【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩 作:まだら模様
その点もご注意ください。
キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意ください。
評価付与、感想は野獣先輩が張り切って語録を多用してくれます!
後ちょっとで50評価なので、ぜひ何卒よろしくお願いします
評価50超えたら完結まで毎日投稿やります!(白目)
第30話「これもうわかんねぇな(乱戦)(ジョイント訓練・B組登場)」
朝のHRで相澤が言った。
「明日からA組・B組の合同戦闘訓練を行う。全部で五試合。各試合四対四の捕縛戦だ」
教室がざわついた。
「B組か……!」と切島が言った。
「久しぶりだな」と轟が言った。
「勝てる!? 勝てる感じある!?」と上鳴が周囲を見回した。
「うるせぇ」と爆豪が言った。
相澤が全員を見渡した。黒い目が教室の端から端まで走った。
「もう一点。今回の訓練には普通科から一人、特別参加する。以前体育祭で会ったことがあるはずだ」
デクが止まった。
「……心操くん」
「そうだ」と相澤が言った。「今回の訓練は、彼の編入試験を兼ねている。そのつもりで当たれ」
野獣先輩は窓の外を見ながら相澤の言葉を聞いていた。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
索敵を展開した。雄英の敷地内に——まだいない。普通科の棟の方向に、どこか緊張した気配が一つある。明日のことを考えている。
「ン~いい時には結構いくね」
独り言が出た。
「田所、今日のコンディション確認してるのか」と相澤が言った。
「ありますあります」
「……そうか」
訓練場の前でA組とB組が向かい合った。
B組は二十人いた。最前列に立っていたのが拳藤一佳だった。
大きな両手。正面から視線を外さない目。「やるならてっぺん」という気配。
「まぁ——久しぶりね、A組」と拳藤が言った。「文化祭のライブ、聞こえたよ。楽しそうだったじゃん」
「ありがとうございます!!」と切島が言った。先輩に言うような声だった。
「あんたが提案したんだっけ、語録ライブ」
「そうっすよ!! 先輩のギターが——」
「私は先輩じゃないけどね」と拳藤がやや呆れた顔で言った。
物間寧人が前に出た。白い髪。にやついた顔。
「いやあ、A組の皆さんとは久しぶりですね。ところで——あちらの方は?」
物間が野獣先輩を見た。
「A組にいる方とは思えないルックスなんですが。もしかして留年とかですかね?」
「ビール!ビール!」
野獣先輩が言った。
物間が一瞬止まった。「……は?」
「ビール!ビール!」
「……なに、この人。意味分かんない」
「いいねぇー」
「聞いてる!?」
拳藤が物間の頭に手刀を入れた。「また始まってる。やめなさい」
「いてっ! でも拳藤さん、あの人——」
「田所浩二くん。24歳、学生」とデクが言った。「語録を個性として使います。強いです」
「語録?」と物間が言った。怪訝な顔をした。「語録で戦うって……どういう——」
「これもうわかんねぇな」
野獣先輩が言った。
物間が「だから誰に言ってるんですか!?」と言った。
B組の端に心操人使がいた。
相澤と同じ捕縛布を体に巻いていた。変声機をつけていた。顔が薄暗い。感情を表に出さない目。でも——緊張はしている。索敵で拾える。「この訓練で全てが決まる」という張り詰め方をしていた。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
野獣先輩が心操の気配に索敵の焦点を絞った。
強い。体育祭の時より明らかに違う。捕縛布の使い方が染み込んでいる。相澤の動きを徹底的に真似した跡がある。「洗脳」の個性——声に答えた相手を操る。複数語録を連続発動する野獣先輩と、声で相手を操る心操。
野獣先輩は少し考えた。
「ビール!ビール!」
小声で言った。
心操がこちらを見た。
「……語録には答えないようにする、ってことか」と心操が言った。静かな声だった。「音声系の個性同士——そういう意味だよな」
「ありますあります」
「洗脳に引っかからないよう、まず確認してるわけだ」
「ありますあります」
心操がしばらく野獣先輩を見た。それから「……厄介だな」と言った。悪い顔じゃなかった。
最初の試合が始まった。
切島・蛙吹・上鳴・力道対B組の四人(円場・宍田・鱗・塩崎)——そこに特別参加の心操が加わった。
野獣先輩は観戦席から索敵を展開した。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
全員の気配が入ってくる。切島が前に出た。塩崎の荊棘の気配——突然植物が伸びてきた。切島が個性で硬化して正面から突っ込んだ。蛙吹が舌で上鳴を引っ張って高所に退避させた。力道が甘味を摂取して自己を強化しつつ進んでいる。
