【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩   作:まだら模様

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日常会を入れつつ、しばいていきます。
実際に今世の野獣先輩はやはりヒーローですよね。
また男優の道へ進むのか暗黒ルート(未開拓)があるとかないとか…?

キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意ください。

評価付与、感想は野獣先輩が未来の展望についてインタビュー形式で答えてくれます
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第35話「ぬわああああン(相談)疲れたもおおおおん(進路相談・日常回)」

 

 

 二月。

 

 HRの時間に相澤が一枚の用紙を配った。

 

「進路希望調査票だ。二年生に向けての準備として提出させる。将来のヒーロー像、目指すヒーロー事務所の方向性、個性の発展計画を書け。明日の朝までに提出」

 

 A組が一斉に用紙を受け取った。

 

 デクがすでに鉛筆を走らせていた。

 

 爆豪がスパッと書き始めた。迷いがない。

 

 轟が「……」と止まっていた。

 

 野獣先輩は用紙を受け取った。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 索敵で用紙の気配を感じた。

 

 「希望ヒーロー名(ヒーロー名未定の場合は本名可)」

 

 「卒業後の進路(プロヒーロー事務所名・独立・その他)」

 

 「個性の将来的な活用計画」

 

 三つの欄がある。

 

 野獣先輩は鉛筆を持った。

 

「24歳、学生です」

 

 静かに言った。

 

「ありますあります」

 

 一人で確認した。

 

 そして一欄目に書いた。

 

 「田所浩二(24歳、学生)」

 

「先輩ってばまず名前欄ですよ!!」と切島が飛んできた。「ヒーロー名じゃないですか!!」

 

「ありますあります」

 

「名前で合ってるってことですか!!」

 

「ありますあります」

 

 切島が「二欄目は!?」と覗き込んだ。

 

 二欄目に——「学生を続ける」と書いてある。

 

「三欄目は!?」

 

 三欄目——「学生のまま語録を使う」と書いてある。

 

「……全部「学生」だ……」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 翌日の放課後。個別に相澤との進路面談があった。

 

 野獣先輩の番になった。

 

 相澤が調査票を見ていた。しばらく無言だった。

 

「……お前はずっとここにいるつもりか」

 

「ありますあります」

 

「雄英の生徒で「学生を続ける」と書いたのはお前だけだ」

 

「ありますあります」

 

「進路がないということか」

 

「24歳、学生です」

 

「それは知っている。聞いているのは「これからどうするか」だ」

 

「やめたくなりますよなんか部っ活ぅ~」

 

 相澤が止まった。「……部活を辞めたい、という語録か。意訳すると——「どうするかを考えること自体、面倒になってきた」という意味か」

 

「ありますあります」

 

「それは進路相談への答えにならない」

 

「ありますあります」

 

「分かっていてそう言っているのか」

 

「ありますあります」

 

 相澤が深く息を吐いた。「……正直に聞く。お前は——卒業した後に何かしたいことはあるか」

 

 野獣先輩は少し間を置いた。

 

「クゥーン…」

 

 静かに言った。

 

 相澤が「……それは「ない」という意味か。「分からない」という意味か」と聞いた。

 

「ありますあります」

 

「両方か」

 

「ありますあります」

 

「……そうか」

 

 相澤がしばらく黙った。「お前は雄英に来た時から「学生」として居続けている。索敵の精度は現役プロ上位。語録能力の実戦適用も問題ない。なぜ前に進まないと思う」

 

「こ、去年ですね」

 

 相澤が「……過去の話か。去年、何かあったのか」と言った。

 

「ありますあります」

 

「言えるか」

 

「ありますあります」

 

「言えないか」

 

「ありますあります」

 

「……どちらだ」

 

「ありますあります」

 

 相澤が「そうか」と言った。それ以上は聞かなかった。調査票に何か書いた。「今年中に方向性だけ決めろ。急かさない。ただし——」

 

 相澤が野獣先輩を見た。「——お前の索敵は必要とされている。それだけは覚えておけ」

 

「いいゾ~これ」

 

 野獣先輩が静かに言った。

 

 相澤が「……お前にその語録を言われると脱力する」と言った。

 

 

 

 

 

 面談を終えて廊下に出たら、サポート科の制服を着た女子が待っていた。

 

 発目明だった。

 

 緑の長い二つ結びの髪。目が輝いている。両手に図面の束を持っている。

 

「お客様!! お待ちしてました!!」

 

