ブルーアーカイブ 蒼穹に煌めく白銀の翼   作:A-Kye[アキ]

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 逃げ惑う民衆、燃え盛る街、侵攻するオートマタ兵団。

 そして、今ラヌートの眼前にいる相方レヴィに酷似した存在。

 ロボットモードでの初陣が、こんな最悪な形になろうとは。

 先生は他の場所での避難誘導を指揮している。

 人間達の援軍も、すぐには来ないだろう。

 預言を捨て、自由となった身だが、我々のやることは変わらない。

 守るものが、変わっただけだ。

「友の姿で、暴れるのはやめてもらおう!」

 武装を展開し、レヴィ擬きに攻撃を仕掛ける。

 それに反応し、レヴィ擬きもミサイルや滑空砲で応戦してくるが、何もかもが軽い。

「こんな攻撃では我々は止められぬぞ」

 思い出される鋼鉄大陸あの場所での記録。

 親友レヴィの拳は、もっと重かった。


第一章 皇帝と鋼鉄の獅子編①

 事の発端は数日前に遡る。

 

 先生の仕事の付き添いでミレニアムを訪れていたラヌートは、レヴィと共にエンジニア部に身を寄せていた。

 

「……また体を弄られる羽目になるとは」

 

 ラヌートは思わず不満を漏らす。

 

「恨むなら、私たちを置いて技術の宝物庫に行った先生を恨むんだな」

 

 そう言って工具を走らせるのは、エンジニア部部長のウタハだ。

 

 ウタハたちエンジニア部は、技術屋として高い技術力を持つ先生を人一倍尊敬していた。

 

 その先生が赴いた鋼鉄大陸と言う場所には、未知の技術が溢れかえっていたという。

 

 そんな夢みたいな場所に呼ばなかったことを根に持って拗ねていたウタハ達は、珍妙な開発を繰り返し、ミレニアムは毎日大混乱だったのだとか。

 

 そこで先生は、鋼鉄大陸由来のラヌートを差し出すことで、事態の収拾を図ったのだった。

 

「友よ、笑っていないで助けてくれ」

 

「彼女らに捕まったら誰も止められないから、諦めて」

 

 隣でくつろいでいるレヴィに助けを求めるが、あっさり見捨てられてしまう。

 

「…くっ」

 

 後で先生を問い詰めてやる、と誓うラヌートの心情を知る由もなく、先生はセミナーへと足を運ぶ。

 

「いらっしゃい、先生」

 

「お出迎えありがとう、ユウカ。今回は迷惑をかけたな」

 

「そんな、先生が謝ることじゃないですよ。エンジニア部が大人げないだけです」

 

「そうは言うが、相当暴れてたんだろ?」

 

 ユウカやノアから話を聞いた分だけでも何か抗争でも起きてるのかと思うぐらいだった。

 

「まぁ、なぜかケイちゃんも大暴れしていたので、諫めるのには苦労しましたが…」

 

 それを聞いて先生は苦笑いする。

 

 今回ミレニアムに来ることを決定づけた出来事、ウタハが量産して校内にばら撒いたものがケイが鋼鉄大陸で使用していたAMASボディだったからだ。

 

 どこからAMASの情報を手に入れてきたのかは分からないが。大方ヴェリタスと結託してハッキングでもしたのだろう。

 

「とりあえず、先生のおかげで彼女たちも大人しくなったので、この件はもう大丈夫です」

 

「そうか」

 

 後でラヌートに色々言われるだろうが、まぁそれはその時考えることとしよう。

 

「あれからケイは上手くやってるかい?」

 

「ええそれはもちろん。真面目でいい子ですから、もう他の生徒たちからも大人気です。今日もゲーム開発部にいると思いますよ」

 

「それは良かった。あとで会いに行ってみる」

 

 ユウカが淹れてくれたコーヒーを一口飲み一息つく。

 

 鋼鉄大陸から帰還してそれなりの月日が経ったが、やはりこうして生徒たちと何気ない話をしながら飲む一杯がうまい。

 

 今日はこのまま何事も無ければいいが…。

 

 そんなのんきな夢見はすぐに打ち砕かれた。

 

「すみません!リオ会長はいらっしゃいますか!」

 

 息を切らした生徒は、ユウカを見るや鬼の形相で迫ると、両肩を掴んで激しく揺らす。

 

「会長はどこですか?」

 

「ち、ちょっと今席を外していてここにはいないわ」

 

「そんな……」

 

「何かあったのか?」

 

「あ、先生!よかった、先生でも解決してくれるかも」

 

 そう言って生徒はスマホを取り出してある映像を見せる。

 

 そこにはミレニアムの校門前でオートマタ兵士とゴリアテが大量に整列しているのが映し出されていた。

 

「これは?」

 

「さっきドローンの飛行テストをしていたら、これが映ってて…」

 

「どういうこと?誰かカイザーに喧嘩売ったのかしら…」

 

 カイザー、正式名称はカイザーコーポレーション。今キヴォトスで様々な事業を展開している大企業だ。

 

 先生もアビドスの一件を皮切りに何かと因縁のある企業だが、今回に限っては心当たりが全くない。

 

