青空の下で、管理人と司書補は何を見る   作:Olrand621

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 途中でアプリが落ちるせいでドンパパが超えられない今日この頃。鏡ハードも鉄道もできないの控えめに言ってうんち過ぎる。なんとか深夜清掃復刻までにはスマホを変えたいところ…


今回は前半三人称視点、後半X視点です


大人の力

 自分たちではなく、ヘイローを持たない大人たちに本隊と戦わせるというXの言葉に、ユウカは驚きの表情を浮かべた。

 

「えぇっ!?駄目ですよ先生!その方たちは私たちと違って…!」

 

「その通りです、先生。私たちと違って、先生たちは銃弾の一発で大怪我になります。それに、殆どの方が銃も持っていないようですし…」

 

 焦ってXを止めようとするユウカにハスミも同調する。当たり前のことだが、ヘイローを持っているキヴォトスの生徒たちは撃ち合いをすることに対してあまり恐怖心を持っていない。しかし、それをヘイローの無い生身の大人がするとなると話は別だ。

 まして向け合う銃口すらもなく、近接武器だけで戦おうとしているなど、止めない方がおかしいだろう。

 しかし、Xはチラリとユウカの方を見たが、再び前に視線を戻した。

 

「いいから見ていろ。…セルゲイ、ネビル、デボン、前へ出ろ。トムは後方から狙撃しろ」

 

『了解!』

 

 Xの指示を受け、3人が前線へ飛び出す。

 

「なんだアイツら、銃も持ってねぇぞ!」

 

「馬鹿な奴らだ、やっちまえ!」

 

 3人に対して、不良たちは再び銃弾の雨を浴びせかけた。

 

「危ない!」

 

 そう叫んだ次の瞬間、ユウカたちは目を見開くことになった。

杖や偃月刀、果ては拳で銃弾を弾くという、彼女たちからしてもあまりにも現実離れした光景を目にしたからだ。

 

「うーん、親指の弾丸よりも大分軽いかな?その分数は多いけど」

 

「いや、裏路地を牛耳る組織と比べるのも酷だと思うんですけど…」

 

 そんな軽口を叩く余裕を見せながら、司書補たちは不良たちとの距離を縮めていく。

 

「な、なんだあいつら!?」

 

「馬鹿、驚いてる暇があるなら─ぐべぇ!?」

 

「はぁ!?なんで拳から炎が──ぐあっ!?」

 

「銃弾を受けても大したダメージにならないのに…殴れば一撃で気絶するんだな?」

 

 セルゲイは堅実に1人ずつ気絶させ、

 

「やー!」

 

「「「うわあああっ!?」」」

 

 ネビルは間の抜けた気合いと共に数人の不良たちを薙ぎ払い、

 

「セイッ!」

 

「あだっ!」

 

「そこっ!」

 

「ぐえっ!?」

 

 デボンは的確に急所を杖で狙い、次々に敵の数を減らしていった。

 

「ふざけんなっ、こんな奴らとやってられるか!!」

 

「あっ、おい!?」

 

 仲間がやられ様を見て、逃げ出そうとする不良も数人いたが…

 

「そこです!」

 

「ごえっ!?」

 

 その全員が、トムの狙撃によって逃亡を阻止された。

 

「強い…!」

 

「これは…凄まじいですね…」

 

 誰もが銃や手榴弾を持つのが当たり前で、至る所で銃撃戦が巻き起こるキヴォトス。そんな中で「時代遅れ」とも言える近接武器だけで次々と不良を倒す光景に、ユウカとハスミが感嘆の声を漏らす。

 

「お、おい!あいつらヤバいぞ!」

 

「あれ出せ、あれ!そうすればあんな奴らイチコロだろ!」

 

 そういって不良の1人が通信機に向かって何かを叫ぶと、巨大な影が戦っている司書補たちの方へと迫って来た。

 

「あれは……巡行戦車クルセイダーⅠ型です!!」

 

「知っているのか?」

 

 そうXが聞くと、ハスミではなくリンから答えが返って来る。

 

『…旧式ではありますが、元はトリニティ総合学園に制式採用されていたものです。』

 

「…つまりはジャンク品ではなく、ある程度性能の保証されたもの、ということか」

 

