【完結】残火の太刀を持ってるタイプの禪院扇   作:照喜名 是空

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修行回

 

 視聴覚室の講堂を使って行われた作戦会議は頭脳派の独擅場だった。

 恵や五条君のような頭の回る術師と日米の軍人が話を回している。

 我々のような脳筋組は術式の開示をするだけだった。

 しかしまあ、綿密というかややこしいというか……

 まるで詰将棋で私はついていけん。

 恵が言うには『MTGとかのカードゲームみたいですね』とのことだが。

 

 結局、話についていけない我々は少しでも時間を有効に使うべく鍛錬をすることにした。

 日の下に出てグラウンドで組手をしたり術式の拡張を試す。

 

「なあ兄貴。百斂ってやっぱこれ以上タメ早くできねえの?」

「うーん、悠仁のは赤血操術そのものというより発展形だからな……なあ加茂」

「百斂はそんなものですよ。私も手を合わせると同時の発動が限界です。私も色々試しましたがやはり……それに血の代わりに水ですからね。赤鱗躍動ができないのは惜しいですが、他の技となると……」

 

 虎杖兄弟と加茂君がさらなる赤血操術の可能性を話し合っている。

 尊い光景だ……

 なお、一応甘井からの伝言を伝えておいたが、やはり本人に覚えはないらしい。

 脹相は感激していたが。

 

「赤縛や血星磊などの固める系は水を凍らせることで俺たちより性能がいい」

「穿血とかの飛び道具系をもっと出が早くするか、逆に威力を上げられればなあ」

「ならやっぱり超新星だぞ悠仁!」

「逆に血刃や斬魄刀に振ってみるのもいいんじゃないかな。ああ、扇先生。ちょうどよかった」

 

 おや、私に声がかかったか。ふむ、相談に乗るのもよさそうだ。

 

「うむ、励んでいるようで何よりだ」

「ええ。悠仁君を鍛えつつ僕らも鍛えています。同じ液体を操る術師として赤血操術を一通りは教えられました」

「百斂はまだ遅いけど、穿血は一応ものになったよ先生!」

 

 虎杖君が的に向かって百斂からの穿血を水で再現して見せる。

 うむ、見事だ。威力はもはや加茂君以上だろう。

 パンッと手を合わせると同時に撃てている。穿血とはそういうものだ。

 

「ほう、見事だ」

「あざっす!でもなんか切り札が欲しいんすよね。たとえば穿血に血星磊を乗せるみたいにして氷の弾丸を水鉄砲に乗せるとか……威力が欲しいっす」

 

 そう言いながらすでに的をウォーターカッターのように切り裂いているではないか。

 穿血の再現としては十分だろう。

 

「いや悠仁!その発想は俺もやってみたが駄目だった。それなら超新星を学んだ方がいい!」

「私は血刃や斬魄刀の刃物系に振ってみてはどうかと思います。先生から見てどうですか?」

 

 ふむ、やはり術式の拡張か。あと半月でしっかりものにできるとなると……

 たしか虎杖悠仁の術式は……

 

「悠仁君。たしか君の術式は切断、炎、水の三重属性だったか?」

「そうっす。なんか御厨子っていうのと赤血操術にヒコゴリ呪法?ってのを合わせて切って煮て焼く調理の術式っすね……御贄術式ってアイツは言ってました」

 

 贅沢な術式で、その運用もすでに加茂君たち1級相当には運用できている。

 ここからが伸び悩むところだな。その停滞期こそが後で爆発的な伸びしろになるが……

 

「なるほど……ならばその術式は本来手数の多さで勝負するトリッキーなものだろう」

「器用貧乏なんすよね……でも器用貧乏を極める時間は少なくって」

「ならば高度な新技を学ぶより、今できることをどう運用するかのほうがよかろう。まずは手札を書きだしてみるがよい」

「押忍!」

 

 うむ、元気が良くてよろしい。

 

「その上で恵や乙骨くんならばよい戦術を組み立ててくれるかもしれん。だが……」

「だけど?」

「こういった伸び悩む時期こそ基礎を見直す時期だ。呪力操作を滑らかに。体術を積み上げ。足場を固めるべきだが……」

「でも時間ないんすよねー」

 

 その通りだ。術師の成長としては基礎を復習すべきだが、基礎を固める時間はない。

 

「なので扇先生。刃物の扱いをもう少し私たちにご教授願えませんか?」

「赤血操術の血刃か……たしかに、それならば私も教えられることがあるかもしれない」

 

 加茂君は切っ先を私に向けずに血刃を作ってみせる。ナイフか……私も出来ぬことはないが。

 

「悠仁君は斬魄刀はもう習ったかね?」

「あ、一応……炎と氷、それぞれをベースに斬撃属性つけて斬撃を飛ばせるくらいには」

 

 脇差ほどの刀を二刀流で出す虎杖くん。うむ、及第点と言った出来だな。

 

「悠仁の斬魄刀はすごいぞ。俺たちも悠仁に習って斬魄刀の扱いを覚えた」

 

 そう言って打刀サイズの赤い刀を見せる脹相。

 

「ほう、素晴らしいな二人とも。血刃のほうは血を巡らせて切れ味をあげているのか」

「その上毒も入ってる。五条悟からは屍山血河(ちいかわ)と名付けられたが」

 

 ここまで聞いてふと私は気づいた。

 

「虎杖君。そういえばあるかもしれん。火力の高い奥義が。虚式という技術を知っているか?」

「えーっとどこかで聞き覚えがあるな……なんだっけ加茂先輩」

「順転と反転を合わせて爆発的な威力を出す奥義の中の奥義だね。五条先生が使っているはずだ」

「うむ、これから教える技の発想はそれだ。おそらく君にもできよう」

「でも俺術式反転はできなくて……いや、まさか。氷と炎って。あれじゃんメドローアじゃん」

 