 ユウカの言う通りミレニアムの生徒の誰かが喧嘩を売った可能性は無いとは言い切れないが、もはや戦争でも始めようかというくらいの戦力規模でやってくるのは明らかに異常だ。

 

「彼らは何か言ってるの?」

 

「確か。白い戦闘機を引き渡せとかなんとか…何のことでしょうか?」

 

 それを聞いて先生は眉間にしわを寄せる。白い戦闘機とはラヌートのことだ。しかしラヌートがここにいることはセミナーの面々と今彼らを整備しているエンジニア部しか知らないことだ。

 

「一体どこから…」

 

 いや、考えるのはあとだ。今はどうにかして彼らを追い返す方法を考えねば。

 

「……あとは任せてくれ。君は安全な場所へ」

 

「?分かりました」

 

「先生…」

 

「大丈夫だ。ユウカはとりあえずリオにこのことを伝えに行ってくれ。俺はすぐにエンジニア部に」

 

「分かりました!」

 

 コーヒーを飲み干し、セミナーを飛び出す。嫌な予感がする。それも的中率の高い系の奴だ。

 

 それと同時刻、エンジニア部でも騒ぎを聞きつけた生徒によって情報が渡る。

 

「我々を探している?」

 

「もしかして君のこと公表してたりするのかな?」

 

「ありえない話だ。我々は素性を明かしたことなどない。先生が流布でもしていない限りはな。世間では”ロボに変形する珍妙な戦闘機”となっているはずだ」

 

 ウタハは「それなら何故…」と首をかしげる。と、その時だった。

 

 大規模な爆発が部室の風通し良くし、そこからオートマタ兵士とゴリアテがなだれ込んできた。

 

「いたぞ!ターゲットの白い戦闘機だ!」

 

「うそ…校内で堂々と…」

 

 ウタハ達は作業を中断して応戦する。

 

「大きいのは任せて!」

 

 レヴィもロボットモードに変形してゴリアテに殴り込む。

 

「くそ!なんでこんな…何が目的だ」

 

「大人しく引き渡せ。技術を独占する悪党め!」

 

「悪党って、あんたらがそれを言うのかい!」

 

「ええい、目標はあの白い戦闘機だけだ!さっさと確保しろ!」

 

 隊長らしき兵士が号令をかけると、動けないラヌートにめがけて銛の様なものが発射された。

 

 そしてその射線上には、群がる兵士をなぎ倒していたウタハもいた。

 

「ウタハ!」

 

「!!」

 

 万事休すかと思われたが、その一撃はラヌートにも、ウタハにも届くことは無かった。

 

 ウタハが恐る恐る目を開くと、目の前に何か金属のようなものが鈍い音を立てて落ちてきた。

 

 それが何なのか、考える必要もない光景が、視界を占有していた。

 

「レ…レヴィ!」

 

「……ウタハ…よかった、無事ね…」

 

「ちぃ、邪魔が入ったか。だがあれでもシャーレの技術。役には立つか。回収しろ!」

 

「はっ!」

 

 突き刺さった銛は返しを展開し、そのままレヴィの躯体を引きずっていく。

 

「レヴィ!」

 

 もはや名前を叫ぶことしかできないウタハは、必死に手を伸ばす。

 

 しかし、それは虚しくも空を切るのだった。

 

 そして先生が部室にたどり着いた時には、既にすべてが終わっていた。

 

「遅かったか…」

 

 言われないと学び舎であったことが分からない程破壊された部室を見渡すと、ラヌートのそばでウタハがレヴィの装甲の一部を抱きかかえて泣き崩れていた。

 

 そして先生の姿を見るやさらに涙を流す。

 

「先生、私のせいでレヴィが!」

 

「落ち着けウタハ。大丈夫だから…」

 

「でも!」

 

 なだめようとすればするほど、余計に泣き出してしまう。

 

 先生はそれ以上言葉を紡ぐことをやめ、そっとウタハを抱き寄せる。

 

「あいつなら大丈夫だから。お前のせいじゃない…大丈夫だ」

 

 しばらくウタハのそばにいた後、他の場所を確認していたスミレたちに彼女を託す。

 

「お前は大丈夫か?ラヌート」

 

「大丈夫…という言葉が適応される範囲がいまだわからぬが、おそらく大丈夫ではないのだろう」

 

 ラヌートはコアを唸らせ、悲愴と憤怒が入り混じった声を漏らす。

 

「これが自己嫌悪、と言うものか…。己が無力さ故の…」

 

 預言者であった頃には考えもしなかった喪失感。同胞が討取られようが感じることはなかった憤り。

 

 平和。平穏。

 

 日常と称される、変わらないようで違う毎日が、一瞬にして破壊された。

 

 人間の笑顔が消え、心地よい温かみと言うものを奪われた。

 

 コアに流れ込む未知の情報。

 

「これが怒りと言うものか…であるなら、我々は、生まれて初めて、怒った!」

 

 ラヌートの白麗の拳が部室を揺らす。

 

「同じ気持ちだ、ラヌート。カイザーめ…今度こそ徹底的に潰す!」

 

 先生はラヌートの怒りの拳と自分の拳を重ね誓うと、合流してきたリオ達とすぐに作戦会議を始めた。

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