悪くない出だしだった。
でも——心操が動いた。
変声機を通した声が響いた。「おい、切島! 上にいるぞ!!」
切島が反射的に上を向いた。
「——捕まえた」
洗脳が入った。切島の動きが止まった。
「あっ」と上鳴が叫んだ。
円場が空気の壁を展開した。蛙吹が引っかかった。力道が孤立した。
試合の流れが一気に変わった。
「あーもうめちゃくちゃだよ」
野獣先輩が観戦席で言った。
「でしょうね」と相澤が隣に立ったまま言った。「心操の洗脳は実戦で使えるレベルになった。捕縛布も形になってきた」
「ありますあります」
「……お前はどう見る」
「ありますあります」
相澤が少し間を置いた。「強いと思うか、ということだ」
「当たり前だよなぁ?」
相澤が「そうか」と言った。表情は変わらなかったが、少し何かが解けた気配がした。
試合は最終的に心操チームが勝った。切島が洗脳から自力で戻ったが時間がかかりすぎた。
第三試合のメンバー発表があった。
野獣先輩・爆豪・常闇・八百万 対 B組の四人(拳藤・吹出・黒色・小森)。
観戦席にいたA組が「先輩が出る!!」「えっB組の方大丈夫そ!?」とざわめいた。
野獣先輩は訓練場に入った。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
相手の四人の気配が全部入ってくる。拳藤——前に出る気配。吹出——泡系の個性、遠距離牽制。黒色——黒いものに溶け込む個性、単独行動。小森——キノコを生やす個性、湿気が多い場所で強くなる。
拳藤がこちらを見た。「——田所くん、でいい?」
「ありますあります」
「A組の人たちが「強い」って言ってたから楽しみにしてたよ。語録とやら、見せてもらうからね」
「ありますあります」
「強がってんの? それとも本当に余裕なの?」
「ありますあります」
「どっちだよ!!」と吹出が叫んだ。
笛が鳴った。試合開始。
拳藤が一直線に来た。
両手が大きくなった。地面を踏む音がでかかった。速かった。武闘派の正面突破、陽動も搦手もない——真っ向勝負。
「お前さぁ…」
野獣先輩が言った。
拳藤が一拍止まった。「——なに?」
その一拍の間に野獣先輩が横に動いた。拳藤の突進が空を切った。
「……っ! なんで止まった!? 「お前さぁ」って言われたら止まるつもりなかったのに!!」
「ビール!ビール!」
「ビール飲みたいとか思ってない!! 今思わせた!? 今「あ、ビール」って思わせた!?」
「ありますあります」
「これが語録の効果!? 欲しいものを思わせるの!?」
拳藤が大拳を振った。今度は止まらなかった。真正面から拳が来た。
「なんでそんな事するの?」
野獣先輩が言った。
拳藤が「え」と言って一拍動揺した。「なんでって——訓練だから——いや待って、なんで「なんで」って言われて答えを考えちゃったの私!?」
「うん!おいしい!」
野獣先輩が拳藤の突進の勢いを「受け入れて変換」した。拳藤のパワーを吸収して横に流した。拳藤がよろめいた。
「なっ——!? 力を流された!? 受け入れたの!? 「おいしい」って言いながら!?」
訓練場の別エリアで常闇と黒色が対峙していた。
黒色の個性——黒いものに溶け込む。常闇の「影」に潜り込もうとした。
「——愚かな」と常闇が言った。「闇は俺のものだ。お前には渡さない」
ダークシャドウが動いた。影のモンスターが咆哮した。
でも——黒色が常闇の影の中に溶け込んだ。ダークシャドウを内側から揺さぶり始めた。
「——ぐっ! 俺の闇が、俺の意志を……!!」
常闇が苦戦し始めた。
「あーもうめちゃくちゃだよ」
野獣先輩が遠くから小声で言った。
「先輩今は拳藤さんと戦ってください!!」と八百万が叫んだ。
「ありますあります」
拳藤が息を整えながら野獣先輩を見た。
「……なるほどね。語録が全部「一瞬止まらせる」か「考えさせる」か「力を変換する」か——どれかなんだ。分かってきた」
「ありますあります」
「分かっても止まれないんだけど!! 「お前さぁ…」って言われたらまた止まりそうなんだけど!! これ欠陥じゃないの!? 私の思考が!!」
「ありますあります」
「開き直った!?」
爆豪が後ろから吹出を一枚爆破で吹き飛ばした。「うるせぇから早く終わらせろ」
「そうね!」と拳藤が言った。「——じゃあ全力で行くわよ!! ラヴァーモードみたいなの無くてもこっちには誇りがある!!」
「二人は幸せなキスをして終了」
野獣先輩が言った。
拳藤が「なんの話をしてるんですか!!!」と全力で叫んだ。
その隙に八百万の「製造」した拘束具が拳藤の両足を縛った。
「——っ!! 負けた……! 語録に動揺したせいで足元見てなかった……!」
「まぁ——やるならてっぺん狙ってもらいますけども」と拳藤が悔しそうに言いながら言った。「次は止まらないから覚えてなさいよ!」
「ありますあります」
第五試合が始まった。