「ありますあります」

 

「田所先輩!! 私、発目明と申します!! サポート科一年!! 田所先輩の「語録能力」を分析した結果、画期的なサポートアイテムを考案しましたので!! 是非ご覧ください!!」

 

 図面を広げた。

 

「語録音声増幅・自動選択システム——「オート語録」です!!」

 

「ありますあります」

 

「仕組みはシンプルです!! 田所先輩の語録パターンを五百種類登録して、状況センサーが「今この語録を出すべき」という場面を検知したら自動で発声してくれる首輪型デバイスです!!」

 

「ありますあります」

 

「首輪型!! という点については一旦置いといて!!」

 

「ありますあります」

 

「装着感も軽量化を工夫して!! 装着画像がこちらです!!」

 

 図面の横に、首輪型デバイスをつけた人型のイラストが描いてある。

 

 野獣先輩はそれを見た。

 

「勝手にたまげてろ」

 

 静かに言った。

 

「え?! 驚いてませんよ!! これは最新技術の粋ですよ!!」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」も登録済みです!! 一番使用頻度が高い語録として優先度A判定です!!」

 

「ありますあります」

 

「ですよね!! 他には「やべぇよやべぇよ」「TARGET CAPTURED BODY SENSOR」「センセンシャル」等の索敵系語録も登録して——」

 

「あっ、そっかぁ…」

 

「何かお気づきの点がありましたか!!」

 

「ありますあります」

 

「ぜひ!! フィードバックをお願いします!!」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」はフィードバックじゃないですよ!!」

 

「ありますあります」

 

 廊下の向こうから相澤が来た。図面を一目見て「没だ」と言った。

 

「えぇー!! なんでですか相澤先生!!」

 

「語録の発動は田所本人の声と紐付いている。機械で代替できない。それと——首輪型にするな」

 

「でも機能的には!!」

 

「没だ。帰れ」

 

「むぅ!!」

 

 発目明が図面を抱えて去った。去り際に「次は改良版をお持ちします!!」と言った。

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩は言った。

 

「……発目を喜ばせるな」と相澤が言った。

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 夕食時、A組の話題が進路のことになった。

 

「俺はとにかくNo.1になる」と爆豪が即答した。「それだけだ」

 

「僕はヒーローの在り方自体を——」とデクが手帳を開き始めて「それは聞いてない」と爆豪に遮られた。

 

「轟くんはどうするの?」と緑谷が轟に聞いた。

 

「……考え中」

 

「先輩は?」と切島が野獣先輩を見た。

 

「やめたくなりますよなんか部っ活ぅ~」

 

 食堂全体が少し静かになった。

 

「……先輩、また「部活辞めたい」語録ですか」と切島が言った。

 

「ありますあります」

 

「進路考えるの嫌になってきましたか」

 

「ありますあります」

 

「……まあ分かりますけど」

 

「私もそうよ」と八百万が言った。「選択肢が多すぎて——」

 

「俺は全部分かった上でNo.1だからな」と爆豪が言った。選択肢の多さで悩む気配が一切ない。

 

「お前のことが好きだったんだよ!」

 

 野獣先輩が爆豪に向かって言った。

 

 全員が止まった。

 

「……あ?」と爆豪が野獣先輩を見た。

 

「ありますあります」

 

「何が「ありますあります」だ。今「好きだった」って言ったのか」

 

「ありますあります」

 

「「過去形」で言ったのか」

 

「ありますあります」

 

「……今は違うのか」

 

「ありますあります」

 

「「ある」のかよ!!」

 

「ありますあります」

 

 切島が「先輩ってば爆豪くんに「お前のことが好きだった」って言いましたよ!!」と叫んだ。

 

「知ってる!! 聞こえてた!!」

 

「どういう意味ですか先輩!!」

 

「ありますあります」

 

「分からない!! 語録だから分からない!!」

 

 爆豪が「気にしてねぇ」と言って飯を食い続けた。耳が少し赤かった。

 

 

 

 

 

 

 食後、廊下で爆豪が一人で歩いていた。

 

 野獣先輩はその後ろ姿を索敵で追った。

 

 爆豪の体格——背中が広い。肩幅が横に張り出している。首が太い。爆破系の個性は腕と手に集中して使うから、前腕から肩にかけての筋肉の付き方が普通のヒーロー科生とは違う。背中の筋肉が爆発の反動を毎回受け止めているから、背面全体の密度が高い。

 

