【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩   作:まだら模様

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ご観覧ありがとうございます。
ハイエンド脳無戦ですねぇ!
エンデヴァーがどうなるやら…ホークスも気になります…

キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意ください。

感想、評価付与をいただけると観戦中の野獣先輩が喉?乾かないと言ってアイスティーを差し入れてくれます。


ハイエンド脳無編
第32話「おい、(テレビを)見ろよ見ろよ(エンデヴァーvsハイエンド・観戦)」


 

 

 夕食後の食堂のテレビが突然切り替わった。

 

「——速報です。福岡市内の高層ビル付近において、脳無による大規模な市街地襲撃が発生しています。現場ではNo.1ヒーロー・エンデヴァーと複数のプロヒーローが対応中——」

 

 食堂にいたA組のほぼ全員が動きを止めた。

 

「エンデヴァーさんだ……!」と緑谷が立ち上がった。

 

「相当でかい脳無だな」と轟が静かに言った。目が画面を見ていた。「……あれはただの脳無じゃない」

 

 野獣先輩は画面を見た。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 索敵を展開した。当然、福岡まで届かない。距離が遠すぎる。でも——画面の中の動きから、気配を「読んだ」。

 

「なんだコイツら!?」

 

 独り言が出た。

 

「先輩!? 知ってます?」と切島が飛んできた。

 

「ありますあります」

 

「あの脳無のことを!?」

 

「ありますあります」

 

「どういう情報ですか!?」

 

「やばいですね」

 

「知ってるじゃないですか!!」

 

 

 

 

 

 テレビの中でエンデヴァーが動いた。

 

 炎をまとって高層ビルを蹴り上がった。空中に跳んだ。炎の翼みたいなものが背中から広がった。体が真っ赤に染まった。

 

 野獣先輩の内心に、静かな波が立った。

 

 ——でかい。

 

 身長が百九十センチを超えている。肩幅が広い。炎を使うたびに背中の筋肉が収縮しているのが、映像越しでも分かる。胸郭の厚みが異常だ。炎系の個性持ちは体の中心に熱を溜める構造になっているから、胸から腹にかけての筋肉の密度が一般人と根本的に違う。

 

 肩のライン。首の太さ。顎の角度。

 

 野獣先輩は画面を見ながら、ゆっくりと頷いた。

 

「ムラムラジェラシーを感じる」

 

 小声で言った。

 

「え、先輩今なんて言いました?」と上鳴が耳を近づけてきた。

 

「ありますあります」

 

「語録でしたか。じゃあいいです」

 

 

 

 

 

 戦闘が激化した。

 

 ハイエンドが脳無の中でも別格の動きをしていた。思考している。意志がある。ヒーローの行動に反応している。

 

「センセンシャル!」

 

 野獣先輩が言った。

 

 索敵が広がった。通常の五倍の範囲。普段は半径五百メートルが基本だが、センセンシャルを使うと日本全土の「大きな気配」の輪郭だけが入ってくる。精度は落ちる。でも——「何かが動いている」という感覚は拾える。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 福岡の方向から、何かが来た。

 

 ハイエンドの気配——でかい。強い。通常の脳無の十倍以上の意志の密度がある。エンデヴァーが正面から受け止めている。

 

 もう一つ。

 

 別の気配。遠くにいる。動いていない。ただ——見ている。観察している。

 

「もう始まってる!」

 

 野獣先輩が言った。

 

「え? もう始まってますよ先輩テレビ見てますか?」と上鳴が言った。

 

「ありますあります」

 

「始まってますよねもう」

 

「もう始まってる!」

 

「だから——あ、なんか別の意味?」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 テレビの前にA組が集まった。食堂全体が静かになった。

 

 エンデヴァーがハイエンドの頭部に炎を叩き込んだ。頭が再生した。また叩き込んだ。また再生した。

 

「頭を壊しても再生する……!」と緑谷がノートを出しながら言った。「脳まで届かないと——」

 

「ジュージューになるまでやるからな〜」

 

 野獣先輩が画面に向かって言った。

 

「それ先輩が言うことじゃなくてエンデヴァーさんが今やってることですよね!?」と切島が叫んだ。

 

「ありますあります」

 