デク・麗日・芦戸・峰田 対 B組の物間・小大・庄田・柳——そして心操。
野獣先輩は観戦席で索敵を続けていた。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
デクの気配が入ってくる。物間が他の個性を使い始めた。庄田の個性——弾力性を帯びた巨大な体で威圧してくる。デクが対応しようとした。
その瞬間——デクの気配が変わった。
突然。
「ファッ!?」
野獣先輩の口から出た。
何かが「出てきた」。デクの体の中から、別の何かが——腕のあたりから、黒いものが飛び出した。制御できていない。暴走している。周囲に当たり始めた。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
索敵の焦点をデクに絞った。デクの内部に「別の意志」がある。野獣先輩が今まで感じたことがない気配だった。強い。古い。何か別の人間の感情の残滓のような——
「これもうわかんねぇな」
野獣先輩が本気で言った。
試合が一時停止になった。
相澤が立ち上がった。「——止めろ」
心操が動いた。捕縛布を構えて声を出した。「落ち着け。今の自分を見ろ」
洗脳が入った。デクの動きが止まった。黒鞭が引っ込んだ。
麗日がデクに駆け寄った。「大丈夫! 大丈夫だから!」
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
野獣先輩は索敵をデクに当て続けた。デクの中の「別の何か」の気配が、まだある。落ち着いている。眠っている。でも——消えてはいない。
「ファッ!?」
また言った。
「先輩、今は落ち着いてください」と切島が横で言った。
「ありますあります」
「落ち着いてます?」
「ありますあります」
「全然落ち着いてなさそうっすけど」と切島が言った。
全五試合が終わった。
訓練後の廊下で心操が野獣先輩の横に来た。
「——さっきの。デクの中に何かいると思ったか? 索敵で」
「ありますあります」
「……俺も洗脳を入れた時に、一瞬だけ「別のもの」を感じた。デクじゃない誰かの意識みたいな——」
「ありますあります」
「あんたの語録で洗脳が入ったのか——それとも暴走が自然に収まったのかは分からないけど」
「多少はね?」
心操が少し止まった。「……語録も洗脳も、「声で相手に影響を与える」という点では同じだ。干渉できる可能性がある」
「ありますあります」
「だから——」と心操が言った。少し声が変わった。「俺がヒーロー科に入ったら、一度ちゃんと話してみたい。語録と洗脳が同時に発動した場合、何が起きるか」
野獣先輩はしばらく心操を見た。
「ありますあります」
「……「いいよ」ってことか」
「ありますあります」
「分かった」と心操が言った。それから少し間を置いた。「あんたの語録——「これもうわかんねぇな」って何回か言ってたよな。本気で言ってたか?」
「ありますあります」
「デクの中のあれが、か」
「ありますあります」
心操が「……そうか」と言った。相澤に似た言い方だった。「俺も分からなかった。一緒に分かろうとしてみるか」
「ありますあります」
心操が廊下を歩き出した。
訓練棟の出口で拳藤が待っていた。
「——一個だけ聞いていい? 「ビール!ビール!」で私がビール思い浮かべたのって、個性の効果? それとも普通に言われたから思い浮かべちゃっただけ?」
「ありますあります」
「どっちが!!」
「ありますあります」
「この人全部「ありますあります」で返すじゃん!!」
「ありますあります」
「もう!!」と拳藤が言った。でも怒ってはいなかった。「……まぁ、楽しい訓練だったよ。「お前さぁ…」って言われた時、本当に一瞬止まったし。なんかそれが——悔しいより面白かった。変かな」
「いいねぇー」
「褒めてくれてる?」
「ありますあります」
拳藤が「ふーん」と言った。「また訓練で当たった時は全力でいくから。次は「お前さぁ」に止まらないようにしてくるし」
「ありますあります」
「楽しみにしてなさいよ」と拳藤が言って歩いて行った。
夜、野獣先輩は寮の自室で索敵を展開していた。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
デクの部屋の気配が入ってくる。落ち着いている。でも——少し張り詰めている。今日の暴走のことを考えている。
野獣先輩は索敵の焦点をデクに当てたまま、天井を見た。
「ファッ!?」
独り言が出た。
デクの中にいる「何か」——黒い鞭のような個性。今まで感じたことがないタイプの気配だった。強い。でも悪くない。デクを傷つけようとしているわけじゃない。ただ——まだ「デクのもの」になっていない。
「これもうわかんねぇな」
また言った。
索敵をゆっくり解いた。
デクの気配は穏やかだった。今夜は眠れそうだ、という気配。
「ありますあります」
野獣先輩は天井を見たまま言った。