【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩   作:まだら模様

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いよいよ盛り上がる時です!
多分皆様のの息子も盛り上がる(意味深)になるでしょう!

キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意ください。

評価付与、感想などは野獣先輩からのライブ中のウィンクをもらえます!
やったぜ。投稿者変態二次創作者…


第29話「カンノミホ…(芸名)(文化祭・本番)」

 

 

 空が白くなり始めた頃、野獣先輩は雄英の外周を歩いていた。

 

 文化祭の当日だった。

 

 ステージは午後。でも今は早朝で、まだ誰も来ていない時間だった。準備で遅くまで起きていたクラスメイトたちの気配が、寮の奥でまだ眠っている。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 索敵を展開した。

 

 雄英の外周、半径五百メートルの気配が全部入ってくる。生徒たちの気配。教員たちの気配。早朝から準備に来ている他クラスの生徒たち。屋台の設営をしている業者。来場者がまだ来ていない校門前——

 

 止まった。

 

 外の道路の一角に、ひとつ、妙な気配があった。

 

 遠い。二百メートル以上先。動いていた。近づいているわけじゃない。でも——「目的がある」気配だった。何かを狙っている。観察している。

 

「微粒子レベルで存在している…?」

 

 独り言が出た。気配が薄い。意図的に薄くしている。普通の人間ならまず気づかない。

 

 もう一人いた。そちらは気配を抑えるつもりがなかった。若い。明るい。感情が前に出ている。

 

 二人組だ。

 

 野獣先輩は外周の壁の際に立ったまま、索敵の焦点を絞った。

 

「菅野美穂」

 

 小声で言った。自分の気配を消した。囮を壁の反対側に置いた。気配だけが存在するもうひとりの野獣先輩——それを感じ取れるほどの索敵能力があれば、注意がそちらに向く。

 

 野獣先輩は気配を消したまま、二人組の動きを見続けた。

 

 

 

 

 

 デクが朝練から戻ってきたのが六時前だった。グローブをつけた手。発目の新作サポートアイテム。

 

 野獣先輩が廊下で待っていた。

 

「野獣先輩さん! おはようございます! こんな朝早くに——」

 

「やべぇよ…やべぇよ…」

 

 デクが止まった。「え——」

 

「やべぇよ…やべぇよ…」

 

「……索敵で何か見えた?」

 

「ありますあります」

 

 デクが一瞬考えた。「来ます、か——来てます? 校外に何か?」

 

「ありますあります」

 

「人、ですか」

 

「ありますあります」

 

「……目的を持って動いてる感じ?」

 

「ありますあります」

 

 デクが「場所は?」と聞いた。

 

 野獣先輩が外周の方向を指差した。

 

「二人組——ですか?」

 

「ありますあります」

 

 デクが「分かりました」と短く言った。顔が締まった。「文化祭が始まる前に対処します。警報が鳴ったらその時点で中止になる。だから——絶対に雄英に入れない。野獣先輩さんは」

 

「ありますあります」

 

「後方から索敵で位置を教えてもらえますか。俺が先に出ます」

 

「ありますあります」

 

「……壊理ちゃん、来てくれてるんですよね」とデクが言った。「笑わせるって約束したから」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 デクが一度だけ深く息を吸った。それから走り出した。

 

 

 

 

 

 デクが校外に出た。野獣先輩は雄英の敷地内から索敵を続けた。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 デクの気配が見える。二人組の気配が見える。間合いが縮まっていく。

 

 二人組の一方——気配を薄くしていた方が、突然動いた。空気が変わった。何かに「弾性」が付いた。道路の足場がトランポリンになった気配——デクが上に弾き飛ばされた。

 

「なんだコイツら!?」

 

 独り言が出た。索敵に変な手応えが来た。空気そのものに弾性がついている。壁を作れる。足場を作れる。空を飛べる。

 

 索敵でデクの位置を確認した。上空に弾き飛ばされたが体勢を立て直している。グローブを使った遠距離攻撃——エアフォース。空気の塊を飛ばしてジェントルの機動を封じようとしている。

 

 もう一方の気配——若い方。ラブラバ。何かを囁いた瞬間、ジェントルの気配が膨れ上がった。「愛」の強化。一気に倍以上になった。

 

「頭にきますよ」

 

 野獣先輩が言った。

 