「語録がリアルタイム実況になってる!!」

 

 画面の中でエンデヴァーが高空に上がった。ホークスが羽根で押し上げた。エンデヴァーの全身が炎に包まれた。蓄熱の限界まで溜め込んでいる。筋肉の輪郭が炎の中に浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 野獣先輩は画面から目が離せなかった。

 

 エンデヴァーが全力で炎を溜め込んでいる。体の中心から限界まで熱を圧縮している。その状態で背中の筋肉が縦に走っている。脊柱起立筋の収縮が、炎越しでも見える。

 

 ——背中のラインがいい。

 

 広背筋と僧帽筋の境界線がはっきりしている。炎を使いすぎると体に熱がこもって能力が落ちると聞いたことがある。それでも限界まで溜める。限界を超える。そのための体の作り方が——

 

「桃かな?」

 

 小声で言った。

 

「先輩ってば今何言ったんすか」と切島が眉間にしわを寄せながら聞いた。

 

「ありますあります」

 

「語録だとしてもちょっとよく分からなかったっすよ」

 

「ありますあります」

 

 画面の中でエンデヴァーが叫んだ。

 

 プロミネンスバーンが放たれた。

 

 炎の柱がハイエンドを貫いた。脳まで届いた。ハイエンドが止まった。

 

 食堂全体から歓声が上がった。

 

「やった!!」と切島が叫んだ。「エンデヴァーさん!!」

 

「Foo↑気持ちぃ~」

 

 野獣先輩が言った。

 

「先輩!! 今それ絶対エンデヴァーさんの体見て言いましたよね!!」

 

「ありますあります」

 

「!!!!!」

 

 

 

 歓声が収まった頃、野獣先輩の索敵が反応した。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 あの「別の気配」が動き始めた。

 

 遠くから接近している。飛んでいる。炎系の個性——でも、エンデヴァーとは違う質の炎だ。エンデヴァーの炎が「蓄熱して放出する」タイプなら、こちらは「溜め込まずに垂れ流す」タイプだ。体の損傷も構わずに炎を出し続けている。

 

 怒りの気配がする。

 

 ずっと溜まっていた何かが、今動こうとしている。

 

「だいぶ溜まってんじゃんアゼルバイジャン」

 

 野獣先輩が言った。

 

「え、なんですか急に」と上鳴が聞いた。

 

「ありますあります」

 

「誰が溜まってるんですか」

 

「ありますあります」

 

「……先輩、索敵で何か見えてます?」とデクが静かに聞いた。

 

 野獣先輩はデクを見た。デクが画面とこちらを交互に見ていた。

 

「ありますあります」

 

「エンデヴァーさんの戦場に——まだ何かいますか」

 

「ありますあります」

 

 

デクの表情が変わった。「相澤先生に連絡します」

 

 

 

 

 

 

 テレビの画面が切り替わった。

 

 エンデヴァーが勝った映像が流れていた。ボロボロだったが立っていた。ホークスが傍にいた。

 

 その瞬間——索敵に強い反応が来た。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 あの炎の気配が戦場に入った。エンデヴァーの気配に向かっていった。強い。憎しみの密度が濃い。ずっとずっと蓄積されてきたものが、今爆発しようとしている。

 

「やばいですね」

 

 野獣先輩が静かに言った。今度は独り言じゃなかった。デクに向けた言葉だった。

 

「——何かいる」とデクが言った。「エンデヴァーさんの近くに」

 

「ありますあります」

 

「戦えますか、その気配」

 

「ありますあります」

 

「……強い?」

 

「だいぶ溜まってんじゃんアゼルバイジャン」

 

 デクが「……それは強いってことですよね」と言った。

 

「ありますあります」

 

 テレビの画面に——炎が映った。

 

 青い炎だった。

 

 

 

 食堂が静まり返った。

 

 画面の中で青い炎がエンデヴァーを囲んでいた。声が聞こえた。エンデヴァーに何かを言っていた。アナウンサーが動揺した声で「——別の敵が現れた模様です、身元は——」と言いかけて止まった。

 

「……荼毘だ」と轟が言った。

 

 轟の声が低かった。デクが轟を見た。

 

「知ってるのか」とデクが聞いた。

 

