【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩   作:まだら模様

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エンデヴァー♂のところへインターンを行います。
男ばかりの空間…何も起きないはずがなく…

キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意ください。

感想、評価付与をいただければ野獣先輩がエンデヴァーに狙いを定めます♂


冬季インターン編
第33話「じゃけん(事務所に)行きましょうね〜(エンデヴァー事務所インターン)」


 

 

 エンデヴァー事務所は、名古屋の繁華街に近いビルの上層階に構えられていた。

 

 入口の自動ドアが開くと、炎のような赤いロゴが正面に掲げてある。カウンター奥に複数のスタッフ。廊下の先に訓練スペース。床はコンクリート打ちっ放しで、天井が高い。

 

 緑谷・爆豪・轟の三人が入った。そのすぐ後ろに、野獣先輩が続いた。

 

「ショートくん!お疲れ〜!」

 

 廊下の奥から声が来た。炎のような黄緑の髪が揺れながら歩いてきた。バーニンだった。轟に向かって手を振った。三人を一瞥して、最後に野獣先輩を見た。

 

「……あなたは?」

 

「ありますあります」

 

「ありますあります?」

 

「ありますあります」

 

「……名前? 個性? どっち?」

 

「ありますあります」

 

 バーニンがしばらく野獣先輩を見た。轟を見た。「ショートくん、この人は?」

 

「……田所さん。語録しか喋れない」と轟が短く言った。

 

「語録しか喋れない」

 

「語録しか喋れない」

 

「語録ってつまり?」

 

「ありますあります」

 

 バーニンが眉をひそめた。それからニッと笑った。「まあいいか。入ってください!」

 

 

 

 

 待合スペースに通された四人が座って五分、廊下の突き当たりからエンデヴァーが現れた。

 

 大きかった。

 

 廊下の幅を一人で埋めるような肩幅。歩くたびに炎の気配が先行してくる。目が鋭い。髭が燃えている。轟・緑谷・爆豪を順番に見た。最後に野獣先輩を見た。

 

 止まった。

 

「……誰だ、貴様は」

 

「ありますあります」

 

「何が「ありますあります」だ」

 

「ありますあります」

 

「返事になっていない」

 

「ありますあります」

 

 エンデヴァーが轟を見た。「焦凍。説明しろ」

 

「語録しか喋れない。個性は索敵と語録能力。相澤先生の紹介で一時同行」と轟が言った。

 

「語録しか」

 

「ありますあります」

 

「……」

 

 エンデヴァーが野獣先輩を見た。野獣先輩がエンデヴァーを見た。

 

 ——でかい。

 

 昨日テレビで見た時より更にでかい。生身で見ると体積が全然違う。肩から腕にかけての筋肉の盛り上がりが、コスチューム越しでも分かる。炎の熱がここまで届いてくる。体幹から熱を放出しているから、腹部の筋肉が常時収縮している状態なんだろう。

 

「ちゃんと、ベスト出せるようにね」

 

 野獣先輩がエンデヴァーに向かって言った。

 

 全員が止まった。

 

「……今、俺に言ったのか」とエンデヴァーが言った。

 

「ありますあります」

 

「貴様が俺に「ベスト出せるように」と言ったのか」

 

「ありますあります」

 

 エンデヴァーの炎が少し強くなった。「……俺がいつベストを出せていないというんだ」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」はどちらの意味だ」

 

「ありますあります」

 

「……ッ」

 

「先輩!!」と緑谷が飛んできた。「エンデヴァーさんに語録を連射しないでください!!」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 午前中の見学ツアーで、バーニンが事務所の設備を案内した。

 

 野獣先輩はバーニンの説明を聞きながら、ずっとエンデヴァーの背中を索敵で追っていた。

 

 廊下でエンデヴァーが前を歩いている。

 

 ——背中のラインが違う。

 

 テレビで見た時と、至近距離で見た時では全然違う。ヒーロースーツの背面に沿って、広背筋が縦に走っている。歩くたびに体幹から炎を放出しているから、体の中心軸がブレない。軸がブレないということは、骨盤から上の安定感が常人と根本的に違う。

 

 肩甲骨の動き。首の後ろのライン。Tシャツ一枚の状態で見たら——

 

