【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩   作:まだら模様

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いよいよ感が出てきましたねえ…物語は加速していく…未知なる(意味深)ステージへ!

キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意下さい。

感想、評価付与は野獣先輩がヒーローとして困った時に助けてくれます!
「大丈夫だって。へーきへーき」


第38話「大会(出動)近いからね、しょうがないね(全ヒーロー出動・前夜)」

 

 

 朝のHRが始まる前に、相澤がA組全員を残した。

 

「伝えることがある。聞け」

 

 誰も喋らなかった。

 

 相澤が続けた。「ホークスからの情報が公安を通じて上に届いた。超常解放戦線が動く。時期は近い。詳細は教えられないが——全ヒーロー出動の準備が始まっている」

 

 教室が静かだった。

 

 「全ヒーロー出動」という言葉が重かった。

 

「お前たちはまだ学生だ。今の段階では直接戦闘に参加させない。ただし——索敵支援・後方支援の可能性はある」

 

 相澤が野獣先輩を見た。「田所。索敵の定期報告を今日から週三回に増やす。変化があれば即時連絡。以上だ」

 

「ありますあります」

 

「……何でもない顔をするな」

 

「ありますあります」

 

「……分かった。授業を始める」

 

 

 

 

 

 昼休み。

 

 A組の空気が重かった。

 

 食堂で野獣先輩は各自を順番に見た。

 

 デクが手帳を膝の上に開いたまま食事していた。手帳に目が行っていない。食事にも目が行っていない。遠くを見ていた。

 

「お前どう?」

 

 野獣先輩がデクに言った。

 

 デクが「え、あ——す、すみません! 大丈夫です!」と言った。

 

「ありますあります」

 

「「ある」んですか……」とデクが少し笑った。苦しそうな笑いだった。「野獣先輩さんには全部分かっちゃいますよね」

 

「ありますあります」

 

 上鳴が「俺どう見えますか先輩」と聞いた。

 

「お前どう?」

 

「聞き返された!!」

 

「ありますあります」

 

「俺のこと逆に確認するんですか!!」

 

「ありますあります」

 

 上鳴が「……まあ、怖いっちゃ怖いですけど」と言った。「でも先輩の索敵あるし。なんか、それだけで少し安心できるんですよね。不思議なんですけど」

 

「ありますあります」

 

 轟が「……俺も聞いていいか」と言った。

 

「ありますあります」

 

「「俺はどう見える」——索敵で」

 

「お前どう?」

 

「……聞き返されてる。俺が聞いた後で同じことを聞かれている」

 

「ありますあります」

 

「……「お前はどう見えるか俺も聞きたい」ということか」

 

「ありますあります」

 

 轟が「……そうか」と言って食事に戻った。

 

 

 

 

 

 午後の授業後。相澤に呼ばれた。

 

「索敵。今日の状態を報告しろ」

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 野獣先輩は索敵を広げた。

 

 あの方向——

 

 核の気配が——

 

「うわあ……これはAですね」

 

 言った。

 

 相澤が「「A」とは」と言った。

 

「ありますあります」

 

「カテゴリAということか。最大脅威判定か」

 

「ありますあります」

 

「……動いているか」

 

「ありますあります」

 

「動いていないか」

 

「ありますあります」

 

「……「まだ」か」

 

「ありますあります」

 

「……時期的には」

 

「大会近いからね、しょうがないね」

 

 野獣先輩が静かに言った。

 

 相澤が「「大会近い」——つまり、近い」と言った。

 

「ありますあります」

 

「……具体的にどのくらいだ」

 

「ありますあります」

 

「「ある」のか」

 

「ありますあります」

 

「感覚的に——一週間か、一ヶ月か」

 

 野獣先輩は少し間を置いた。

 

「大会近いからね、しょうがないね」

 

 もう一度言った。

 

 相澤が「……一週間より近い、ということか」と言った。

 

「ありますあります」

 

 相澤が深呼吸した。「……分かった。今夜中に上に連絡する」

 

「KEN、どうにかしろ」

 

 野獣先輩が言った。

 

「……「KEN」が誰かは分からないが——「あとは頼む」ということか」

 

「ありますあります」

 

「……お前がそういう語録を使うのは珍しい。疲弊しているか」

 

