【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩   作:まだら模様

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ちょっとずつ現実に尋常してくる怖さ…ありますあります
どう動いていくのか…

キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意ください。

評価付与、感想は野獣先輩か不安をかき消すように咆哮を上げてくれます!


異能解放軍編
第34話「まーだ(暗躍に)時間かかりそうですかね〜(異能解放軍の影)」


 

 

 エンデヴァー事務所インターンから帰った翌日。

 

 夜、野獣先輩は寮の屋上にいた。

 

 空を見ていた。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 索敵を広げた。通常モード。半径五百メートル。雄英の敷地内と周辺の気配を全部拾う。

 

 いつも通りの夜だった。

 

 A組の寮の各室に、各自の気配。廊下に相澤の巡回。グラウンドに残って練習している声。食堂の方向に厨房スタッフ。

 

 全部いつも通り。

 

 でも——

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 もう一回。

 

 ずっと遠くに——「何か」がいる。

 

 それ自体は何か月も前からうっすら感じていた。ハイエンド戦の時にもセンセンシャルで拾いかけた「大きな気配の塊」。日本の国土のどこかに、すごく大きな集団がいる。それが——少しずつ、少しずつ、こちらに向かって動いている気がする。

 

 気がする、という程度だった。まだ遠い。精度が出ない。

 

 でも今夜は——少し、近くなっている。

 

「やべぇよ…やべぇよ…」

 

 野獣先輩は静かに言った。

 

 一人で言った。

 

 空に向かって言った。

 

 

 

 

 

 朝のHR前。廊下で相澤を捕まえた。

 

「……何だ」と相澤が言った。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

「索敵に何か引っかかったか」

 

「ありますあります」

 

「新しい動きか」

 

「ありますあります」

 

「ヴィランの気配か」

 

「ありますあります」

 

「規模は」

 

「見ろよ見ろよ」

 

 相澤が立ち止まった。「「見ろよ」——示したいほど大きい、ということか」

 

「ありますあります」

 

「位置は」

 

「ありますあります」

 

「日本国内か」

 

「ありますあります」

 

「遠いか」

 

「ありますあります」

 

「……どの方向だ」

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 野獣先輩は少し考えた。方角を言う語録がない。でも——

 

「せっかくだから俺はこの赤の扉を選ぶぜ!」

 

 言った。

 

 相澤が「……西か。この国の西に大きな気配がある、ということか」

 

「ありますあります」

 

「接近しているか」

 

「ありますあります」

 

「……分かった。引き続き報告しろ。変化があれば即座に」

 

「親方に電話させてもらうね」

 

 相澤が「それは俺に報告する宣言か」と言った。

 

「ありますあります」

 

「……そうしろ」

 

 

 

 

 

 その日の放課後。

 

 屋上に誰かいた。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 索敵で拾った。

 

 翼の気配。羽根の一枚一枚に意志がある。笑っている。でも笑いの奥に何かが常にある人間。

 

 ホークスだった。

 

 屋上のフェンスに背中をもたれて、スマートフォンをいじっていた。野獣先輩が扉を開けたら、ホークスが顔を上げた。

 

「あー、いたいた。田所くんだっけ? 少し話せる?」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」がYESなのは知ってる。よかった」

 

 ホークスが知っていた。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 索敵をホークスに集中させた。

 

 ホークスの気配——明るい表面の下に、複数の層がある。仕事の層。感情の層。「知っているが言えない」の層。全部同時に動いている。

 

「You have a 夜中腹減んないすか?」

 

 野獣先輩が言った。

 

 ホークスが止まった。スマートフォンを下ろした。「……それ、もしかして俺が「夜中も動いてる」って分かって聞いてる?」

 

「ありますあります」

 

「索敵でそこまで分かるんだ」とホークスが言った。笑顔がそのままだったが、目が少し変わった。「田所くん、俺は今二重の仕事をしてる。詳しくは言えない。でも——雄英の生徒を巻き込むつもりはない」

 

「ありますあります」

 

「「分かった」ってこと?」

 

「ありますあります」

 

「助かる」とホークスが言った。「それとは別に、田所くんの索敵について聞きたいことがあって来た。あの「大きな塊」——感じてる?」

 

「やべぇよ…やべぇよ…」

 

 野獣先輩が静かに言った。

 

 ホークスの顔が少し変わった。「……やっぱりな。規模はどのくらいだと思う?」

 

「やだ…こわい…」

 

 ホークスが「そんなにか」と言った。笑顔が消えた。「索敵で「怖い」って感じるのは初めてか?」

 

「ありますあります」

 

「……そっか」

 

 ホークスがしばらく空を見た。羽根が少し広がった。

 

 

 

 

 

 ホークスが空を見ている。

 

