【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩   作:まだら模様

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キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性があります。
ご注意ください。

ランキング回です。

評価付与、感想は野獣先輩からのやりますねぇ!の声援がプレゼントされます!


第19話「見とけよ見とけよ〜(ヒーロービルボードチャートJP)」

 

 

 朝のHRが始まる前に、上鳴が騒いでいた。

 

 スマホを全員に見せながら走り回っていた。

 

「野獣先輩さん!! これ見ました!? ビルボードチャート!!」

 

「ありますあります」

 

「知ってたんだ!! でも見てくださいよこれ!!」

 

 上鳴がスマホを差し出した。

 

 画面には「ヒーロービルボードチャートJP・今年度上半期速報」というページが開いていた。

 

 1位:エンデヴァー。2位:ホークス。3位:ベストジーニスト——上位はいつもの顔ぶれだった。

 

 その下に、見慣れない欄があった。

 

 **「番外・特別枠:810(ハチイチゼロ)/雄英高校1年A組」**

 

 コメントが添えてあった。「個性の性質上、通常ランキング基準での評価が困難なため特別枠として掲載。実戦データ・市民評価・プロヒーロー推薦票の三軸において基準値を超過」

 

「載ってる!! 野獣先輩さんが載ってる!!」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「当たり前なんだ!! 自覚があるんだ!!」

 

 切島が「すごい!! 番外枠ってなんだ!!」と覗き込んだ。砂藤が「……ランキング外だが評価はされている、ということか」と言った。

 

 緑谷がスマホを受け取って真剣に読み始めた。「「個性の性質上、通常基準での評価が困難」——野獣先輩さんの語録個性って確かに数値化しにくいですよね……転移の距離は測れても、心理干渉の効果範囲とかは……」

 

「これもうわかんねぇな」

 

「野獣先輩さんが自分でわかんないって言ってる!!」

 

「ありますあります」

 

「でもあるんだ!!」

 

 上鳴が「これ、公式コメント何て言ったんすか!?」と聞いた。

 

「ありますあります」

 

「それ言ったの!? それがコメントになったの!?」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「当たり前なんだ!!!」

 

 

 

 正式なランキング発表はその日の夜だった。

 

 共用スペースのテレビにA組の男子が集まった。女子も何人か来た。耳郎がソファの端に座ってスマホをいじりながら「まあ見るか」と言った。

 

 司会者が読み上げ始めた。

 

「第三位、ベストジーニスト!」

 

「おー!!」

 

「第二位、ホークス!」

 

「二年連続二位!!」

 

「第一位、エンデヴァー!」

 

 爆豪が「当然だ」と言った。

 

 それから司会者が「今年度より設置された特別枠のご紹介です」と言った。

 

 画面に「番外・特別枠:810」と表示された。

 

 A組が全員止まった。

 

 司会者が続けた。「雄英高校1年生。インターンシップ中にも関わらず複数のプロから推薦票を獲得。個性の性質上通常ランキング基準では評価困難なため、特別枠での掲載となりました。なお本人のコメントは——」

 

 画面にテロップが出た。

 

 「ありますあります」

 

「それコメントになってんの!!!」

 

「「ありますあります」でインタビューに答えたの!?」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「当たり前なんだ!!!」

 

 上鳴が床を転げた。切島が「すごい!! すごいっすよ野獣先輩さん!!」と叫んだ。砂藤が「……「ありますあります」が公式コメントになるとは」と言いながら少し笑った。

 

「ン~いい時には結構いくね」

 

「今日調子いいんですか!? 番外枠に入ったのが嬉しいんですか!?」

 

「多少はね?」

 

「多少嬉しい!!」

 

 爆豪だけが黙っていた。テレビを見ていた。

 

「……番外でも枠に入ったか」

 

「やりますねぇ!!」

 

「うるせえ」

 

 爆豪が自分の部屋に帰っていった。でも——帰る前に一秒だけ野獣先輩を見た。その目が何かを言っていた。

 

 

 

 

 翌朝、相澤が野獣先輩を呼んだ。

 

 職員室の隅だった。相澤がいつも通りの眠そうな目で、紙を一枚差し出した。

 

「取材申請が来ている。三件だ」

 

「ファッ!?」

 

「ランキング掲載の影響だ。ヒーロー系メディアが「番外枠の高校生」に興味を持った。——断るかどうかはお前が決めていい。ただし受ける場合は一件だけにしろ。学業に支障が出る」

