青空の下で、管理人と司書補は何を見る 作:Olrand621
都市に撒かれた光。その中に、ある男の意識が溶けていた。
L社の管理人だったその男は、幾万回のループを乗り越え、ついにシナリオを完遂し、記憶を消す前の自分、「A」と共に光へ溶け込んだ。そして、光の中から白夜・黒昼を観測し、図書館の物語を見届けた。
図書館が外郭へと放逐された後、光に溶け、分散された意識を使って、男はある現象を観測し続けていた。
ねじれ…かつて「A」が尊敬し、研究を共にし、そして釣瓶へと加工した人物、カルメン。信じていたものが折れてしまった都市の人間が彼女の声を聞いた時、都市の人間に起こる現象。「A」の理想とは違う、都市の人間が己の心を曝け出した姿。それを観測し続け、少しでもカルメンの呼びかけに割り込めないかと機会を伺っていた。
ある都市の人間がねじれるのを確認し、また防げなかったかと落胆しながら、男はまた別のねじれの兆候がある人間を探そうとした。その瞬間、自らの視界に光*1が紛れ込んだ気がした。青く、どこか透き通る様な光。その光は視界の中で広がり続け…
男の意識が、都市に撒かれた光の中から消えた。
「おーい、アンジェラ!全員集めて来たぞ!」
13人もの司書補を引き連れたローランの声が図書館の中に響き、アンジェラと呼ばれた館長が振り向いた。
「…来たわね。あなた達が集められた理由は、もう聞いたかしら。」
「いや、いきなりローランに集められて何が何だか分からないんだが…階も違う司書補をこんなに集めるなんて、何かあったのか?」
バイパーがそう聞くと、アンジェラがローランにじろりと目線を向けた。
「ローラン…連れて来る時に説明しておけと言ったはずなのだけれど」
「い、いやぁ…それぞれの階を回ってたら忘れててな…」
「…で、結局なんで呼ばれたんだ?」
このままだと話が進まなくなるな、と感じたバイパーが再度聞くと、アンジェラは一つ溜め息を吐き、司書補達に一冊の青い装丁の本を見せた。
「あなた達、この本に心当たりはあるかしら?」
「なんだこれ…こんな本図書館にあったか?」
「私も見た事は無いですね〜」
「…そう。端的に言うわ。この本と一緒に、あなた達を指名した招待状が現れたの」
アンジェラがもう一つ、図書館で使われていた物とは違う装飾が施された、本と同じ青色の招待状を取り出した。
「…本当なのか?ゲストを招待しなくなったここに知らない本が、それも招待状と一緒に現れるなんて…」
エレナがそう聞くと、今度はローランが答えた。
「あぁ。この本と招待状がいきなり総記の階に現れてな…。正直、かなり怪しいんだが」
「…どうやらこの本は、連邦生徒会長というトップがいなくなった『キヴォトス』と呼ばれる学園都市に、『先生』という大人が降り立ち、生徒と共に様々な問題を解決していく…という物語らしいわ」
「…あのー、アンジェラさん?俺、今さっきその本は怪しいって言いませんでした?」
「安全確認は済ませてあるわ。それに、彼らがこの本に入るのなら、内容を確認する必要があるでしょう?」
それを聞いて、セルゲイがピクリと反応した。
「…ちょっと待ってください?それってもしかして、俺達がその本の中の世界に入るって事ですか?」
「そうよ。何度も本の中に入って幻想体の制圧をしているのだから、慣れているでしょう?」
それとこれとは違う気がするんだけどなぁ…という表情を浮かべるセルゲイに対して、アントンが口を開く。
「招待状が届いている以上、行くしかないだろう。…それに、本の中の世界でどんな奴と戦えるか、楽しみじゃないか?」
「それ多分お前だけだぞ?あと俺はあんまり行きたくないんだが??」
「えー、私も楽しみだよ?本の世界の中で何が見れるのか」
「ああ。都市とはまた違った光景を見るのも、経験になるだろうしな」
「嘘だろ…?まともなのは俺だけか…?」
「でもほんとうはセルゲイもたのしみだったり─「やかましい」いったぁい!!」
愕然としたセルゲイを茶化そうとしたネビルだったが、頭に拳骨を落とされ床に転がる羽目になった。
「…招待状は、招待に応じる相手にしか届かない。つまり、招待状に招かれた時点で、あなたたちに拒否権は無いわよ」
「マジですかぁ……。…ああもうしょうがねぇなあ!!!」
床に転がったネビルを無視しながら放たれたアンジェラの言葉により、ヤケになって叫ぶセルゲイ。こうして、司書補たちは全員が招待状に応じることとなった。
「準備ができたら、招待状にサインをして本の中に入りなさい。…ああ、それとこれを」
アンジェラがポールにあるものを差し出す。
「これ、招待状?」
「それは帰還用よ。…もう一つ、全員に注意してもらいたいことがあるわ」
「なんだ?…まさか本の中の環境が外郭並とか言わないよな?」
「いえ、そうではなくて…どうやら本の中の世界では、殺人が重罪として扱われるそうなの」
え?という呆けたような声が司書補達から上がる。
「殺人が重罪って…マジか?平和すぎやしないか…?」
「ともかく、本の中では人は殺さないようにしてちょうだい。」
「了解。…それじゃ、行ってくるね!」
「えぇ、気をつけて」
アンジェラの声とほぼ同時に、全員が招待状へサインし終わり…
司書補達の姿が、図書館から消えた。
書いてて自分の文才の無さが悲しくなってくる