【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩   作:まだら模様

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いよいよ文化祭編です
尻assもあったインターン編ですが、文化祭なので盛り上がれー
ダイナモ感覚!ダイナモ感覚!YO!YO!YO!YO!

キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意ください。

評価付与、感想をいただければ野獣先輩がノリノリになります!


文化祭編
第28話「(練習)やりますねぇ!!(文化祭・練習)」


 

 

 文化祭まで二週間を切った。

 

 音楽室に七人が集まった。耳郎、爆豪、八百万、上鳴、常闇、切島——そして野獣先輩。

 

 耳郎がホワイトボードの前に立っていた。ノートを開いていた。昨夜から書き続けていたであろうコード表と語録のリストが、ページいっぱいに広がっていた。

 

「まず全体像を共有する」

 

 耳郎が言った。声は小さかったが全員がすっと黙った。

 

「曲構成はAメロ・Bメロ・サビの三段。Aメロで語録をそのまま乗せる。Bメロは演奏だけ。サビで語録と音が重なる。それを二番まで繰り返して、ラストはフルで語録とダンスが合わさる形」

 

「……すごくないっすかそれ」と切島が言った。

 

「まだ構成の話だから」と耳郎が言った。「問題は練習時間が少ないこと。ドラムとギターのリズムが合わないと語録を乗せる意味がなくなる。だから今日は土台から固める」

 

「分かった」と爆豪が言った。スティックを手に取った。

 

「異存はない」と常闇が低く言った。「——ただ、バンド名だけは再考を求めたい。「Aバンド」では闇の深みが」

 

「「夜間葬団」はないから」と耳郎が即座に言った。

 

「……」

 

「「Aバンド」でいい。A組全員で臨む、八百万さんの案を採用する」

 

 常闇が「……了解した。闇の中でも光を求めるのが——」と言い始めた。

 

「なんやねんその態度」

 

 野獣先輩が言った。

 

「田所さん……?」と常闇が固まった。

 

「なんやねんその態度」

 

「……わ、私への言葉ですか」

 

「なんやねんその態度」

 

 上鳴が「あ、常闇が三回連続で言われてる」とこっそり切島に囁いた。

 

「野獣先輩さん……常闇への語録は珍しいっすね」と切島が小声で返した。

 

「なんか芸術的」

 

 野獣先輩が常闇を見たまま言った。

 

「芸術的……」と常闇が呟いた。何かを噛み締めた顔をした。「——語録に、私の在り方を肯定された気がする」

 

「やめろぉ(建前)ナイスゥ(本音)」

 

「どっちですか!!」と上鳴が叫んだ。

 

 

 

 最初の合わせは、崩壊した。

 

 爆豪のドラムが速かった。上鳴のギターが走った。八百万のキーボードが丁寧すぎて遅れた。常闇が「……雰囲気を優先した」と言いながら独自のタイミングで弾いた。

 

「止めて」と耳郎が言った。

 

 全員が止まった。

 

 耳郎が爆豪を見た。「BPMが速い。テンポキープして」

 

「分かってる」と爆豪が言った。「最初から分かってた。お前らがついてこないだけだ」

 

「……爆豪くんのBPMに合わせます」と八百万が言った。

 

「常闇は——」と耳郎が言いかけた。

 

「闇は己のリズムで刻む——」

 

「それをやめて」

 

「……了解した」

 

 耳郎がもう一度全員を見渡した。

 

「田所くんはギターで私のコーラスに合わせてほしい。語録のタイミングはまだ今日は決めなくていい。まず音として合わせることが先」

 

「ありますあります」

 

「じゃあもう一回」

 

 爆豪がカウントを叩いた。

 

 一、二、三、四——。

 

 今度は違った。爆豪のドラムが軸になった。上鳴がそこに乗った。八百万が後から丁寧についてきた。常闇が……今度は合わせてきた。

 

 野獣先輩がギターで耳郎の音に寄り添った。

 

 三十秒ほどで耳郎が「止めて」と言わなかった。

 

 一分が過ぎた。

 

 二分が過ぎた。

 

「——止めて」

 

 全員が止まった。耳郎が「……できる」とだけ言った。

 