 横顔が——

 

 目が良い。鷹のような視野で動体を追う目。鼻筋が通っている。顎のラインが整っている。笑っている時と笑っていない時で顔が全然違う。

 

 翼が背中から広がっている。大きい。羽根の枚数が多い。背中の筋肉が翼の付け根を支えているから、翼根元から肩甲骨にかけての筋肉の密度が通常の人間とは別構造になっている。翼を動かすたびに僧帽筋が——

 

「ああ^~もう糞が出るう~~」

 

 思わず言った。

 

「——え?」とホークスが素の声で言った。「今なんて言いました?」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」じゃなかったですよ今の。「ああ^~もう糞が出るう~~」じゃなかったですか?」

 

「ありますあります」

 

「それ語録?」

 

「ありますあります」

 

「どういう時に使う語録か聞いていいですか」

 

「ありますあります」

 

「「ある」んですか」

 

「ありますあります」

 

 ホークスが「……まあいいか」と言った。でも少し笑っていた。「語録全部の意味を解説してくれる人がいたら会いたい」

 

「あのさぁ…イワナ、書かなかった?」

 

「え?」とホークスが首を傾けた。「今「イワナ」って聞こえたんですけど。それ語録ですか?」

 

「ありますあります」

 

「「岩魚」じゃないですよね。……「誰かが書き記していた」みたいなニュアンス?」

 

「ありますあります」

 

「語録のリストとか?」

 

「ありますあります」

 

「……どこかに語録の全部の効果をまとめた資料がある?」

 

「ありますあります」

 

 ホークスが「欲しい」と言った。即答だった。「コピーくれたら助かるんですけど」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 話が一段落した後、ホークスがスマートフォンをポケットに入れながら言った。

 

「田所くん——「野獣先輩」でしょ?」

 

 野獣先輩が止まった。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

「知ってる顔してくれてるじゃないですか」とホークスが笑った。「情報収集は仕事のうちなんで。個性名が「語録」で、元ネタが——まあ、そういうやつでしょ」

 

「ありますあります」

 

「「24歳、学生です」の人でしょ」とホークスが言った。

 

 全く動じた様子がなかった。

 

「ありますあります」

 

「うちの相澤先生経由でちょっと名前を聞いて、そこから調べたら出てきましたよ。それなりに有名じゃないですか、昔から」

 

「ありますあります」

 

「公安のデータベースにも「語録能力・詳細不明」で載ってましたし。あ、でも俺個人的に語録好きですよ。笑えるし頭の使い方が面白い」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」だけで会話できる人も初めて見ましたし」

 

「ありますあります」

 

 ホークスが屋上のフェンスから離れた。「また話しましょう。あと——その「大きな塊」、変化があったらすぐ連絡くれると助かる。相澤先生経由でいいんで」

 

「親方に電話させてもらうね」

 

「相澤先生が「親方」なんですか」とホークスが笑った。

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 その夜、また屋上に出た。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 索敵を広げた。

 

 あの気配が——また少し近くなっていた。

 

 数が多い。人間の数が多い。普通のヴィランの集団じゃない。組織的に動いている。統率されている。その中心に——特別強い何かがある。一つじゃない。複数の「核」がある。

 

「やべぇよ…やべぇよ…」

 

 また出た。今度は少し大きかった。

 

 廊下の方向に気配が動いた。相澤の巡回ルートと違う。誰かが屋上に来る。

 

 扉が開いた。

 

 切島だった。

 

「先輩、こんな時間に——って先輩の顔が」と切島が止まった。「……いつもと違います。何かありましたか」

 

「やべぇよ…やべぇよ…」

 

 切島の表情が変わった。切島はもう野獣先輩の語録を長く聞いてきた。「やべぇよ」が本気モードの警戒宣言だと知っている。

 

「……デカいですか。規模が」

 

「ありますあります」

 

「俺たちに関係あることですか」

 

「ありますあります」

 

「……今すぐ?」

 

「ありますあります」

 

「今すぐじゃないけど来る、ってこと?」

 

「ありますあります」

 

 切島がしばらく黙った。「……先輩は怖いって思ってますか」

 

「やだ…こわい…」

 

 切島が「……」と息を吸った。「先輩がそこまで言うのは初めてだ」

 

「ありますあります」

 

「相澤先生には言いましたか」

 

「ありますあります」

 

「じゃあ先生が動いてくれてる」

 

「ありますあります」

 

 切島がフェンスの横に来て、野獣先輩の隣に立った。二人で空を見た。しばらく誰も喋らなかった。

 

「……先輩」と切島が言った。「俺たちは強くなれますか」

 

「ありますあります」

 

「根拠は?」

 

「N~いい時には結構いくね」

 

