【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩 作:まだら模様
うまく引導を渡せられることを願って、今話投下します。
キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます、
ご注意ください。
評価付与、感想は野獣先輩が迫真の姿で戦ってくれます!
是非声援を届けてあげてください!
地上に出てから、時間が経っていた。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
索敵を維持したまま立っていた。
地下の深部で戦闘が続いている。デクの気配がある。オーバーホールの気配がある。ぶつかり合っている。
轟が野獣先輩の横に立っていた。飯田が医療チームの搬送補助をしていた。麗日は壊理の傍に座っていた。壊理が眠っていた。
「あっ(察し)」
「デクか」と轟が短く言った。
「ありますあります」
「出力が上がってる」
「当たり前だよなぁ?」
轟が「……そうか」と言って地面の方向を見た。それ以上何も言わなかった。
遠くでナイトアイを乗せた救急車のサイレンが響いていた。その音が遠くなるにつれて、野獣先輩の胸の中で何かが沈んでいった。
「しかし、修行やってます。いつの日か世界を救うと信じて。」
独り言が出た。誰に向けたでもない。
ナイトアイに向けたのかもしれない。デクに向けたのかもしれない。自分自身に言い聞かせたのかもしれない。
突然——地面が割れた。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
「やべぇよやべぇよ!!」
轟が「何だ!?」と言って前に出た。
地下から——巨大な何かが出てきた。
オーバーホールだった。ただし、通常の姿ではなかった。複数の人間を分解・再構成して自分に組み込んだ異形の巨体が、地上に現れた。
「うわあ……たまげたなあ」
「……でかい」と轟が言った。「索敵で分かってたろ」
「多少はね?」
「多少じゃない」
麗日が壊理を抱えて後退した。「壊理ちゃん、目を開けないで!」
「飯田!!」と轟が呼んだ。
「来た!!」
飯田が医療テント側から全速力で戻ってきた。「状況確認!! 野獣先輩さん、索敵で教えてください!!」
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
全力で展開した。オーバーホールの巨体の構造が索敵に入ってくる。質量。動作ベクトル。弱点になりうる部位。そして——デクの気配が地下から追ってきている。
「あっ(察し)」
「デクくんが来るか!?」と麗日が言った。壊理を抱えたまま振り返った。
「当たり前だよなぁ?」
「よし!! じゃあ俺たちは時間を稼ぐ!! 野獣先輩さんは壊理ちゃんとの間に立ってください!!」と飯田が言った。
「ありますあります」
野獣先輩は壊理と麗日の前に出た。
オーバーホールの巨体が動いた。轟が氷結を展開した。足元に氷の柱が立った。
「こ↑こ↓」
オーバーホールの右腕の軌道を転移させた。上に出して下方向に落とした。腕が自分の足元に叩きつけられた形になり、巨体の体勢が崩れた。
「シュバルゴ!」
崩れた右腕に拘束を展開した。エネルギーの縄が腕を縛った。一瞬——動きが止まった。
しかしオーバーホールの分解個性が氷を砕いた。縛りも解かれた。
「カスが効かねぇんだよ(無敵)」
オーバーホールが——言い返すように動いた。分解個性の全力展開。周囲の地面が波打った。
「ファッ!?」
「足場が崩れる!!」と飯田が叫んだ。
「こ↑こ↓!」
崩れかけた地面を上に転移させた。麗日と壊理の足場だけを持ち上げた。崩壊の範囲から外に出した。
「野獣先輩!!」と麗日が叫んだ。
「ありますあります」
「私も戦う!!」
「麗日——」と轟が言った。
「壊理ちゃんは飯田くんに!! 私も出る!!」
「分かった。——頼む」
轟が短く言った。
轟が氷。飯田が速度で翻弄。麗日が無重力で巨体を浮かせようとする。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
索敵で全員の位置と動作を把握した。誰が今どこにいて、何をしようとしているか。全部入ってくる。
「おまたせ!アイスティーしかなかったけどいいかな?」
仕込みを展開した。オーバーホールの分解個性が次に向かう方向——そこに遅延トラップを置いた。一見何もない空間。でも次に分解個性が発動した瞬間に効果が炸裂する。
「親方に電話させてもらうね」
地下に向けて言った。語録の威圧効果——「上位存在が来る」という示唆が発動した。
