万物を撃ち抜く魔法《至高の魔弾》 作:ガキパト
クリティカル率ェ……
女魔族を倒したあなたは、引き続き森の中を歩き続けていた。森は以外にも広く、探索に慣れていないと確実に道に迷う難解な構造をしていた。
まあカグツチの塔やアマラ深界のように、転移したり一度通れば引き返せない仕掛けは無かったので遥かにマシだ。
しかし、偶然森に迷った者はそうではない。あなたは森の奥で木にもたれ掛かった白骨死体を見つけた。哀れには思わない。そう思う心はボルテクス界で捨てたのだから。
幸運にもその骸骨はローブを纏っていたので、ありがたく頂戴することにした。身体の紋様を隠すのに丁度いい、少しぶかっとするオーバーサイズ。服を着るのには何故か躊躇いがあったので都合がよかった。
これで安心してヒトがいる場所に行ける。あなたは短く息を吐くと、ピクシーがニヤニヤしながら頬をつついた。
「わざわざヒトのためにアクマが苦労するなんてね。シンのオトモダチが言ってたみたいに、まだお人好しが残ってるんじゃない?」
オトモダチ……勇のことか。確かに、交渉するにしても脅すなりなんなりでここまでしなくてもよかった。それでもこうして紋様を隠す努力をしている時点で、その性根は捨てきれていなかったらしい。
――フッ………そうだな
良いとも悪いとも思わない。ただ、あまりに多くのことを経験してきても己の変わらぬ部分があるという事実に、なんだか可笑しい気分になった。
そうして肩に乗ったピクシーと雑談をしながら歩いていると、漸く森を抜けた。その頃にはすっかり日が暮れ、星があなたたちを照らしていた。
運がいいことに、森を抜けたすぐ付近に村があった。ローブを纏ったあなたは自らを旅人と詐称し、村に入ることに成功した。無論村に近づく前にピクシーは帰還させている。
ここであなたは確信する。どうやらこの世界の文化レベルは、自分たちのいた所よりは下だなと。村の光源は電気ではなくランタンで、建造物も木や石でできている。雰囲気はヨーロッパ風の町並みだ。
となると携帯やパソコンなどは当然ないだろう。そのことにあなたは少し困る。これだと情報伝達速度はお察しだろう。遠く離れた場所のことをすぐに知る術はない。そうなるとあなたは元の世界に戻る手段を得るのはより困難になるだろう。
あなたはため息をつくと、側にあったベンチに寝転がった。これからどうすればいいのか、整理する必要がある。
まず情報を探す必要がある。しかしこの世界に悪魔はいない。だからそれら関係の話も殆ど知る者は存在しないだろう。この時点で相当詰んでいるが、一旦無視だ。
それならばこれからどうしていくか。別に宛もなくフラフラしてもいいが、何かしらの行動をしないと状況は変化しない。少しでも最善の方向に進むために、諦めず考え続ける。あなたは何時だってそうしてきたのだから。
………そうだ、よりヒトの集まるところに行こう。ヒトが多いほど情報も集まる。ボルテクス界にあったギンザのスナックやシブヤのバーのように、情報を得られる場所はどこかにあるはずなのだ。
一先ずはそれでいいだろう。先のことを考えすぎてもどうしようもない。目の前のことから確実に処理していくのが大切なのだ。
あなたは村人にヒトの集まる町を聞きたかったが、もう夜が更けた。誰も起きていない。そうなると夜が明けるのを待つしかないので、あなたはこのまま転がっておくことにした。
ボンヤリと星々を眺めていたあなただったが、急な魔力の昂りを感じ、ベンチを蹴り上げ緊急回避。無惨にもベンチは壊れてしまった。村人には黙っておこう。
そのまま魔力を観察していると、地面に幾何学模様の魔方陣が現れた。と思うと、それは光を放ちあなたは思わず腕で顔を庇う。
光が収まりあなたはゆっくりと腕を下ろす。するとそこには少女が現れていた。月の光に照らされた金髪は仄かに輝き、幼い顔つきとは裏腹にその目はどこか達観している。
特徴的なのはその耳だ。ヒトとは違ってつんと尖っている。ピクシーの耳に近い形だ。魔力量もまた並ではない。今感じる魔力量もどこか押さえられている。本気を出せばあなたといい勝負をしそうなほどに。
あなたはじっと構えながら相手を伺う。いつでも戦闘に移れる覚悟はできている。
「おいおい、物騒だな。そんな目をするな。別にお前の命を取るつもりはない」
少女は余裕を感じる態度であなたに話しかける。今さら言葉に惑わされるあなたではないが、確かに彼女から敵意を感じないのは事実だ。だがらといって油断するつもりは毛頭ない。
「私はただお前の使う魔法に興味があるだけだ。寧ろ協力してほしい。それ以外はどうだっていい」
――何時から見ていた?
