【完結】残火の太刀を持ってるタイプの禪院扇   作:照喜名 是空

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ここから宿儺・羂索相手のラストバトルです。
げ、原作みたいにコンパクトに書けない~!
あれ神業っすよ。皆に見せ場作りつつってなるとこんな感じになりました。
いろいろツッコミどころあると思いますし、見せ場が少ないと思います。
今はこれが精いっぱいですわ。どうか、お手柔らかに…


死滅回遊 終章
人外魔境東京決・上


 そして、決戦の日は来た。

 私は東京高専の上屋部分、3階モニター室に集まって皆と待機していた。

 この部屋は二面が窓に面しており、いざとなればいつでも迎撃できる場所。

 

「まずは米軍術師部隊のお手並み拝見、ってところだね」

「僕らは最終防衛ラインと言えばテイはええけど、待ちぼうけ言うのもおもろないわ」

「まあまあ、政治的なアレコレもあるしさ。露払いと思ってほしいな」

 

 モニターに一番近い所で陣取るのは夏油、五条、直哉の若き特級世代。

 そして……天元。

 

「それにしても意外やね。まさか天元様がお出ましとは思ってへんかったわ」

「これは結界を校舎部分にまで伸ばしたおまけだよ禪院の子。私の肉体は地下の最奥ですべてを拒絶している」

「下でどーんと待ってもらってもよかったんやけど?」

「あの子……羂索との因縁もいい加減に清算しなければならないと腹をくくっただけだよ。時代を君たちの手にゆだねられる段階に来たと判断した」

 

 そこに九十九が割って入る。

 

「……夏油君の動きのせいか?」

「……そうだ。君たちが状況を動かした。もう私たちの出る幕ではない。古い因縁はここですべて終わらせる……その時が来たんだ」

「子供の命を犠牲にして命をつないできたくせに殊勝な態度じゃないか。天元」

 

 ああ、そういえば九十九も『候補』であったな……

 

「好き好んで延命したかったわけではなかった……と言ってもすべては言い訳だな」

「ああ、言い訳だ。だからこそ協力する気になったんだろうが」

「今日であの子も、あの子と私たちが紡いだ因縁も終わらせる。……来たよ。正面だ」

 

 複数のモニターをまとめたモニタータワーと、天元様の空性結界による映像処理。

 それらが映すのは……巨大な改造バイクの牽く『玉座』に座る両面宿儺。

 

「アレ聖帝バイクじゃん。趣味悪っ」

「彼らはあれでもかっこいいつもりだと思うよ悟」

「何なら宿儺の横におるんピッチリスーツ着とるやん。強化外骨格なん?」

 

 牛の頭骨のあしらわれたお堂のような『玉座』には前後左右に一人ずつ女が侍っている。

 前には白髪の裏梅。宿儺の隣には万。お堂の上には羂索が座っていた。

 万はぴっちりとしたラテックスのようなスーツを着ている。

 あれはおそらくAT社の強化外骨格であろうな。

 バイクを運転しているのはドレスを着て髪を縦ロールにした女だ。

 

「なあ直哉、宿儺が悪そうな女幹部四人連れてるの見ると90年代アニメ思い出さねえ?いたよなあんなラスボス」

「たぶんセイバーマリオネットJやね。アレは僕も性癖壊されたわ」

「お前意外にそういうの知ってんのな」

 

 直哉と五条は気楽に話している様子だが、その芯では熱いものが煮えたぎっている。

 ぽつりと直哉がつぶやいた。

 

「呑み仲間にオタクがおるんや。ブッサイクのオタクの癖に関西人同士妙にウマが合うてな」

「お前にダチがいたのもかなり意外だよ。健全じゃん」

 

 直哉が少し寂しそうに溜息を吐いて前髪をかき上げる。

 

「僕かて場末の酒場で愚痴りたい夜もあるんや。ほんで、もしあの店があいつら共に潰されとるかも、思うたら……」

 

 直哉の歯がぎり、と食いしばられる。唸る虎のような獰猛な表情だ。

 

「……僕は許せへん。地の果てまで追い詰めてブチ殺したるわ。やから意外やねんけど、めっちゃモチベあるんよ僕」

「……だな。行きつけの店何個潰されたと思ってんの。僕もちょっとあいつらにムカついてる」

 

 宿儺たちの巨大バイクの後ろには何百台もの銃座をつけた軽トラの集団だ。

 たしか、テクニカルとかいう武装トラックだ。

 