 

 

 

 

 十分休憩になった。

 

 切島が水を飲みながら野獣先輩の隣に来た。

 

「先輩、さっきの合わせ聞いてました? めちゃくちゃよくなりましたよね!」

 

「ありますあります」

 

「っすよね!! 俺、音楽あんまり分かんないっすけど——なんか、ちゃんと「音楽」になった感じがして。先輩のギター、すごく馴染んでましたよ」

 

「笑っちゃうんすよね(強者の余裕)」

 

「先輩が笑ってるところ初めて見た気がするっす」と切島が言った。嬉しそうな顔をした。

 

「ありますあります」

 

「先輩ってば——もしかして楽しいですか?」

 

「ありますあります」

 

「俺も楽しいっすよ!!」と切島が言った。

 

 上鳴が「先輩、ちょっと聞いていいっすか」と近づいてきた。

 

「あのー……俺のギター、合ってましたか? 正直に言ってください」

 

「ありますあります」

 

「あ、合ってた!? よかったー!! 耳郎さんに何も言われなかったから分かんなくて——」

 

「うせやろ?」

 

「え?」

 

「うせやろ?」

 

「……野獣先輩さん、もしかして「合ってたって言ったけど本当は微妙だった」ってこと?」と切島が言った。

 

「ありますあります」

 

「それ言う!?」と上鳴が叫んだ。「先輩が「ありますあります」って言ったから合ってると思ったのに!!」

 

「多少はね?」

 

「多少は合ってたんかい!!」

 

 

 

 

 

 休憩明け、耳郎がホワイトボードに語録のリストを書き始めた。

 

「語録を実際に曲に乗せる前に——どの語録をどこに使うか決める」

 

 全員が集まった。

 

「Aメロは落ち着いたリズム。ここに「やめたくなりますよなんか部っ活ぅ〜」を置く。聞いた人間が「なんか共感できる」と感じる語録がいい」

 

「確かに」と上鳴が言った。「俺も部活やめたくなることあるし」

 

「お前は一回も言ったことないだろ」と爆豪が言った。

 

「言ってないけど気持ちは分かるじゃないっすか!!」

 

「Bメロは転換点。「ビール!ビール!」を置く」

 

 シーンとなった。

 

「……なんで?」と切島が聞いた。

 

「テンポが上がる場所に置きたい。語録の音節が短くて二連続で叩けるから——ここで会場の空気が変わる。笑ってもいいし、ノッてもいい。どっちにも転べる語録」

 

「耳郎さんの分析こわい……」と上鳴が言った。

 

「そしてサビ。ここに置くのは——」

 

 耳郎が一瞬止まった。

 

「——「当たり前だよなぁ?」」

 

 全員が少し黙った。

 

「……なんで?」と切島が聞いた。

 

「会場にいる全員に語りかける語録だから。「当たり前だよな?」って——聞かれたら誰でも「そうだ」って思う。ヒーロー科を怖いと思ってる子も、萎縮してる子も、みんなが「うん」って頷ける言葉」

 

「……耳郎」と八百万が言った。「それは——素晴らしい読み解きだわ」

 

「なんか芸術的」

 

 野獣先輩が言った。

 

「田所くんにそう言ってもらえると——」と耳郎が少し、本当に少し、口元が緩んだ。「……ありがと」

 

「ありがとナス!」

 

「それを返すな」

 

 

 

 

 

 夜、他のメンバーが帰った後も、爆豪は残っていた。

 

 野獣先輩も残っていた。

 

「……なんで残ってんだ」と爆豪が言った。

 

「ありますあります」

 

「俺の練習に関係ねえだろ」

 

「ありますあります」

 

「うるせえ」

 

 爆豪がドラムを叩き始めた。今日の合わせとは違う、もっとゆっくりしたテンポで。一打一打を確認するような叩き方だった。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 野獣先輩が索敵を展開した。爆豪の気配が入ってくる。集中している。真剣だ。「音で殺る」と思っている——そういう気配だ。ヒーローとしての熱さが、ドラムにも乗っている。

 

「笑っちゃうんすよね(強者の余裕)」

 

 野獣先輩が小声で言った。

 