オーバーホールが一瞬だけ動きを止めた。
「ファッ!? 今止まった!?」と麗日が驚いた。
「ありますあります」
「何したの!?」
「多少はね?」
麗日が「多少で止まる!?」と言いながらさらに重力操作をかけた。
しかし——オーバーホールが本気の分解再構成を展開した。
周囲の地面が全て再構成の素材になった。巨大な腕が複数生成された。轟の氷が間に合わない規模になった。飯田がレシプロで回避しながら「速すぎる!! これは——!!」と叫んだ。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
「やべぇよやべぇよ!!」
麗日に向かって腕が来た。
「こ↑こ↓!!」
腕の軌道を上に転移させた。麗日の頭上を通り過ぎた。
「シュバルゴ!!」
もう一本の腕を縛った。でも縛りが解けた。規模が大きすぎる。
「よし、じゃあぶち込んでやるぜ!」
防御を無視した貫通発動——オーバーホールの再構成に干渉した。生成中の腕の構造に直接「ぶち込んだ」。腕の形状が歪んだ。崩れた。
「コ゜ッ!」
一点集中の衝撃波を腕の根元に当てた。腕が千切れた。
「やりますねぇ!!」と麗日が言った。
「ジュージューになるまでやるからな〜」
継続効果を付与した。千切れた部位に蓄積ダメージが乗り続ける。再構成しようとするたびにコストが上がる。
それでも——オーバーホールは止まらなかった。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
索敵で確認した。腕が再生されている。巨体の体積が変わっていない。野獣先輩たちの攻撃は全て「削っては再生される」を繰り返していた。
「これもうわかんねぇな」
独り言が出た。
語録が効いていないわけではない。効いている。でも——規模が違いすぎる。分解再構成の速度が野獣先輩たちの攻撃速度を上回っている。
「馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!(天下無双)」
逆境補正が発動した。出力が跳ね上がった。
「そんないけない子は先生がお仕置きしちゃる!!」
オーバーホールを特定ターゲットとして固定した。全語録の照準を一点に集める。
「F.C.O.H.!」
複数の語録効果を束ねた。`シュバルゴ`の拘束、`ジュージューになるまでやるからな〜`の継続ダメージ、`よし、じゃあぶち込んでやるぜ`の貫通——三つを同時発動させた。
オーバーホールの動きが——二秒、止まった。
「今だ!!」と轟が言った。
氷結の大規模展開。下半身が封じられた。
飯田がレシプロで回り込んで腕を打った。麗日が無重力で巨体の一部を浮かせた。
二秒が過ぎた。オーバーホールが拘束を破った。
「ちょっと歯(刃)ぁ当たんよ〜」
野獣先輩は独り言のように言った。
効いている。確かに効いている。でも——倒せない。
その時——
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
「あっ(察し)」
上だ。
全員が空を見た。
デクが来た。
空の高いところから落ちてきていた。マントが風で広がっていた。体から何かが溢れていた。個性の出力が——今まで感知したことがないレベルだった。百パーセント。いや、それ以上だ。自分の体を壊しながら出力を上げている。
「やべぇよやべぇよ」
「デクくん!!!」と麗日が叫んだ。
「緑谷!!!!」と飯田が叫んだ。
轟が何も言わなかった。ただ前を見ていた。
「王道を征く」
野獣先輩が言った。
語録の効果——最適経路の選択。今この瞬間にデクが向かっているルートが「正しい」と確定した。
デクの拳がオーバーホールに届いた。
爆発的な衝撃が来た。
地面が揺れた。空気が震えた。
「ファッ!?」
全員が吹き飛ばされそうになった。轟が氷で足場を作って踏ん張った。飯田が麗日を掴んで支えた。野獣先輩は壊理を庇って地面に伏せた。
「目ぇ!!」と麗日が言った。閃光だった。
閃光が収まった。
煙の中に——オーバーホールが倒れていた。巨体が崩れていた。分解されていた。再構成の意志がなくなっていた。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
索敵でオーバーホールを確認した。戦闘不能。巨体が解体された。
「……ありますあります」
独り言が出た。
煙の奥にデクが見えた。
立っていた。でも——腕が。
「やべぇよやべぇよ」
「デクくん!!」
麗日が走った。飯田が「緑谷!! 無事か!!!」と叫びながら走った。轟が一歩遅れて歩いた。
デクが振り返った。笑っていた。ボロボロだったが——笑っていた。