「察しがいいな。正直に答えよう、お前が森に現れてからすぐ、だ。魔法で一方的にだがな」
ぞっとしない話だ。全てではないが、こちらの手の内が幾つか向こうに知られている。対してこちらは相手の情報を何も知らない。情報のアドバンテージの差は戦況を大いに変化させる。それ故にこの状況はこちらが不利だ。
「対価は用意する。お前の知りたい情報を教えよう。だから私にその魔法を解析させてくれないか?」
――…………
ここで断ってもいい。知られているのは一部の技とピクシーのみ。いざ戦えばどうだってなる。しかし、相手の力量が不明だ。ここまで強気に交渉しているのも、敢えて隠しているその莫大な魔力も、その実力の現れかもしれない。
だが情報を教えてもらうというのも魅力的だ。ここに来たばかりのあなたには情報が無い。見方を変えればこの状況は渡りに船とも言える。
さて、どうするべきか。あなたは………
――わかった、協力しよう
「そうか。話が早くて助かる。なら早速で悪いが、私のあとに着いてきてくれ」
言うなり金髪の少女はさっさと行ってしまった。はて、魔法の解析と言ったが、何か専用の装置でもあるのだろうか。あなたは疑問に思いつつ素直に追従した。
◇
「……ここなら十分か」
少女は何もない草原で足を止めた。あの後急に魔法で飛んで移動したので、着いていくのが大変だった。戦闘は得意だが移動手段は持っていないのだ。
「では早速解析させてもらうぞ」
言うや否や、少女はあなたに炎の弾を高速で飛ばしてきた。あなたは眉をひそめ、無抵抗でそれを受ける。マサカドゥスによって勿論傷一つ付きはしない。
――どういうつもりだ?
「ああ、言い忘れていたが、攻撃用の魔法は実戦を経て解析するのが一番理解が深まりやすい*1。私はお前を殺すつもりでやるから、お前もその気で来い」
なんと滅茶苦茶な。あなたは魔法関連に詳しくはないが、それがおかしいことなのはなんとなく察した。というか元からこれが狙いだったのでは?そうでなければ相手の楽しそうな瞳は説明できない。
乗り気ではない、が、始まってしまったからにはどうしようもない。今度は相手を倒さないことに意識を置きながら戦闘を開始した。
――
「面白いことになってるね。あたしも混ぜてよ!」
「ふ~む、なかなか骨のありそうな相手じゃな」
「ほう、これはまた面妖な……!」
相手は恐らく魔法主体。あなたは耐性があるが、万能属性で攻められたらやられる可能性はある。なので徹底的に相手することに決めた。
――やれ、ピクシー、ギリメカラ
「おっけー!
「やろうかのぉ。
スクカジャによってチーム全体の素早さと命中率を上げることで被弾する確率を下げ、ランダマイザによって相手のステータスを下げる。何度もやってきたお馴染みの流れだ。
「面白い、面白いぞ……!」
少女は謎に興奮している。ちょっと引いた。未知の魔法を喰らって恐れるより喜ぶのはだいぶタガが外れている。
「ならば私からもお返ししないとなあ!
少女の周りの魔力が青白く輝き、無数の玉が出来上がっていく。この数は避けられないと察したあなたは防御態勢を取った。
「わあっ!?」「ぬおっ!」
――クッ……
マサカドゥスの耐性を貫いてきた。まさかもう耐性を見切ってきたのか、あなたは少女の観察眼に驚愕する。幸い威力はそこまでではないが、何度も打たれると危険だ。早々に片をつけなくては。
――
「えーい
「それもう一発!
気合いで力を溜め込んだあなたは、ピクシーのタルカジャによってより多くの力を得る。さらにランダマイザが入ることによって相手の防御力、回避率は限りなく低い。必ず次で決めるとあなたは少女を睨む。
「ハハハ!やはり魔法はこうでなくては!私も脳が冴えてきた、お前の中で働く魔法が見える!」
少女の瞳が怪しく光る。これは……アナライズか。信じられないことに、あなたのターンに少女はアナライズを発動させたらしい。とんでもない相手だ。驚きを通り越してあなては呆れた。
「さあ!お前のあの魔法を見せてみろ!
先程のものとは違い、今度は一点集中してレーザーのように魔法を放ってきた。ごうごうと地面を削り真っ直ぐとこちらに向かう魔法の威力は計り知れない。
あなたはそれに対抗するように渾身の一撃を放った。
――
あなたは仰け反り咆哮する。それと同時に全身から橙色のミサイルの形をした魔力を放出した。勢いよく噴出したミサイルはゾルトラークにぶつかり、相殺していく。
しかしまだあなたのミサイルは尽きていない。ゾルトラークに向かっていたものとは別のミサイルが少女の死角から狙いをつける。
「ハッ!これもとんでもない威力だ!」
少女は見越していたように六角形の防御魔法を着弾点に貼る。普通の相手ならそれで十分だっただろう。しかし混沌の王であるあなたにはそれでは過不足だった。
「なっ!?」
ジャベリンレインは防御魔法を一瞬で貫き、少女の身体に着弾した。少女を中心として砂埃が舞う。あなたはそれをじっと見つめ、砂埃が晴れるのを待った。
果たして、そこから出てきたのは膝を地につけた少女の姿だった。本気を出したのは事実だが、殺さぬように努めていたのも事実。二度目のミスはない。
「やるじゃないか……だがまだ勝負は……っ!?」
少女は漸く気付いたらしい。自身の魔力を一切操作できなくなっていることに*2。少女は拳を固く握りしめ、親の仇のようにあなたを睨んだ。
「………私に黒星をつけさせるとは、な。ああ、腸が煮え繰り返すほど悔しい……が、私の負けだ」
一応、負けは認めたらしい。なんとも負けず嫌いな少女だ。あなたは唐突に始まった戦闘を無事終えたことに、ほっと一息ついた。
仲魔
・ピクシー
・ギリメカラ NEW!
・???
以下略