「……見たことがある」と轟が言った。それだけ言った。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 野獣先輩は索敵の焦点を絞った。

 

 荼毘の気配——怒り。憎しみ。痛み。長い長い年月分の何かが全部入っている。でも——その奥に、もっと古いものがある。焦がれていた何か。届かなかった何か。

 

「喉渇いた…喉渇かない?」

 

 野獣先輩が静かに言った。

 

 切島が「先輩、今はちょっと……」と言いかけた。

 

 デクが「——戦意を削ごうとしてるのか」と言った。「荼毘に向けて」

 

「ありますあります」

 

「届かないですよ、距離が遠すぎて」

 

「ありますあります」

 

「それでも言ってる」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 画面の中でホークスが動いた。荼毘とエンデヴァーの間に入ろうとした。でも青い炎が邪魔をした。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 ホークスの気配が索敵に引っかかった。

 

 速い。羽根の一枚一枚に意志がある。状況判断が瞬時に終わっている。炎の温度・風向き・エンデヴァーの体力——全部を一秒以内に計算して動いている。

 

 野獣先輩はホークスの気配に索敵を当て続けた。

 

 ——ホークスの背中に羽根が生えている。

 

 大きな翼。羽根の密度。翼を広げた時の肩幅のライン——

 

「ムラムラジェラシーを感じる」

 

 また出た。

 

「先輩また言ってる」と切島が言った。

 

「ありますあります」

 

「エンデヴァーさんに続いてホークスさんにも言いましたよね」

 

「ありますあります」

 

「何に嫉妬してるんすか!?」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 画面の中で荼毘が撤退した。

 

 去り際にエンデヴァーに向かって何か言った。アナウンサーが「聞き取れなかった模様」と言ったが——野獣先輩の索敵には、荼毘の口から出た言葉の「気配の形」が引っかかった。

 

 怒りではなかった。

 

 悲しみでもなかった。

 

 ずっと言えなかった何かを、ようやく言えた——という気配だった。

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩は小さく言った。

 

 誰にも聞こえない声量だった。索敵で荼毘の気配を追いながら言った。荼毘の気配が遠くなっていった。

 

 

 

 

 

 テレビの特番が続いていた。A組が少しずつ散り始めた。

 

 上鳴がスマートフォンを見ながら廊下に向かおうとした時、野獣先輩とすれ違った。

 

「あ、野獣先輩さん——」

 

 上鳴のスマートフォンの画面が目に入った。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 野獣先輩が立ち止まった。

 

 上鳴のスマートフォンの画面に「メモ」アプリが開いていた。

 

 中に箇条書きが見えた。

 

「語録まとめ①」と書いてある。

 

 その下に——

 

「「ありますあります」→基本語録、何でも肯定に聞こえる」

「「当たり前だよなぁ?」→全肯定の最終形態」

「「やべぇよやべぇよ」→警戒宣言(本気)」

「「ジュージューになるまでやるからな〜」→先輩が誰かの炎戦術を見ながら使った(エンデヴァー戦観戦中)」

 

 最後の一行に——

 

「「Foo↑気持ちぃ~」→エンデヴァーさんの体見て使った説が濃厚 記録しておく」

 

 と書いてある。星マークが三つついている。

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩が言った。

 

 上鳴が「ひあっ!!」と叫んでスマートフォンを背中に隠した。「み、見ました!? 見ました今!?」

 

「ありますあります」

 

「こ、これはですね——ヒーロー研究の一環というか、個性の効果を記録しておく義務感があって——」

 

「ありますあります」

 

「違います! 淫夢とか知りませんし!! 語録って言葉もたまたまこれは先輩に教えてもらったわけで——」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」って言うのやめてください落ち着けないから!!」

 

 切島が廊下から顔を出した。「上鳴どした?」

 

「なんでもない!!」と上鳴が叫んだ。「なんでもないです!! 行こ!!」

 

 上鳴が走り去った。

 

「あ~、いいっすね~」

 

 野獣先輩は廊下を見送りながら言った。

 

 

 

 

 

 消灯後、廊下で相澤が待っていた。

 

「デクから報告を受けた。今日の索敵——荼毘の気配を拾ったか」

 

「ありますあります」

 

「強さの評価は」

 

