万物を撃ち抜く魔法《至高の魔弾》   作:ガキパト

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Vengeanceのアグラトは強くてかわいい。すこ



5話

ゼーリエの家から離れて三日。あなたは道中魔族に襲われるといったアクシデントも特になく、町に着くことに成功した。

 

前回の反省を活かし、今回は全身を覆うローブがあるのでパーペキだろう。しかし、それをしても身体中に光る紋様がある怪しい奴から全身をローブで隠す怪しい奴に変わっただけである。依然として問題は解決していない。あなたはその事実からそっと目を反らした。

 

それは兎も角、あなたの到着した町はアルトーレンという名の活気ある町だ。最初にあなたが見た町は牧場や畑の広がる長閑なものだったので、こういう場所もあるのかと少し高揚する。

 

一先ずあなたは魔力(マガツヒ)の流れを追って一番活動が盛んな所へ向かう。魔力がヒトの感情によって増幅することを利用した、ちょっとした応用である。まあ、あなたのいたボルテクス界ではそもそもヒトはいなかったので使うこともなかったのだが。

 

歩くこと数分、目的の場所に近づくにつれて徐々に声が大きくなっていく。勿論それは怨嗟や悲鳴の類いではなく、活気溢れる正の気のもの。

 

異世界の言葉であろう何かが書かれたゲートを潜ると、あなたの視界一面には市が広がっていた。

 

あちらこちらで商品の魅力をよく通る声で話す商人や、恐らくオークションが開かれている場所からは、買い手同士が声高らかに値段を吊り上げていく。

 

それはなんとも異世界情緒溢れるものだった。昔にした有名なRPGのような光景だな、とあなたは感嘆する。

 

折角なのだ、何か商品を見ていこうとあなたは決めた。最初あなたは食べ物も寝る場所も必要ないので所持金なしで旅立とうとしたが、ゼーリエたちが呆れた目をして止めた。

 

「街や他の国に入るときには金が要る。最悪何かしても金さえあればどうにでもなる。取り敢えず持っておけ馬鹿者」

 

そう言って彼女は一ヶ月生活に困らない程度の金*1を渡してくれた。やはり彼女には頭が上がらない。

 

なので記念に市で何かを買うことができる。どうせならこの異世界ならではのものを購入したいので、じっくりと見て回ることにした。

 

 

 

入り口付近はやはりヒトが多い。それに比例するように商品も売れ筋のものがズラリと並ぶ。

 

砂糖や塩などの調味料だったり、付近の村から仕入れた果物、稀にしか見つからない宝石など選り取り見取り。魅力的ではあるが、あなたの琴線には触れなかった。

 

少し離れると今度は武具を取り扱う区域に出た。剣、槍、斧のようにメジャーな物もあれば、モーニングスターや鉤爪、槌など持ち手を選ぶ物もある。

 

生憎あなたは己の身一つだけで数多の悪魔を打ち破ってきたので武具の品質はわからない。しかし見ているだけでもどこかワクワクするものがある。悪魔になったあなたでも男の浪漫は捨ててはいなかった。

 

そこであることを思いつき、人気の少ない路地裏に入る。辺りを見渡し誰もいないことを確認すると、あなたは仲魔を呼び出した。

 

仲魔を呼ぶ魔法(召喚):クー・フーリン

 

「おお……ここが異世界ですか。空気が私の過ごした場所と少し似ていますね」

 

――武具を見ていかないか

 

「異世界の武具……実に興味深い。いざ共に参らん!」

 

ノリノリなようで何よりである。仲魔の中でもヒトに近く武具に興味がありそうな悪魔がクー・フーリンだったので、試しに呼び出してみたのだ。

 

気軽に呼び出していいのかと一瞬考慮したが、まあ町に入る際に検閲などなかったので問題あるまい。あなたは雰囲気で異世界を楽しんでいる。

 

あなたはクー・フーリンを連れ添い何食わぬ顔で路地裏を出ると、その足でもう一度武具の露店に向かった。

 

「ほぉ、初めて見る金属だが、悪くない。むっ、これは見かけによらず重いな。密度が高いのか」

 

ケルトの英雄は幼子のように目を光らせている。彼の得物は槍だが、それ以外の知識もあるようであなたに色々と説明してくれる。

 

「これはいい剣だ。人修羅殿も持てば解るぞ。さぁ!」

 

だが説明が下手くそなのが致命的だ。戦いで使う知識はあるのだが、見せてくる武器の良い所を具体的に説明してくれない。

 