「あーつまんね」

 

 野獣先輩が言った。

 

「先輩ってば!! なんでですか今は!?」と切島が——いない。切島はここにいない。

 

 爆豪が振り返って「あぁ?」と言った。

 

「ありますあります」

 

「お前コスプレか何かか」

 

「ありますあります」

 

「なんだコイツ」と爆豪が緑谷に言った。

 

「語録だから……!」と緑谷が言った。「「あーつまんね」は……えっと、「退屈・相手の動きを見切った余裕」……じゃなかったっけ」

 

「ありますあります」

 

「見切った? エンデヴァーさんの何を??」

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩はエンデヴァーの背中を見ていた。

 

 

 

 

 

 昼の休憩時間、エンデヴァーが野獣先輩の前に立った。

 

「一つ聞く」とエンデヴァーが言った。「語録とやら——あれは全てが能力に紐付いているのか」

 

「ありますあります」

 

「では今の「ありますあります」にも効果があるのか」

 

「ありますあります」

 

「……貴様と話すのは難しいな」

 

「ありますあります」

 

 エンデヴァーが腕を組んだ。しばらく考えた。「……俺も一つ語録とやらを使ってみようか」

 

 全員が静止した。

 

「エンデヴァーさん!?」と緑谷が素っ頓狂な声を上げた。

 

「言葉を使った個性か。ならば俺が使っても効果が出るか否かを確かめてみる価値はある」

 

「そ、それは語録の原理を根本的に誤解していますよ!!」

 

 エンデヴァーが野獣先輩を見た。深呼吸した。そして言った。

 

「——ありますあります」

 

 全員が黙った。

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩が言った。

 

「……それは俺への返事か、発動確認か」

 

「ありますあります」

 

「どちらだ」

 

「ありますあります」

 

 エンデヴァーが「……む」と言った。「返事が全部同じで会話が成立しない」

 

「ありますあります」

 

「貴様の個性には「拒否」が存在しないのか」

 

「ありますあります」

 

「それは「ある」という意味か「ない」という意味か」

 

「ありますあります」

 

 エンデヴァーの眉間のしわが深くなった。炎が少し強くなった。「……俺が「俺を見ていてくれ」と言えばどうなる」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」は返事ではなく語録なのか」

 

「ありますあります」

 

「……」

 

 バーニンが笑いをこらえながら口元を手で押さえた。

 

 

 

 

 

「もう一度やる」とエンデヴァーが言った。「今度は違う語録を使う」

 

「エンデヴァーさん!? なんでそんなやる気なんですか!?」と緑谷が叫んだ。

 

「語録は音声で発動する個性だと聞いた。ならば俺が使っても発動する可能性がある」

 

「そ、それは……構造的に無理があると思います……!」

 

 エンデヴァーが目を細めた。そして言った。

 

「——じゃけん夜行きましょうね〜」

 

 廊下が静まり返った。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 爆豪が「何やってんだ」と言った。

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩が静かに言った。

 

「それは肯定か」とエンデヴァーが言った。

 

「ありますあります」

 

「……「じゃけん夜行きましょうね〜」は誘い込みの語録だと教えてもらったが、俺が使ったら効果が出たのか」

 

「ありますあります」

 

「どんな効果が」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」は情報量ゼロだ」

 

「ありますあります」

 

 エンデヴァーが轟を向いた。「焦凍。この男の語録は全てこうなのか」

 

「……だいたい」と轟が言った。「「ありますあります」が基本語録だから」

 

「返事が一種類しかない個性というのは」

 

「ありますあります」

 

「……俺に言ったのか」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 午後。エンデヴァーが訓練場に三人と野獣先輩を連れてきた。

 

「インターンで俺が見るのは「個性の使い方」ではなく「体の使い方」だ。まず各自が今の課題を把握しろ」

 

 エンデヴァーが緑谷を見た。「緑谷——お前は黒鞭の制御。体に流れている力を意識しろ」

 

「は、はい!」

 

 爆豪を見た。「爆豪——飛んでいる時のブレを消せ。着地の衝撃を爆破で相殺しきれていない」

 

「うるせぇ分かってる」

 

