万物を撃ち抜く魔法《至高の魔弾》   作:ガキパト

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3話

「さて、それでは何から説明して欲しいんだ?」

 

眼前の金髪の耳長少女――名をゼーリエというらしい――が、魔法で作り出した椅子に凭れながらあなたに問う。本題から聞くのも吝かではないが、一旦クッションを挟んでから聞くことにした。

 

――ここは何処なんだ?

 

「地理を指すなら、ここは王都の南側にある村だ。だが、お前の聞きたいことはそうじゃないだろう?」

 

見透かしたような目で此方を貫く。琥珀色の瞳が夜だというのに爛々と輝く。しかし、それに気圧されるほどあなたは柔くはない。

 

なんだかヒトのようにこそこそとやるのが馬鹿らしくなったあなたは、単刀直入に聞くことを決めた。

 

――ならば、この世界はなんだ?

 

ゼーリエは黙り込む。顎に手を当て、自らの考えを練っているようだ。

 

「なかなか面白いことを聞くな。質問に答えてやりたいが、今のままでは不確かだ。先にお前の世界の話を聞かせろ」

 

流石にざっくりとしすぎたか。まあしかし、ゼーリエの言っていることも事実だ。相手にとって、自分のいる世界が当然なものと思うのは避けられない。それを説明しろと言われても難しいものだ。あなたもアマラ宇宙の存在を知るまでそのようなことは考えもしなかったから。

 

簡略にあなたのいたボルテクス界について述べた。ゼーリエは魔法のないあなたの元の世界に驚き、それから悪魔の蔓延る創世の地に深い興味を示していた。

 

「成る程。道理でそのような魔力を纏っていたのか。神格と殺し合いをしていたなら当然か。フッ、ますますお前に興味が湧いてきた」

 

語っていてもあまり楽しくはない話のつもりだったが、どうしてそこまで盛り上がっているのか。あなたはゼーリエの精神構造に悪魔に似たものを感じた。

 

「では、改めてさっきの問いに答えようか。お前から見ると、この世界は魔力によって作られた世界と言っても過言ではないだろう」

 

ゼーリエ曰く、この世界の科学の発展や法則の発見は、あなたのいた世界と比べると鈍化しており、代わりに魔法関連の技術の発展が目覚ましい。また人類の敵となる魔物や魔属の存在も魔力が関係している。人類に貢献し、敵対もする魔力は、正しく人類の存在、しいては世界に多大な影響を与えている、と。

 

「だが魔力は誰にでも使えるものではない。才能のないものはちっぽけなことしかできないが、また逆もある」

 

これもあなたにとって不思議な話だが、この世界の魔法はイメージが全てらしい。同じ人物が同じ魔法を唱えたとしても、そのイメージが違えば出力も異なる。威力が変わるなら兎も角、効果も異なるのは自由度が限りなく高いものだろう。

 

だが一定の者しか魔法という力を使えないのは、あなたには理解できる話だった。魔法であれなんであれ、全員が全員戦えるわけではないのは当然のことだから。もし戦えたとしても、そこには明確な差が生まれる。

 

だからこそ嘗てのあなたの友人は、ヨスガというコトワリをもって創世を為そうとしていた。まあ、もう終わったことなのだが。

 

この世界の在り方をある程度把握したところで、あなたは再度考えてみる。ここは別世界なのは確定した、つまりここにはあなたの世界のものは何もない。つまりミロク経典も、ターミナルもない。だからアマラ経絡にも行けない。

 

これはどうしたものか。せめて移動したときにこの世界のアマラ深界に出ればよかったのだが、そう上手いことはいかない。地上に出たことで帰れる可能性は著しく低い。これは長期滞在を覚悟しなければならないだろう。

 

あなたは小さくため息をつく。その様子を見ていたゼーリエは、気持ちワクワクとした面持ちであなたに問いかけてきた。

 

「お前、暫くは元の世界に帰れないだろ。だからその間、私の家に匿ってやろう。その代わり、私の暇潰しに付き合え」

 

その意図はなんだろうか。あなたは一瞬考えを巡らせたが、すぐにそれを放棄した。隠しているつもりなのか知らないが、ゼーリエの耳は微かに動き、口角は上がっている。文字通り、本当に暇潰しがしたいだけなのだろう。

 

どうせ行く宛などないし、丁度いいとあなたは考え、ゼーリエの提案に乗ることにした。そうして、久方振りの面白い存在に興味津々のエルフと、混沌の王として誕生した悪魔であるあなたは邂逅した。してしまった……。

 

 

 

 

 

 

「その、なんだ。そりゃ何だ?師匠(せんせい)

 

「只の悪魔だ。今日からここに滞在することになった」

 

「えぇ……」

 