もしや語っている知識は対戦相手を殺すために師匠(スカサハ)に叩き込まれたものなのでは?あなたは訝しんだ。

 

そうして暫く武具を見回った後、今度は更に奥のエリアへと足を進めた。クー・フーリンは途中から興奮し始めて隣でやかましかったのでストックに戻した。

 

奥まった場所であるためか、ここはマニアックな物品が多く出品されている。何に使うのかわからない極彩色のカーテンに、一本の木から彫られたのであろう誰かの彫像。なかなかにカオスな空間だ。

 

一つ一つ露店の品を見ていると、中には微弱であるが魔力を持った、俗に言う魔道具も混ざっていた。この辺一帯を見たときに気持ち三割程度であったので、少々レアな掘り出し物と言ったところか。

 

ちなみにあなたが見た中で最も魔力が込められていた品は星の形をした石像だった。星の中央には丸い模様が刻まれており、どこか不吉な予感を感じさせる。

 

そのうち勝手に動き出してエイのような悪魔(フォルネウス)に会いに行きそうなフォルムをしていた。

 

閑話休題。

 

混沌とした空間を楽しんでいたあなたは、突如ある場所から親しい空気を感じ取り無意識に移動を始めた。

 

この心臓を貫くような、無慈悲な殺気。指先まで凍るような恐怖。どこか甘く、腐乱した空気。

 

いつか乗り越えた死の境地。それがまたあなたを呼んでいた。異世界の市場の一角にあってはいけないそれが。

 

そしてあなたは気配の元に辿り着く。そこには襤褸のテントがポツンと設置されており、中に店主らしき人物はいなかった。

 

その代わりに堂々と中心に置かれているものがあった。

 

―――………………。

 

あなたはそれをそっと手に取り、理解する。特に文字などが刻まれているわけでもない。見るものが見ればなんの変哲もないものだろう。

 

だがあなたは違う。感覚が叫んでいた。

これは【王国】のメノラーだと。

 

―――………………。

 

何故ここに、ということは考えない。今ここにあることが事実でありそれを考えるのは無駄なことだ。大事なのはそれを受け止め、そして自分はどうしていくのかという()()()()だ。

 

恐らく、他のメノラーもあるのだろう。一つだけでは意味がない。少なくとも他に十個のメノラーがある。

 

ではそれは誰が持っているのか?あなたの時のようにそれぞれを魔人たちが保持しているのか。はたまた未知の存在が入手しているのか。

 

……あの大魔王が選んだ者に渡しているのか。

 

いずれにせよあなたのやることには変わりはない。メノラーが導く相手と死闘を繰り広げ、勝利すること。あなたがこれまでにやってきたように。

 

しかし今回の意図は何なのだろうか。前は自分が混沌の悪魔となるために仕組まれていたものだった。それならば今回も同じ目的だろうか?

 

だがそれはおかしい。自分の存在はあの創造主と相対するために生まれ、そして戦ったのだ。今更第二の人修羅を求める意味がない。

 

考えても謎は深まるばかり。あなたは一度考えを放棄した。わからないものを想像してもどうしようもない。

 

それに状況も許してはくれなかった。手に持つメノラーが炎を灯し、ゆらゆらと揺らぎ始める。これは証左だ。近くにメノラーを持つ存在がいるということの。

 

死が再び立ちはだかる。

 

 

 

 

一旦あなたは市から離れた。戦闘の余波で町がぶっ壊れるのを避けるためだ。勿論そんな配慮はあなたが考えたわけではなく、ゼーリエから耳にタコができるほど言い聞かされたからだ。

 

町から離れたらメノラーの持ち主と会えないのではという考えは無意味だ。メノラーは必ず別の持ち主を導く。どんなに遠く離れようとも出会うのは必然となる。

 

だだっ広い草原であなたは待つ。しかしただ待つというのも暇なので手慰みにピクシーを召喚した。

 

「楽しみだねシン!ここでもメノラーを巡ってサツリクが繰り広げられるんだから」

 

―――相手は魔人だろうか?