「だいぶ溜まってんじゃんアゼルバイジャン」

 

「……蓄積型か。かなり長い期間溜め込んでいる、ということか」

 

「ありますあります」

 

「轟との関係を索敵で感じたか」

 

 野獣先輩は少し止まった。

 

「ありますあります」

 

「そうか」と相澤が言った。何も聞かなかった。「……轟には俺から話す。お前は今日感じたことを覚えておけ」

 

「ありますあります」

 

「荼毘はまた来る。索敵で拾った気配の「形」を記憶しておけ。次に似た形を感じたら即座に報告しろ」

 

「ありますあります」

 

「それと」と相澤が言った。少し間を置いた。「今日のエンデヴァー戦——索敵以外で何か感じたか」

 

「ムラムラジェラシーを感じる」

 

「……何に対してだ」

 

「ありますあります」

 

「体格か」

 

「ありますあります」

 

「……お前は本当に」と相澤が言って止まった。「……いい。行け」

 

 相澤が背を向けた。廊下を歩き始めた。五歩ほどで止まった。振り返らずに言った。

 

「——エンデヴァーの体格は、確かに規格外だ」

 

「ありますあります」

 

「……それだけだ」

 

 相澤が歩いて行った。

 

 野獣先輩はその背中を見た。

 

「桃かな?」

 

 小声で言った。

 

 相澤が遠くで「うるさい」と言った。

 

 

 

 

 

 翌朝のニュースでホークスのインタビューが流れた。

 

「——いやー参ったね。エンデヴァーさんには毎回助けてもらってる感じがしますよ、俺には向かないよそういうの、正面から全力でやるやつ」

 

 ホークスが笑いながら話していた。

 

 野獣先輩はテレビを見た。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 画面の中のホークスから気配を読んだ。

 

 笑っている。本当に笑っている。でも——笑いの奥に何かがある。情報を持っている。動いている。昨日の戦場でただ偶然いたわけじゃない。

 

「もう始まってる!」

 

 小声で言った。

 

「先輩また言ってる」と切島が朝食を食べながら言った。「ホークスさんのこと?」

 

「ありますあります」

 

「何が始まってるんですか」

 

「ありますあります」

 

「…………」

 

 デクが箸を止めてテレビを見た。インタビューのホークスを見ていた。

 

「——何かを知ってる、ってこと? 野獣先輩さんの索敵で」

 

「ありますあります」

 

「……」とデクが手帳に何か書いた。

 

 

 

 

 

 その夜、野獣先輩が廊下を歩いていたら職員室の前で相澤に会った。

 

 相澤が「ちょうどいい」と言った。

 

「今日感じた荼毘の気配——「怒りの下に焦がれた何かがあった」と言っていたな」

 

「ありますあります」

 

「詳細を聞く。「焦がれていた」というのは、何に対してだ」

 

 野獣先輩は少し考えた。

 

「ありますあります」

 

「「ある」のか。言葉にできるか」

 

「ありますあります」

 

「……語録で言え」

 

「喉渇いた…喉渇かない?」

 

 相澤が止まった。「——欲しかったものがある、ということか。荼毘が」

 

「ありますあります」

 

「それが得られなかった」

 

「ありますあります」

 

「だから怒りになった」

 

「ありますあります」

 

 相澤がしばらく黙った。「……轟家のことを索敵で感じたか」

 

「ありますあります」

 

「轟焦凍と——荼毘の気配に、共通するものがあったか」

 

「ありますあります」

 

「そうか」

 

 相澤がノートを出した。さらさらと書いた。「語録・効果記録②——荼毘の気配分析。「喉渇いた…喉渇かない?」=剥奪された何かへの渇望を示す語録」と書いた。

 

「ありますあります」

 

「お前の索敵は精度が高い。気配から感情を読む——それは普通の索敵個性にはない」

 

「ありますあります」

 

「……使えるな」と相澤が言った。感情なく言った。でも——語録台帳に野獣先輩の名前を書いていた。「語録使用者・田所浩二」というページに、新しい項目が増えていた。

 

「実家のような安心感」

 

 野獣先輩が言った。

 

 相澤が台帳を閉じた。「帰れ」

 

「ありますあります」

 

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