「何がおかしい」と爆豪が手を止めずに言った。

 

「ありますあります」

 

「語録で誤魔化すな」

 

「ありますあります」

 

「……」

 

 爆豪がドラムを続けた。しばらく沈黙があった。

 

「おい」と爆豪が言った。手は止めなかった。「壊理のために、ってデクが言ってた」

 

「ありますあります」

 

「あいつは笑ったことないんだろ」

 

「ありますあります」

 

「……だったら」と爆豪が言った。「音で殺ってやる。笑わせてやる。それだけだ」

 

 また叩き始めた。

 

「やりますねぇ!!」

 

 野獣先輩が言った。

 

 爆豪が「うるせえ」と言った。でも速度が少し上がった。本気の速度になった。

 

 

 

 

 

 二日目の練習中に、ドアが開いた。

 

 ミリオが顔を覗かせた。壊理の手を引いていた。

 

「こんにちはー! 練習、見てもいいですか?」

 

 全員が止まった。

 

「エリちゃんがどんな音楽か聞いてみたいって言って——ほんの少しだけ、来てみました」

 

 壊理が音楽室の入り口に立っていた。白い髪。大きな目。あの日よりは少し、表情が出てきていた。それでもまだ、何かを窺うような目をしていた。

 

「——入っていいよ」と耳郎が言った。

 

 ミリオと壊理が中に入った。壊理が楽器を見回した。ドラム、キーボード、ギター。聞いたことがないものばかりなのかもしれない。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 野獣先輩が索敵を展開した。壊理の気配が入ってくる。緊張している。でも——怖がってはいない。昨日とも違う。少し前のめりになっている。

 

「ありますあります」

 

 独り言が出た。

 

「先輩?」と切島が囁いた。

 

「ありますあります」

 

「壊理ちゃん、大丈夫そうですか?」

 

「ありますあります」

 

「よかったっす」と切島が言って、壊理に向かって「座って聞いてて! 一回通しでやってみるから!」と言った。

 

 壊理がこくりと頷いた。

 

 

 

 

 

 全員が楽器の前に戻った。

 

 耳郎が壊理の方を見た。壊理と目が合った。耳郎が短く頷いた。

 

「……行くよ」

 

 爆豪がカウントを叩いた。

 

 一、二、三、四——。

 

 音が始まった。

 

 爆豪のドラムが軸を作った。上鳴のギターが乗った。八百万のキーボードが広がった。常闇のギターが重なった。野獣先輩のギターが耳郎の音に寄り添った。

 

 Aメロに入った。耳郎のコーラスが流れた。

 

 そこで——野獣先輩が声を出した。

 

「やめたくなりますよなんか部っ活ぅ〜」

 

 語録がメロディに乗った。音楽として鳴った。「語録」が「歌」になった瞬間だった。

 

 壊理が少し身を乗り出した。

 

 Bメロに入った。テンポが上がった。

 

「ビール!ビール!」

 

 上鳴が「え、今!?」と思いながらも弦を押さえ続けた。音楽室の空気が少し変わった。思わず笑いたくなるような間が生まれた。

 

 そしてサビ——。

 

 全員の音が重なった。耳郎のコーラスが上から被さった。そこで野獣先輩が言った。

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 音が揺れた。

 

 壊理が——ぴくり、と動いた。

 

 手が膝の上でわずかに動いた。リズムを取るように、ほんの少し。

 

「ちゃんちゃちゃちゃんちゃん!Foo!」

 

 野獣先輩が言った。

 

 上鳴がギターを弾きながら「今のは何!?」と思ったが弾き続けた。爆豪のドラムが少し加速した。曲が最後のフレーズに入った。

 

 演奏が終わった。

 

 しばらく沈黙があった。

 

 ミリオが「——すごい!!」と言った。「語録が曲になってる!! 野獣先輩さんの語録が音楽に!! なんか、なんか——こんな感じになるんですね!!」

 

「やりますねぇ!!」

 

「ありがとうございます!!」

 

 切島が「壊理ちゃんどうだった?」と聞いた。

 

 壊理がしばらく黙っていた。

 

 それから、小さな声で言った。

 

「……もう一回」

 

