【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩 作:まだら模様
緊張はないと堂々としているのが、ゲイビデオ撮影時の堂々としている演技のような白身の姿を想起させますね…
感想、評価付与をくださると野獣先輩が歓喜の咆哮をあげてくれます!
余裕のある貫禄の様な野獣先輩を良いと思ったら是非いただけますと嬉しいです!
キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性があります。ご注意ください。
試験会場は巨大だった。
「体育博覧会」の会場を借り切った広大な施設だ。屋内型の競技場を改造した空間で、廊下と広場と障害物が入り組んでいる。天井が高い。採光窓から朝の光が入って、空間全体が白く明るかった。こういう場所で戦うのが好きだ。見通しがいい。索敵が生きる。
受付で番号を受け取った。胸と腰と背中に的がついた専用スーツを着た。的はセンサー内蔵で、一定以上の衝撃を受けると赤くなる仕組みらしい。的を二か所壊されたら失格——つまり、一か所は壊させてもいい。どこを見せてどこを守るか、という計算が生まれる。
他校の生徒が集まっていた。士傑、傑物、勇——全国のヒーロー科だ。廊下に生徒が並んでいるだけで、空気が変わった。緊張ではない。密度だ。個性を持った人間がこれだけ集まると、空間の気配が重くなる。
その全員の視線が——雄英A組に向いた。
じっと見ている。品定めしている。「あれが雄英か」という目だ。
緑谷が「見られてる……!」と縮こまった。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
索敵を展開した。会場全体に197人の受験者がいた。すでに動いている者、分析している者、こちらをじっと見ている者。気配の「質」が全員違う。百年以上生きてきて、気配だけで大体の戦い方が分かるようになった。
その中に——こちらを見ながらノートに何かを書いている人物がいた。傑物学園の生徒だ。細身で眼鏡をかけている。書くのが速い。ペンが止まらない。こちらの動き一つひとつを記録している。
「うわあ……これはまずいですね。なんだこれは……」
「野獣先輩さんが「まずい」って言ってる!! 相当やばい相手いますか!?」
緑谷が飛びついてきた。
「多少はね?」
「多少!! 把握します!!」
緑谷が眼鏡男の方向を見た。眼鏡男が気づいて視線を落とした。
試験開始前の待機エリアで、野獣先輩は全受験者の「気配の質」をもう一段深く分析した。
「センセンシャル!」
索敵範囲が一気に伸びた。頭の奥がじわりと痛んだが、全員の位置と動向が鮮明になった。通常の索敵では「人がいる、動いている」程度の情報しか得られないが、センセンシャル使用後は「どちらに意識が向いているか」「個性を構えているか」まで把握できた気がした。
「野獣先輩さん、今何か使いましたか!? 急に……全員の気配が、引いた感じがしました」
「ありますあります」
「索敵範囲が広がった——! 敵も感知したんですか!?」
「当たり前だよなぁ?」
緑谷が手帳に素早く書いた。「センセンシャル……索敵強化系……!! 試験前にこれを使えるなら——」
「大会近いからね、しょうがないね」
「試験を大会として考えてるんですね!!」
試験官が中央に立った。背が高い、プロヒーローらしき人物だ。
「第一部の試験を開始します。各自の的を3か所以上破損された時点で失格。上位100人になった時点で終了です。制限時間は三十分。——用意、始め!!」
会場が爆発的に動いた。
百九十七人が一斉に動いた。どよめきと足音と個性の発動音が一瞬で会場を埋めた。爆豪が「行くぞ!!」と叫んだ声が聞こえた。
野獣先輩は動かなかった。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
索敵全開。全受験者の位置が把握できた。
五秒後——雄英に向かって動いている集団が四つあった。完全に包囲網を組んでいる。相澤の言った通りだ。
野獣先輩だけに向かってくる集団もある。三人。
その先頭が——傑物学園の眼鏡男だった。
眼鏡男がこちらに向かいながら、まだノートに何かを書いている。走りながら書いている。情報処理系か分析系だろう。こういうタイプはパターンを読む。パターンを崩すのが先決だ。