 切島が「……それ、コンディション語録ですよね」と言った。「俺たちのコンディションが上がってる、ってこと?」

 

「ありますあります」

 

「……そっか」と切島が言った。「なんかそれ、先輩が言うと信用できます。索敵で分かってるんでしょ」

 

「ありますあります」

 

 二人でしばらく空を見た。

 

 

 

 

 朝食時。爆豪と轟が並んで座っていた。

 

 轟が爆豪に「昨日聞いたか」と言った。

 

「何が」

 

「田所さん——屋上で誰かの横顔を見てた。索敵じゃなくて」

 

「あぁ?」

 

「エンデヴァー事務所のインターン中に俺に向かって「やっちゃうよ?やっちゃうよ!?」って二回言ってきた」

 

「……何それ」

 

「索敵じゃない気配の向け方だった」と轟が静かに言った。「俺の横顔を見てた」

 

 爆豪がしばらく黙った。「……それで?」

 

「別に何もない。「今のは索敵じゃないな」って言ったら「ありますあります」って言ってた」

 

「認めたのか」

 

「ありますあります」の方向が肯定だった」

 

 爆豪がトレーに視線を落とした。「……田所の語録全部覚えてんのか、お前」

 

「ある程度は」

 

「……俺も大体分かってきた」

 

「そうか」

 

 間があった。

 

「——俺の背中は見られてないか」と爆豪が言った。

 

 轟が「覚えてない」と言った。

 

「……そうか」

 

 爆豪が食事を再開した。しばらく間があった。

 

「……気になるのか」と轟が静かに言った。

 

「うるせぇ」

 

 

 

 

 

 昼休み。上鳴が廊下を歩いていたら野獣先輩と鉢合わせた。

 

「あ、野獣先輩さん——!」

 

 上鳴がスマートフォンを背中に隠した。反射的に。

 

「ありますあります」

 

「な、なんでもないです。語録まとめの続きとかじゃないです」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」は「そうか」という意味でとっていいですか」

 

「ありますあります」

 

「助かります——あのですね、先輩。俺、前回のが恥ずかしくて追加はしてないんですよ。本当に」

 

「ありますあります」

 

「……ちょっとだけ追加しました」

 

「ありますあります」

 

「全部で四十二項目になりました」

 

「ありますあります」

 

「多い!! 「ありますあります」って言わないでください!!」

 

 上鳴がスマートフォンを前に向けた。開いていたメモに——

 

「語録まとめ②」

 

と書いてある。見出しの下に細かい字が続く。

 

「「やっちゃうよ?やっちゃうよ!?」→轟くんの横顔に向けて使用(エンデヴァー事務所インターン)・轟くんに「今のは索敵じゃないな」と言われた→つまり先輩ホモ視点確定?要検証」

 

という項目に、赤い下線が引いてある。

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩が静かに言った。

 

「「ありますあります」って言わないでください気まずいんですよ!!」

 

「ああ逃れられない!(カルマ)」

 

「え?!」

 

「ありますあります」

 

「逃れられないってどっちの話ですか!! 俺の語録研究が逃れられないってこと? 先輩の何かが逃れられないってこと?!」

 

「ありますあります」

 

「どっちですか!!」

 

 野獣先輩が前を向いて歩き始めた。

 

「まーだ時間かかりそうですかね〜」

 

 静かに言った。

 

「え、何が?? 俺の語録研究の理解が?? それとも——」

 

 上鳴が止まった。

 

「……それって索敵で感じた何かのことですか」

 

「ありますあります」

 

 上鳴の声から笑いが消えた。「……本当にヤバいやつが来る感じですか」

 

「やべぇよ…やべぇよ…」

 

「……」

 

 上鳴がスマートフォンをポケットにしまった。「……語録まとめはいったん閉じます」

 

「ありますあります」

 

-----

 

### 【夕方——相澤からの連絡】

 

 夕方、相澤が野獣先輩を呼んだ。

 

「報告した内容を上に伝えた。公安が動く。お前に一つ聞く」

 

「ありますあります」

 

「その「大きな塊」——核心にいる存在は何人だ」

 

 野獣先輩は索敵を広げた。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 あの気配を探した。遠い。でも——中心に「特別強いもの」が複数ある。数えようとした。うまく数えられない。

 

「あほくさ」

 

 言った。

 

「数えられないほど多いか、それとも「数える意味がない」か」とエンデヴァーが言った——じゃなく相澤が言った。「どちらだ」

 

「ありますあります」

 

「両方か」

 

「ありますあります」

 

「……そうか」と相澤が静かに言った。「……ホークスに伝えておく。お前は引き続き索敵で変化を拾え。何かあれば深夜でも報告しろ」

 