 

「多少はね?」

 

「多少受けてもいい、か。——一件選べ」

 

 野獣先輩は三件の取材申請書を見た。

 

 大手ヒーロー雑誌。ウェブメディア。それから——「フェザーウィング・エージェンシー広報部」という差出人の一件。

 

「あっ(察し)」

 

「ホークス事務所からの申請だ。個人的な興味らしい」

 

「ありますあります」

 

「受けるか」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 相澤が「……そうか」と言った。

 

「一点だけ言っておく。ホークスはNo.2ヒーローだ。頭の回転が速い。語録で会話しているとすぐにパターンを読もうとする。気をつけろ」

 

「はっきりわかんだね」

 

「分かったなら行け」

 

 相澤が寝袋に向かった。潜りながら小さく「……「ありますあります」が公式コメントか」と呟いた。

 

「やったぜ。」

 

「聞こえていない」

 

 

 

 

 

 取材場所はヒーロー事務所近くのカフェだった。

 

 野獣先輩がカフェの前に着いた。入る前に——索敵を展開した。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 店内に一人。窓際の席。気配が——別格だ。

 

「あっ(察し)」

 

 入る前に分かった。

 

 ドアを開けた。

 

 金髪。赤い羽根が背中から生えている。頬杖をつきながらこちらを見ていた人物が——立ち上がった。

 

「あれ、もう外から分かった? 索敵ってそういう使い方もできるんすね」

 

「お待たせ」

 

「俺が先に来てたんですけど——あっ、「待たせてしまいました」か。語録で謝罪もできるんすね。分析がはかどる」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「当たり前か!!」

 

 ホークスが笑った。目も笑っていた。

 

「座ってください。コーヒーでいいっすか?」

 

「ないです」

 

「ない——あっ、注文はしてあります。「ないです」は「大丈夫です」って意味?」

 

「多少はね?」

 

「多少大丈夫、か。——面白いっすね。語録だけで会話できるって本当なんだ」

 

 

 

 

 

 

 コーヒーが来た。

 

 ホークスが向かいに座った。羽根がソファの背もたれを少し押している。羽根一枚一枚が独立して動いていた。店内の空気の流れを感知しながら、常に周囲を確認している。索敵と同じだ。この人間も常に周りを把握している。

 

「改めて聞きたいんすけど——番外枠に入った時の気持ち、どうっすか?」

 

「見とけよ見とけよ~」

 

 ホークスが少し止まった。「……「見ていろ」ってこと? これからもっとやれるって意味?」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「当たり前か!! 気に入りました。——じゃあ語録個性の説明、できますか? 取材としての質問なんですけど」

 

「これもうわかんねぇな」

 

「わかんない!? 自分でわかんないってこと?」

 

「多少はね?」

 

「多少わかんない、か。——要するに「語録で話せるけど語録を説明する語録がない」ってこと?」

 

「はっきりわかんだね」

 

 ホークスが「なるほど」と言いながらメモを取った。

 

「じゃあ記事にはこう書きます。「語録個性は当人にも全容が不明確。語録を語録で説明することはできない」——これでいいっすか?」

 

「ありますあります」

 

「ある! OK! ——あと一個だけ聞いていいっすか。個人的な興味で」

 

「やりますねぇ!!」

 

「聞いてくれるんだ!! ——索敵の範囲ってどんくらいっすか? 今ここで俺のこと把握できてます?」

 

「ありますあります」

 

「あります、か。——どこまで分かります? 俺の今の体の状態とか」

 

「多少はね?」

 

「多少分かる、か」

 

 ホークスが少し前に乗り出した。

 

「俺の羽根って今何枚あります?」

 

 野獣先輩は指で「3」「6」「8」と順番に立てた。

 

「三百六十八枚」

 

 野獣先輩が頷いた。

 

 ホークスが「……すごいっすね」と言った。さっきまでと少し違う声だった。軽薄さが一枚剥けた。

 

「俺も感知できますけど——羽根の枚数を索敵で当てるのは、俺でもできないっすよ」

 

「ありますあります」

 

「ある、か。——野獣先輩さん、俺はあなたのことを「変な高校生」だと思ってここに来たんですけど」

 

「ないです」

 

「ない——もう変な高校生じゃないってこと?」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 ホークスが「当たり前か」と言いながら笑った。今度はさっきより深い笑いだった。

 

 

 

 

 

 