 Xは考え込むように目を閉じると、すぐに目を開き、アントン、と名前を呼んだ。

 

「切り裂け」

 

「─それは無理な相談だな、管理人」

 

 その言葉に、Xはちらりとアントンに視線を向ける。否定的な事を口にしたアントンは、しかし好戦的な笑みを浮かべながらゆっくりと前へ歩み出た。

 

「刀を使う必要もないからな」

 

 そう言うと、アントンの足元が抉れ、途轍もない速度で前方へ飛び出した。

 

『おい、こっちに走って来る奴がいるぞ!』

 

『舐めやがって、木っ端微塵にしてやる!』

 

 戦車の砲塔がアントンの方へと向くが…

 

「遅い」

 

 砲弾が放たれるより先に接近したアントンの蹴りによって、半ばから折れ曲がる。

アントンは戦車の横に回り込むと、上蹴りを喰らわせることで車体を僅かに傾かせる。更に、もう一発弾丸の様な蹴りを放つことで車体の傾きをより大きくさせる。

 

 そして左手を軽く添え、右手を腰溜めに構え…

 

「終わりだ」

 

 全力で拳を叩き込んだ。

 

─焔龍拳─

 

 装着しているコアページがリウ協会の物では無いため、炎こそ出ることは無かったが、それでもその拳の威力は凄まじいものであり、

──傾いていた戦車を、完全に横転させた。

 

「…こんなものか」

 

 パンパンと手をはたくアントンに、既に周辺の不良生徒をすべて片付けたセルゲイが驚いた顔をしながら歩いて来る。

 

「─今の、俺が付けてるあのリウ一課の奴が使ってた技だよな?…なんであの剣契の頭目の力を使ってるお前がそれを使えるんだ?」

 

「俺が元々リウ一課だという話はした筈だ。なら俺がこの技を使えるのも当然だろう」

 

「いや、お前リウ一課の時も剣を使ってたって言ってただろ?」

 

「リウでは三課に上がって初めて剣が支給される。だからそれまでは拳で戦っていたというだけだ」

 

 「いや知らねえよそんなリウ協会事情…」と嘆息するセルゲイを置いて、アントンは横転した戦車のハッチを開けて中の様子を確認する。どうやら操縦していた生徒は、全員拳を叩き込んだ時と戦場が横転した時の衝撃で気絶しているようだ。

 

 それを確認したアントンがXに対して頷くと、Xも頷き返して生徒と司書補に呼びかけた。

 

「全員、良くやった。戦闘終了だ」

 

 


 

 

 不良生徒たちを鎮圧した後七神から先に行っているように言われた俺は、護衛としてついて来たエレナと共にシャーレ部室の地下を歩いていた。照明が点いておらず薄暗い廊下を警戒しながら進んでいくと、無理やりこじ開けられた扉があった。

 

 静かに中を覗き込むと、タブレットのような物を持って何かを考えこんでいる、白い狐面を付けた少女がいた。おそらく先ほど遠目に見えた生徒、つまりは七神の言っていた狐坂ワカモだろう。その姿を確認した俺は、エレナに部屋に突入するよう指示を出した。

 

「うーん……これが一体何なのか分かりませんね。これでは壊そうにも………」

 

「動くな」

 

 エレナが剣を向けながらそう言うと、狐坂ワカモは即座に、親指が使うものに似た銃を向けて来た。

 

 そのまま発砲して来ると思ったのだが…

 

「………ッ//!?」

 

 何故かエレナ…ではなく、その後方にいる俺に視線を固定させたまま、発砲せずにいた。

 

「あら……?あららら………?」

 

 更に、持っている銃どころか全身を小さく震わせている。

 

「し……し……」

 

 体の震えを一際大きくしたかと思うと…

 

「失礼しましたぁぁぁぁぁぁ!!!!」 

 

「ッ!?待て!」

 

 持っていたタブレットを放り投げ、凄まじい速度で、横を通り抜けて元来た道から逃げ去ってしまった。

 何だったんだあいつは、と呟くエレナに心底同意しながらタブレットを拾い上げると、パッと部屋が明るくなり、すぐに七神が入って来た。どうやら照明を点けてくれたようだ。

 

「先生、ご無事ですか?ここに狐坂ワカモがいた筈ですが…」

 