 轟を見た。「焦凍——左の炎の出力が右の氷より低い。意図的に制限している」

 

 轟が「……分かってる」と言った。

 

 最後に野獣先輩を見た。「……貴様は何をするつもりだ」

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 野獣先輩が言った。

 

 エンデヴァーが「索敵か」と言った。「範囲はどの程度だ」

 

「センセンシャル!」

 

「……それは先ほどの「センセンシャル」か。拡張したのか」

 

「ありますあります」

 

「今どこまで感知できている」

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 エンデヴァーが少し考えた。「……訓練場の外に何かいるか」

 

「ありますあります」

 

「何人だ」

 

「ありますあります」

 

「一人か」

 

「ありますあります」

 

「ヴィランか」

 

「ありますあります」

 

「違うのか」

 

「ありますあります」

 

「……どちらだ」

 

「ありますあります」

 

 エンデヴァーが「……む」と言った。「YES/NOが「ありますあります」で統一されているのか」

 

「ありますあります」

 

「不便だな」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 訓練の合間、野獣先輩は索敵を緩めて周囲を観察した。

 

 隣に轟がいた。

 

 壁にもたれて水を飲んでいた。左半分が赤い髪。右半分が白い髪。左目の周囲に火傷の跡。視線が真っすぐで、感情が読みにくい顔。

 

 横顔が——

 

 ——目鼻立ちが整っている。

 

 輪郭の線がはっきりしている。首の付け根から肩にかけてのラインが綺麗だ。炎と氷の両方を使う個性のせいか、体幹の筋肉の密度が均等に高い。特に脇腹から腰にかけての絞りが——

 

「やっちゃうよ?やっちゃうよ!?」

 

 野獣先輩が思わず言った。

 

 轟が顔を向けた。「……何が」

 

「ありますあります」

 

「俺が何かしようとしているのか」

 

「ありますあります」

 

「……何をだ」

 

「ありますあります」

 

 轟がしばらく野獣先輩を見た。「……索敵で何か感じたか」

 

「ありますあります」

 

「……外か」

 

「ありますあります」

 

「分かった」と轟が言って立ち上がった。

 

 轟が立ち上がった時の腰から太ももにかけての動き——

 

「やっちゃうよ?やっちゃうよ!?」

 

 また言った。

 

「……今のは索敵じゃないな」と轟が静かに言った。

 

「ありますあります」

 

「……そうか」

 

 

 

 

 夕方。訓練が終わって、エンデヴァーが事務所の奥から戻ってきた。

 

 何かを考えている顔だった。野獣先輩の前に立った。

 

「一つ分かったことがある」とエンデヴァーが言った。

 

「ありますあります」

 

「語録は「言葉の意味」ではなく「言葉の形と声の質」が能力と紐付いているのではないか。だから俺が発音しても効果が出ない」

 

「ありますあります」

 

「肯定か」

 

「ありますあります」

 

「つまり——語録の能力を俺が使うには、俺の声に語録を「覚え込ませる」必要があるということか」

 

「ありますあります」

 

「……なるほど。それは長期的な訓練が必要だな」

 

「ありますあります」

 

 エンデヴァーが少し間を置いた。「……もう一つ聞く。「ありますあります」を語録として使用した場合、発動する能力は何だ」

 

「ありますあります」

 

「今の「ありますあります」は答えか、発動か」

 

「ありますあります」

 

「……む」

 

 エンデヴァーがしばらく考えた。

 

「——あっ、これかぁ!」

 

 言った。

 

 全員が止まった。

 

「エンデヴァーさん!? また語録を!?」と緑谷が叫んだ。

 

「「あっ、これかぁ」は「弱点の特定」に使う語録だと教えてもらった。つまり俺が使うことで、貴様の語録の仕組みの「弱点」を特定できるか試した」

 

「ありますあります」

 

「発動したか」

 

「ありますあります」

 

「どちらだ」

 

「ありますあります」

 

 爆豪が「もういいだろ」と言った。

 

 バーニンが壁の向こうで笑い声をあげていた。

 

 

 

 夕刻、野獣先輩の索敵に引っかかるものがあった。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 事務所の外、半径三百メートルの範囲に——複数の「待機している気配」がある。動いていない。ただじっとしている。でも「向いている方向」が全員、この事務所だ。