 特に肩甲骨の間——

 

「お前のことが好きだったんだよ!」

 

 また言ってしまった。

 

 廊下に爆豪しかいなかった。

 

 爆豪が振り返った。「……今何て言った」

 

「ありますあります」

 

「「好きだった」って言ったよな」

 

「ありますあります」

 

「……また「過去形」か」

 

「ありますあります」

 

「今は」

 

「ありますあります」

 

「今も好きなのか」

 

「ありますあります」

 

「……」

 

 爆豪がしばらく野獣先輩を見た。それから前を向いた。「……気持ち悪い」と言った。でも——歩き方が少し変わった。背筋が伸びた。

 

「いいゾ~これ」

 

 野獣先輩は小さく言った。

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

 相澤が調査票を回収した後、机の上で確認していたら——一枚、余白に書き込みのある票を見つけた。

 

 B組・物間寧人の票だった。

 

 希望進路欄に「プロヒーロー(コピー個性を活かしたオールラウンド型)」と丁寧な字で書いてある。個性活用計画も具体的に書いてある。完璧な内容だった。

 

 ただ——票の裏面の端に、小さな字で何か書いてある。

 

 相澤がそれを見た。

 

「24歳、学生です」

 

 と書いてある。

 

 その横に——「(意味が気になる)」と書き添えてある。

 

 さらにその下に、消した跡がある。消したが薄く残っている。

 

「「ありますあります」ってどういう意味ですか」

 

 と書いて消した跡だった。

 

 相澤がしばらく票を見た。

 

 職員室のドアをノックする音がした。

 

「……入れ」

 

 物間が入ってきた。「相澤先生。B組の票も確認をお願いしたいのですが——」

 

「返却する前に聞く」と相澤が言った。「この裏の書き込みは何だ」

 

 物間が止まった。票の裏を見た。自分の字だと分かって、顔が少し赤くなった。

 

「それは——個性研究の延長で、語録の意味を考察していたもので——」

 

「進路票の裏に書くな」

 

「……すみません」

 

「語録の意味を知りたければ直接聞け」

 

「……聞けません」

 

「なぜだ」

 

 物間が「……理由は、ないです」と言った。

 

「ありますあります」

 

 廊下から野獣先輩の声が聞こえた。

 

 物間がドアの方を見た。

 

「ありますあります」

 

 また聞こえた。

 

 物間の耳が赤くなった。

 

「……出て行ってください田所先輩」と物間が廊下に向かって言った。

 

「ありますあります」

 

「本当に出て行ってください」

 

「ありますあります」

 

 物間が「相澤先生。票の裏の件は以後気をつけます」と言って、少し急いで職員室を出た。

 

 廊下で「ぬわああ!!」という声が一瞬聞こえた。

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩は廊下で静かに言った。

 

 

 

 

 

 

 昼休み。

 

 上鳴が一人でスマートフォンを見ていたら、後ろから爆豪が来た。

 

「上鳴」

 

「うわっ!! 爆豪くん!!」

 

「そのメモ、語録まとめか」

 

「ち、違います——」

 

「「②」の続きか」

 

「……③です」

 

「何項目だ」

 

「……五十七」

 

「見せろ」

 

「え、嫌です——」

 

「見せろ」

 

 爆豪がスマートフォンを覗き込んだ。上鳴が「やだやだ!! やだ!!」と体を捻ったが爆豪の腕の方が長かった。

 

「……「俺の背中」の項目があるか」

 

「……あります」

 

「何と書いてある」

 

「……「爆豪くんの背中:肩幅広め・背面筋密度高い・爆破反動を毎回受け止めている構造・先輩が興味を持っている可能性あり★★」」

 

 爆豪が無言になった。

 

「……★★か」

 

「……はい」

 

「★★って何だ。★の数は何を意味している」

 

「……先輩の注目度です。五段階で」

 

「★★は……低い方か」

 

「……真ん中です」

 

「……」

 

 しばらく沈黙があった。

 

「……他に★が多いのは誰だ」

 

「……エンデヴァーさんが★★★★★です」

 

「……そうか」

 

「轟くんが★★★★です」

 

「……俺は真ん中か」

 

「……爆豪くんはまだ継続観察中なので——」

 

「上げろ」

 

「え?!」

 

「★の数を上げろ。今すぐ」

 

「なんで!!」

 

「うるせぇ。上げろ」

 

「爆豪くんが自分の★を上げろって言うんですか!!」

 

