ブルーアーカイブ 蒼穹に煌めく白銀の翼   作:A-Kye[アキ]

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第一章 皇帝と鋼鉄の獅子編③

「あれって…レヴィ?」

 

 突如現れた謎の人型ロボット。佇まいからネジの一本まで、レヴィにそっくりである。

 

「カイザーめ、技術力だけはいっちょ前だよ」

 

 レヴィが攫われてから間があるとはいえ、たかが数日程度である。一週間すら経っていない。それでいて、”それ”が目の前にいるということは、ある程度解析が終わってしまっていることを意味する。

 

「に、偽物よね…だってレヴィがこんなことするわけない」

 

「ん、大丈夫。レヴィはあんなに真っ黒じゃない」

 

 慌てるセリカをシロコたちが落ち着かせてる間、カリンとホシノとで作戦を考える。

 

「どうするんだ、先生」

 

「……一応破壊することはできる」

 

「私達だけで倒せるのか?」

 

「ああ。ただし、あれがレヴィと同じ構造であった場合に限る話だが」

 

「破壊するのはいいけど、戦車の形になって暴れまわられたら難しそうだねぇ」

 

「それはあり得ないから大丈夫だ」

 

 ホシノの言葉に即答する。

 

「レヴィの変形機能は俺が趣味で組み込んだものだ。外から解析した程度で真似できるように作ってない」

 

 現に、一切変形するそぶりを見せずに少しずつこちらへ歩いてきている。

 

「ただし、それ以外が”レヴィと同じもの”であればあるだけ、こちらに勝機がある」

 

 そう言って先生は追加でデータを表示する。

 

 そこには左腕、両足関節部分が赤く表示されていた。

 

「これは?」

 

「簡単に言えば、レヴィの弱点かな。設計上どうしても出てしまう脆い部分だ。あれが同じ構造をしているのであれば、ここがポイントになる」

 

「けど、カイザーがそれに気が付かないなんてことがあるだろうか」

 

 腐っても高水準の技術力を持つ組織だ。こういう弱点を優先的に潰していくことくらいするだろうとカリンは考えていた。

 

「どうだろうな」

 

 しかし先生から帰ってきた返答は意外なものだった。

 

「これな、鋼鉄大陸で発見したものなんだ。死にかけるほどの銃撃戦をやって初めて見つかったものを、ただ解析しただけで見つけられるとは思えない」

 

「なるほど…」

 

「流石せんせ~。カイザーの基地を一人で壊滅させた人は説得力が違うねぇ」

 

「え…?」

 

 ホシノの衝撃なカミングアウトに固まってしまうカリン。

 

「どういうことだ」

 

「そ、その話はまた今度な…」 

 

 今すぐにでも問い詰めそうな勢いのカリンを抑え、大まかな作戦を立てる。

 

 前衛、ホシノ、ノノミ。中衛、シロコーズ、セリカ。 後衛、カリン。支援、アカネ。

 

 ホシノとノノミが交互に注意を引きつつ、ヘイトを分散。そこをシロコーズ、セリカ、カリンでダメージを与える流れとなる。アカネには、状況を見て遂次火力支援をしてもらう。

 

「ターゲットを”エアーズ”と仮称、これよりターゲットを撃破する」

 

 指示が纏まり、各々配置につく。

 

 先生は戦況を広く見る為カリンに同行し、腰を落ち着かせた後一報が入る。その報を聞いた先生はえらく上機嫌だった。

 

「先生、どうかしたのか?」

 

「いや大したことはない。ただ、勝確の知らせ、と言ったところだ」

 

 通話の内容をカリンにだけ伝える。それを聞いたカリンも、つられて上機嫌になった。 

 

「さて、行こうかみんな!」

 

 先生の号令と共に、各位攻撃を仕掛ける。

 

「ほら、こっちだよ~」

 

 エアーズが接近してきたホシノをレーザーポインターで追う。ホシノもショットガンで応戦するが、鈍い金属音と共に無慈悲に弾かれる。贋作とはいえあのカイザー製だ。装甲は頑丈なものだった。

 

「さぁこっちにもいますよぉ」

 

 ホシノを追うエアーズの背後めがけてノノミのガトリングが火を噴く。

 

 今度はノノミに振り返る。そこをホシノが撃つ。この繰り返しで徐々に2人にターゲットを集中させる。

 

 その間にシロコーズが左右から攻め、各所にマーキングも仕掛ける。

 

 そしてカリンの最初の一撃が直撃し、エアーズは大きくよろめく。

 

「今がチャンス!」

 

 セリカが突貫する。

 

 迂闊だった。

 

 相手は機械で人間じゃない。

 

 人間には無理でも、機械だからこそできる動きと言うものがある。

 

 今セリカへ向けられている鉄の拳がまさにそれだった。 

 

「セリカちゃん!」 

 

 ホシノがセリカとエアーズの間に割って入る。盾を構えてなんとか直撃は避けられたものの、セリカとホシノはともに弾き飛ばされてしまう。

 

