とんでもない魔力だ。大魔族かと誤解しかけるほどに」
女魔族はこちらのことをヒトと思っているようだ。となると、やはりこの世界には悪魔は存在しないようだ。代わりにその席に魔族が座っている感じか。
「うーん、あんまり強くなさそう」
肩に座るピクシーはあなたに囁く。アマラ深界で強化したピクシーから見ると力不足らしい。言葉のニュアンスからレベル20くらいの差か、とあなたは勝手に想像する。
「だが、ここでお前を食えば私は更なる力を手に入れられる。お前には糧になってもらうぞ!
先手を取られた。しかしあなたにとってそれは些末なことだ。魔力からハルバードを生成した女魔族はこちらに真っ直ぐ突っ込んでくる。
あなたは軽く手を前に添えると、ハルバードの槍と激突する。女魔族は結果に驚く。なんせあなたの手に傷は一切ついていないのだから。
「これは、想像以上だな」
女魔族がバックステップをして呟くのを尻目に、あなたのターンが始まる。レベル差を鑑みて
ピクシーは自分は手を出すまでもないと後方ですっかり観客気分だ。まあ別に一人でも勝てるからいいのだが、なんとも羨ましいものである。
それはさておき、相手の耐性のことを考えて初手は至高の魔弾にすると決めた。物理反射があったら二度手間になる。マサカドゥスを飲み込んでるとはいえ、未知の敵に油断をするわけにはいかない。
口に魔力を溜め、圧縮し、より高密度な魔力に再構成していく。その暴力的なまでの魔力の昂りは、端から見ると紫電が走るよう。
「不味いなこれはっ!」
女魔族は身の危険を感じ、ハルバードを大楯に変化させ攻撃を防ぐべく構える。フィジカルの差であなたの攻撃を避けるのは難しそうだと判断したからだ。
しかし、その一切は無駄なこと。
――
紫の極大光線が、女魔族ごと撃ち抜く。楯を持っていようとも関係ない。その魔法に貫けないものなどなく、そして撃ち抜かれたものに残る命などない。
至高の魔弾が通った場所には、何も残っていなかった。精々灰がその場で舞っていた、ただそれだけだった。
「わーお一撃。相変わらずの力ね、シン!」
ギャラリー(ピクシーのみだが)は大盛り上がり。そのことにあなたは少しだけ口角を上げる。
「けど、情報源として生かしたほうがよかったね。アイツ色々知ってそうだったし」
――………そうだな
時既に遅し。つい、いつものように戦って、いつものように殺してしまった。交渉を考えていなかったことを後悔するあなたに、ピクシーは励ましてくれる。
「けど魔族がいるってことは、近くにヒトがいるってことじゃない?*1ソイツらから聞けばいいじゃん」
それもそうだ。あなたは頷く。古くからの友はあなたをいつも支えてくれる。そのことに礼を述べると、ピクシーは笑いながら言った。
「ホントに、あたしがいないとダメなんだから!」
◇
「ほぉ……面白そうなのが出てきたな」
人修羅がいる森からかなり離れた別の森。そのとある一軒家で金髪のエルフの目元が緩む。愉快なことが起きたと言いたげな目だ。
「コイツ、無意識に魔力を制限しているな。それでもなお余りある莫大さ。私の魔力量といい勝負しそうだ」
本に囲まれた一室で、そのエルフは遠く離れた人修羅を視ていた。肉体的にではなく、魔法によって。
いつものように魔法の研究をしていたゼーリエは、唐突に現れた膨大な魔力にすぐ気づいた。それからすぐに【千里先も見通す魔法】を使ってその原因を確認した。
するとなんとも奇っ怪なやつがそこにいた。見た目はヒトに見えるが、感じるオーラは完全にヒトのそれを越えている。かといって角もないので魔族でもない。
ヒトでも魔族でもない、新たな存在。ここ最近興味の湧くものが無かったゼーリエにとって、それが標的になることは必然だった。
暫く観察していると、知らないことが次から次へと溢れだしていった。急に魔力に干渉したと思えば妖精のような何かを作り出していたり、現れた魔族をゼーリエをしても見たこともない魔法で消し炭にしたり、とにかくその存在はゼーリエから飽きを取り上げてしまった。
「あの魔法……声は聞こえなかったが、とてつもない威力だった。全てを消し去るのは当然のように、傲慢なまでに万物を滅ぼす光線。げに恐ろしきはそれをイメージできているアレの頭の中だ」
魔法はイメージの世界。理論値を語れば魔法はなんでもできる最強の方法だ。しかし、それは机上の空論未満の問題である。空が地に落ちるイメージはできるのか?重力のない状況を完璧に想定できるか?
なんとか実現できる範囲を手探りで探し出していき、ようやっと発動できるのが魔法だ。ゼーリエは神話の時代からの生き証人なので、ほぼ全ての魔法を使うことができるが、アレを使うのは無理だと感じた。到底100年や200年程度で習得できるとは思えない。
ゼーリエはそう考え、目を爛々と輝かせた。どうせ時間は腐るほどあるのだ。寧ろ数百年程度で終わるような魔法はこちらから願い下げだ。ゼーリエは久々に挑戦する未知に心踊らせた。
「フフフ………ハハハッ!これほど好奇心を掻き立てられたのは何時ぶりか!手始めにあの魔法の名前を知らなければ想像すらできん。会いに行くか」
そうと決めたゼーリエの行動は早い。近くに転がっていた幾つかの紙と羽ペンを無造作に取ると、転移魔法を使ってさっさと行ってしまった。
修羅漢 間薙シン Lv99
力、魔、体、速、運ALL40(カンスト)
スキル欄
・貫通 ・ジャベリンレイン
・食いしばり ・地母の晩餐
・デスカウンター ・至高の魔弾
・気合い ・メディアラハン
仲魔
ピクシー
???
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