宇宙戦艦ヤマト~スターオブフリート~   作:蒼本喜十

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プロローグ

 

 無限に広がる大宇宙・・・静寂な光に満ちた世界。生まれて来る星もあれば、死んで行く星もある。そうだ、宇宙は生きているのだ。

 まだアタシが小さかった頃に読んだ本に、そう書かれていた。それ以来、アタシはあの宇宙(そら)に夢中で、何度も何度も、届くはずもない手を伸ばしたっけ。いつか、あの宇宙に、星々の大海原を渡れる日が来ると信じて、今日も誰もいない草原で手を伸ばす。

 

 玲奈「そろそろ帰ろっかな」

 

  そう思いながら立ち上がり、ついでにスマホをチェックした。

 

 玲奈「げっ! なにこのメールの量!?」

 

 幼馴染同じ僚に住んでいる真田蒼からの鬼のようなメッセージが送られて来ており、さらに追撃を掛ける電話もかかり、慌てて電話に出た。

 

 蒼「こんな時間までなにをしてたんですか?東郷玲奈!」

 玲奈「えっと・・・」

 

 アタシはとっさに嘘を付こうした。

 玲奈「どうせまた星でも見たでしょ?」

 

 やっぱりバレていたようだ。さすが幼馴染!

 

 玲奈「今帰ろうとしてた所だから!心配しなくても大丈夫だよ!」

 蒼「なんにしても門限まで戻ってくる事!良いですね!」

 玲奈「はいはい!」

 

 面倒くさい相手をしたあとのように電話

を切った。

 

 玲奈「今日も星が綺麗だな・・・」

 

  そして、もう一度あの夜空を見上げ、広がる無数の星々は今日も輝いていた。

 

 

 

 

 同時刻、シリウス星系方面。

 

 漆黒のベールを纏った宇宙の深淵。それを切り裂くようにして、数条の「光の矢」が疾走した。

地球連邦が誇る究極の決戦兵器――波動砲だ。

 

 その光の先にあるのは、有機的でありながら無機質、虫に似ていながらも全く別の進化を遂げた異形の群れ。数千、数万という単位でひしめき合う「宇宙怪獣」の一団だ。

光の矢は群れの中央で弾けるように拡散し、一瞬にして数千の怪獣を光の塵へと変えた。

 

 しかし、戦場に安堵の時間は訪れない。

消滅した空間を埋めるかのように、暗黒の彼方から新たな群れが「沸いて」くる。

それらが放つ無数の生体レーザーは、もはや回避不能な弾幕となって宇宙戦艦の装甲を焼き、視界を極彩色の死で埋め尽くしていた。

 

 

 第一艦隊旗艦:アンドロメダ級宇宙戦艦『アブローラ』

 

 艦橋(ブリッジ)には、緊張と焦燥が渦巻いていた。

 

 副長「拡散波動砲、第一陣発射完了! 効果甚大……ですが、敵群の増援止まりません! 続いて第二陣、マルチ隊形に移行します!」

 

 オペレーターの鋭い声が響く中、艦長席から一人の女性が立ち上がった。

背中まで伸びた長い白銀色の髪が、爆発の光に照らされて美しく、そして悲劇的に輝く。

 

 アブローラ艦長「……あれだけの波動砲を叩き込んで、まだ止まらないなんて。一体、奴らはどれだけ潜んでいるの?」

 

 アブローラ艦長の唇が微かに震える。それは恐怖というより、終わりの見えない物量への絶望に近いものだった。

 

「艦長! 敵群後方に巨大な重力反応! ……きます!」

「なんですって!?」

 

 モニターを睨みつけた彼女の瞳が、驚愕に見開かれた。

 宇宙怪獣の群れの奥底、闇を押し広げるようにして「それ」が姿を現したからだ。

 

「識別確認……。あれは、**『審判級』**宇宙怪獣です!」

「審判級……! まさか、こんな最前線にまで出てくるなんて」

 

 それは文字通り、次元の違う存在感だった。

数十メートル単位の突撃級が塵芥に見えるほど。全長五キロメートルに及ぶその巨体は、一発で都市を呑み込む移動要塞のようだ。四〇〇メートルを超える最新鋭のアンドロメダ級ですら、その前では木の葉のように小さく見えた。

 

「波動砲第二陣、急いで! あの巨体を止めるわよ!」

『言われなくても、分かってるわよ!』

 

 通信モニターに割り込んできたのは、勇ましい女性の声だった。

 

 第二艦隊旗艦:アンドロメダ級宇宙戦艦『アーセナル』

「艦長! 第二陣だけでは突破できません。第三陣も同時に投入すべきです!」

「ええい、出し惜しみは無しね! 第二陣は先ほどと同じく『拡散』! 第三陣は『収束』に設定! 一点突破で風穴を開けるわよ!」

 

 アーセナル艦長の号令一閃、周囲を展開するドレッドノート級二十隻が、一糸乱れぬ動きでマルチ隊形へと移行する。

十隻が広域殲滅を、残りの十隻が審判級を貫くための特化攻撃を。艦隊が放つエネルギーの奔流が、空間そのものを震わせる。

 

 その準備の間にも、戦況は悪化の一途を辿っていた。

「宇宙怪獣」が放つ猛烈な弾幕。回避運動も間に合わず、第一艦隊の巡洋艦が次々と火だるまになり、爆散していく。暗闇に咲く火花は、散っていく兵士たちの命の灯火だった。

 

「第二、第三陣、発射準備完了!」

「よし! 全艦、撃てぇッ!」

 

 アーセナル艦長の合図とともに、二十隻の艦首から眩い奔流が解き放たれた。

まず、拡散波動砲の光の雨が審判級の周囲を覆う突撃級を焼き払い、障害を排除する。審判級はその巨体を震わせ、宇宙に響くはずのない咆哮をあげた。

 

 間を置かず、収束された波動砲の光柱が、審判級の分厚い外殻を次々と貫通していく。

 

「今よ! 全艦隊、前進! ここで叩き潰すわ!」

 

 アブローラの艦長が叫んだ。

 怯んだ隙を逃さず、艦隊はフルスロットルで加速する。至近距離からのショックカノンの猛射。一発一発が小惑星を砕く威力の砲火が、審判級を執拗に打ち据えた。

 

 突撃級の数は激減し、審判級ももはや虫の息――誰もが勝利を確信した、その時だった。

 

「――っ!? 目標、突如として加速! こちらに来ます!」

「なっ……体当たりをする気!?」

 

 死に物狂いになった審判級が、群れを蹴散らしながら猛然と突っ込んできた。

 山が迫ってくるような圧倒的な質量。

 

 「全艦、緊急回避運動!」

 

 悲鳴に近い指示が飛ぶが、あまりにも距離が近すぎた。

 回避が間に合わなかった数隻の戦艦が、審判級の巨体に衝突し、一瞬で圧壊・爆沈していく。

 

「ああっ……!」

 

 アブローラ艦長が絶句する中、傷だらけの審判級は艦隊を強引に突破。そのまま亜高速へと加速し、空間の歪みへと消えていった。

 

「逃げた……? いいえ、今のワープは……」

 

 アブローラ艦長は背筋に走る凍り付くような予感に、震える声で問いかけた。

 

「副長! 奴のワープ先を特定して!」

「……観測データ、出ました。目標の予測進路、その先にあるのは……私たちの母星、地球です!」

「!?」

 

 銀髪の艦長の顔から、血の気が引いていく。

 

 

          地球はまだこの事実を知らなかった・・・・。

 

 

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