【実話】あの踏切で起きたことを書く 作:yami_craft
信じなくていい話です。
でも本当にあったことなので、できるだけ正確に書こうと思います。
三年前から書こうと思っていました。でも書けなかった。書くと何かが確定してしまう気がして、ずっと後回しにしていました。
最近、また夢を見るようになりました。同じ夢です。踏切に立っている夢。赤いランドセルが落ちていて、私はそれを見ている。それだけの夢なんですが、目が覚めた後しばらく動けないんです。
だから書くことにしました。書いてしまえば、少し楽になるかもしれないと思って。
あれは三年前の夏でした。
当時、私は都内の会社に勤めていました。残業が多い職場で、終電近くに帰ることが珍しくなかった。最寄り駅から自宅まで、徒歩で二十分ほどかかります。その途中にあの踏切があります。
踏切の名前は書きません。場所も書きません。
理由は後で説明します。
その踏切は、最終電車が通過した後、遮断機が手動に切り替わります。担当の職員が来て、遮断機を上げたままにして、翌朝の始発前に戻しに来る。そういう運用になっていると、近所の人に聞きました。だから深夜は遮断機が上がったまま、好きなタイミングで渡れる。
最初の頃は知りませんでした。深夜に踏切の前に着いて、遮断機が上がっているのに渡っていいのか迷った。警告灯も点灯していないし、電車が来る様子もない。でも渡るのが怖くて、しばらく立っていたことが何度かあります。
慣れたのは、引っ越してきて一ヶ月ほど経った頃でした。
その日は八月の十四日でした。
午後十一時四十分ごろだったと思います。スマートフォンで確認したわけではないので、正確ではないかもしれません。でも十一時台だったことは確かです。終電が通過してから三十分ほど経っていました。
少し雨が降っていました。
傘を持っていなかった。会社を出たときは降っていなかったので。駅から歩き始めたところで降ってきて、走るか歩くか迷ったけど結局歩いていました。どうせ濡れるなら急いでも同じだと思って。
踏切の手前に差し掛かったとき、立ち止まりました。
何かが落ちていたからです。
最初は黒い塊に見えました。雨で薄暗かったせいかもしれません。
近づいて、ランドセルだとわかりました。
赤いランドセルです。線路脇のコンクリートの上に、斜めになって置かれていました。置かれていた、というより、倒れていた、という方が正確かもしれない。でも完全に倒れているわけではなくて、何かに寄り掛かるような角度で静止していました。
雨が降っているのに、形が崩れていませんでした。
革製のランドセルは雨に弱い。形が崩れるほどではなかったとしても、色が滲んだり、表面が濡れて光ったりするはずです。でもそのランドセルはどこかおかしかった。うまく言えないんですが、雨の中にあるのに、雨の中にないような感じがした。
今思えば、あの時点でもっとよく見ておけばよかった。
でも私はランドセルから目を逸らしました。
周囲を見渡しました。誰もいませんでした。
踏切の両側の道路にも、遠くにも、人影はありませんでした。街灯が二本あって、その範囲だけぼんやり明るかった。その外は暗くて、見えませんでした。
子供が忘れていったのかもしれない、と思いました。でも変だった。
午前零時近くの踏切に、小学生が来るはずがない。
忘れたとしても、なぜこんな場所に。通学路でもなんでもない、深夜に誰も通らない踏切に、なぜランドセルが。
考え始めると止まらなくなりそうだったので、やめました。
ランドセルに近づこうとして、足が止まりました。
理由は今でもわかりません。
怖かったわけじゃない。少なくとも、その瞬間は。ただ、何かが「触れるな」と言っていた。言葉じゃないんですが、そういう感覚がありました。根拠のない、強い感覚でした。
私は立ったまま、ランドセルを見ていました。
三十秒か、一分か。時間の感覚がなかった。
雨が少し強くなりました。
そのまま踏切を渡りました。
渡りながら、横目でランドセルを見ました。
蓋が、少し開いていました。
気づかなかった。さっきは気づかなかった。近づいて見ていたのに、気づかなかった。
中は見ませんでした。
見ようとも思いませんでした。
渡り終えて、振り返りませんでした。
走って、家に帰りました。
家に帰ってから、どうするか考えました。
警察に電話しようとしました。でもやめました。何を言えばいいかわからなかった。「踏切にランドセルが落ちていました」それだけです。それが何か問題になるのか。迷子の子供がいるわけでもない。事件性があるのかどうか、私には判断できなかった。
翌日、明るいうちに確認しに行けばいい、と思いました。
それで、寝ました。
翌朝、その踏切を通りました。
朝の七時過ぎでした。通勤の時間帯で、踏切の前には自転車に乗った人が数人待っていました。警報機が鳴り、遮断機が下りていました。電車が通過しました。遮断機が上がりました。
みんなが渡り始めて、私も渡りました。
ランドセルはなくなっていました。
当然です。誰かが持ち帰ったか、警察か清掃の人が処理したか。なくなっていて当然です。
でも。
踏切の端に、小さな水たまりが残っていました。
雨は夜中のうちに上がっていました。朝の七時には路面はほぼ乾いていた。なのに、ランドセルがあった場所だけ、まだ濡れていました。
他の場所には水たまりがありませんでした。
その一箇所だけが、濡れていました。
おかしいと思いました。でも何がおかしいのか、うまく言えなかった。
ランドセルが置いてあった場所だから、その下に水が溜まっていたのかもしれない。そういう解釈もできます。
でも私には、その水たまりがランドセルの跡に見えました。
もっと正確に言うと。
ランドセルがそこに染み込んだように見えました。
意味がわからないですよね。私も意味がわかりません。でもその時、そう感じました。
その日から、踏切を通るたびに確認するようになりました。
何かが落ちていないか。誰かがいないか。
何もありませんでした。
二週間ほどは何もありませんでした。
変化があったのは、九月に入ってからです。
残業で遅くなった夜、また踏切の前で立ち止まりました。
今度はランドセルではありませんでした。
踏切の向こう側に、人が立っていました。
街灯の外、暗い場所に。こちらを向いているのか、向こうを向いているのか、わかりませんでした。ただ立っていました。
私は立ち止まって、見ていました。
向こうも動きませんでした。
一分ほど、お互い動かないままでいました。
それから私はスマートフォンのライトを点けました。
誰もいませんでした。
ライトを消しました。
また見ました。
誰もいませんでした。
その夜は帰宅してから眠れませんでした。
気のせいだと思いました。暗い場所に人の形を見てしまう、そういう錯覚はよくあることです。
でも翌朝、踏切を通ったとき。
また、水たまりが残っていました。
同じ場所に。
雨は降っていませんでした。
──── 第1話、終わり ────
次回は、私がこの踏切について調べ始めた話を書きます。
近所の人に聞いて、初めてあの踏切の「名前」を知りました。
その名前の意味を調べたとき、少し後悔しました。
【作者より】
この連載はClaude(AI)を使って生成した作品です(AI支援作品)。
「Claudeで書く恐怖の技法 ホラー創作プロンプト設計書」
こういう体験談形式の怪談の書き方を解説したプロンプト集をBOOTHで販売しています。
→ https://yami-craft.booth.pm/items/8030534