「ああ。奴は既に逃走したらしい。部屋は……既にご覧の有り様だが」

 

「仕方がありません。むしろ先程までここにいた事を考えると、この程度で済んだことを喜ぶべきでしょう」

 

 そう言うと、彼女は俺が持っているタブレットに気づき、「それをこちらへ」と言ってきた。渡さない理由もないので、素直にタブレットを手渡す。

 

「良かった。幸い、傷一つなく無事なようですね」

 

 外傷が無いか調べた七神は、「こちらはお返しします」と再び俺にタブレットを手渡して来る。

 

「その端末は連邦生徒会長が先生に残した遺物『シッテムの箱』です。正体も、OSも、製造元やシステムの構造も、何もかもが不明…。ですが、連邦生徒会長はこの箱は先生の物であり、先生たちがこれを使えばサンクトゥムタワーの制御権を取り戻すことができると聞いています」

 

 その言葉に俺は眉をひそめる。何故そんな重要な物の詳細を部下に話さない?後釜として外部の人間である俺を据えたことも含めて、つくづく連邦生徒会長の意図が読めん。

 

「…私は邪魔にならないようしばらく席を外します。先生、どうかキヴォトスをよろしくお願いします」

 

 そう言って、七神は部屋を出て行った。念のため、エレナにも護衛から外れて他の司書補を呼びに行くように指示し、席を外させる。

 

 ひとまずこれを起動させないことには何も始まらないと思い、側面の電源と思わしきボタンを押すと、無事に画面に光が灯る。少しすると、起動画面に移り、パスワードを入力画面に移り変わった。

 

「…パスワード、か…」

 

 残念ながら、何も思い浮かぶことが無い。俺に遺した、と言うくらいなのだから俺にゆかりのある言葉だと考えられるが…

 

 そうして少しの間考えを巡らせていると、不意に頭の中に言葉が浮かんで来た。少し考えてから、その言葉を入力してみる。

 

 

―我々は望む、七つの嘆きを

 

―我々は覚えている、ジェリコの古則を

 

 

 それを入力すると、視界が強い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─気が付くと、そこは一部の壁が崩れ、床が水に覆われたどこかの教室だった。一角には机が積み重なり、また少し視界を右に向けると、水色の髪の少女が涎を垂らし寝言を漏らしながら眠りこけていた。

 

「むにゃ……カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクのほうが……」

 

「…おい」

 

 声をかけてみるが、全く起きる気配が無い。

 

「えへっ、まだたくさんありますよぉ……」

 

「起きろ」

 

 そう言って肩を揺するが、少女はまだ呑気に眠り続けている。仕方なく、更に強く揺すり続ける。

 

「うにゃ……まだですよぉ……しっかり噛まないと……」

 

 ずっと聞こえて来る寝言を無視しながら揺すり続けていると、ようやく少女が目覚めた。

 

 

「うぅぅ………むにゃ……んもう……ありゃ?」

 

 寝ぼけ眼を擦りながら不機嫌そうに起き上がったが、俺を視界に捉えた瞬間、ピタリと静止して顔を青ざめだした。

 

「ありゃ、ありゃりゃ……?え?あれ?あれれ?」

 

 更に冷や汗を流しながら、こちらに問いかけて来る。

 

「ま、まさか…X先生!?

いや、でもこの空間に入って来たということは、本当に……!!」

 

 …こちらが答える暇も無く、慌てて自問自答を繰り返していたが。

 

 

 

 

 

 

「す、すみません……。改めて自己紹介させていただきます」

 

 その後しばらく落ち着くのを待ってから、ようやく自己紹介が始まった。

 

 

「私は「アロナ」と申します!!このシッテムの箱のメインOSであり、システム管理者として先生方をサポートする秘書です!!」

 

「メインOS…ということは、お前はAIなのか?」

 

「はい、そうです!……まだ身体のバージョンが低い状態でして、特に声帯周りの調整が必要なのですが……これから先、頑張って色々な面で先生のことをサポートしていきますね!」

 

「…」

 

「…あれ?先生?」

 

 

 AI……秘書………か…

 

 

 

 

 

 

─こんにちは、X。

 ロボトミー社への入社を、心より歓迎します。

 

─私は、あなたがより快適に我が社に適応できるようサポートするアシスタントであり、話し相手であり、秘書を務めます、AIのアンジェラと申します。

 

