ブルーアーカイブ 蒼穹に煌めく白銀の翼   作:A-Kye[アキ]

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序章 制約された預言の終着点

 鋼鉄大陸での激闘を終え、やっとシャーレに腰を落ち着けた先生は、活動報告も兼ねてカヤとコーヒーブレイクに勤しんでいた。

 

「ただの自販機のAIが神様気取りとは…」

 

 カヤはコーヒーを一口飲みため息をつく。

 

 デカグラマトン。今のこの世界を否定し、有史以前の世界へと書き換え、自ら神になろうとしたAI。

 

 しかし、神とは総じて傲慢であり、独り善がりだ。

 

 この結末も、ある種必然であった。

 

「それで、そのマルクトとやらは今どこに?」

 

「さぁ」

 

「さぁ、って…一応残党でしょう?また牙を剥いてきたらどうするんです」

 

 カヤの言はごもっともだ。実際リオ達も最初は同じ懸念をしていた。

 

「大丈夫だよ。彼女が敵になることは二度とない」

 

 そう確信できる。

 

「そうですか。先生がそう言うなら」

 

 自信しかない満足げな先生の顔を見て、カヤはそれ以上の追及をするのをやめた。

 

「それで先生。後ろにあるそれは何ですか?」

 

 先生の背後に広がる格納庫の空間に目線を移す。

 

 そこには、傷だらけの戦闘機が鎮座していた。

 

「また変な物でも作ったんですか?」

 

「いや、そういうわけじゃ…」

 

「”変な物”とは、我々のことか」

 

 先生の言葉を遮るように、無機質でありながら感情のある”声”が響き、その戦闘機は人型へと変形した。

 

 2人の下へと歩み寄ると、身を屈めてカヤを見る。

 

「…驚かないのだな。我々は未だこの体には慣れぬというのに」

 

「前例がいますからね。それで、先生。彼は何者です?」

 

 警戒な眼差しを向けるカヤに、先生は経緯を話す。

 

 

 デカグラマトンとの最終決戦の後、預言者達の意識はその役目を終え消滅するはずだった。

 

 所詮は鋼鉄大陸で再現されたコピーでしかない。

 

 存在意義が無い物は、消える定めだ。

 

 その最後があったからこそ、加勢という選択肢を取れたのだ。

 

 しかし、彼/彼女らは想定してなかった。

 

 加勢した対象は、先生と言う存在は、だれであれ黙って消えることを許す人物では無いということを。

 

『あの子たちのことを想って手を貸してくれるというのなら、お前らも”生きなければ”ならないんじゃないか?』

 

 預言者達は困惑した。

 

『どういう意味だ?』

 

『今まで殺しあってきたが、今はみな等しく、あの子たちに後を託された仲間だってことだ』

 

 先生はコアからのパスを介してヒマリに連絡をする。

 

『何をするつもりだ』

 

『お前達に新しい体をやる』

 

『……正気か?』

 

『残念ながら正気だとも』

 

 ヒマリからも驚嘆の声が返ってくるが、構わないと返事をする。

 

『汝は、それで我々が再び敵対するとは考えないのか?』

 

『考えていない』

 

 先生の即答に、預言者達は沈黙してしまう。

 

『そうだな…お前たちの言葉を借りれば、これが俺の選択した”自由意志”だ』

 

『……その選択を尊重しよう』

 

 その言葉を最後に、パスが切れ、先生はアロナたちの元へ戻ってきた。

 

 

 

 そして、ケイとデカグラマトンとの一騎打ちの最中、なおあがく鋼鉄大陸ネツァクの攻撃からアリスたちを守る為に現れたのが、今カヤを見下ろしているロボットだ。

 

「事情は分かりました。が、やはり安心はできませんね」

 

「そりゃごもっともだ」

 

 見た目こそレヴィのようにシャーレ所属だと分かるようにはなっているものの、そのコアは紛れもなくデカグラマトン由来の物。再度の敵対が無いとは言い切れない。

 

 だが先生は、マルクト同様彼らにその意思が無い事に自信を持っていた。

 

「信頼は行動で勝ち取っていくものだ。これからシャーレとして働いてもらって、認めてくれればいい」

 

「まったく…相変わらずお人よしですねぇ」

 

 カヤはなお警戒心を解かぬまま、機械仕掛けの顔を見る。

 

「いいでしょう。信頼に足る実績さえあれば、こちらからは何も言いません」

 

 コーヒーを飲み干し、席を立つ。

 

「先生の信頼する戦力と言うのなら、いずれお借りすることもあるでしょう」

 

 そう言い残し、カヤは防衛室へ戻っていった。

 

「……本当に良かったのか?」

 

 しばし沈黙の後、預言者達は悲観の声を漏らす。

 

「少なくとも俺は自分の選択を後悔してないし、最善だったと思ってる。それに、カヤも口ではああは言ってるが、仲間だとは認めてくれている」

 

「そうなのか…?」

 

 とてもそうは見えなかったが、人間とはやはり分からないものだ。

 

「さて、辛気臭い話はもうやめにして、外回りにでも行こうか」

 

 先生は軽快に彼らの体を叩く。

 

「これからもよろしく頼むよ、ラヌート」

 

「ラヌート?」

 

 聞き慣れぬ名前で呼ばれ、彼らは困惑する。

 

「いつまでも預言者じゃ不便だろ?だから新しいお前の名前」

 

「ラヌート…」

 

「キムラヌート、にしようかと思ったけどちと長いからな。短くしてラヌートだ」

 

「……受け取ろう。我らはこれよりラヌートだ」

 

 ラヌートと名付けられた機人は、元の戦闘機へと変形すると、薄汚れた機体が瞬く間に鮮やかな白へと変わっていき、その尾翼にシャーレのエンブレムと共に”Ranut”と刻んだ。

 

 そして、その心臓に火を入れ、豪快な産声を上げる。

 

「流石鋼鉄大陸由来の素材だ。自己修復はお手の物か」

 

 先生は技術屋的好奇心をくすぐられながら、コクピットへ乗り込む。

 

「さぁ行こうか」

 

 白銀の翼が蒼天へと繰り出す。

 

 彼女マルクトも今どこかで、同じ空を飛んでいることだろう。

 

 

 

 ”未来を生きる者達に、終わり無き光の導きがあらんことを”

 

 

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