「悟。始まるよ。米軍が攻撃を始める」

「おっ、このモニター?天元様お願いしまーす」

「わかった」

 

 モニターと通信が管制される……

 

 

「城攻めか。この時代では初めてだな」

「いかがいたしますか?宿儺様。もうじき敵の射程に入るでしょう」

 

 宿儺は玉座にもたれかかって欠伸をして、少し考えるとニタリと笑って前方のドレスの女に声をかける。

 

「出番だ、亨子。後ろの肉盾共が早々に減ってはつまらん。露払いを任せる。裏梅と運転を代われ」

「はい、宿儺様。生まれ変わった私を下々に見せつけてやりますわ」

「やってみせろ」

 

 ドレスの女、烏鷺亨子はバイクの上で優雅にカーテシーをするとそのままフワリと宙に浮かぶ。

 そして要塞に向かって手招きのサインを送った。

 宣戦布告はそれだけで済んだ。

 要塞の自動化されたバルカン砲とドローン群が一斉に飛び立つ。

 

 夕暮れの要塞に長い連続した銃声が花火のように響いた。

 だが、迫りくる弾丸はまるで空間をシーツのようにめくりあげる烏鷺の術式によりそのまま跳ね返される。

 

「いけ!撃て信者共!お前たちの怒りを世界に見せろ!私たちはここにいるんだと!」

「お、オス!聖戦だ!待ち望んだ聖戦だ!世界を今こそ取り戻す時!撃てーっ!」

 

 無数の斬魄刀がものすごい数の信者たちの手に生成され、何百という月牙が放たれる。

 烏鷺は空中を泳ぎながら微笑んでその無数の月牙を空間をゆがめて束ね、進路を邪魔するコンクリートの障壁に何発も放っていく。

 

「これが私たちが世界に突き立てる最初の牙ですわ」

 

 その破壊距離、実に500m。それだけの長さが瓦礫の山になった。

 信者たちが歓声を上げてテクニカル車両のスピードを上げて左右から陣形を取りつつ前進する。

 

 ■

 

 一方、無数のドローンと銃座を壊された米軍側は冷静だった。

 要塞部分の中に紛れ込ませた地下指令所で指揮を執るのはギャリー中将。

 

「中将、タッチダウンポイントまであと1,4キロです。ターゲットSがキルゾーンCに到達」

「よし、始めるぞ。チーフ、接続の準備はいいか?」

 

 ギャリー中将は米軍とは別の南アフリカの戦闘服に身を包んだ小柄なサングラスの黒人『チーフ』に尋ねる。

 

「準備万端だよ中将。3カウントを頼む」

「わかった、フェイズ2を始める!3,2,1!……領域展開(ドメイン・エキスパンション) クラウドボックス」

 

 中将が手を組み、チーフとアフリカ呪術部隊と米軍サイキック部隊がそれに続く。

 これより成されるのは前人未踏、史上初の数十人による複合領域展開。

 最新式の牙が、史上最強の術師たちに口を開けた。

 

 ■

 

 宿儺も、それを感じ取っている。

 

「ほう、領域か。しかしこれは……ケヒッ、浅知恵なりに考えてきたな。おい者共!領域だ!それぞれ勝手に防げ」

 

 東京高専要塞の空が赤黒く染まり、地面からは影が迫る。

 天は曇り、真っ黒なタールのような雨が降る。

 それはまるで、いくつもの絵具を混ぜ合わせたら汚い黒になったかのような領域の風景。

 

『テロリスト共。お前らに術式を開示する。私はギャリー中将。この領域の主だ。この領域では敵味方関係なく情報が共有される。だが、どの情報を誰に渡すかは私が権限を持っている。そこで第二の術式開示を行う』

 

 領域内の宿儺と取り巻きに植え付けられる存在しなかった情報……

 不思議に、ギャリー中将の眼帯をしたベレー帽姿が目に浮かぶ。

 その横にドレッドヘアにサングラス、小柄な黒人の姿も。

 

『お初にお目にかかるな、大昔の化物(フリークス)共。私はアフリカ呪術師部隊、チーフだ。私の領域を開示しよう。私の領域『すべての魂の歌(ニンボ・サ・ロホゾンテ)』は味方の領域と競合しない。それだけの領域だ。だが、それ故に私の味方であるならば、何人の領域でも私は調和させられる。これから全員の術式開示をさせてもらう。我々の術式をよく覚えておくことだ。人類の起源は呪術の起源、アフリカの術師による一流の技を味わわせてやろう』

 

 宿儺は退屈そうにバイクの振動に身を任せる。

 

「要するに大人数での領域の合わせ技だろう。能書きが長い。さっさと味わわせろ」

 

 そこに中将の野太い声が天から響いた。

 

『では、遠慮なくやらせてもらう。君の気に入る方法など一切取らんがな』

 

 そして、宿儺と信者たちに降りかかる術式開示の情報量!