「イキますよ〜イキますよ〜」
静かに宣言した。
三人が「え——何を言った今?」と一瞬止まった。思考が乱れた。眼鏡男のペンが止まった。
「やりますねぇ!!」
続けて言った。そちらに向かって「称賛」の方向で使った——眼鏡男が「褒められた? 罠か? 分析中に称賛は想定外の行動だ……」と処理し始めた。個性の準備動作が半秒遅れた。
「イキますよ〜」の威力ボーナスが「やりますねぇ!!」に乗っていた——思考の乱れが通常より深くなった。眼鏡男が「いや待て……」と呟いた。
「見とけよ見とけよ~」
三人の視線が一瞬、野獣先輩に固定された。「見ている」状態を固定した。
「こ↑こ→!」
三人の中の右端を斜め上方向に弾き飛ばした。天井に激突。
「こ→←こ!」
残り二人を左右から圧縮した。二人が自分たちの的を互いに当て合った。同時脱落。
三人が実質的に戦闘不能。開始から十二秒。
「……今何が起きた?」
周囲の受験者がざわついた。
「「こ↑こ→」と「こ→←こ」、矢印が違う……? あいつの語録、矢印の組み合わせで効果が変わるのか……?」
眼鏡男が落ちながらノートに何か書こうとしていたが、天井に激突して気絶した。ペンだけが床に落ちた。
緑谷が四人に囲まれていた。
緑谷の個性は強いが、「四方同時」は難しい。四人が分散して緑谷の射程外から追い詰めようとしている。よく研究されている。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
緑谷の周囲の四人の位置が細かく把握できた。一人が後ろに回っている。緑谷はまだ気づいていない。
「やべぇよやべぇよ」
緑谷の周囲の四人に危機感が伝播した——四人が「何かが来る」という感覚に一瞬だけ注意を外に向けた。後ろに回っていた一人も、思わず振り返った。
緑谷が「!」と気づいて動いた。後ろの一人が目に入った。「デトロイトスマッシュ!」
一人の的を弾いた。
「野獣先輩さん!!」
「当たり前だよなぁ?」
「ありがとうございます!!」
緑谷が残り三人に向き直った。目が変わっていた。追い詰められた目ではなく、前に向いた目だ。野獣先輩は距離を取りながら索敵を維持した。
爆豪は単独で動いていた。圧巻だった。片端から的を弾いていく。爆破の軌道が読めない。でも——後ろから来ていた一人を見落としていた。爆豪が前に集中しすぎている。
「緊張すると力出ないからね」
後ろから来ていた受験者に向けた。その受験者の個性出力が一瞬落ちた。爆豪の背中に近づいた瞬間、体が固まった。
「こ←こ↓!」
受験者を左にそらして地面に叩き落とした。
爆豪が振り返った。落ちた受験者を見た。一秒で誰がやったか分かったのだろう——野獣先輩を見た。
「……助けた気か」
「ないです」
「腹立つ言い方だな!!」
爆豪が前に向き直って爆破を放った。でも、野獣先輩への視線が一秒だけ続いた。
試験の中盤、上鳴が三人に囲まれていた。
「個性を封じた」状態にされている——電撃が使えなくなっていた。上鳴が構えながら「くそ……個性なしで三人……」と呟いていた。
電撃が使えない上鳴は体術だけになる。三対一では厳しい。
「やべぇよやべぇよ」
上鳴の周囲の三人に危機感を伝播した。三人が「何かが来る」と周囲を見た。うち一人が後ろを確認するために体を半回転させた。
「イキますよ〜イキますよ〜」
宣言した。三人が「また来る!!」と身構えた。
上鳴が「え——来る!! 野獣先輩さん!!」と叫んだ。
「こ→←こ!」
上鳴を「圧縮」ではなく「挟みながら横に引っ張る」方向で発動した——上鳴が圧縮エリアの外に一気に引っ張られて脱出できた。三人の拘束の外に出た。
「野獣先輩さん!! 助かりました!!」
「ありますあります」
「「イキますよ〜」の後に「こ→←こ」で引っ張り脱出——これ約束通りの連携っすよ!!」
「当たり前だよなぁ?」
「当たり前っすね!!」
上鳴が個性の封じを自力で解除しながら反撃に転じた。「イキますよ〜イキますよ〜!!」と自分で宣言してから電撃を放った。さっきより太い電撃が三人の足元を走った。全員が転倒した。
試験の中盤、会場の中央に巨大化した受験者が現れた。士傑高校の生徒だ。身長が五メートルを超えている。個性「拡大」だろうか——手の届く範囲が広い。一振りで三人まとめて吹き飛ばせる。