 カフェの入り口から、別の人間が入ってきた。

 

 カメラを持っている。ヒーロー雑誌の記者だった。ホークスが「ちょっといいっすか、俺の事務所の広報も取材したいって言ってたんで連れてきました」と言った。

 

「やりますねぇ!!」

 

「いい? ありがとうございます!!」

 

 記者が座った。ボイスレコーダーを出した。緊張しているのか、手が少し震えていた。

 

「ちゃんと、ベスト出せるようにね」

 

 記者が「え?」と顔を上げた。「……あっ、なんか急に落ち着いてきた気がする。ありがとうございます」

 

「ありますあります」

 

 記者がボイスレコーダーのボタンを押した。

 

「えっと——810さん、個性について教えていただけますか? 語録から個性を発動するとのことですが、どういう仕組みで」

 

「ホラホラホラホラ!」

 

「え!? 今何か——急に体が軽くなった気がするんですけど!?」

 

「ありますあります」

 

「あります!? 個性の説明をしてもらおうとしたら個性が発動するんですか!?」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「当たり前なんですか!? えっと——では転移の個性があるとのことで、「こ↑こ↓」というのは」

 

「こ↑こ↓!」

 

 記者の手帳が浮いた。上に出て下に落ちた。

 

「うわ!!!」

 

「ありますあります」

 

「見せてくれたんですか!? あの——索敵の方は、どのくらいの範囲で」

 

「センセンシャル!」

 

 記者の目が一瞬、見開いた。「……あっ、なんか急に周りが全部見えた気がする……!?」

 

「多少はね?」

 

「多少……。えっと、語録の種類はどのくらいあるんですか? 全部リストアップすることは」

 

「まーだ時間かかりそうですかね~」

 

「時間がかかる!? それだけあるってことですか!? えっと——では心理干渉の語録というのは具体的にどういう……」

 

「ないです」

 

「ない!?」

 

 ホークスが横でずっと笑いをこらえていた。

 

「えっと——正直に聞きます。語録以外の言葉で説明はできないですか?」

 

「ないです」

 

「ないんですね!! ではこの「ないです」は「できない」という意味で?」

 

「多少はね?」

 

「多少できる!? できるんですか!?」

 

「ありますあります」

 

「あります!? どっちなんですか!!」

 

「はっきりわかんだね」

 

「わかりません!!!」

 

 ホークスがついに笑い出した。声を立てて笑った。「最高っすね」と言った。

 

 記者が「……一応確認なんですが、今日の取材、後日記事になったあとで何か問題はありますか?」と聞いた。

 

「俺も後から洗ってくれよな~」

 

「え?」

 

「遅延型の語録っすね」とホークスが補足した。「後から何かが来るって意味じゃないっすか?」

 

「多少はね?」

 

「……記事が出た後で後日談が来るってこと、ですか……? 楽しみにしておきます!!」

 

 

 

 

 

 記者が帰った後、ホークスと二人になった。

 

 ホークスがコーヒーを飲みながら言った。

 

「一個、本当のことを聞いていいっすか。取材じゃなくて」

 

「ありますあります」

 

「俺の気配——今、索敵でどう感じてます?」

 

 野獣先輩は少し考えた。

 

「うわあ……たまげたなあ」

 

 ホークスが止まった。「……それ、褒めてます?」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 ホークスが「当たり前か」と言った。少し間があった。窓の外を見た。

 

「俺ね、同世代に「別格」って思う人間があんまりいないんですよ。大抵、索敵すると分かっちゃうんで——この人はここまでだな、って。でも」

 

「ありますあります」

 

「野獣先輩さんは——分からないっすね。索敵しても底が見えない。百年以上生きてる人間って、そういう感じなんすか」

 

「大会近いからね、しょうがないね」

 

 ホークスが「大会……」と呟いた。「……なんか、かっこいいっすね。それ」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「当たり前か!!」

 

 ホークスが笑った。今日で一番いい笑いだった。

 

「もう一回会いたいっすね。——インターン終わったら、うちの事務所来てみませんか?」

 

「やりますねぇ!!」

 

「来てくれる!? 歓迎します!! ——俺、楽したいんですよ。本当に。適当にダラダラパトロールして、今日も何もなかったと床に就く。それが最高の生活だと思ってるんですけど」

 

「ないです」

 

「ない——思ってないってこと?」

 

「多少はね?」

 

「多少は思ってる。でも多少だけ、か」

 

 ホークスが窓の外を見た。

 

