【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩   作:まだら模様

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夜飯…って…暴力ですよね…
腹減ったら食べたくなりますよ〜まったくー

キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性があります。
ご注意ください。

感想と評価付与をいただけたら野獣先輩が一緒にラーメン屋の屋台に行ってくれるらしいです!
クォレハ凄い…


第18話「夜中腹減んないすか?→OC(寮の深夜飯テロ回)」

 

 

 消灯から二時間が経っていた。

 

 ガンガン寮の廊下は暗かった。非常灯の緑色だけが床を照らしている。全員が部屋に入って、寮は静かになっていた。

 

 はずだった。

 

 野獣先輩は天井を見ていた。

 

 腹が減っていた。

 

 銭湯の帰りにコンビニでアイスを食べた。あれから三時間。アイスでは足りなかった。百年以上生きてきて、体の要求は正直だ。腹が減ったら減った、と体が言う。

 

「夜中腹減んないすか?」

 

 独り言が出た。

 

 部屋の壁を挟んだ向こうで——動く気配がした。索敵が言っている。隣の部屋——切島の部屋で、気配が動いた。ベッドから出た気配だ。

 

 廊下に出た。

 

 切島も廊下に出てきた。目が半開きだった。髪がぐちゃぐちゃになっている。パーカーを着ていた。

 

「野獣先輩さん……やっぱり腹減りましたか」

 

「ありますあります」

 

「俺も!! もう限界っす!! キッチン行きましょう!!」

 

 切島が小声で叫んだ。

 

 

 

 

 

 一階のキッチンに向かった。

 

 廊下を歩いていると——途中で上鳴の部屋のドアが開いた。

 

「あっ!! 俺も!!」

 

「声でかい!!」

 

「ごめんっす!!」

 

 上鳴がパジャマのまま飛び出してきた。黄色のパジャマだった。髪が爆発していた。普段から爆発しているが、今は特に爆発していた。

 

 三人で一階に降りた。キッチンの電気をつけた。

 

「夜中腹減んないすか?」

 

「減ってます!!」

 

 切島と上鳴が同時に言った。

 

 冷蔵庫を開けた。卵、牛乳、残り物のご飯、麦茶、誰かの名前が書いてある豆腐。冷凍庫には冷凍うどんが二袋あった。

 

「冷凍うどんしかないっすね……」

 

「レンチンしますか……」

 

「じゃけん行きましょうね~」

 

「作るんですか!? 何を!?」

 

 野獣先輩は冷蔵庫の中を確認した。卵、ご飯、残り物の野菜。作れる。フライパンを出した。

 

「野獣先輩さん、料理できるんっすか!?」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「百年以上生きてたら当たり前か!!」

 

 卵を割った。ご飯を出した。

 

 その時——廊下から足音がした。キッチンのドアが開いた。

 

 爆豪だった。

 

 半袖のTシャツ。目が完全に覚めている。腕を組んでいる。冷蔵庫を一瞥した。それから野獣先輩を一瞥した。

 

「……どけ」

 

「ないです」

 

「フライパン貸せ」

 

「ありますあります」

 

 爆豪がフライパンを受け取った。野獣先輩が割りかけていた卵を横目で確認した。それから冷蔵庫を開けて、自分で中を確認し始めた。

 

「お前らは座ってろ」

 

「え!? 爆豪くんが作ってくれるんっすか!?」

 

「うるせえ。座れって言った」

 

 切島と上鳴が慌ててダイニングの椅子に座った。

 

 

 

 

 爆豪が冷蔵庫から出したのは——卵、ご飯、長ネギ、残り物の豚肉、醤油、ごま油だった。

 

 手際がよかった。

 

 包丁の音が静かに鳴った。ネギを切っている。刻む速度が速い。一定の間隔で刻んでいる。爆豪の手が止まらない。フライパンにごま油を引いた。豚肉を入れた。火加減を見た。適切なタイミングでご飯を入れた。崩しながら炒めた。卵を入れた。混ぜた。醤油を回し入れた。ネギを入れた。

 

 炒飯の匂いが漂い始めた。

 

「ああ^~いいっすね^~」

 

 野獣先輩が言った。

 

「黙ってろ」

 

「いいゾ〜これ」

 

「うるせえって言ってんだろ!!」

 

 爆豪が怒鳴った。でも手が止まらなかった。

 

 上鳴が「……爆豪くんって料理できるんすね……」と呆然と言った。

 

「当たり前だろ。飯は自分で作れて当然だ」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「野獣先輩も黙ってろ!!」

 

 三分後、皿が三枚テーブルに置かれた。炒飯だった。ネギと卵の炒飯。匂いが本格的だった。ごま油の香りが立っている。

 

「……うっまそ……」

 

 上鳴が囁いた。

 

「食え」

 

「いただきます!!」

 

 切島が手を合わせた。食べた。

 

「うっま!!!!」

 

「声でかい!!」

 

「でもうっまいっす!! 爆豪くんこれ普通にプロの炒飯っすよ!?」

 