 

「さあ?わっかんない。でもでも、どうせ誰が相手でもシンなら大丈夫でしょ!あんたは強いんだから!」

 

―――そうだな

 

ピクシーはあなたが弱い頃からずっと傍にいたのだ。今まで強大な悪魔や格上の悪魔と共に戦ってきた相棒。彼女の口調は軽いものだが、言葉の重みが違った。

 

相棒からの励ましもあり、あなたは改めて構え直す。ほんの少しナーバスになっていた心に渇を入れた。

 

ザッザッ……

 

タイミングも丁度いい。背後から聞こえる草を踏みしめる音。あなたは徐に振り返った。

 

目に写るは一人の男。若葉色の短髪なのも目立つが、あなたが注目したのは耳だ。ゼーリエと同じように、つんと尖った形。つまりエルフだ。

 

「………どうやらお前のようだな」

 

―――……………。

 

「何が、とは言わないのか」

 

隆々とした筋肉が服の上からでもわかる。またその体つきは決して虚仮威しではないと、重心の位置や隙の無さが暗に語る。

 

「一応名乗ろうか。俺はクラフト。しがない武道僧(モンク)だ」

 

「ふーん、まあまあ強そうじゃん。でも彼のほうがもっと強いんだから!」

 

あなたは両手を顔の前でクロスさせて、いつもの構えを取る。クラフトと言ったエルフも無言で戦闘態勢に入る。

 

きっかけはなかった。音もなく戦いが幕を上げる。

 

先手必勝。あなたはたった一歩の踏み込みでクラフトの眼前に潜り込み、一撃をお見舞いする。

 

―――致命傷を与える魔法(死亡遊戯)

 

「ぐっ!なかなかの拳の重さだ。だが此方もただやられるわけにはいかん」

 

あなたの放った死亡遊戯は並大抵の一撃ではない。それをあっさりといなすとは、この世界の猛者はレベルが高い。

 

しかし問題はない。あなたは一人ではないのだ。

 

ちらりと、あなたはピクシーに目を配る。それだけで察したピクシーはすぐさま魔力を練り魔法を唱える。

 

「オッケー!風の如く動く魔法(スクカジャ)

 

最高の相棒に言葉を介す必要はない。以心伝心、これまでの死闘で心を通じ合わせた相棒は、その場でもっとも必要なことを適切なタイミングでしてくれる。

 

「どうやら一癖も二癖もあるやつみたいだな。長く生きてきたが、どれも初めて見るものばかりだ。だから、より一層昂るっ!」

 

相手のターン、あなたと同等の速さでクラフトは拳を振るう。マサカドゥスによって物理攻撃は無効化されるはずなのだが、嫌な予感がする。

 

念のためクロスアームガードで衝撃に備える。直後、あなたの身体に暴風かと錯覚するほどの衝撃が襲った。あなたの耐性を当たり前のように貫通し、少しだがダメージを与えてきた。

 

まだ相手のターンは終わらない。バックステップで後方に下がったかと思うと、何らかの呪文を唱える。しかしゼーリエのような魔法ではなく、どこか神々しい気配を漂わせたナニカ。

 

「喰らえ。女神の三槍」

 

コイツ物理だけではないのか、あなたは舌打ちをしたくなったがそんな暇はない。破魔属性のようだが、神聖さが段違いだ。これも恐らく貫通してくる。

 

スクカジャの効果もあり軽やかに三本の槍を避ける。その足で再びクラフトに接近。先程の衝突で物理は抵抗される(レジスト)とわかったので、今度は万能の一撃を放つ。

 

あなたの動きを把握したピクシーは、相手の回避を妨げるように電撃魔法(ジオダイン)を差し込む。致命傷ではないが、厄介な一撃。アシストとして完璧だ。

 

クラフトが電撃魔法を避けるために回避したその隙。絶好の機会にあなたは必殺の魔法を放った。

 

―――万物を撃ち抜く魔法(至高の魔弾)

 

「ぐっ!?」

 

咄嗟に防御魔法を張ったが焼け石に水。バターを溶かすように一瞬で貫通し、クラフトに直撃した。

 

盛大に舞う砂埃と草花。クラフトがどうなったかはハッキリと確認できないが、モロに喰らったのだ。ただでは済まない。

 

「いぇーい、やったねシン!これで二つ目のメノラーゲットじゃん」

 

―――……………。

 

ピクシーは浮かれているが、あなたは全く油断していなかった。貫通を持つほどの格があるのだ。あの一発だけで倒れる想像がつかない。

 

そんなあなたの予想通り、未だに舞う砂埃に一つの影が写った。影はゆっくりと此方に近づいてくる。

 

ブン、と風を切るような音で砂埃が即座に散った。詳しくは見えなかったが、影が一瞬で腕払いをしているのをあなたの目が捉えた。

 

「やるな。だが、ここで倒れては面目が立たん。申し訳ないが手加減なしでいかせてもらうぞ」

 

クラフトは表情を変えず、しかしその目の鋭さは誤魔化しようがないほどに冷たかった。

 

 

 

*1
ゼーリエ基準




貫通持ちは猛者という解釈です
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