「ホシノ先輩!」

 

 これ好機と言わんばかりに、エアーズは何度もその拳を打ち付ける。

 

「さすがにそろそろまずいかな…」

 

 盾を支える腕が感覚がなくなっていくのを感じる。

 

 そしてついにその最後の守りが破られたその瞬間。

 

 大量の弾幕がエアーズに降り注ぎ、その巨体が爆炎と共に地に突っ伏した。

 

「い、一体何が…」

 

「来たか!」

 

 先生は勝利を確信したように空を見上げる。光の剣が軌道を描き砂漠へ舞い降りる。

 

「今のうちに下がってください」

 

「あ、ありがとう」

 

 ホシノたちが撤退したのを確認すると、半壊となってなお執念深く立ち上がろうとしているエアーズに向き直る。

 

「む。ダメージが予想を下回っている。これがモモイの言っていた”ダメージ計算が甘い”と言う奴ですね」

 

 今度こそはと、ありったけの火力を展開する。もはや満身創痍の相手にはオーバーキル感は否めないが、彼女もまたC&Cなのだと改めて実感する。

 

 その後は呆気ないものとなった。

 

「おつかれ、トキ。新型の使い心地はどうだ?」

 

「問題ありません。控えめに言って最高、と言う奴です」

 

 着陸したパワードスーツから降りてきた少女、飛鳥馬トキは満足げにお得意のダブルピースを披露する。

 

「そいつは良かった」

 

 その後カリンを交えて談笑している様子を見ていたホシノたちは、イメージしていたミレニアムの生徒像とかけ離れていたことに驚いていた。

 

「ミレニアムってもっとインドアなイメージがあったけど…」

 

「割と武闘派集団?」

 

 その後アビドスの中で”ミレニアムはゲヘナと同等の戦闘狂”という評価が広まるのであった。

 

 そしてカイザーの襲撃から一夜明け。

 

  C&Cの残りのメンバーとラヌートも合流し、アビドス高校と協力して本来の目的である砂漠でのカイザーの拠点探しを開始する。

 

 その間先生は、回収したエアーズの残骸をシャーレに持ち帰り、解体しながら吉報を待つことにした。

 

「カイザーの恐ろしさは身に染みていますが、まさかここまでとは…」

 

 嬉々として作業している先生を、コーヒー片手に見つめるカヤ。

 

 今回の事件で、カイザーが今までとは違う、かなりの本気を感じていた。

 

「どんどん見境なくなってきている。目的は分からんが、軍備増強を急いでいるように思うな」

 

「キヴォトス征服でもしようと言うのでしょうか」

 

 カヤは馬鹿馬鹿しいとため息をつく。いかに影響力が強いと言えど、一介の企業に過ぎないカイザーが数千もの学園都市で成り立っているこのキヴォトスを牛耳るなど、さすがに絵空事にしか思えない。

 

「カイザーがやることはいつもぶっ飛んでるから否定できないのがなんとも…と、あったあった。ほれ」

 

 先生はカヤにある部品を渡す。

 

 薄型のスマートフォンの様な、半透明の部品。

 

「これは?」

 

「メモリーコア。作戦行動や戦闘記録なんかを保存するものだ。これを…」

 

 先生はそのメモリーコアをシッテムの箱に接続する。すると、先日のアビドスの戦闘記録を始め様々なファイルが記録されていた。しかし、そう簡単に全てが開示されているわけもなく、ほとんどが暗号化されていた。

 

「ビンゴだな」

 

「しかしこれでは、ほとんど何もわかりませんね」

 

「大丈夫。丁度今日当番の生徒がこいつを開けてくれるマスターキーのような子でな」

 

 そんな便利な子がいるわけ…とカヤが疑問の目を向けるのと同時に、格納庫の入り口が勢いよく開かれた。

 

「せんせー!遊びに来ましたよー!」

 

 だだっ広い格納庫さえも響き渡る元気の良い声と共に入ってきたのはコユキだった。

 

「ようコユキ、丁度良いところに。君を待っていた」

 

「な、なんですか藪から棒に…」

 

 先生は一瞬でコユキの眼前に迫り、メモリーコアを見せる。

 

「こいつの解析を頼む。君にしかできないことだ」

 

 コユキは先生の浮かべる笑顔の裏を知っていた。この顔をするときは必ず厄ネタだ。

 

「…私最近反省室を出たばかりで、」

 

「そうか…それは残念だ。協力してくれたらこのムシクイーンのBOXを報酬としようかと思ったが、あー非常に残念だ」

 

「なっ…」

 

 どこから取り出したのか、先生はムシクイーンの絶版BOXをコユキに見せる。

 

「ひ、卑怯です!最低です!これが大人のやり方ですかぁ!」

 

「大人は時に汚い手段を選ぶものさ」

 

 その様子はさながら妹にいたずらをする年の離れた兄だ。

 

「まったく…大人げない…」

 

 カヤはやれやれとため息をつくも、その光景が平穏の証明でもあると微笑み眺めるのだった。

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