 

『俺の領域はエネルギードレインアリーナ!領域内の自分以外から呪力を吸い取る術式だが、管理されることで敵からだけ吸収できるようになった。本来は呪力をごっそり吸い取る術式だ!』

『私の領域はパイプラインブルース。呪力の受け渡しができる術式よ。だからスクナだっけ?あなたの莫大なパワーは私たちが使わせてもらうわ』

『俺の術式はキャプテンシールド!味方全員に盾型のシキガミをつけるぜ!』

『私の術式はサイゴン・ロアー。ただ簡単なトラップを作り出すだけの術式だ。ブービートラップには気をつけな』

『オレの術式は……』

『それから追加だが、領域効果とは別に、私の術式反転『心を戻す精霊術(ディ・ギ-ズヒ・ディハートゥハ)』は人の心を癒すだけの術だが、それには沈痛、麻酔効果もある。気をつけたほうがいいぞ』

『私の』『僕の』『ワイの』『わたくしの』『ウチの』『私たち兄弟の』

 

 これが数十人分、同時に宿儺たちに降りかかる。

 

「チッ、無視するのも面倒な情報を俺に送りつけるな!とりあえず効果を整理して……ええい面倒な」

「よくも宿儺様にゴミのような情報を……!ここは私たちが!」

「ええ、まだ続いてるわ。うっとおしい、小癪な手を使うわね」

「宿儺様、私が空間をゆがめてこやつらの領域からお守りいたしましょうか?」

 

 宿儺は頭痛に耐えるような顔でしばらく瞑目してから目を開いた。

 

「……いや、向こうから釣り餌が来た。しばらくはこの遊びに付き合ってやる。罠は正面から破るのが愉悦よな!」

 

 目の前の道路にはリーゼントに革ジャンの男が一人、不思議な形の銃を構えていた。

 

「こりゃ極上のスイーツだぜ……!勝負していくかい!?宿儺!」

「自己紹介を垂れぬだけましだ!付き合ってやろう命知らず!」

 

 その男は石流龍と言った。

 そして彼の握る拳銃こそ後に呪具師・組屋鞣造の最高傑作と言われる斬魄刀のコピー商品。

 その名を―

 

「蹴散らせ『群狼(ロス・ロボス)』!グラニテブラスト!」

「ケヒッ」

 

 太さ3mはある極太の呪力砲が宿儺の『解』とぶつかる。

 だが衝突はそれ一発にとどまらない。

 まさにマシンガンのように『解』による斬撃と『群狼』による銃撃が拮抗していた。

 大勢の信者たちの間を縫って。

 

「なんだ?八艘跳びの真似か?お前の術式は鉄砲遊びだけか!」

「あんたの『解』だって似たようなもんだろ」

「まさか銃は剣より強しというそれだけで出て来たのではあるまいな?!」

 

 石流は呪力放出による飛行と大出力の呪力砲の二択だけで戦っていた。

 対する宿儺は玉座からは降りたものの、疾走するバイクの上で一歩も動かず指先だけで斬撃を飛ばしている。

 するとどうなるかと言えば、当然信者たちに容赦なく砲撃と斬撃が降り注ぎ、無数の肉体がミンチになった。

 横転する車、爆発するトラック。

 

「おい、いいのかい?侍らせてる女たちにも当たるかもしんねえぞ?!」

「そんな軟な女は連れておらん!」

「そりゃ豪勢なこった!」

 

 しかし宿儺の『側女』たちは平然とそれを防御、あるいは巧みに回避していく。

 戦いについていくだけの力はある、そういうことだ。

 

「さてと……そろそろ採点してやるか。お前の術式は呪力放出だけだな?大方、俺から吸い取った呪力で水増ししたのだろう?最低限俺と撃ち合えるだけの力はあるが……策を弄して出してくるのが俺という強者に挑みたいだけの粗忽者とはな。反転くらい覚えてから出直してこい!」

 

 宿儺が石流にとびかかる。

 

「万!合わせろ!」

「ええ!うれしいわ宿儺!」

 

 宿儺の足元に万の生成した浮遊する液体金属による足場が生まれる、

 それはまるで筋斗雲のような。

 