 索敵の中でデクが押されていた。エアフォースが弾き返される。弾性の壁が何重にも重なっていた。

 

 野獣先輩は壁際で索敵を絞った。

 

「見とけよ見とけよ~」

 

 デクの気配に向けて言った。届かない距離だった。でも言った。

 

 ——その瞬間、デクの気配が変わった。

 

 索敵に引っかかった。何かを思い出した。いや——思い出すんじゃない。新しく気づいた。足場の使い方。ダンスで培ったステップ。体重移動。師から教わった動きと芦戸との練習が合わさった何か。

 

 デクが反撃に転じた。

 

「やりますねぇ!!」

 

 野獣先輩が小声で言った。

 

 

 

 

 

 三十分後、デクが戻ってきた。

 

 ボロボロだった。グローブが片方なくなっていた。制服に泥がついていた。でも歩いていた。

 

 野獣先輩が校門で待っていた。

 

「——止めました」とデクが言った。「ジェントル・クリミナルとラブラバ、ってヴィランでした。警報は鳴らせなかった。文化祭は——続けられます」

 

「ありますあります」

 

「野獣先輩さんが朝に教えてくれなかったら、気づいたのが遅れてたと思います」

 

「ありますあります」

 

「……ありがとうございます」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 デクが一回だけ笑った。「そうですよね。当たり前ですよね」

 

 それから急いで戻っていった。着替えて、ステージの準備をしないといけない。

 

 

 

 

 

 

 文化祭が始まった。

 

 雄英の校内が人で埋まった。他の科の生徒、保護者、外部の来場者。ヒーロー科以外の生徒たちが出す屋台、展示、発表。A組のステージは午後の枠だった。

 

 開場から一時間後、ミリオが壊理を連れてやってきた。

 

 壊理が校内の人の多さに少し足を止めた。

 

 ミリオが「大丈夫ですよエリちゃん! 一緒にいますから!」と言った。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 野獣先輩が索敵を展開した。壊理の気配が入ってくる。緊張している。人の多さに少し圧倒されている。でも——怖がっていない。前に進んでいる。

 

「大丈夫大丈夫、ヘーキヘーキ」

 

 野獣先輩が壊理の目線の高さで言った。

 

 壊理が野獣先輩を見た。少し、肩の力が抜けた。

 

「ヘーキヘーキ」と壊理が小さく返した。

 

「ありますあります」

 

 ミリオが「野獣先輩さん! 今日は一緒にいてもらえますか、ステージが始まるまで!」と言った。

 

「ありますあります」

 

「ありがとうございます!!」

 

 

 

 

 

 A組のステージの直前、音楽室の隣の控え室にバンドメンバーが集まっていた。

 

 耳郎がチューニングをしていた。爆豪がスティックを握り直していた。八百万が鍵盤の運指を確認していた。上鳴が「緊張してきた……」と言っていた。常闇が「闇の中に光を見出す瞬間——」と言っていた。

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩が控え室のドアを開けた。

 

「先輩!」と切島が飛んできた。「壊理ちゃん来てますよね!?」

 

「ありますあります」

 

「よかったァ!! じゃあもう絶対成功させるしかない!!」

 

「——みんな」と耳郎が言った。全員が耳郎を見た。「緊張するかもしれないけど——一個だけ覚えておいてほしい。私たちが今日ここでやることは、ヒーロー科以外の全員を巻き込むこと。壊理ちゃんを笑わせること。それだけ」

 

「そして天は鳴き、大地は震えるだろうね」

 

 野獣先輩が言った。

 

 シーンとなった。

 

「……今のはどういう意味ですか」と飯田が入口から顔を覗かせながら聞いた。

 

「田所さんなりの激励だと思われます!!」と切島が言った。

 

「えっ、そうなの」と上鳴が言った。「かっこいいじゃん」

 

「死ぬほどかっこよくはない」と爆豪が言った。「行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 ステージの幕が上がった。

 

 会場に四百人以上がいた。

 

 ダンス隊が先に出た。芦戸を先頭に、デク・麗日・蛙吹を含むA組のダンスメンバーが踊り始めた。音楽が流れた。照明が落ちた。舞台の上に光が集まった。

 

 会場がざわついた。ヒーロー科の生徒が楽しそうにしている。それだけで、どこかぎこちなかった空気が少し動いた。

 