 なぜその名を?滅導炉矢は切り札として秘しておいたはず。

 この名も兄者がつけてくれたのだが。

 

「知っているのか?ならば話が早い。私はそれができる。君にもコツを教えよう」

「まさかメドローア撃つからその場で打ち返せとかそういう命がけじゃないすよね?」

「?……まさかそんな根性論では身につくまい。結局は呪力操作だ」

 

 そうして虎杖悠仁に滅導炉矢を教えていく。

 その後ろでは脹相が満足そうにうなずいていた。

 

「そういう術式なら翅王の追尾性もあった方がいいな。お兄ちゃんが教えてやるぞ」

「でも脹相、あなたは感覚派ですからね。私にも翅王を教えてもらえばうまい教え方を教えてあげられますよ」

 

 脹相はたまらなくうれしそうな顔をして拳を突き上げた。

 

「よし!特訓だ!」

「応っ!」

「ええ、できるだけのことをしましょう」

 

 元気のよいことだ……そうだ、後で日車くんにも剣術を教えねばな。

 彼の成長速度はすさまじい。五条くんに匹敵する。

 組手を続ければ自然に強くなろう。若者を教え導くことはやはり楽しいな。

 

 ■

 

 一通り滅導炉矢の基礎を教え、小さなものであれば出来るようになった頃。

 私たち修行組はひたすらな組手に移行した。

 

「ブラザー!新技を求めるのもいいが呪術師の基本は格闘だ!組手をしようブラザー!」

「お前は義理のとか渡世のとかが頭につく兄弟だろう東堂」

「血のつながりだけが兄弟とは限らないぞビッグブラザー!」

 

 東堂君はどうやら九相図兄弟の中にしれっと入り込んでいるらしい。

 なんだかんだで脹相はもちろん、壊相にまで認められている。

 相手に興味さえ向けば人たらしなのだがなあ……

 私にも宿儺との戦いからどうやら一目置いてはくれているが。

 

「まあまあ兄貴。東堂の言う通りだよ。やっぱ俺にはこれだよな!行くぞブラザー!」

「おう来いブラザー!俺に黒閃を当てる気で来い!」

 

 なかなか熱い格闘戦が繰り広げられている。

 若者は元気が一番だ。

 

「斬魄刀か……いちいち術式を使わなくてもできるのが使い勝手がいい」

「早いな日車くん。もう呪力操作だけで斬魄刀を作ってしまうとは」

 

 日車くんが造ったのは斬魄刀による十手だ。

 ガベル捌きも相当なものだが、これに私と日下部くんによる剣術が加わるとまさに鬼に金棒。

 

「知らなかった。自分に剣術の才能があるなんてな。結局、私にあったのは暴力の才能か……」

「天が二物を与える者もいる。それだけだろう」

 

 今も私と呪力で作った斬魄刀同士で打ち合って、みるみるうちに真似されていくのがわかる。

 これは悟殿などのごくわずかな才気ある者との戦いと同じだ。

 久しくなかった感覚に心が躍る。

 ましてそんな才気ある者にしっかり剣術を教えるのは初めてだ。

 

「言っておくが、私が宿儺とやらをこれで倒したとしても、羂索のテロを防いでも、それが償いになったとは思っていない」

「だがそれでも君は世界を守るために剣を取っている。それは尊いことだ、君がどう思おうがな」

「世界が滅ぶかもしれなくて自分に何とかできる手段があるならあがくのは当たり前のことだ」

「それは君が世界をまだ見限っていない証拠だ、日車くん」

 

 しかしまあ、なんと高度な剣術の駆け引きか!

 時に伸ばし、縮め、十手を投げ、消したり出し入れしたりで選択を強要されるこの感じ!

 私も剣術での極限の駆け引きで勘がどんどん戻っていく!

 義手はもはや完全に馴染んだと言っていい。

 いや、この義手は私が失った腕よりも自由だ!

 

「ロケットパンチ……なるほど、失った手足や折れた剣も呪力で補えるとは言っていたな」

「うむ。娘がそのへんはうまく作ってくれた」

 

 この腕はなんと拳を切り離せる。

 拳と腕の間を呪力で補えば古式ゆかしいロケットパンチが打てるというわけだ。

 さらにその拳に呪力で作った斬魄刀を持たせることもな。

 

「私としても私の力を腐らせるより、償いと称して仕事をさせたほうが効率が良いことくらいは知っている」

「だが、それでも正しい手続きを疎かにするのは許せん、か。やはり君は芯から司法家だ」

「私はその資格を自ら捨てた。この件が終わったら私は国相手に訴訟を起こす」

「好きにすればいい、それも七月一日に生きていればこそだ!」

 

 私と日車くんは互いの喉に斬魄刀を突きつけ合う。

 

「引き分けか」

「そうだ。だがあと二、三回組手をすればもう君は私を剣で上回るだろう」

「……だろうな。昔からそうだった。私が何かすればいつもこうだ」

 

 日車は十手をじっと見つめる。忌まわしそうに。

 

「私は妬まんよ。老骨とはそういうものだ。若者が私を越していくのが正しいのだ」

「裏を返せば同年代以下はそうじゃない。だから法の道を選んで、そこから外れた」

「そのように悩む事こそが殺めた者への罰とは思えんか?」

「……きっと、倫理的にはな」

 

 どのようにしても、結局は法的に罰せられねば納得がいかんのだろうな……

 難しい所だ。だが、決戦までは協力を取り付けられただけマシだろう。

 

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