「うるせえ」

 

「やりますねぇ!!」

 

「野獣先輩さんまで!!」

 

 野獣先輩も食べた。うまかった。シンプルだが米の一粒一粒がほぐれていて、火加減が正確だ。百年以上色々なものを食べてきたが——これは普通にうまい。

 

「いいゾ〜これ」

 

「……食えてるなら黙ってろ」

 

 爆豪が自分の分も食べ始めた。

 

 

 

 

 

 炒飯の匂いが漂ったのが原因だったのか——階段から足音がした。

 

 砂藤が現れた。

 

「……なんか匂いがした」

 

「ありますあります」

 

「炒飯か。——一人前あるか」

 

「ないです」

 

「ないのか」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「何が当たり前なんだ……」

 

 爆豪が無言で立ち上がった。フライパンをまた出した。

 

「作るのか!? 爆豪くん!!」

 

「うるせえ」

 

 砂藤の分も作り始めた。

 

 さらに足音がした。緑谷だった。

 

「なんか下が明るくて……あっ、炒飯!?」

 

「じゃけん行きましょうね~」

 

「座っていいですか!?」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「ありがとうございます!!」

 

 爆豪が「人数分言え」と言った。緑谷が「二人分お願いします!!」と言った。「お前と誰だ」と爆豪が聞いた。その時階段から麗日が降りてきた。「……匂いがして目が覚めました」と言った。

 

「やりますねぇ!!」

 

「二人分作れ、か。——分かった」

 

 爆豪が炒飯を量産し始めた。深夜のキッチンが賑やかになった。

 

 

 

 

 

 全員が食べ終わった頃、上鳴が冷蔵庫を開けた。奥の方に缶が並んでいた。

 

「ビール!ビール!」

 

 全員が振り返った。

 

「上鳴、それ相澤先生の!!」

 

「違います!! 俺が買ったやつ!! ノンアルっすよ!! 未成年なんで!!」

 

「ノンアル!! よかった!!」

 

 ノンアルビールが全員に配られた。

 

「ビール!ビール!」

 

 野獣先輩が言った。

 

「乾杯の合図ですか!? じゃあ——乾杯!!」

 

「乾杯!!」

 

 缶が触れ合った。深夜のキッチンで、A組の面々がノンアルビールで乾杯した。

 

「ビール!ビール!」

 

「野獣先輩さん気に入りましたね!!」

 

「ありますあります」

 

「あるんだ!!」

 

 砂藤が「野獣先輩さんってノンアルと本物の区別つくんっすか?」と聞いた。

 

「多少はね?」

 

「多少わかる!? 百年以上生きてたらわかるか!!」

 

 爆豪が「うるせえ」と言いながらノンアルを飲んでいた。腕を組みながら飲んでいた。

 

「ビール!ビール!」

 

「野獣先輩さんまだ言ってる!!」

 

 

 

 

 

 深夜一時を回った頃——玄関のチャイムが鳴った。

 

 全員が止まった。

 

「……だれ?」

 

「こんな時間に……」

 

 野獣先輩は索敵を展開した。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 玄関の外に一人。細身。長身。気配が鋭い。

 

「あっ(察し)」

 

「誰ですか!?」

 

 緑谷が玄関に向かった。ドアを開けた。

 

 サー・ナイトアイが立っていた。普段着だった。ジャケットを羽織っている。手に書類を持っている。眼鏡の奥の目が鋭い。

 

「……810くんがここにいると分かった。業務日報がまだ提出されていない」

 

「ファッ!?」

 

「日報は毎日提出するものだ」

 

 ナイトアイがキッチンを見た。炒飯の匂いが残っている。A組の面々が深夜のキッチンに集まっている。ノンアルビールが並んでいる。

 

「……何をしているのかね」

 

「夜中腹減んないすか?」

 

「腹は減っていない。——日報はどうした」

 

「ないです」

 

「ある。今日の分がない。——提出しなさい」

 

 ナイトアイがキッチンのテーブルに書類を置いた。業務日報の用紙だった。ペンも置いた。

 

「今ここで書きなさい」

 

「やりますねぇ!!」

 

「笑いどころではない」

 

 野獣先輩は業務日報を手に取った。ペンを走らせた。

 

 一行目:「異常なし」

 二行目:「銭湯」

 三行目:「ビール!ビール!」

 

 ナイトアイが覗き込んだ。

 

「……「ビール!ビール!」は業務報告ではない」

 

「ありますあります」

 

「ない。——書き直しなさい」

 

 ナイトアイがポケットからオールマイトのスタンプを出した。深夜にスタンプを持ち歩いていた。

 

「これが押せるように書き直しなさい」

 

「いいゾ〜これ」

 

「スタンプが「いいゾ〜これ」なのかね」

 

「多少はね?」

 

「多少……か。——書き直しなさい」

 

 書き直した日報に目を通した。「異常なし」「パトロール実施」「索敵範囲の確認」。ナイトアイが眼鏡を直した。

 

