青空の下で、管理人と司書補は何を見る 作:Olrand621
聞こえてきた声に足を止め、そちらを向くと、そこにいたのはかつてのロボトミーの職員たち──いや、図書館の司書補たちだった。
「─なんで、あんたがここにいるんだ?」
その中で先頭に立っていた司書補、バイパーが驚愕と困惑の入り混じった表情を浮かべながら、俺に問いかけて来た。
「…それはこちらのセリフだ。何故お前たちがこの世界にいる?──お前たちも、あの青い光に呑み込まれたのか?」
「…青い光?いや、青っていうのは合ってるが─「先生!」
互いに何故ここにいるかを聞こうとした時、俺がついて来ていないことに気づいたのか、早瀬が駆け寄って来た。
「急いでください、ただでさえ目的地まで遠いのに─って、あなたたち、誰ですか!?」
早瀬は俺を急かそうとしていたが、司書補たちの存在に気づき、驚きの声を上げる。
「早瀬、こいつらは─「先生、何をしていらっしゃる─この方々は…?」」
早瀬に司書補たちを紹介しようとするが、今度は七神によって話を遮られる。
七神は司書補たちを見て怪訝な表情を浮かべたが、すぐに合点がいったように元の表情に戻った。
「…あなたたちが連邦生徒会長の言っていた、司書補の方々ですね。
ようこそキヴォトスへ。このような状況での挨拶になってしまったことは遺憾に思いますが、今はやるべきことがあります。とりあえず、私について来てください」
そう言い終わると、七神は再び元々向かおうとしていた方向へと歩き出してしまった。
「代行!?ちょっと!せめてこの人たちが誰かくらいは説明しなさいよ!!」
早瀬が七神に叫ぶが、七神は足を止めずにスタスタと歩いていってしまう。
「…すまんな。おそらくあいつも焦っているんだろう。こいつらのことは…あとで詳しく説明しよう。とりあえずは、俺の昔の部下だと思って貰えばいい」
「はぁ…分かりました」
どこか納得していない様子の早瀬を尻目に、司書補たちに確認を取る。
「とりあえずは、お前たちは俺について来てもらう。戦闘があれば、俺の指示に従って行動してもらう。それでいいか?」
「私は良いよ。どうやらお互い、呼ばれた相手も同じみたいだしね」
「俺も構わん。あんたなら、俺たちを死なせないだろうという信頼もあるしな」
ポール、ローガンを筆頭に、司書補から賛成の意見が上がる。
「…よし。では行くぞ」
そうして俺は生徒、そして司書補たちと共に七神を追って歩き始めた。
☆☆☆☆☆☆
「な、何よこれ!?」
たどり着いた場所は、早瀬がそう叫ぶのも仕方ないほど荒れていた。
ヘルメットを被った生徒が銃を乱射し、至るところから煙が上がり、道にある物はほとんどが壊れていた。
…そういえば、今思い返すとほとんどの生徒が銃を持っていた。この場所には都市と違って、銃器に対する制限が無いのだろうか?
「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が───」
「それは聞いたけど!私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど!!
なんで私が────痛っ!!」
七神の言葉に早瀬がそう愚痴ったその時、早瀬に向かって銃弾が放たれ、早瀬の腕に当たった。即座に黒い翼を持った生徒が撃ち返し、ヘッドショットを決めた。撃ち抜かれたヘルメットの生徒から血が吹き出すことは無く、ただ気絶しただけに見えた。
「やっぱり!あいつら禁止されたJHP弾を使ってるじゃない!!」
そう早瀬が叫ぶと、再び銃弾の雨がこちらに向かって飛んできた。
「伏せてください。ユウカ。それにホローポイント弾は違法指定されていません」
「うちの学校ではこれから違法になるの!傷跡が残るでしょ!!」
…先ほども思ったが、まさか。七神に声をかける。
「…この世界の人間は、全員ある程度の強化施術を積んでいるのか?」
「いえ、違います。先生がいた所がどういう場所なのか存じ上げませんが、キヴォトスの生徒や市民は、元から銃弾で撃たれた程度では死なないほどの頑丈さを持っています」
…俺たちと体の構造自体が違うとは。都市の人間が聞いたら、どれだけ羨ましがることか。
「ユウカ、今は先生が一緒なので、その点に気をつけましょう。
やはり、この方は──」
「はい、先生たちは私達と違って弾丸ひとつで生命の危機にさらされる可能性があります。注意しましょう」