「ありますあります」

 

「……今夜は早く寝ろ」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 廊下で切島と上鳴が並んで歩いていた。野獣先輩を見つけて近づいてきた。

 

「先輩——」と切島が言いかけて、止まった。

 

 野獣先輩の顔を見た。

 

「……先輩、大丈夫ですか」

 

「ありますあります」

 

「「ある」のか」

 

「ありますあります」

 

「……どっちの「ありますあります」ですか」

 

「大会近いからね、しょうがないね」

 

 切島が「……そっか」と言った。「近いんですね」

 

「ありますあります」

 

 上鳴が「……俺、語録まとめに今日の「大会近い」語録を追記していいですか」と言った。

 

「ありますあります」

 

「……先輩が「大会近い」って言う時の使い方——なんか、「しょうがない、でも受け入れてる」感じがします。「怖いけど、もう決まってる」みたいな」

 

「ありますあります」

 

「……先輩も怖いですよね、やっぱり」

 

「ありますあります」

 

 三人で廊下に立っていた。

 

「俺達の雑音に負けるな!」

 

 野獣先輩が言った。

 

 切島が「え」と止まった。

 

「ありますあります」

 

「今「俺達の雑音に負けるな」って言いましたか」

 

「ありますあります」

 

「……それって——俺たちへの言葉ですか」

 

「ありますあります」

 

「外の「雑音」に負けるな、ってこと? 超常解放戦線とか、全部ひっくるめて」

 

「ありますあります」

 

 切島が「……」と息を吸った。上鳴が「……やば」と小声で言った。

 

「先輩がそういう語録を使う時って——本気の時ですよね」と切島が言った。

 

「ありますあります」

 

 切島が深呼吸した。「……分かりました。負けません」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 深夜。

 

 廊下に出たら爆豪がいた。

 

 壁に背中をもたせかけて腕を組んでいた。目が開いていた。眠れていない顔だった。

 

「……来たか」と爆豪が言った。

 

「ありますあります」

 

「索敵か」

 

「ありますあります」

 

「何か変化は」

 

「ありますあります」

 

「「ある」のか」

 

「ありますあります」

 

「……動いているか」

 

「ありますあります」

 

「「まだ」か」

 

「ありますあります」

 

 爆豪が「……そうか」と言って壁から離れた。少し歩いた。また止まった。

 

「田所」と爆豪が言った。「お前——今、怖いか」

 

 野獣先輩は少し間を置いた。

 

「ありますあります」

 

「……「ある」のか」

 

「ありますあります」

 

「……そうか」

 

 爆豪がしばらく黙った。「俺も怖い。お前には分かってるんだろ、索敵で」

 

「ありますあります」

 

「……それを言わないでいてくれてたのか」

 

「ありますあります」

 

 爆豪が「……まあ、感謝はしない」と言った。

 

「えっ、そんなん関係ないでしょ(正論)」

 

 野獣先輩が静かに言った。

 

 爆豪が「……何が正論だ」と言った。でも怒っていない声だった。

 

「ありますあります」

 

「感謝する必要ない、ってことか」

 

「ありますあります」

 

「……お前はそういうやつだな」

 

「ありますあります」

 

 廊下が静かだった。

 

 二人でしばらく立っていた。

 

「——お前さ」と爆豪が言った。「死柄木の気配って——人間か」

 

 野獣先輩は答えるのに少し時間がかかった。

 

「やっぱり壊れてるじゃないか」

 

 静かに言った。

 

 爆豪が「……「壊れてる」か」と言った。

 

「ありますあります」

 

「人間の形をしてるけど、もう「人間」じゃない気配、ってことか」

 

「ありますあります」

 

「……そうか」

 

 爆豪がまた黙った。しばらくしてから「——俺は行くぞ」と言った。

 

「ありますあります」

 

「「分かってる」か」

 

「ありますあります」

 

「止めるか」

 

「ありますあります」

 

「「しない」か」

 

「ありますあります」

 

「……お前は止めないんだな」

 

「ありますあります」

 

「なんで」

 

「えっ、そんなん関係ないでしょ(正論)」

 

 爆豪が「……また正論か」と言った。今度は少し笑っていた。

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 深夜の廊下。

 