 

 

 

 

 

 水色の髪、AI、秘書…

性格も、見た目もまるで違うはずなのに…いくつかの特徴が重なって、何故か彼女のことを思い出す。

 

「先生ー?」

 

 …過去の俺Aが、彼女に課した地獄を、思い出す。

 

 

 

 

 

 

「先生、大丈夫ですか?」

 

「ッ!!」

 

 アロナの声で記憶の海に沈んでいた思考が戻って来る。馬鹿みたいだ、と心の中で自嘲する。

 

…今更彼女のことを想う資格など、俺にある訳が無いのに。

 

「…ああ、大丈夫だ。話を続けてくれ」

 

「は、はい…。次は、形式上ではありますが、生体認証を行います!……少し恥ずかしいですが、手続きだから仕方がないので…こちらの方に来てください」

 

 そう言って手招きされ、彼女の方へ近寄る。

 

「もう少しです」

 

「…まだ近づくのか?」

 

 …更に一歩近寄る。吐息がかかりそうな程の距離まで近づくと、アロナが人差し指を自分の頭の高さまで掲げた。

 

「さあ、この私の指に、先生の指を当ててください」

 

 言われた通りに自分の人差し指を合わせると、空間から軽やかな電子音が鳴り響いた。

 

「認証出来たのか?」

 

「いえ、今から私の指を通じて、先生の指紋を確認するんです!こう見えても、結構目が良いんですよ!」

 

 …何だそれは。つまり、自分の指に付いた俺の指紋を目視で確認するのか?

 

 疑わしく思って視線を向けると、案の定、ん〜?と目を細めながら自分の指を見つめているAIの姿があった。終いには、「…まぁ、多分大丈夫でしょう!」と呟いて確認を終わらせた。……本当にこいつで大丈夫なのか?連邦生徒会長は何を思ってこんな人格のAIを入れたんだ…?

 

「…それで、先生は最初に何をして欲しいですか?」

 

 そう聞いてきたアロナに、現在の状況を説明する。

 

「なるほど…事情は大体分かりました。連邦生徒会長が行方不明になって、そのせいでサンクトゥムタワーを制御する手段がなくなった…と」

 

「俺としては、トップがいなくなっただけで機能停止するシステム自体がふざけていると思うんだがな。…お前は連邦生徒会長についての情報は持っているか?」

 

「私はキヴォトスの情報の多くを知っていますが……連邦生徒会長についてはほとんど知りません。彼女が何者なのか、どうしていなくなったのかも……」

 

「…そうか。サンクトゥムタワーの問題は?」

 

「はい!そちらの方は、私が何とか解決出来そうです!」

 

「そうか。なら、すぐに取り掛かってくれ」

 

 はい!という元気の良い返事をして、アロナが作業を始める。そこから数分待つと、作業完了の報告が上がって来た。

 

 

「……サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了…先生。サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収出来ました。今サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります。

 今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です!」

 

「…随分と早いな。権限は連邦生徒会に返してやれ」

 

「……大丈夫ですか?連邦生徒会に制御権を渡しても?」

 

「構わん。正しい場所にあっての権力だ。それに、俺に権限は必要無い」

 

「分かりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!」

 

 アロナがそう言うと、視界がフェードアウトしていく。この教室に来た時と同じように、気がつくと元の地下室に戻っていた。先生、と呼ばれ振り向くと、いつの間にか戻って来たらしい七神とエレナに呼びに行かせた司書補たちがいた。

 

「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認出来ました。これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように、行政管理を進められます」

 

「つまり、とりあえずこの状況は片付いた、ってことで良いんだな?」

 

「はい。お疲れ様でした、先生、司書補の方々。キヴォトスの混乱を防いでくれた事に、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします。ここを襲撃した不良達と停学中の生徒達については、これから追跡して討伐いたしますので、ご心配なく」

 

「ふむ、俺たちの手助けはいるか?」

 

「いいえ、大丈夫です。先生たちには、それより先に案内しなければいけない場所がありますので」

 

 ついて来てください、と言って七神は部屋を出て行く。俺と司書補たちはその背中を追って歩き出した。




キャラのエミュが難過ぎるッピ!(魂の叫び)
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