青空の下で、管理人と司書補は何を見る 作:Olrand621
いやあ、まさかロードマップガン無視で騙して悪いがして来るとは思わなかったよね、ビビったわ。
あとついでみたいになって申し訳ないですが、気付いたらUA2500に届きそうになってて驚きました。ぷろむん小説の需要の高さを感じた。
こんな駄文まみれの作品を読んでくださっている方々、本当にありがとうございます。
どんな所を直せばもっと良い文章になるのか知るためにも、どうか感想、評価をよろしくお願いします。
事務所の代表を決め、七神と話を付けて「傘事務所」という名の便利屋を開設することが決まってから数日、俺たちは事務所を開くための準備に勤しんでいた。
と言っても、俺はほとんど手伝えてはいない。俺の方は、連邦生徒会から渡された書類の処理で手一杯だったからだ。
その日も変わらず、司書補たちがどの会社と契約するか、事務所のレイアウトをどうするかなどを話し合い、俺はオフィスで書類を捌いていた時、早瀬がシャーレに訪れて来た。
彼女は司書補たちが事務所を開設することを知り、俺たちの様子を見に来たのだという。
彼女はまず俺がいるオフィスへと訪れ、そして俺と共にエレベーターで事務所があるフロアへと向かった。
その後しばらくは司書補たちと談笑していたのだが、ふと部屋の中を見渡し、怪訝な顔を浮かべた。
「あの……そういえば、皆さんの銃ってどこに置いてあるんですか?」
そう、キヴォトスではある種の必需品でもある銃がどこにも無いことに気が付いたのだ。
「ん?そもそも持ってないぞ?」
「……え?」
そしてローガンの答えに対し、惚けたような声を上げて固まった。が、すぐに頭をぶんぶんと振り、声を荒げた。
「いやいや、何かしらは持ってないんですか!?」
「今の所必要性も感じてないし、トムとナレが持ってるから、別にわざわざ買う程でもないと思ってな」
ローガンのなんて事ないといった声に、早瀬はますます声を大きくする。
「必要性とかの話じゃ……!っああもう、今すぐ近くのガンショップを調べるので──」
「……?なあ、早瀬」
「何ですか!?」
「お前が取り出したそれって、なんだ?」
「……はえ?」
説得を諦め、ポケットから何かの機器を取り出して操作していた早瀬がそのローガンの疑問を聞いた瞬間、再び素っ頓狂な声を上げてピタリと停止したかと思うと、ギギギ……と音が鳴りそうなほどぎこちない動きで顔をローガンへ向け、ゆっくりと、おそるおそる言葉を吐き出した。その顔は笑いこそ浮かべていたが、何かの可能性に対して恐れを抱いている様に見えた。
「ま……まさか、スマホも持ってないなんてことは……」
「も、持ってない、というか事務所には置いてないが……それがどうした?」
やや気圧されたようなローガンの声を聞いた瞬間、早瀬ががくりと項垂れ、身体を小さく振るわせ始めた。
「なんで……」
やがて、項垂れたまま口から小さく声を漏らし……
「なんで便利屋を開くって言ってるのに、必需品が全く揃ってないんですかぁぁぁ!!!」
ビルの中に、早瀬の叫びが響き渡った。
そんな訳で、俺、ローガン、そして別の作業をしていたアントン、エレナ、バイパーの5人は早瀬によってやっていた事を中断させられ、銃の購入と携帯端末─スマホと言うらしい─の契約をするために、D.U.区*1へと連れ出されていた。
「まったく……!キヴォトスでは『銃を持っていない人は裸で歩いている人よりも少ない』とまで言われているんですよ!その上、スマホまで誰も持ってないなんて……!」
「……悪かったな、事務所の準備で時間が無かったんだ」
「それでも最低限スマホの契約くらいはしておくべきなんですよ!もう、本当に……!」
早瀬は怒り心頭と言った様子で、俺たちを先導しながら司書補たちに説教を続けている。音量を一切抑えていないせいで周りから視線が向けられているので、早いところ切り上げて欲しいのだが。とはいえ、こちらに矛先が向いても困るので、そんな風に口出しすることも出来ない。
幸い、程なくして目的地に到着したことで、早瀬は説教を切り上げざるを得なくなり、溜め息を吐いてから店の中へと入って行った。俺たちも続いて中に入ると、種類の異なる大量の銃が普通に壁や棚に並べられていた。
「キヴォトスの生徒は、基本的に自分が愛用する、自分だけの銃を持っています。私も手伝うので、先生たちも自分に合った銃を探してみてください!」
司書補たちはそう言われると、物珍しそうに店の中を見物し始めた。都市ではほとんど見られない光景に、新鮮さを覚えているようだ。
俺は銃を買うつもりは特に無かった。おそらくそんな物を使うこともほとんど無いだろうし、護身用としてま生まれてこの方戦闘というものをしたことが無い俺は、ここで銃を買うよりも拳銃型のE.G.Oでも使った方が何倍もマシだろうと思ったからだ。
「早瀬。この店にある中で、サブウェポンとして向く物はどれだ?」
「サブウェポンですか……。それなら、これなんてどうですか?」
バイパーがそう尋ねて早瀬に手渡されたのは、終止符事務所の代表……リーウェイ、と言ったか。あいつが使用していた物に近い拳銃だった。
「それはM9A1と言って、キヴォトスでもかなり一般的に使われている拳銃の一つです。とても取り回しが良い物ですよ!」
「……成程、助かった」
そう言って、バイパーは銃の重さや動作を確かめ始ると、店内に用意されている試射場へと向かった。俺も着いて行くと、中には既にローガンがいた。
