【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩   作:まだら模様

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いよいよ敵もアクセルを駆けてきましたね…
野獣先輩はどこまで喰らいつけるのか?

キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意ください。

感想、評価付与などは野獣先輩が「あっ?大丈夫か?」と敵の覚醒に怯える読者を支えてくれます。


超常解放戦線編/全面戦争編
第36話「これもう(複雑で)わけわかんねぇな(死柄木覚醒・ニュース速報)」


 

 

 朝のHR前だった。

 

 野獣先輩はいつも通り寮の廊下を歩いていた。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 索敵を広げていた。通常の範囲。雄英敷地内と周辺五百メートル。今日も問題ない、はずだった。

 

 引っかかった。

 

 遠くの方——例の「大きな塊」がある方向から。

 

 何かが「変わった」気配がした。

 

 距離は遠い。精度が出ない。でも——昨日までとは明らかに違う。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 もう一回。広げた。

 

 「塊」の中心にある「核」の気配が——大きくなっている。膨らんでいる。昨日まであった「人間の」感触の輪郭が、少しずつ溶け始めているような——

 

「痛いのに…この人おかしい…」

 

 野獣先輩は廊下で、誰もいない方向に向かって小声で言った。

 

 索敵で拾った「感覚」の言語化だった。

 

 あの核の気配が発している何かは——痛みを感じているのに止まらない。痛みを燃料にして変化を続けている。正常な人間の精神の動き方ではない。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 三回目。

 

 塊全体が——震えている。

 

 

 

 

 

 相澤のHRが始まった直後、廊下を歩いていた先生が教室の扉をノックした。

 

「相澤先生。テレビをつけてください。速報が入っています」

 

 相澤の目が変わった。「全員静かにしろ」

 

 教室の前面モニターに映像が映った。

 

 ニュース速報のテロップが流れていた。

 

 アナウンサーが緊張した声で読み上げていた。

 

 要約すると——異能解放軍と死柄木弔率いるヴィラン連合が激突。激戦の末、死柄木が異能解放軍の全組織を掌握。リ・デストロが膝を折った。解放軍の勢力を吸収した死柄木たちは、「超常解放戦線」として規模を一気に拡大した——

 

 教室が静かになった。

 

 デクが「……」と固まっていた。

 

 爆豪が画面を見ていた。口が閉じている。いつもの「うるせえ」がない。

 

 轟が「……規模はどのくらいだ」と呟いた。

 

「これもうわかんねぇな」

 

 野獣先輩が言った。

 

 全員が野獣先輩を見た。

 

「……田所」と相澤が言った。「索敵で何か感じているか」

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

「昨日から変化があったか」

 

「ありますあります」

 

「大きいか」

 

「ありますあります」

 

「……そうか」

 

 相澤が「HRを中断する。全員自室に戻って待機。追加の指示が来るまで動くな」と言った。

 

 

 

 

 

 教室から出た直後、廊下に人が溢れた。

 

 デクが青い顔で手帳を開いていた。上鳴が「マジっすかあれ……」と言っていた。轟は無言。爆豪が壁に手をついて画面のことを考えている顔をしていた。

 

「よしお前らクルルァについてこい」

 

 野獣先輩が言った。

 

 全員が止まった。

 

「……今の語録は?」と緑谷が言った。「「全員を引き連れる」効果の語録ですか?」

 

「ありますあります」

 

「ついていきますけど……どこに?」

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

「索敵しながら案内してくれる、ってこと?」

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩が歩き始めた。A組が後ろについてきた。全員ではないが、廊下にいた十数人が自然についてきた。切島が「先輩についてけ」と後ろに声をかけた。

 

 寮の屋上に出た。

 

 風が出ていた。空が白い。

 

 野獣先輩は屋上のフェンスの前に立った。索敵を広げた。センセンシャル級まで。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 日本全土に。

 

 あの方向——西より少し北。塊が今朝より大きくなっている。「核」が安定し始めている。まだ動いていない。でも——次の段階に進んだのは確かだった。

 