 爆豪が壁から離れて少し歩く。

 

 背中が見える。

 

 深夜の明かりの中で——爆豪の背中が広い。肩が落ちていない。眠れない夜でも姿勢が崩れていない。背筋が通っている。怖いと言いながら背中で「行く」と言っている。

 

 肩甲骨の動きが——呼吸のたびに微かに動く。こんな時間でも体幹が安定している。

 

「もう待ちきれないよ!早く出してくれ!」

 

 思わず出た。

 

 爆豪が振り返った。「……今何て言った」

 

「ありますあります」

 

「語録か」

 

「ありますあります」

 

「どういう意味だ」

 

「ありますあります」

 

「「ある」のか」

 

「ありますあります」

 

「……俺の背中でも見てたか」

 

「ありますあります」

 

 爆豪が「……」と止まった。何も言わなかった。前を向いた。

 

「……別にいい」と爆豪が言った。

 

「ありますあります」

 

「……ただ——」と爆豪が少し間を置いた。「終わった後で——語録まとめの俺の欄、★もっと上げてもらえよ」

 

「ありますあります」

 

「「ある」のか。上げてもらえるのか」

 

「ありますあります」

 

「……じゃあ寝る」

 

 爆豪が自室に向かって歩き始めた。廊下の向こうに消えた。

 

 

 

 

 

 一人で屋上に出た。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 索敵を広げた。

 

 あの方向——

 

 核の気配が——

 

「うわあ……これはAですね」

 

 また出た。

 

 昼とは違う。夜の方がクリアに入ってくる。

 

 死柄木の核が——形を変えている。まだ動いていない。でも今夜は「止まっている」というより「今まさに変化し終わろうとしている」感触がある。

 

「もう待ちきれないよ!早く出してくれ!」

 

 思わず出た。

 

 索敵が——引きずられた。

 

 自動的に広域展開が始まった。センセンシャル級。止めようとした。止まらない。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 日本全土に広がった。

 

 塊全体が——「今夜動く」か「明日動く」か「もう始まっている」かの境界線にいる。そのぎりぎりのところに止まっている。

 

「大会近いからね、しょうがないね」

 

 出た。

 

 誰もいない屋上で。

 

「ありますあります」

 

 自分に向かって言った。

 

 それでも索敵は広がったままだった。

 

 ホークスの気配——夜中に動いている。二重スパイの中で動いている。一人で。

 

 切島の気配——自室。眠っている。深い呼吸。

 

 爆豪の気配——自室。眠れていない。でも目を閉じようとしている。

 

 デクの気配——自室。手帳を開いている。

 

 相澤の気配——職員室。まだ起きている。電話をしている。

 

 全員が——同じ夜の中にいる。

 

「この辺にぃ、うまいラーメン屋の屋台、来てるらしいっすよ」

 

 野獣先輩は空に向かって言った。

 

 一人で言った。

 

 誰も笑わなかった。

 

「ありますあります」

 

 返事は自分でした。

 

 

 

 

 

 相澤が電話を終えた後、机に向かっていた。

 

 報告書を書いていた。

 

 「田所索敵報告・本日分——核の気配がカテゴリAに移行。「大会近い」という語録使用。一週間以内の可能性あり。本人コンディション——」

 

 書きながら止まった。

 

「本人コンディション——「疲弊の気配あり」」

 

 と書いた。

 

 書いて、少し間を置いた。

 

 「「KEN、どうにかしろ」という語録が出た。田所がこの種の語録を使ったのは初めてだ」

 

 と追記した。

 

 追記して、また止まった。

 

「……田所が人に頼る側の語録を使った」と相澤は呟いた。

 

 スマートフォンを見た。

 

 エンデヴァーへの未送信メッセージが残っていた。昨日書いて送信しなかった。

 

「田所の索敵が「Aカテゴリ」に入った。一週間以内の可能性。」

 

 と書いてある。

 

 相澤は少し間を置いて、送信した。

 

 既読がついた。

 

 三秒後に返信が来た。

 

「分かった」

 

 それだけだった。

 

 相澤が「……エンデヴァーにしては短い返信だ」と呟いた。

 

-

 

 

 