「ああ、バイパーに管理人か。この銃、中々悪くなくてな。片手でも撃てるのに、かなり威力があるんだよな?」
そう言って、ローガンはバイパーの物と似た形の銃を掲げた。*2
ちょっと見てろ、と言って銃を構え、的に向けて発砲すると、試射場内に轟音が響き、的が凄まじい勢いで後ろに倒れたのが見えた。
……ローガンは片手でも撃てると言ったが、あれはかなりの反動がありそうだ。おそらく、俺が撃とうとすれば両手で構えて踏ん張った上で、後ろに吹っ飛ばされそうな位には。
「確かに、悪くない威力だな。親指の銃くらいの威力はあるんじゃないか?」
「ああ。それと、こっちには弾丸が鉄を貫いてはいけない、なんて規則は無いらしい。だから、これよりも威力がある銃もあるかもしれないな」
最も、流石にそこまでの威力は要らないけどな。そう言って、ローガンは試射場を出て行った。それを見ていたバイパーは、少しして自分がここに来た目的を思い出したらしく、自分の銃の試し撃ちを始めた。ローガンの物ほどの威力は無かったが、それでも手応えを感じたらしい。
しばらくバイパーの試し撃ちを眺めていると、エレナとアントンが入って来た。エレナは『孤独』に似た形状の、いわゆるリボルバーと呼ばれる銃*3、アントンは銃身が途中で切り落とされた様な銃*4を持っていた。それぞれ、エレナは耐久性と信頼性、アントンは携行性と接近戦での威力を重視した結果、これを紹介されたらしい。
二人が試し撃ちを始めた。エレナの銃は装弾数が6発と少ないが、その単純な構造から異物が入り込んでも壊れにくいことが売りらしい。
アントンの物はエレナの銃よりも更に装弾数が少なく、なんと2発しか装填出来なかった。元々銃身を切り詰めたものらしいので、仕方ない部分もあるだろう。その分威力は圧巻の物で、至近距離で当てれば確実に大ダメージを狙えるだろう。
司書補たちが薦められた銃は、確かにそれぞれが全員の要望に合った性能だった。実際、司書補たちも気に入ったようで、そのまま銃を購入し、シャーレに戻る……筈だったのだが。
「そこのお兄さんたち〜、ちょーっとお小遣いくれなぁい?」
「そうそう、ちょーっと財布出してくれれば痛い思いはしなくて済むからさぁ?」
店を出て数分歩いた所で、不良生徒数人と遭遇してしまった。それも、確実にカツアゲを目的としている言葉を吐いている。
「不良生徒……!先生、下がっていて下さい!」
早瀬が俺を下がらせ、腰に下げたマシンガンを抜こうとしたが…
「待て、早瀬。俺たちでやる」
アントンがそれを静止し、好戦的な笑みを浮かべた。
「ちょうど……実戦でテストしたかった所だったからな」
そう言って、司書補たちが銃を構えた。
確かに、ここでテストをしておくのは悪く無い判断だ。なら、ここで俺がやるべきことは…
「全員、戦闘準備」
いつも通り、こいつらの指揮をすることだけだろう。
「改めて見ても……本当に、凄いですね」
今日手に入れたばかりの銃を使っているにも関わらず、不良生徒を圧倒し、数分で片付けた司書補たちに、早瀬が感嘆の声を漏らす。
「ああ。俺からしても……ここまで使いこなすとは思わなかったな」
「特にアントンさん、あそこまで容赦ない使い方をするなんて──」
そこまで言いかけると、あれ?と呟いて、アントンの方は走って行ってしまった。ひとまず、俺も着いて行く。
「あの、アントンさん。そのショットガン……」
「…?これがどうした──」
そこでアントンの言葉が途切れる。軽く持ち上げられた購入したばかりのショットガンは、戦闘中に敵を殴るのに使われたせいで銃身が凹んでいた。
「…」
「…」
二人の間に沈黙が広がる。アントンはばつの悪そうな顔を浮かべ、反対に早瀬の額には青筋が浮かぶ。
「…管理人、少し良いか?」
と、そこでバイパーが声をかけて来た。これ以上アントンの醜態を見たいとも思わなかったのでそちらに視線を向けると、バイパーは自分たちが倒した不良生徒を見下ろしていた。
「…こいつらを、うちの事務所で拾いたい。ああ、正確には自力で生きられるようになるまでの世話をしたい、と言った方が良いか」
「…正気か?」
バイパーがこちらに顔を向けてくる。その目は真剣さと、どこか同情のような物を含んでいた。
「あいつらもきっと……自ら望んであんな所まで堕ちた訳じゃないだろう。そしてそんな奴はありふれていて、だからこそ誰も助けようともしない。それがどうしても……ガキだった頃の自分と重なってな」
「…」
その真剣な言葉に、俺を少しの間目を瞑り、思考を巡らせる。事務所で不良生徒を拾っても、全てのそういった境遇の者を救える訳ではなく、むしろ不平等だと叫ぶ者も出て来るだろう。
それでも。
同じ様な過去があるこいつらなら、きっと自分たちの手の届く全ての者を救い、そしてその救われた者たちはより多くの者を救うのだろう。
なら、こういう選択も、悪くは無い。
「……良いだろう。七神へは、また俺の方から掛け合っておく。それまでに受け入れの用意はしておけ」
「……ありがとうな、管理人」
バイパーの安堵が含まれた感謝を聞きつつ、そろそろ事務所に誰か戻って来ているだろうかと思い、気絶した不良生徒たちを運ぶための車両を寄越してもらおうと連絡をしようとし…
自分が現在そのための端末を用意しに来ていたことと、連絡が出来ると思われる早瀬がアントンへ盛大に怒りをぶつけていて、しばらく声を掛けられそうに無いことを思い出し、大きな溜め息を吐くのであった。
この後、ユウカが本来の目的を思い出すまで30分以上掛かった。