「いやちょっと待ってください…これもしかして、もしかするかもしれませんよ?」

 

 野獣先輩が言った。

 

「何がですか野獣先輩さん!」とデクが言った。

 

「ありますあります」

 

「何かある、ってことですよね。索敵で何か見えましたか」

 

「ありますあります」

 

「……悪い方向に、もしかする感じですか」

 

「ありますあります」

 

「……」

 

 デクが手帳に何かを書き始めた。

 

 切島が「先輩——核の気配が大きくなってますか」と言った。

 

「ありますあります」

 

「……動いてはいない?」

 

「ありますあります」

 

「今は動いていないけど、次は動く気配がある?」

 

「ありますあります」

 

 切島の顔が少し引き締まった。それでも「……分かりました」とだけ言った。

 

 

 

 

 

 

 他のメンバーが少し離れて話し合いを始めた中、爆豪だけが野獣先輩の横に来た。

 

 フェンスに腕を乗せた。遠くを見た。

 

「……お前の索敵に、死柄木の気配は引っかかるか」とだけ言った。

 

「ありますあります」

 

「……特定できるか」

 

「ありますあります」

 

「大きくなってるか」

 

「ありますあります」

 

「……どんな感じに大きくなってる」

 

 野獣先輩は少し考えた。どの語録で伝えるか。

 

「痛いのに…この人おかしい…」

 

 もう一回言った。今度は爆豪に向かって。

 

 爆豪が「……痛みを受けながら変化してる、ってことか」と言った。

 

「ありますあります」

 

「止まらないのか」

 

「ありますあります」

 

「……そうか」

 

 爆豪が短く息を吐いた。「俺は行くぞ。いつかあいつに勝つ。関係ない話じゃない」

 

「ありますあります」

 

「……応援するな」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」は応援じゃないのか」

 

「ありますあります」

 

「どっちだ」

 

「ありますあります」

 

 爆豪が「うるせえ」と言った。でもフェンスから腕を離さなかった。しばらく二人で遠くを見た。

 

 

 

 

 

 

 爆豪が遠くを見ている。

 

 横顔——眉間のしわが深い。眉が太い。目が鋭い。でも今は「怒り」じゃない。「決意」に近い顔をしている。決意の顔の時の爆豪は——怒りの顔と全然違う。眉の力の向きが違う。あごの噛み方が違う。

 

 首から肩にかけての筋肉が緊張している。

 

 広背筋が——

 

「イキスギィ!」

 

 出た。

 

 爆豪が振り返った。「……今何て言った」

 

「ありますあります」

 

「語録か」

 

「ありますあります」

 

「何の効果だ」

 

「ありますあります」

 

「「ある」のか」

 

「ありますあります」

 

「どんな効果だ」

 

「ありますあります」

 

「それは答えじゃない」

 

「ありますあります」

 

 爆豪が「……まあいい」と言って前を向いた。「俺の背中でも見てたか」

 

「ありますあります」

 

「……」

 

 爆豪が何も言わなかった。ただ前を向いていた。耳が少し赤かった。

 

 

 

 

 

 

 午後、相澤が野獣先輩を別室に呼んだ。

 

「公安から連絡が来た。田所の索敵情報を定期的に共有することになった。週に一度、俺を通じてお前の感知内容を報告しろ」

 

「ありますあります」

 

「形式は問わない。語録で伝えたことを俺が翻訳して文書にする」

 

「ありますあります」

 

「……一つ聞く。今朝の索敵で、核の気配が「安定した」と感じたか」

 

「ありますあります」

 

「膨張ではなく安定、か」

 

「ありますあります」

 

「……それは——次の段階に入った、という意味に取っていいか」

 

「あのさぁ…」

 

 相澤が「続けろ」と言った。

 

「んまぁそう…よくわかんなかったです」

 

「「だいたいそうだが正確には分からない」ということか」

 

「ありますあります」

 

「……そうか」と相澤が言った。「正直に言え。お前は今朝、索敵で何かに引っ張られたか」

 