 野獣先輩は舞台袖から会場の気配を索敵していた。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 四百人以上の気配が全部入ってくる。最初は緊張していた。硬かった。「見に来てしまった」という気配がある。「ヒーロー科に萎縮している」という気配がある。

 

 でも——ダンスが続くにつれて、少しずつ動いていった。

 

 会場の前の方、中央寄りに壊理がいた。ミリオの横に立っていた。手をぎゅっと握っていた。舞台を見ていた。

 

「縛らなきゃ(使命感)」

 

 野獣先輩が小声で言った。

 

 この瞬間を記憶に縛りつけろ、という話だった。誰にも聞こえない声量だった。でも言わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 ダンスが終わった。

 

 会場に拍手が起きた。

 

 そしてバンドメンバーが出てきた。

 

 爆豪がドラムの前に座った。上鳴と常闇がギターを構えた。八百万がキーボードの前に座った。耳郎がマイクの前に立った。

 

 野獣先輩が最後に出てきた。

 

 ギターを持っていた。

 

 会場の一部が「あれ誰?」という気配を出した。A組の生徒ではない。でも雄英の制服を着ている。二十代に見える。なぜここに?

 

「24歳、学生です」と誰かが小声で言った。上鳴だった。

 

「黙ってろ」と爆豪が言った。

 

 耳郎がマイクに近づいた。

 

「——みんな、楽しんでってください」

 

 それだけ言った。振り返った。爆豪を見た。

 

 爆豪がスティックを構えた。

 

 カウントが入った。

 

 

 

 

 

 一、二、三、四——。

 

 音が始まった。

 

 爆豪のドラムが軸を作った。上鳴と常闘のギターが乗った。八百万のキーボードが広がった。野獣先輩のギターが耳郎の音に寄り添った。

 

 Aメロが来た。

 

「やめたくなりますよなんか部っ活ぅ〜」

 

 野獣先輩がマイクなしで言った。でも音楽の中に乗った。

 

 会場がざわいた。

 

「……なんか言った?」という気配が広がった。笑いかけている。でもまだ判断できていない。何なのかが分からない。

 

 Bメロに入った。テンポが上がった。

 

「ビール!ビール!」

 

 今度は会場が動いた。笑い声が出た。何人かが「は?」と言いながら笑っていた。「意味が分からないのに楽しい」という気配が広がり始めた。

 

「流行らせコラ!」

 

 野獣先輩が言った。

 

 語録の効果が発動した。「ビール!ビール!」という語録の余韻が会場に広がった。笑っていた人間が、隣の人間に何か言い始めた。連鎖した。前の列から後ろの列へ。笑いが伝播していった。

 

 耳郎のコーラスが上から被さった。

 

 そしてサビ——。

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 野獣先輩が言った。

 

 会場が一瞬静かになった。

 

 静かになって——それから一斉に動いた。誰かが「そうだ」と思った気配がした。隣の人間も「そうだ」と思った。「当たり前だよな?」という問いかけに、誰もが「うん」と思えた。ヒーロー科に萎縮していた生徒も。緊張していた来場者も。みんなが「当たり前だよな」と思える何かがそこにあった。

 

 会場の気配が、溶けていった。

 

 

 

 

 

 野獣先輩は演奏しながら、索敵で壊理の気配を追っていた。

 

 Aメロで手が動いていた。

 

 Bメロで体が揺れていた。

 

 サビで——壊理の気配が大きくなった。

 

 それまで小さくまとまっていた気配が、ふっと広がった。解けた。今まで固く閉じていたものが、音楽と語録の中で少しだけ開いた。

 

 二番のサビに入った。

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 また言った。

 

 壊理が——笑った。

 

 声が出た。

 

 練習の時みたいに口の端が上がるだけじゃなかった。声が出た。「あ」か「は」かわからない、小さな音だった。でも確かに、壊理の口から声が出た。笑い声だった。

 

 ミリオが壊理の手をそっと握った。壊理はまだ笑っていた。

 

「世界一やお前!」

 

 野獣先輩が弦を弾きながら言った。

 

 切島が舞台袖から見ていた。泣いていた。声を出さずに泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 ラストのフレーズに入った。

 