 

「お待たせ」

 

 野獣先輩がエンデヴァーに向かって言った。

 

 エンデヴァーが反応した。「……索敵に何か引っかかったか」

 

「ありますあります」

 

「脅威か」

 

「ありますあります」

 

「何人だ」

 

「ありますあります」

 

「複数か」

 

「ありますあります」

 

「武装しているか」

 

「ありますあります」

 

「……個性持ちか」

 

「ありますあります」

 

 エンデヴァーの炎が低く燃えた。「バーニン」

 

「はい!」とバーニンが即座に返事した。

 

「外の確認を。静かに」

 

「了解!」

 

 バーニンが消えた。三十秒で戻ってきた。「三人組の個性持ちが東側の路地に。ビルボードチャートの記念品目当てか、それともマスコミか——」

 

「ありますあります」

 

「違う?」と野獣先輩を見た。

 

「ありますあります」

 

「脅威、ってこと?」

 

「ありますあります」

 

 エンデヴァーが「動くな」と言った。廊下に出た。

 

-

 

 

 

 エンデヴァーが先行した。緑谷・爆豪・轟が続いた。野獣先輩は後方から索敵を張った。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 三人の気配が動いた。エンデヴァーを感知した。逃げようとしている。でも——一人が別方向に動いた。

 

「開いてんじゃ~ん!」

 

 野獣先輩が言った。

 

「え?」と緑谷が止まった。

 

「索敵! 西側!」と爆豪が即座に読んだ。「一人だけ別に動いてる!」

 

「ありますあります」

 

「合ってますか!」

 

「ありますあります」

 

「合ってる!」と爆豪が爆破を使いながら西側に向かった。

 

 エンデヴァーが正面の二人を制した。炎を足元に落として動きを止めた。

 

 野獣先輩は後方で索敵を広げた。

 

「ピトン…ポチョン…」

 

 気配を消した。索敵は維持したまま、自分の存在感をゼロにする。明鏡止水。三人の気配が「あれ? さっきそこにいた人が消えた」と微妙に動揺するのが拾えた。

 

「ありますあります」

 

 小さく言った。確認。索敵範囲に異常なし。

 

 三人組はエンデヴァーと爆豪に制圧された。個性無免許の軽微な違法行為だった。大事には至らなかった。

 

 

 

 撤収後、事務所に戻った。

 

 エンデヴァーが野獣先輩の前に立った。「「お待たせ」——あれは索敵で何かを感知した合図だったな」

 

「ありますあります」

 

「意図して使ったのか」

 

「ありますあります」

 

「……語録を状況に合わせて選んでいる」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」だけで情報を伝達することはできないのか」

 

「ありますあります」

 

「できないのか、できるのかどちらだ」

 

「ありますあります」

 

 エンデヴァーが深く息を吐いた。「……俺は貴様と会話するための語録を習得する必要があるな」

 

「ありますあります」

 

「始める」

 

「ありますあります」

 

「今すぐだ」

 

「ありますあります」

 

 バーニンが「絶対無理ですよ所長」と言った。

 

「アツゥイ!」

 

 野獣先輩がバーニンに向かって言った。

 

「え、私!?」

 

「ありますあります」

 

「熱い!? 褒めてる!? どっち!?」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 夜、バーニンが事務所の休憩室で一人でいた。

 

 スマートフォンを見ていた。

 

 野獣先輩が自販機を使いに来た。廊下を通りかかって——索敵で気配を拾った。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 バーニンが——何かを「探している」気配だ。スマートフォンで検索している。「分からないものを調べようとしている」気配。

 

 野獣先輩が自販機を使いながら休憩室の前を通った。

 

 ちらりと画面が見えた。

 

 バーニンのスマートフォンに——

 

「淫夢語録 一覧」

 

 と入力された検索窓が見えた。

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩が小さく言った。

 

 バーニンが「ひぃっ!!」と飛び退いた。スマートフォンをソファのクッションで覆った。「た、田所さん!! いつからいましたか!!」

 

「ありますあります」

 

「今のは……私のスマホは……あの、これは仕事上の個性研究で……!」

 