「ありますあります」

 

「それと——」と相澤が少し間を置いた。「今朝、エンデヴァーから連絡が来た」

 

「ありますあります」

 

「「「ちゃんと、ベスト出せるようにね」の意味が分かった」と言っていた」

 

「ありますあります」

 

「どういう意味か聞いたら「腹が立った理由も分かった」とだけ言って切った」

 

「ありますあります」

 

「……何を伝えたんだ、貴様は」

 

「ありますあります」

 

「「ある」のか」

 

「ありますあります」

 

「……分かった。いい」

 

 相澤が立ち上がりかけて、止まった。

 

「……それと、一つ確認だ。エンデヴァー事務所でバーニンに「淫夢語録 一覧」を検索させたのは意図的か」

 

「ありますあります」

 

「意図的にやったのか」

 

「ありますあります」

 

「……何のために」

 

「N~いい時には結構いくね」

 

「コンディション確認の語録が返ってきた——つまり「いい感じになってきている」という意味か」

 

「ありますあります」

 

「……何が「いい感じ」なのか俺には分からない」

 

「ありますあります」

 

「分からないままでいいか」

 

「ありますあります」

 

 相澤が「そうか」と言って立ち上がった。

 

 

 

 

 

 夜、再び屋上。

 

 今日一日で接触した人間の気配を、索敵で一人ずつ確認した。

 

 ホークス——翼の付け根の筋肉。肩甲骨周辺の発達が異常なほど高い。羽根を動かすための特殊な筋群が背中の両側に走っている。あの筋肉の構造は——どこに集中してついているか、次に会った時はもう少し詳しく見たい。

 

 切島——昨夜の屋上で隣に立った時。あいつは肩幅が広い。厳密に言うと骨格から大きい。訓練で鍛えた筋肉と骨格の大きさが合わさって、見た目より体積がある。硬化する個性だから体表の筋肉が常に少し張っている——

 

「もう許せるぞオイ!」

 

 思わず言った。

 

 一人で言った。

 

「ありますあります」

 

 確認した。大丈夫だ、今は一人だ。

 

 深呼吸した。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 索敵を広げた。

 

 あの気配——

 

 今夜は——

 

「やべぇよ…やべぇよ…」

 

 出た。

 

 今まで一番大きい声で出た。

 

 抑えようとしたが無理だった。声量が出てしまった。語録の発動が——止まらない。

 

「やべぇよ…やべぇよ…!」

 

 もう一回。さらに大きく。

 

 索敵の範囲が自動的に広がった。センセンシャルと同じ効果が起きている。広域索敵が勝手に発動している。「やべぇよ」が最大規模で出ると索敵が限界まで広がる——そういう構造になっているのを初めて知った。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 日本全土の気配が流れ込んできた。

 

 あの「塊」が——

 

 でかい。

 

 今まで感知した中で最大だ。単純な数だけじゃない。「意志の密度」が違う。全員が同じ方向を向いている。全員が同じものを信じている。全員が——「解放」という言葉に向かって動いている。

 

「やべぇよ…やべぇよ…!!」

 

 三回目。

 

 屋上の扉が開いた。

 

 相澤だった。「——今の声は」

 

「やべぇよ…やべぇよ…」

 

 四回目。まだ止まらない。

 

 相澤が野獣先輩の横に来た。「索敵に何か来たか」

 

「やべぇよ…やべぇよ…」

 

「規模か」

 

「やべぇよ…やべぇよ…」

 

「……そこまでか」

 

「やべぇよ…やべぇよ…」

 

 五回目でようやく止まった。

 

 相澤がしばらく沈黙した。それから「分かった」と言った。「今夜中に上に連絡する。お前はここにいろ。索敵を張り続けろ」

 

「ありますあります」

 

「変化があれば即座に言え」

 

「ありますあります」

 

「——田所」と相澤が言った。名前で呼んだ。「怖いか」

 

「やだ…こわい…」

 

 相澤が「そうか」と言った。「俺も同じだ」

 

 それだけ言って、スマートフォンを出して電話をかけ始めた。

 

 

 

 

 夜明け前まで屋上にいた。

 

 相澤が電話を続けていた。ホークスにも繋がった。相澤とホークスが短い言葉で情報を交換していた。

 

 野獣先輩は索敵を張り続けた。

 

 あの気配は動いていなかった。止まっている。でも——「いる」ことは確かだ。

 

「まーだ時間かかりそうですかね〜」

 

 野獣先輩が空に向かって言った。

 

 独り言だった。

 

 でも——「まだ時間はある」という意味で言った。「まだここには来ていない」という確認で言った。

 

「ありますあります」

 

 自分に向かって言った。

 

 東の空が少し明るくなってきた。

 

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