しょぼんとした顔の橙色の長髪の女、フランメは半眼で此方を見やる。

 

あなたはこれを挨拶をしていない故の対応だと思い、ヒトだったときのように礼節を重んじることにした。

 

――よろしく

 

「え、あ、うん。よろしく?」

 

これでバッチリだろう。あなたは自画自賛した。

 

「いやよくねぇよ。悪魔って何?魔族と何かの関係があるのか?流石に言葉が足りないぞ師匠」

 

「それは当然だ。私だってよく分かっていないからな」

 

フランメは目をひん剥いた。存在すらよく分かってないものをそんな気軽に連れてくるな、そう叫びたくなったが相手は師匠だ。どうせ聞き入れない。諦めの末なんとか言葉を飲み込むことに成功した。

 

「だからこれからここで調べるつもりだ。面白くなりそうだろ?」

 

「師匠がそんな子供みたいな顔してるの初めて見るな……」

 

なんとも愉快そうな師弟関係だ。事前に気分で拾った弟子がいると知らされていたが、話以上に関係は良好のようである。

 

それに眼前に立って漸く分かったが、フランメもまた並々ならぬ力の持ち主だ。エルフ、という長命種であるゼーリエと違って彼女はヒトだ。それなのに彼女と肩を並べ得るほどの才。師匠があれなら弟子もこうなのか。あなたは表情に出さなかったが、内心驚きで満ちていた。

 

その後軽く自己紹介を終えた後、ゼーリエは待ちきれないとばかりにあなたにせがむ。

 

「さあ、まずはあの魔法を見せろ。口から訳の分からん威力の光を出すアレだ」

 

「どんな魔法だそりゃ?」

 

千里眼で見ていないフランメは首をかしげていた。魔法は大概杖などから出すものだ。口から出す魔法のイメージは想像しにくいらしい。

 

折角なのであなたはゼーリエの解析を手伝うついでにフランメに至高の魔弾を披露することにした。

 

危険なので屋外に出て、あなたは空に向かって至高の魔弾を放つ。相変わらずの威力のそれは青空まで届き得ると思えるほど。

 

「とんだ馬鹿げた魔法だなこれは。既存の物とは全く違う方法で魔法を構成している。難解という言葉では言い表せないな。だがそれが面白い!」

 

直で見たゼーリエは早速あなたの魔法を解析するために、家から持ち込んできた幾つかの羊皮紙に物凄い勢いで書きこんでいる。未知の魔法の困難さにぶち当たりながらも、それすら楽しんでいる様子だ。

 

「うわぁ………」

 

一方フランメは呆然としている。彼女は魔力を扱う才に長けている。だからこそあなたが至高の魔弾を放つとき、魔力の動きもしっかりと見ていた。

 

その結果ドン引きしていた。あまりにもあんまりな超力押しでの魔力の圧縮。それも膨大な魔力の量にものを言わせた強引なやり方。そして矛盾するようだが、その暴れ狂う魔力を操作する精密さ。どうして真逆の操作をこうも自然に見せることが出来るのか。あなたの頭の構造にただただドン引きしていた。

 

協力するとは言ったものの、一発至高の魔弾を撃っただけであなたに出来ることは終わってしまった。手隙になったあなたは戯れに仲魔を召喚する。

 

仲魔を呼ぶ魔法(召喚):ピクシー

 

「お、上手くいってるカンジ?最低限の情報は知れたみたいじゃん。それでどうなの?」

 

――帰れんことはわかった

 

「簡単にはいかないね~。まあケド、帰る方法を探しながらこの世界で多少は遊んでもいーんじゃない?」

 

――そうだな

 

「この魔法もまた未知のものだな。しかしさっきの魔法と似た要素もある。あっちの世界にも何らかの法則が存在するのだろうか……?」

 

「はっ?何だソレ!?魔力から生物を生み出した?しかも会話をしている……。頭がおかしくなりそうだ」

 

ゼーリエは新たな魔法に目を輝かせ、フランメはさっきの魔法とは別ベクトルで頭おかしい魔法を見て白目を剥き、あなたはマイペースに仲魔とお喋り。正に混沌。

 

あなたはその光景を見て微笑を浮かべる。ピクシーの言うことに一理あるかもしれない。現時点で愉快な人物たちに出会ったのだ、この世界には他にも面白そうなものが沢山あるに違いない。

 

尚魔法の解析は夜まで続いた。主な原因は休息を挟まずに羊皮紙にびっしりと魔法式を書きこむゼーリエと、間にホイホイ新たな魔法を使うあなたであった。

 

フランメはあなたが三つ目の魔法を唱えた時点で帰った。

 

 




諸事情につき更新がカスになります
それでもコンゴトモヨロシク
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