 野獣先輩は少し間を置いた。

 

「ありますあります」

 

「語録が意図せず出た場面があったか」

 

「ありますあります」

 

「……どの語録が出た」

 

「イキスギィ!」

 

「過剰出力が起きた、ということか。索敵範囲の」

 

「ありますあります」

 

「あの核の気配が強くなって、索敵が引きずられた」

 

「ありますあります」

 

 相澤が「……分かった。報告に追記する。それと——」

 

 一拍置いた。

 

「——無理をするな。索敵を引きずられるほどの相手だ。限界まで広げる必要はない。変化だけ拾えれば十分だ」

 

「いいよ、来いよ!胸にかけて!胸に!」

 

 野獣先輩が静かに言った。

 

 相澤が「……それは「気にするな、来るなら来い」という意味か」と言った。

 

「ありますあります」

 

「……強がりか」

 

「ありますあります」

 

「……分かった」

 

 相澤が少し間を置いてから立ち上がった。ドアに向かいながら言った。

 

「——お前の索敵は必要だ。だが消耗させるために使うつもりはない」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 夕方の廊下。

 

 上鳴が走ってきた。スマートフォンを持って。

 

「野獣先輩さん!! ちょっといいですか!!」

 

「ありますあります」

 

「語録まとめ③なんですけど——今日の「これもうわかんねぇな」って、あれって——」

 

「ありますあります」

 

「あれって本気で言ってましたよね? 普段の「本気の語録発動」と雰囲気が違いましたよね?」

 

「ありますあります」

 

「……「これもうわかんねぇな」の能力設計欄、空白にしてるんです俺。意味が分からなくて。あれって——先輩が「本当に分からない」って思った時に出る語録ですか」

 

「ありますあります」

 

「……それって」と上鳴が止まった。「語録が「先輩の本音のフィルター」になってる、っていうことですか。索敵で感知した何かが「本当に理解できない」ってなった時に出る語録」

 

「ありますあります」

 

 上鳴がスマートフォンに素早く書き込んだ。「「これもうわかんねぇな」:先輩の本音語録。理解不能な状況への正直な反応。索敵でのみ発生。平常時には出ない——」

 

「あかんこれじゃ患者が死ぬゥ!」

 

 野獣先輩が言った。

 

「え?! 何が!! 俺の語録まとめ分析が!?」

 

「ありますあります」

 

「……分析が患者を死なせることになりますか」

 

「ありますあります」

 

「どういう意味ですか!!」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」で答えないでください!! 毎回分かんなくなる!!」

 

「これもうわかんねぇな」

 

 野獣先輩が言った。

 

「先輩も分かんないんですか!!」

 

「ありますあります」

 

 上鳴が「……本当に分かんないんだ、先輩も」と小声で言った。

 

「ありますあります」

 

 しばらく二人が廊下に立っていた。上鳴がスマートフォンを閉じた。「……先輩、怖いですか。あの気配」

 

「ありますあります」

 

「……俺も怖い。でも」と上鳴が言った。「爆豪くんみたいに「行くぞ」って言えるほど強くない。でも先輩の索敵がここにあるから、なんか——ちょっとだけ安心できるんですよね」

 

「ありますあります」

 

「それ「ありますあります」でいいですか?」と上鳴が笑った。半泣きだった。

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 夜、相澤のスマートフォンが鳴った。

 

 エンデヴァーだった。

 

「相澤。「これもうわかんねぇな」——今日、田所が使ったと聞いた」

 

 相澤が「聞いたとは」と言った。

 

「ホークスから連絡が来た。公安の索敵情報共有の話と一緒に、田所が今朝その語録を使ったという話が流れた」

 

「……語録一つを公安の情報ルートで確認したのか」

 

「……語録の意味を知りたかった」

 

「今の優先事項ではないだろう」

 

「……意味を教えろ」

 

 相澤が「「これもうわかんねぇな」は——本当に分からない時に出る田所の本音語録だ。あれは索敵で死柄木の覚醒を感知して出た」と言った。

 