「……野獣先輩さん」
「ありますあります」
「さっき——上から来る前に、語録が聞こえました。王道を征く、って」
「ありますあります」
「届いてたんですね」
「当たり前だよなぁ?」
デクが「……当たり前か」と言った。また笑った。
麗日が「バカ!! 腕がそんなになって!!」と言いながら泣いていた。
飯田が「緑谷!! 雄英の名に恥じない戦いを!! しかしその代償が大きすぎる!! なぜ君はいつも!! いつも!!」と言い始めた。
轟が「天哉」と一言言った。飯田が「……そうだな。——よくやった」と言った。
野獣先輩は壊理を連れてデクのところに来た。
壊理がデクを見た。
「……デク」
「……壊理ちゃん!!」
デクが膝をついた。壊理に目線を合わせた。
「ヘーキヘーキ?」
壊理が「……ヘーキヘーキ」と言った。
デクが泣いた。笑いながら泣いた。
「大丈夫大丈夫、ヘーキヘーキ」
野獣先輩が言った。
デクに向けて。壊理に向けて。全員に向けて。
麗日が「……そうだね」と言った。泣きながら笑った。
救急車が一台、遠くに見えた。ナイトアイを乗せた救急車だ。まだ走っている。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
索敵の届く範囲の外に出ていた。
ナイトアイの気配が——もう届かない。
「やべぇよやべぇよ」
独り言が出た。
今まで语録で何でもしてきた。気配を縛った。敵を止めた。脱出路を作った。仲間を強化した。
でも——ナイトアイに届かなかった。
「†悔い改めて†」
走りながら言ったあの語録が——間に合わなかった。
「ないです」
独り言が出た。
今の「ないです」は「ある」の意味では使っていない。そのままの意味だ。
届かなかった。ない。
「…………」
野獣先輩は空を見た。
オーバーホールが倒れた場所の向こうに、空が広がっていた。
デクが壊理を抱えていた。麗日が横にいた。飯田がデクの腕を見て何か言っていた。轟が少し離れたところに立っていた。
「しかし、修行やってます。いつの日か世界を救うと信じて。」
もう一度言った。
今度はナイトアイに向けて言った。
しばらくして、他のチームも地上に上がってきた。
ファットガムが切島を抱えていた。切島が「ファットガムさん!! 俺は大丈夫っす!!」と言っていた。
「おっ大丈夫か大丈夫か?」
「野獣先輩!! 大丈夫っす!! ……オーバーホールは?」
「ありますあります」
「……倒したのか!! 誰が!?」
野獣先輩はデクの方向を指した。
「…………デク、やっぱやべぇな」
「ありますあります」
切島が笑った。少し泣きながら笑った。
ファットガムが「ナイトアイはんは……」と言いかけて止まった。
「やべぇよやべぇよ」
「……そうか」
ファットガムが下を向いた。「……行かなあかん。病院に」
全員が病院に向かうことになった。
搬送の準備が始まった。デクが担架に乗せられた。腕の状態が深刻だと医師が言っていた。
野獣先輩は壊理の手を握ったまま立っていた。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
索敵を広域展開した。この場にいる全員の気配を確認した。デク。ミリオ。切島。ファットガム。麗日。梅雨。飯田。轟。
全員いる。
「ありますあります」
独り言が出た。
全員いる。今はまだ。
「しかし、修行やってます。いつの日か世界を救うと信じて。」
壊理が野獣先輩を見上げた。
「……むずかしいことばかりいう」
「ありますあります」
「……でも、なんかすき」
「当たり前だよなぁ?」
壊理が笑った。
車列が動き始めた。
野獣先輩は麗日と並んで歩いた。
「ねえ、野獣先輩さん」と麗日が言った。
「ありますあります」
「さっきの——オーバーホール戦。一人で何語録も使ってたじゃないですか」
「ありますあります」
「あれ——全部意味があったんですよね。拘束して、継続ダメージかけて、複数同時発動して」
「当たり前だよなぁ?」
「…………野獣先輩さんって、強いですね」
「多少はね?」
麗日が笑った。「多少!! 絶対多少じゃない!!」
飯田が後ろから「麗日さん!! 走らないでください!! 怪我人が近くにいるのにそのようなはしゃぎ方は!!」と言った。
轟が「天哉」と一言言った。飯田が「……そうだな」と言って黙った。
野獣先輩はその会話を聞きながら歩いた。
「いいねぇー」
独り言が出た。
誰かに向けたわけではなかった。
でも——麗日が「そうですね」と言った。轟が「……悪くない」と言った。飯田が「その通り!! この仲間たちは——!!」と言い始めた。
全員が歩いていた。
病院に向かっていた。