切島が硬化で受け止めようとしていた。切島の硬化は硬い。でも体重差がある。押されていた。
「野獣先輩さん!!」
「じゃけん行きましょうね~」
「一緒に戦うってことっすね!!」
野獣先輩は巨大化した生徒の足元に向かって走り始めた。
「菅野美穂」
存在を曖昧にしながら近づいた。巨大化した生徒が「あれ……あいつどこ行った?」と周囲を見た。足元まで来ているのに気づかない。
「へえ~、すっごい大きい…」
巨大化した生徒に向けて言った——「実際より大きく見える」効果が発動した。切島と周囲の受験者数人が一瞬、体を引いた。でもそれでいい。注意が全員、巨大化した生徒に向いた。
野獣先輩は誰にも見られていない。足元から背後に回った。
「こ↑↑こ!!」
五メートルの体を真上に向けて一気に射出した。天井に激突した。会場に轟音が響いた。巨大化状態の体重で的が三つ同時に損傷した。
試験官が「……有効」と記録した。
「何した今!! 野獣先輩さん何した!!」
「多少はね?」
「多少どころじゃないっすよ!! 五メートルの人間が天井に激突してる!!」
切島が「助かった!!」と叫んだ。
巨大化した生徒が「……強い」と言いながら落ちていった。
一次試験を通過した。次は救助試験だ。
試験会場が切り替わった。一部崩壊した状態を模した複合災害シミュレーション施設だ。煙が出ている。配管が破裂した音がした。被災者役のスタッフが各所に配置されている。
野獣先輩は施設に入った瞬間、索敵を展開した。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
被災者の位置が全部入ってくる。煙の向こうで動けなくなっている。建物の二階に孤立している。瓦礫の下にいる。パニック状態で叫んでいる。
全部分かる。順番を決めた。動けない人間から先に動く。
「見とけよ見とけよ~」
煙の中で動けなくなっている被災者に向けた——野獣先輩の方に視線が集まった。存在を認識してもらえた。「こちらにいます」というサインになった。被災者が「あそこに人が!!」と手を伸ばした。
「こ↑こ↓!」
煙の外の安全な場所にワープさせた。試験官が記録した。
次——建物の二階に孤立した被災者がいた。一階が崩落している。上から下りる手段がない。
「ホラホラホラホラ!」
自身の動きを加速させた。壁面を走り上がって二階に入った。
「入って、どうぞ」
被災者が「……どこに入るんですか?」と困惑した。
「こ↑こ↓!」
被災者を安全な一階にワープさせた。自分も飛び降りた。
試験官が記録した。
次——瓦礫の下に一人いた。身動きが取れている。怪我はないようだ。ただ瓦礫が重くて自力では出られない。
「暴れんなよ…暴れんなよ…」
瓦礫に向けて言った——瓦礫の「動こうとする不安定さ」が抑制された。崩れなくなった。
「オイル塗ろっか?」
瓦礫と被災者の接触面に向けて言った。摩擦が消えた。するりと出られた。
被災者が「……いつの間に出られた?」と不思議そうな顔をしていた。
試験官が記録した。
一番難しかったのはパニック状態の被災者だった。
建物の端で膝を抱えて座っていた。スタッフが「来ないで!! 触らないで!! 怖い!!」と叫んでいた。他の受験者が「どうすれば……」と距離を取っていた。
野獣先輩が前に出た。
「ないです」
被災者が「え?」と止まった。
「大丈夫大丈夫、ヘーキヘーキ」
被災者の声量が、少し下がった。肩の力が抜けた気がした。
「しかし、修行やってます。いつの日か世界を救うと信じて。」
被災者が——笑った。演技が崩れた。
「……ちょっと待って、何言ってるの」
「お前さぁ…」
「あの、私被災者役なんですけど……なんか変なの、あなた。さっきから何言ってるのか全然わからないんだけど……」
「ありますあります」
「……何が?」
「多少はね?」
「……なんか、落ち着いてきた。気がする。おかしいな。なんで落ち着いてるんだろ」
被災者が手を伸ばした。野獣先輩がその手を取った。
「俺も後から洗ってくれよな~」
「……え?」
「いいゾ〜これ」
「……もう、行きましょうか。何言ってるか分からないけど、なんか信頼できる感じがする」
被災者が立ち上がった。
試験官が「……有効」と記録した。それから小声で「……面白い対処だった」と言った。
全試験が終了した。
A組——ほぼ全員合格。数名が惜しくも届かなかったが、大半が通過した。