「ヒーローが暇を持て余す社会——俺が目指してるのはそれなんですよ。でもそのためには今、全速力で動かないといけない。矛盾してるっすよね」

 

「王道を征く」

 

 ホークスが止まった。「……「王道を征く」。——それ、何ですか」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 ホークスがしばらく黙っていた。窓の外の空を見ていた。

 

「……いいっすね。それ」

 

 

 

 

 

 席を立った。カフェの出口でホークスが言った。

 

「最後にもう一個——さっきの「見とけよ見とけよ〜」、あれ脅しじゃなくて「俺はまだここから伸びる」って意味っすよね?」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「当たり前か。——楽しみにしてます、野獣先輩さん」

 

 ホークスが羽根を広げた。カフェの窓が少し揺れた。

 

「俺はホークス、速すぎる男っすから——追いついてくるなら早い方がいいっすよ」

 

「見とけよ見とけよ~」

 

 ホークスが「言ったな!!」と笑いながら空に上がった。

 

 瞬く間に見えなくなった。野獣先輩は空を見上げた。

 

「あっ(察し)」

 

 さっきの気配が、もう遠くにあった。それでも捉えられる。この人間の気配は——強いが、温かい。

 

 

 

 

 

 ナイトアイ事務所に戻った。

 

 ミリオが「どうでした!? ホークスさんと会ったって聞いた!!」と飛びついてきた。

 

「やりますねぇ!!」

 

「よかった!! どんな人でした!?」

 

「うわあ……たまげたなあ」

 

「たまげたんだ!! 野獣先輩がたまげるって相当っすよ!!」

 

 バブルガールが「ホークスさんってすごい方ですよね……」と言いながらお茶を持ってきた。バブルガールの目が少し輝いていた。

 

「野獣先輩さんと話して、ホークスさん何て言ってたっすか?」

 

「ありますあります」

 

「何かあったんですね!! 教えてください!!」

 

「多少はね?」

 

「多少教えてくれる!?」

 

「見とけよ見とけよ~」

 

「見とけってことっすか!! これから何かあるってこと!?」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 ミリオが「当たり前か!!」と言いながら笑った。

 

 バブルガールが少し声を落として「あの——野獣先輩さん、一個聞いてもいいですか?」と言った。

 

「ありますあります」

 

「ホークスさんって——「俺はホークス、速すぎる男」って自己紹介するって聞いてたんですけど、本当にしてました?」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 バブルガールが「しましたか!!」と言った。その声が少し高かった。

 

「やりますねぇ!!」

 

「え——あっ、その、別に、ホークスさんのことが特に好きとかそういうことでは!! プロのヒーローとして、尊敬しているというか!!」

 

「ないです」

 

「あるんですか!? いや、あるって言ってもそれは——!!」

 

 ミリオが「バブルちゃんホークスさん好きっすよね!!」と叫んだ。

 

「ミリオくん!!!」

 

 野獣先輩はバブルガールを見た。顔が赤い。隠れ淫夢厨かホークスファンか、この段階では判別できない。

 

「ガリガリだからねしょうがないね」

 

「どっちの話ですか!? 私の話ですか!? ホークスさんの話ですか!?」

 

「多少はね?」

 

「多少どっちか!!」

 

 

 

 

 

 夕方、ナイトアイに報告した。

 

「取材はどうだったかね」

 

「ありますあります」

 

「うまくいった、か。——ホークスはどういう人物だったか」

 

「うわあ……たまげたなあ」

 

 ナイトアイが眼鏡を直した。「……810くんが「たまげた」と言うのは珍しい。それほどの人物か」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「当たり前……か。——索敵での印象は?」

 

「あっ(察し)」

 

「「別格」と察知した、か」

 

「はっきりわかんだね」

 

「分かった。——ホークスとは今後も接点が出るかもしれない。今日のことを覚えておきなさい」

 

「ありますあります」

 

「ある。——以上だ」

 

 ナイトアイが書類に向かった。少し間があってから「……記事が出たら読ませてくれ」と言った。

 

「ありますあります」

 

「ある。——楽しみにしている」

 

 野獣先輩は部屋を出た。廊下に出て、窓の外を見た。空だった。ホークスが飛んでいった方向だった。

 

「見とけよ見とけよ~」

 

 独り言が出た。速すぎる男が、空のどこかを飛んでいる。

 

「王道を征く」

 

 廊下を歩いた。

 

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