「空中戦とはな、こうやるのだ!」

「ここからがスイーツだぜ!」

 

 宿儺が斬撃を細かく出し、石流もまた打撃と蹴りを織り交ぜて呪力砲を撃ちまくる。

 まさにガン・カタそのもののコンパクトな格闘。

 だが、石流と宿儺。その格闘経験値は……

 

「悪い玩具はこれか?王手だ」

「どうかな?俺にはまだこれがあんだよ!」

 

 宿儺が銃を石流の手首ごと叩き落し、さらに首元を掴もうとする。

 そこを最後の悪あがきとばかりに石流は頭突きの構えを見せる。

 

「グラニテブラスト!」

「捌」

 

 だが、宿儺の方がやはり早かった。

 石流は胸ぐらをつかまれると同時にすぱりと首を落とされる。

 しかし、落ちゆく石流のリーゼントからの一発が宿儺の耳と頬を吹き飛ばした。

 

「満腹、か……」

 

 車の群れに消えていく石流の顔はどこか満足そうに笑っていた。

 

「ケヒッ、やはりそこからも出るのか!笑わせてもらったぞ。名も知れん、一山いくらの挑戦者」

「宿儺!」

「よい、万。ああ、裏梅もかまうな。すぐに治る」

「はっ!」

 

 宿儺は頬を直しながら機嫌良さそうに万による筋斗雲で巨大バイクに並ぶ。

 

「楽しめましたでしょうか宿儺様」

「前菜としてはまあまあだった。そら、次の皿が来るぞ」

 

 障壁の上からとびかかってくるのは術式を解放しはじめた鹿紫雲一だ。

 

「宿儺、教えてくれ。対等な相手を求めてさまよい続けるのが俺たちの宿命なのか!?」

「ハッ、お前もさっきのやつの同類か!贅沢者共め。いいだろう教えてやろう!おいギャリーとやら!俺の言葉を全員に伝えろ!教えてやろうとも。それまでお前が生きていればだがな!」

「いいねえ……!これだよ!」

 

 だんだんと四つ足の獣に近づいていく鹿紫雲。

 その攻めは空を叩いて走るものになっていく。

 彼には修行する時間と、見て盗める相手が多かったのだ。

 宿儺は前進しながら、鹿紫雲は並走しながらの戦いだ。

 

「どうせ地元で負けなしの類だろう?お前らは強い。挑まれただろう。今お前が俺にしているように」

 

 双方の打撃は音の速さを超え、一撃ごとに互いの身体が大きくぐらつく。

 この戦い始まって以来の宿儺への有効打だ。

 

他者(オマエ)に認められるために全身全霊で挑む。そしてそれに応える。これが慈愛でなく何だ?」

「!」

 

 宿儺の言葉に鹿紫雲の理解が追いつき、それが隙となった。

 宿儺の拳がいい所に入り、鹿紫雲がぐらつく。

 

「何が孤独だ贅沢者め。俺たちは強いというだけで求められ愛されている!お前はただ向けられた愛に気づかなかっただけの粗忽者だ!」

 

 鹿紫雲の口からの砲撃を宿儺は殴って口をよそに向けてかわす。

 殴り合いが続く。

 鹿紫雲の電撃に宿儺の斬撃。時に形意拳により式神を宿儺自らの身体に卸しての戦い。

 

「他者に満たしてもらおうなどというのがそも贅沢者の発想だ。他者とは目障りなら潰し、面白ければ構ってやる、食いたければ食うだけのものだ。それの何が不満だ?」

「……飽きるだろ」

「身の丈に合った生き方をしろという事だ、果報者。生などしょせん死ぬまでの暇つぶしよ」

 

 満象を宿した宿儺の拳が鹿紫雲の頭を潰した。

 

「さあ、三番手は誰だ?来い、構ってやろう」

 

 大勢の命知らず共が猿叫をあげて物陰からとびかかってくる。

 それを万たちは妬ましそうに見ていた。

 

「あーあ、宿儺ったら優しいんだから。突っかかってくるバカなんかに構うなんて」

「見えないのか万。宿儺様は楽しそうではないか。ならばそれはすべてに優先される」

「そうですわ。たった一人はじめて私に欲しかった言葉をくれた殿方ですもの」

「そーだけどさ。まあ夫の楽しみを一番に考えるのも妻の務めよね!」

 

 女たちは不満そうにしながらも、その手は休むことなく敵を屠っていた。

 日が、静かに暮れようとしていた。

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