野獣先輩の番号も——あった。
「ありますあります」
自分の番号を見ながら言った。
「野獣先輩さん合格!!!」
上鳴が飛びついてきた。肩を掴まれた。手が大きい。力がある。肩越しに顔が近——
……何もない。
「当たり前だよなぁ?」
「当たり前っすね!! やった!! 連携もうまくいったし最高っすよ!!」
上鳴が笑った。野獣先輩はその顔を見た。
悪くない。本当に悪くない。
緑谷が「合格できた……!! 野獣先輩さんのおかげで助かりました!!」と言った。
「当たり前だよなぁ?」
「当たり前って言ってくれるのが一番うれしいっす!!」
切島が涙目で「俺も合格した!! よかった!!」と叫んでいた。爆豪が「うるせえ」と言ったが、自分の番号を確認してから小さく「……あった」と言っていた。
試験終了後、試験官の一人が声をかけてきた。
中年の男性だった。眼鏡をかけている。資料を持っている。整った顔立ちだが、なぜかどこか落ち着かない様子だった。
「810くん……だったかな。採点の参考に少し聞いてもいいかね」
「ないです」
「ある、という意味でいいかな」
「当たり前だよなぁ?」
試験官がメモを取りながら言った。
「救助訓練でパニック状態の被災者に言った——「世界を救うと信じて」という言葉。あれはどういう意図で言ったのかね? プロとして市民に語りかける際の言語化として、どう考えているか知りたい」
「しかし、修行やってます。いつの日か世界を救うと信じて。」
試験官のメモを取る手が——止まった。
「……それは」
試験官の目が、かすかに開いた。
「……もしかして、それは——古いコンテンツの語録か?」
「はっきりわかんだね」
試験官が周囲を確認した。誰も聞いていない。それから小声で言った。
「……私は100年以上前のコンテンツとして、歴史的な観点から、その、一度だけ接触したことがあって——」
「いいゾ〜これ」
「違う! そういう意味ではなくて!!」
「やりますねぇ!!」
「やっていない!! いや、やったとしても——その、学術的な——!!」
「王道を征く」
試験官が顔を赤くした。眼鏡を直した。直した眼鏡がまたずれた。
「……この会話は公式記録には残さないでくれるか」
「ないです」
「ないですよね!!」
試験官が走って去っていった。
野獣先輩は後ろ姿を見た。
「やったぜ。」
立ち去る直前、試験官が小さく——本当に小さく——「……センセンシャル……」と呟いた。
野獣先輩が止まった。
「ファッ!?」
試験官は振り返らなかった。早歩きのまま雑踏に消えていった。
「センセンシャル」を知っている。
今日だけで二語録に反応した——「修行やってます」と「センセンシャル」。どちらも深い知識がないと分からない語録だ。かなり「深い」方のやつだ。
「やりますねぇ!!」
これで確認済み隠れ淫夢厨が、また一人増えた。
帰りのバスに乗った。
疲れていた。でもいい疲れだった。体が動いた後の、重くて温かい疲れだ。
合格した生徒は晴れやかな顔をしていた。惜しくも届かなかった生徒は悔しそうだったが、誰も下を向いていなかった。
野獣先輩は窓の外を見た。
仮免を取った。できることが増えた。次はインターンだ。プロヒーローの現場に入れる。本物の現場が、近づいてきた。
「大会近いからね、しょうがないね」
「まだ大会って言ってる!!」
上鳴が言った。
「次の大会のことっすか!! 野獣先輩さんにとってはずっと大会なんすね! インターンも大会!?」
「当たり前だよなぁ?」
「当たり前なんだ!!」
上鳴が笑った。バスの中の他の生徒も笑った。切島が「野獣先輩さんって、なんか全部前向きに見えますよね!!」と言った。
「ありますあります」
「あるんだ!!」
野獣先輩は窓の外を見た。夕日が沈んでいた。街が橙色に染まっていた。
「王道を征く」
上鳴が「それ、かっこいいっすよね」と言った。
砂藤が「……そうだな」と静かに言った。
爆豪は何も言わなかったが、窓の外を見ている横顔が少しだけ和らいでいた。
夕日がバスの窓を染めた。
野獣先輩にとってはどれも大会になってしまう…
学園ものだからあながち間違いはないのかもしれませんが…
語録だからね…仕方ないネ
(淫夢)ヒーローオールスターズ番外編ssも評価付与50を超えたら書いたり書かなかったり…?します!是非感想と評価付与をお待ちしておりナス!