 ダンス隊が再び舞台に出てきた。全員が音楽に乗っていた。芦戸が笑いながら踊っていた。デクが笑いながら踊っていた。麗日が笑いながら踊っていた。

 

 会場が一つになっていた。

 

 前にいる生徒も。後ろにいる来場者も。ヒーロー科を怖いと思っていた生徒も。萎縮していた子も。全員が同じ空気の中にいた。

 

 耳郎がマイクに向かった。

 

「——最後に一個だけ」と耳郎が言った。「A組から、雄英のみんなへ」

 

 野獣先輩がマイクに近づいた。

 

「大丈夫大丈夫、ヘーキヘーキ」

 

 会場が笑った。

 

 でもその笑いは——やさしい笑いだった。「なんだそれ」という笑いじゃなかった。「そうだよな」という笑いだった。「ヘーキヘーキ」という言葉が、何かを溶かした。

 

 会場の一番前で、壊理がもう一度笑っていた。

 

 今度は声だけじゃなかった。

 

 目が細くなっていた。本物の笑顔だった。

 

「やんほぬ」

 

 野獣先輩が小さく言った。

 

「え、今なんて」と上鳴が弦を弾きながら言った。

 

 誰も答えなかった。でも演奏は続いた。

 

 音楽が会場を満たした。

 

 

 

 

 

 ステージが終わった。

 

 拍手が長かった。

 

 控え室に戻ったバンドメンバーは、しばらく誰も何も言わなかった。

 

 切島がまず「——最高でしたよ!!」と叫んだ。目が赤かった。

 

「俺ァ、泣いてたかもしれないっすよ先輩!! 舞台袖から壊理ちゃんが笑ったの見て!!」

 

「ありますあります」

 

「先輩も見てましたか索敵で!!」

 

「ありますあります」

 

「っすよね!! 俺たち最高だったっすよ!!」

 

「……うん」と耳郎が言った。壁に背をもたせかけて、天井を見ていた。「よかった」

 

 爆豪が「当然だ」と言った。スティックを置いた。それだけ言った。でも、口の端が少し上がっていた。

 

「ありがとナス!」

 

 野獣先輩が言った。

 

 全員が「誰に向けて!!」と思ったが、誰も聞かなかった。

 

 

 

 

 

 会場の出口近くで、壊理がミリオと立っていた。

 

 野獣先輩が近づいた。

 

 壊理が野獣先輩を見た。

 

「……おもしろかった」と壊理が言った。

 

「ありますあります」

 

「……また聞きたい」

 

「ありますあります」

 

「ヘーキヘーキ」と壊理が言った。「って言ったら——みんな笑う」

 

「ありますあります」

 

「……なんで?」

 

「ありますあります」

 

 壊理がしばらく野獣先輩を見ていた。

 

「——田所くん」とミリオが言った。「エリちゃん、今日はじめて声を出して笑ったんです。あの語録が流れた時に」

 

「やりますねぇ!!」

 

「ありがとうございます!!」とミリオが言った。目が光っていた。

 

 壊理が野獣先輩をまだ見ていた。

 

「……ヘーキヘーキ」

 

 もう一回言った。野獣先輩に向けて。

 

 野獣先輩が少し間を置いた。

 

「大丈夫大丈夫、ヘーキヘーキ」

 

 壊理がまた笑った。声が出た。

 

 

 

 

 

 夜、後片付けが終わった音楽室に耳郎がいた。

 

 野獣先輩が楽器を返しに来た。

 

「……今日はありがとう」と耳郎が言った。「田所くんがいなかったら——語録ライブにならなかった」

 

「ありますあります」

 

「壊理ちゃん、笑ったね」

 

「ありますあります」

 

「……よかった」と耳郎が言った。それからしばらく黙った。「私ね、音楽ってずっと自分だけのものだと思ってた。ヒーロー科に来てから余計に。個性使う練習して戦い方覚えて——音楽は趣味だから、表に出すものじゃないって」

 

「やめたくなりますよなんか部っ活ぅ〜」

 

「……うん。やめたくなる気持ちはあった。でも——今日みたいな日があるなら」

 

「ありますあります」

 

「そう。ありますあります、だね」

 

 耳郎がギターケースのファスナーを閉めた。

 

「田所くん——来年も文化祭あるよね。その時もまたやろう」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 耳郎が「うん」と言った。「当たり前だよね」

 

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