「うるせぇ」

 

 爆豪がスマートフォンを上鳴に返した。歩き去りながら「言うな、誰にも」と言った。

 

「……は、はい」

 

 上鳴がスマートフォンを見た。爆豪の背中の欄を開いた。

 

「爆豪くんの背中:★★→★★★」と書き換えた。

 

「いつもの」

 

 上鳴がぼそっと言った。自分でも気づいていないような声量だった。

 

 

 

 

 

 放課後、相澤のスマートフォンが鳴った。

 

 見ると——エンデヴァーだった。

 

「……何だ」と相澤が出た。

 

「「やめたくなりますよなんか部っ活ぅ~」。これはどういう意味だ」

 

 相澤が「……進路相談で使ったのか」と言った。

 

「田所が俺のオフィスを出る時に言った。意味が分からなかった。語録の意味を調べたが——」

 

「調べたのか」

 

「……少し」

 

「どこで調べた」

 

「……それは関係ない」

 

「エンデヴァー。お前が語録を調べているということは——」

 

「意味だけ教えろ」

 

「……「部活を辞めたい」という意味だ。転じて「今やっていることを続けるのが面倒になってきた」という脱力の語録だ」

 

 少し間があった。

 

「……俺に向かって言ったのか、あの語録は」

 

「知らん。田所に聞け」

 

「田所は「ありますあります」しか言わない」

 

「そうだ」

 

「……その「ありますあります」の意味は」

 

「何でも肯定に聞こえる基本語録だ」

 

「何でも、というのは——YES、という意味か」

 

「文脈次第だ」

 

「……つまり、ほとんどの場合はYESか」

 

「……大体そうだ」

 

 少し間があった。

 

「……ありがとう」

 

 エンデヴァーが切った。

 

 相澤がスマートフォンを置いた。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛も゛う゛や゛だ゛!!!」

 

 廊下から野獣先輩の声が聞こえた。

 

「……入ってくるな」と相澤が言った。

 

「ありますあります」

 

「入ってくるなと言った」

 

「ありますあります」

 

 ドアが開いた。

 

「出ろ」

 

「ありますあります」

 

「……」

 

 相澤が「エンデヴァーの分の語録台帳を増設する必要がある」と言って机に向かった。

 

 

 

 

 

 夜、切島が野獣先輩の部屋をノックした。

 

「先輩、ちょっといいですか」

 

「ありますあります」

 

 切島が部屋に入った。座った。少し考えてから言った。

 

「……先輩は、ヒーローになりたいと思ったことはありますか」

 

「ありますあります」

 

「あるんですか」

 

「ありますあります」

 

「でも進路に書かなかった」

 

「ありますあります」

 

「……なんでですか」

 

 野獣先輩は少し間を置いた。

 

「こ、去年ですね」

 

「去年——何かあったんですか」

 

「ありますあります」

 

「……言えないことですか」

 

「ありますあります」

 

「……そっか」と切島が言った。「俺、先輩に一回も過去のこと聞いたことなかったですね」

 

「ありますあります」

 

「聞いてもいいですか。いつか」

 

「ありますあります」

 

「……「いつか」でいいですか」

 

「ありますあります」

 

 切島がしばらく黙った。それから顔を上げた。

 

「俺はヒーローになります。絶対。先輩の索敵が何かヤバいものを感じているのも分かってる。でも——その時に先輩が隣にいてくれたら、俺はもっと強くなれる気がするんで」

 

「ありますあります」

 

「……それは「いる」ってことですか」

 

「いいゾ~これ」

 

 切島が「……語録で言われると分かるようになってきた」と笑った。

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」も分かりますよ、もう」

 

「ありますあります」

 

「それも」

 

「ありますあります」

 

「それも」

 

 二人でしばらく笑った。

 

 

 

 

 

 全員が寝た後、野獣先輩は自分の調査票を取り出した。

 

 「田所浩二(24歳、学生)」

 

 「学生を続ける」

 

 「学生のまま語録を使う」

 

 三欄全部、自分で書いた。

 

「クゥーン…」

 

 小さく言った。

 

 誰も聞いていない。

 

 窓の外、遠くの方向——例の気配は今夜も動いていない。止まっている。でもいる。

 

「まーだ時間かかりそうですかね〜」

 

 窓に向かって言った。

 

 返事はなかった。

 

「ありますあります」

 

 自分に向かって言った。

 

 調査票を閉じた。

 

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