「分かってるわ。先生たちは戦場に出ないでください。私たちが戦ってる間は、安全地帯にいてくださいね!」
そう言うと、早瀬は戦場に飛び込んで行ってしまった。
「…だ、そうだが。管理人、俺たちはどうする?」
「一度様子を見る。…ここの戦い方を、見ておくのもありだろう」
「…あ、そうだ!」
俺がセルゲイにそう言うと、ティファニーが何かを思いついたように声を上げた。
「管理人さ、あの子たちの指揮をしてあげれば?」
「…理由を聞いておこうか」
「だって、あの子たちパッと見た感じでも未熟な戦い方してるじゃん?だから、管理人が指揮すればもっと良い感じに動けるんじゃないかな〜って」
「…筋は通っているか」
元々するつもりは無かったが…一応、七神に許可を取っておこうか。
「七神。今からあいつらの指揮を執ろうと思うんだが、構わないな?」
『はい。というより、生徒の指揮は元から先生の業務のうちの一つです。』
七神の返事を聞いた俺は、すぐに前線に出た生徒たちに声を掛けた。
「今から俺が指揮を執る。俺の指示に従って行動してくれ」
「えっ!?先生、指揮なんて出来るんですか!?」
驚愕と心配が混じったような声を上げる早瀬に、ティファニーが笑いかける。
「大丈夫だよ〜。この人、指揮の腕前は凄いからね!」
「最も、期待されたところで大したものでも無いがな」
そうして指揮を執ろうとしたところで、早瀬以外の3人の生徒の名前を聞いていないことに気が付いた。名前が分からない状態での指示出しは効率が悪いと思い、彼女たちに声をかけた。
「…お前たち、自己紹介をしてもらってもいいか?」
「はい。私はゲヘナ学園風紀委員会所属の火宮チナツです」
「トリニティ総合学園正義実現委員会副委員長、羽川ハスミです。よろしくお願いします、先生」
「トリニティ自警団に所属している、守月スズミと言います」
火宮、羽川、守月か。
「これ、なんか見覚えあると思ったけど、あれだね。L社に入る時に面接で自分の長所を聞かれた時にそっくりじゃない?」*1
「いや、俺も若干思いましたけど、そういうのってあんまり言わない方がいいんじゃないですか?」*2
「えー、いいじゃん。多分聞こえてないだろうし」
「残念ながら聞こえているぞ。…早瀬は前線でのタンク、羽川は後方支援、守月は閃光でのサポート、火宮は適宜早瀬の治療を」
『了解!』
「あちゃー、聞こえちゃってたね」「だから言ったじゃないですか…」とひそひそと話すポールとセルゲイに溜め息を吐きながら、俺は生徒たちの指揮を始めた。
「…行くぞ。鎮圧開始だ」
「…なんだか…あっさり勝ててしまいましたね…」
「そうよね…それにいつもより動きやすかったし…」
不良たちの鎮圧は、拍子抜けと言って良いほどに呆気なく終わった。
初戦闘としてはこんなものか、と思っていると早瀬が笑みを浮かべながら駆け寄って来た。
「お疲れ様でした、先生。とても良い指揮でしたよ!」
「そうか。俺としてはお前たちの力によるものが大きいと思うがな」
「謙遜しないでください!他の方々はともかく、私なんてそこまで戦闘に慣れている訳ではありませんし…」
「…」
…そういう割には、彼女が一番前に出ていたことには触れない方が良いのだろうか。そんな下らないことを考えていると、七神から通信が入った。
『先生、聞こえていますか? この地区で騒ぎを起こしている生徒の詳細が判明しました。
狐坂ワカモ、百鬼夜行連合学院を停学になり連邦矯正局に収監されていた、主に大規模破壊活動を行う凶悪な生徒です。
周辺の不良を纏め上げてシャーレの部室へ攻撃を───そんな、接近する集団に狐坂ワカモが居ます。先生、気をつけてください!』
それを聞いて振り向くと、今までよりも規模が大きい不良の集団、そしてキャタピラと砲塔の付いた車両が迫っていた。あれが恐らく、モモカという生徒が言っていた巡航戦車とやらだろう。さらにその後方には、他の不良たちとは服装が異なる、狐耳の生徒が見えた。あれがワカモという生徒だろうか?
「なっ…!さっきよりも多い…!?先生、また指揮をお願いします!」
早瀬が焦ったようにこちらを見てくるが、俺は首を横に振った。
「いや、今回俺は
「えっ!?」と驚いている早瀬を無視し、司書補たちに視線を送る。
「お前たちに、都市の戦い方を見せてやる。」
駄文な上に投稿頻度も遅いとかもう終わりだよこの投稿者