 少し間があった。

 

「……本音なのか、あれが」

 

「ああ」

 

「田所が「分からない」と感じることがあるのか」

 

「ある」

 

 またしばらく間があった。

 

「……「ちゃんと、ベスト出せるようにね」も——田所の本音だったのか」

 

 相澤が「それは田所に聞け」と言った。

 

「……「ありますあります」しか返ってこない」

 

「そうだ」

 

「……」

 

「エンデヴァー。お前は今、語録の意味を調べて何をするつもりだ」

 

 間があった。

 

「…………これもうわかんねぇな」

 

 エンデヴァーが言った。

 

 電話が切れた。

 

 相澤がスマートフォンを置いた。しばらく何も言わなかった。

 

 廊下から「ありますあります」と聞こえた。

 

「……盗み聞きするな」と相澤が言った。

 

「ありますあります」

 

「ドアを閉めろ」

 

「ありますあります」

 

「ドアを閉めてから「ありますあります」と言え」

 

 ドアが閉まった。

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 

 深夜。屋上。

 

 野獣先輩は一人だった。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 索敵を広げた。センセンシャルまでは広げない。通常範囲より少し大きめ。引きずられないように。相澤の言った「変化だけ拾えれば十分だ」を守ろうとした。

 

 あの方向——

 

 核の気配が、安定している。今夜は膨張していない。ただ「在る」だけだ。でも「在る」こと自体の重さが昨日と違う。

 

「朝日テレビはキャンセルだ」

 

 野獣先輩が言った。

 

 誰もいない。

 

 意味は——「今夜この索敵をここで止める」という宣言だった。過剰に広げない。引きずられない。それだけ確認したら戻る。

 

「ありますあります」

 

 自分に向かって言った。

 

 空を見た。星が出ていた。

 

「いやちょっと待ってください…これもしかして、もしかするかもしれませんよ?」

 

 もう一度言った。

 

 今度は自分に向けて言った。

 

 索敵の中で——遠く遠くの方向に、あの「塊」とは別の気配が一つ動いているのが見えた。単独で、ゆっくり動いている。ホークスだった。二重スパイとして夜の中を動いている。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 ホークスの気配を一回だけ確認した。

 

 生きている。動いている。まだそこにいる。

 

「ありますあります」

 

 静かに言った。

 

 確認した。索敵を閉じた。

 

 屋上から降りた。

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

 廊下で切島が待っていた。

 

「先輩、昨夜も屋上にいましたか」

 

「ありますあります」

 

「……ホークスさんの気配、分かりましたか」

 

「ありますあります」

 

「生きてますか」

 

「ありますあります」

 

 切島が「……よかった」と言って息を吐いた。「先輩に索敵してもらうの、なんか正しい気がする。「いる」「いない」がはっきりするから」

 

「いいねぇー」

 

「先輩が「いいね」って言ってくれた!!」

 

「ありますあります」

 

「語録まとめで「いいねぇー」は「状況好転確認・コンディション上昇」って書いてありましたよ切島先輩!!」と上鳴が通りがかりに言った。

 

「俺に言わないでください!! 先輩に言ってください!!」と切島が言った。

 

「ありますあります」

 

「先輩に言ったら「ありますあります」って返ってきます!!」

 

「ありますあります」

 

「ね!!」

 

「ありますあります」

 

 三人で笑った。

 

 廊下の向こうから物間が歩いてきた。野獣先輩を見た。一瞬止まった。また歩き始めた。でも通り過ぎる直前に、ほとんど聞こえないような小声で——

 

「……「これもうわかんねぇな」——あれは本音だったんですか」

 

「ありますあります」

 

「……そうですか」と物間が言った。「……私も同じです」

 

 それだけ言って歩いて行った。

 

「物間くん!!」と上鳴が声をかけた。「語録まとめに「物間さんの反応」の欄作りましたよ!! 今日のでまた更新します!!」

 

「知りたくありません!!」と物間が振り返らずに言った。

 

「ありますあります」

 

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