「ありますあります」

 

「所長が「語録を習得したい」って言ったから、私がリストアップしてあげようと思って!! 個人的な興味とかは一切ありませんから!!」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」って言うの待ってください心臓に悪いんですよ!!」

 

「ちゃんと、ベスト出せるようにね」

 

 野獣先輩が静かに言った。

 

 バーニンが「……は」と止まった。「……それ、どういう意味ですか」

 

「ありますあります」

 

「励ましてる?」

 

「ありますあります」

 

 バーニンがしばらく野獣先輩を見た。それからスマートフォンをクッションの下から取り出した。「……一個だけ聞いていいですか。「ありますあります」って——何の語録ですか」

 

「ありますあります」

 

「ありますあります」

 

「ありますあります」

 

「……調べたら出てきませんでした」

 

「ありますあります」

 

「「ある」んですか」

 

「ありますあります」

 

「……分かんない。でもなんかすごく「ありますあります」って言いたくなってきた」

 

「ありますあります」

 

 

 

 深夜、エンデヴァーの執務室の電気がついていた。

 

 野獣先輩が廊下を通った時、ドアの隙間から光が漏れていた。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 エンデヴァーの気配——集中している。何かを読んでいる。紙の束か、画面か。

 

「アーイキソ」

 

 野獣先輩が小声で言った。

 

 エンデヴァーの気配が一瞬跳ねた。

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩が廊下を進んだ。

 

 翌朝、エンデヴァーの机の上に——一枚の紙があった。

 

 野獣先輩が横を通り過ぎた瞬間に目に入った。

 

 紙に箇条書きが書いてある。エンデヴァーの字で。

 

「語録研究メモ」と書いてある。

 

 その下に——

 

「「ありますあります」:全状況に対応する基本語録。意味が確定しない。情報量が低い。しかし確実に相手の行動を止める効果がある。理由不明」

 

「「お待たせ」:索敵で何かを検知した際の通報語録として機能していた。意図して使っている」

 

「「あっ、これかぁ」:自分で使ってみたが効果なし。発声者との紐付きが必要か」

 

「「じゃけん夜行きましょうね〜」:俺が使ったら緑谷が笑いをこらえていた。理由不明」

 

 最後の行——

 

「「ちゃんと、ベスト出せるようにね」:俺に言った。腹が立った。なぜ腹が立ったのか考え中」

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩は小さく言って、廊下を進んだ。

 

 

 

 

 

 インターン最終日の夕方。

 

 エンデヴァーが四人を前に立った。

 

「評価を言う」と言った。「緑谷——黒鞭の反応速度が上がった。制御にはまだ時間がかかるが方向性は正しい」

 

「あ、ありがとうございます……!!」

 

「爆豪——着地の問題は半分解決した。もう半分は意識の問題だ。体より頭が先に行っている」

 

「分かってる」と爆豪が言った。「次来た時には終わらせる」

 

「……それでいい」

 

 轟を見た。「焦凍——左の出力を制限している理由は俺には分かる。ただし——」と一瞬止まった。「……それはお前が自分で決めることだ」

 

 轟が「……うん」と言った。

 

 最後に野獣先輩を見た。

 

「……田所浩二」

 

「ありますあります」

 

「索敵の精度と範囲は現役プロでも上位に入る。明鏡止水の使い方も理解している。「語録を状況に合わせて選ぶ」という判断力もある」

 

「ありますあります」

 

「ただし——語録でしか喋れないことが戦場での意思疎通を阻害している。それは課題だ」

 

「ありますあります」

 

「分かっているか」

 

「ありますあります」

 

「……」エンデヴァーが少し間を置いた。「「ありますあります」はYESか」

 

「ありますあります」

 

「……そうか」

 

 エンデヴァーが背を向けた。廊下に向かった。五歩で止まった。振り返らずに言った。

 

「——「ちゃんと、ベスト出せるようにね」。俺に言ったあの語録の意味を——もう少し考えることにした」

 

「ありますあります」

 

 エンデヴァーが歩いて行った。

 

「じゃけん夜行きましょうね〜」

 

 野獣先輩が背中に向かって言った。

 

 エンデヴァーが遠くで「……うるさい」と言った。

 

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