 全員が壊理を見た。

 

「もう一回——聞きたい」

 

 耳郎が「……うん」と言った。

 

「爆豪くん、もう一回いける?」と耳郎が聞いた。

 

「当たり前だろうが」と爆豪が言った。スティックを構え直した。

 

 

 

 

 

 二回目の演奏が始まった。

 

 今度は全員が少し違った。壊理が「もう一回」と言ったことが、全員の音に乗っていた。

 

 Aメロ——「やめたくなりますよなんか部っ活ぅ〜」。

 

 Bメロ——「ビール!ビール!」。

 

 サビ——「当たり前だよなぁ?」。

 

 野獣先輩の索敵が壊理の気配を拾っていた。

 

 サビに入った瞬間——壊理の手が、膝の上でリズムを刻んでいた。

 

 音楽に合わせて。語録に合わせて。「当たり前だよなぁ?」という言葉が流れた時、壊理の手が一瞬だけ強く握られた。

 

「ブッチッパ!」

 

 野獣先輩が言った。

 

 爆豪が「今じゃねえだろ!!」とドラムを叩きながら叫んだ。

 

 上鳴が「文脈ゼロ!!」と弦を弾きながら叫んだ。

 

 でも演奏は止まらなかった。

 

 そしてラスト——全員の音が重なった瞬間。

 

 壊理が——笑った。

 

 声は出なかった。ほんの少し、口の端が上がっただけだった。でも確かに、笑った。

 

 ミリオが気づいた。「——エリちゃん」と言いかけて、止めた。止めて正解だった。壊理はまだ笑っていた。

 

 演奏が終わった。

 

 野獣先輩が壊理を見た。

 

「なんか芸術的」

 

 静かに言った。

 

 壊理が野獣先輩を見た。「……?」という顔をした。

 

「ありますあります」

 

 壊理がしばらく野獣先輩を見ていた。それから小さく、もう一度口の端が上がった。

 

 

 

 

 

 

 ミリオと壊理が帰った後、耳郎が一人でノートに書き込んでいた。

 

 野獣先輩が楽器を片付けながら、その横に立った。

 

「……壊理ちゃん、笑ったね」と耳郎が言った。

 

「ありますあります」

 

「索敵で分かった?」

 

「ありますあります」

 

「……「ブッチッパ!」は何だったの」と耳郎が言った。

 

「ありますあります」

 

「ありますあります、じゃ分からない」

 

「ブッチッパ!」

 

「また言ってる」

 

 耳郎が少し間を置いた。

 

「……本番、壊理ちゃんが来てくれるんだよね」

 

「ありますあります」

 

「だったら絶対成功させる。今日みたいな顔、もっとさせたい」

 

「やりますねぇ!!」

 

「田所くんが「やりますねぇ!!」って言うの、なんか——頼もしいね」と耳郎が言った。少しだけ笑っていた。

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「……うん」と耳郎が言った。「当たり前だね」

 

 

 

 

 帰り道、廊下で切島が野獣先輩に追いついた。

 

「先輩! 今日の練習——最高でしたよね!!」

 

「ありますあります」

 

「壊理ちゃんが笑ったの、先輩も分かりましたよね、索敵で!」

 

「ありますあります」

 

「俺、あの瞬間——なんかもう、絶対本番成功させなきゃって思いましたよ。先輩は?」

 

「わかったわかったわかったよもう!」

 

 切島が「え?」と止まった。

 

「わかったわかったわかったよもう!」

 

「……先輩が「わかった」って言った!! 語録で「分かった」って!!」

 

「ありますあります」

 

「やばいっすよそれ!! なんか先輩が本気になった感じがする!!」と切島が言った。声が弾んでいた。「先輩ってば——一緒に頑張りましょうね!!」

 

「あっ、いいっすよ(快諾)」

 

「快諾してくれた!!」と切島が叫んだ。廊下に声が響いた。

 

「切島うるせえ!! 夜中に叫ぶな!!」と遠くから爆豪の声がした。

 

「すみませんでした!!」

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩が先に歩き出した。

 

 切島がその後ろをついて歩いた。廊下の電気が夜の色に変わっていた。

 

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