「……合格だ」

 

 スタンプを押した。オールマイトの笑顔が業務日報に捺された。

 

「やったぜ。」

 

「笑いどころではない。——以上だ」

 

 

 

 

 

 ナイトアイが立ち上がった。帰ろうとした。

 

 その時——切島が「あの、ナイトアイさん、炒飯食べますか? 残ってますよ!!」と言った。

 

 ナイトアイが止まった。

 

「……深夜に炒飯を食べる習慣はない」

 

「じゃけん行きましょうね~」

 

「どこへ行くのかね」

 

「ビール!ビール!」

 

「……ノンアルコールならまあ」

 

 ナイトアイが椅子に座った。

 

 上鳴が「ナイトアイさんが座った!!」と小声で叫んだ。緑谷が「しーっ!!」と止めた。

 

 爆豪が無言でフライパンを出した。

 

「……作るのかね」

 

「うるせえ」

 

 爆豪がナイトアイの分の炒飯を作り始めた。ナイトアイがそれを黙って見ていた。

 

 炒飯が置かれた。

 

「……いただきます」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 ナイトアイが食べた。しばらく黙って食べた。

 

「……うまいな」

 

 爆豪が「当たり前だ」と言った。

 

「やりますねぇ!!」

 

「……料理をやっているのかね、爆豪くんは」

 

「昔から。——文句あるか」

 

「ない。——感心した」

 

 爆豪が「うるせえ」と言った。

 

 ナイトアイがノンアルビールを受け取った。飲んだ。

 

「ビール!ビール!」

 

「……ノンアルコールだな」

 

「ありますあります」

 

「ある、か。——まあいい」

 

 ナイトアイが炒飯を食べながらキッチンを見回した。A組の面々。深夜。炒飯。ノンアル。語録。

 

「……こういう時間が、君たちにとって重要なのだな」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「当たり前……か」

 

 ナイトアイが少し止まった。眼鏡の奥の目が、少し和らいだ。

 

「……私が現役で動いていた頃は、こういう時間を作らなかった。業務が全てだった」

 

「ないです」

 

「……よくない、ということかね」

 

「多少はね?」

 

「多少よくない……か」

 

 ナイトアイが炒飯を食べ終えた。箸を置いた。

 

「……うまかった。——爆豪くん、ありがとう」

 

「……別に」

 

 爆豪が目を逸らした。

 

「ビール!ビール!」

 

 ナイトアイが「ノンアルコールだ」と言いながらもう一口飲んだ。

 

 

 

 

 

 ナイトアイが帰る準備をした。ジャケットを直した。書類を取った。

 

「——以上だ。日報は明日も忘れずに」

 

「はっきりわかんだね」

 

「分かったなら——」

 

 ナイトアイがドアに向かった。廊下に出た。

 

 全員が見ていた。

 

 ナイトアイが、廊下の暗がりの中で——小さな声で言った。

 

「……夜中腹減んないすか?」

 

「ファッ!?」

 

「聞こえていない」

 

「聞こえてました!!」

 

 上鳴が叫んだ。

 

「聞こえていない!! 今夜のことは全て聞こえていない!!」

 

 ナイトアイが早足で玄関に向かった。

 

「やったぜ。」

 

「聞こえている!! 聞こえているが——今夜のことは公式記録には残さないでくれ!!」

 

 玄関のドアが閉まった。

 

 キッチンに沈黙が来た。

 

 それから切島が「……ナイトアイさん、語録言った!!!」と叫んだ。

 

「言った!!!」

 

「「夜中腹減んないすか?」って言った!!!」

 

「ありますあります」

 

「あるんですよ!! 確かにありましたよ!!」

 

 爆豪が「うるせえ」と言いながら、口の端が少し上がっていた。

 

 

 

 

 

 キッチンを片付けた。皿を洗った。フライパンを洗った。テーブルを拭いた。ノンアルの缶をゴミ箱に入れた。

 

 全員が少し眠そうになってきた。炒飯を食べてノンアルを飲んで、体が温まった。

 

「じゃあ、おやすみっす!!」

 

「おやすみ!!」

 

 切島と上鳴が二階に上がっていった。

 

 砂藤が「……美味かった、爆豪」と言った。爆豪が「うるせえ」と言った。でも口の端が少し上がっていた。

 

 緑谷と麗日も「おやすみなさい」と言って上がっていった。

 

 爆豪が最後に立ち上がった。電気を消す前に振り返った。

 

「……腹が減ったら言え。次は丼にする」

 

「やりますねぇ!!」

 

「黙れ」

 

 電気が消えた。

 

 廊下の非常灯だけが、また緑色に光っていた。

 

 野獣先輩は暗いキッチンに一人立った。窓の外は夜だった。月が出ていた。

 

「夜中腹減んないすか?」

 

 独り言が出た。でも今は、もう減っていない。

 

「ありますあります」

 

 それだけ言って、部屋に戻った。

 

 

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