 深夜、上鳴がスマートフォンの画面を暗くして布団の中で語録まとめを更新していた。

 

「「大会近いからね、しょうがないね」:初使用確認。使用状況①相澤への索敵報告②切島・俺への「近い」伝達③屋上一人で。すべてシリアス場面。「しょうがない」という受容成分+「近い」という時期感知がセット。先輩が「怖いけど受け入れた」時に出る語録——」

 

 書きながら止まった。

 

「……先輩が怖いって言ってた」と上鳴が布団の中で呟いた。

 

「ありますあります」って言ってたけど——「怖い」に「ある」って言うのは——本当に怖い、ってことだ。

 

 上鳴がスマートフォンを閉じた。

 

 天井を見た。

 

「……俺も怖い」と小声で言った。

 

 誰も聞いていなかった。

 

 

 

 

 

 翌朝のHR前。

 

 廊下で砂藤が「なんか昨日眠れなかった」と言った。

 

 上鳴が「分かる。大会近いからね、しょうがないね」と言った。

 

 砂藤が「……お前それ語録か」と言った。

 

「語録ですけど——なんかこれが一番「今の気持ち」に合ってて」

 

「……まあ確かに」と砂藤が言った。「しょうがないな」

 

 その会話を野獣先輩が廊下の端で聞いていた。

 

「ありますあります」

 

 静かに言った。

 

「先輩!!」と上鳴が飛んできた。「「大会近いからね」が俺たちに伝播してますよ!!」

 

「ありますあります」

 

「語録が感染しました!! 語録まとめに「伝播例①」として記録していいですか!!」

 

「ありますあります」

 

「先輩が快諾!!」

 

 砂藤が「俺は快諾してないぞ」と言った。

 

「ありますあります」

 

「先輩も「してない」って言った!!」

 

「ありますあります」

 

「どっちですか!!」

 

 廊下がにわかに賑やかになった。

 

 野獣先輩はその中心で静かに立っていた。

 

「お前もしかして、あいつのことが好きなのか?」

 

 野獣先輩が上鳴に向かって言った。

 

「え?!」上鳴が止まった。「「あいつ」って誰ですか?!」

 

「ありますあります」

 

「「ある」のか!! 先輩の索敵に何か引っかかってますか!!」

 

「ありますあります」

 

「誰のことですか!!」

 

「ありますあります」

 

「「ありますあります」で誤魔化さないでください!!」

 

「元はホモビ」

 

「何がですか!!」

 

「ありますあります」

 

「全部分からない!! 語録まとめに追加します!! 「元はホモビ」:使用状況不明・文脈不明・上鳴電気に向けて使用——」

 

「ありますあります」

 

「先生に没収される前に記録します!!」

 

 砂藤が「……お前ら朝から元気だな」と言った。

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 

 その夜。

 

 相澤と二人で屋上に出た。

 

「索敵。今夜の報告をしろ」

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 野獣先輩は索敵を広げた。

 

 あの方向——

 

「うわあ……これはAですね」

 

「昨日と同じか」

 

「ありますあります」

 

「悪化しているか」

 

「ありますあります」

 

「……核の形が変わったか」

 

「ありますあります」

 

「……「変化し終わった」という感触はあるか」

 

「大会近いからね、しょうがないね」

 

 相澤が「……そうか」と言った。「分かった。今夜中に最終報告を上に入れる」

 

「ありますあります」

 

 相澤がしばらく空を見た。珍しいことだった。相澤が何かを考えて空を見るのは珍しかった。

 

「……田所。お前は——出来ることをしてきた。それだけ覚えておけ」

 

「ありますあります」

 

「……それだけだ」

 

「俺達の雑音に負けるな!」

 

 野獣先輩が言った。

 

 相澤が「……俺に言っているのか」と言った。

 

「ありますあります」

 

「……私が「雑音」に負けると思っているのか」

 

「ありますあります」

 

「……「ない」ということか」

 

「ありますあります」

 

「……そうか」

 

 相澤が少し間を置いてから立ち上がった。「——お前も同じだ。負けるな」

 

「ありますあります」

 

 二人で屋上に立っていた。

 

 遠くの方角に——例の気配が、静かに「在る」。

 

 今夜は動いていない。

 

 でも——明日は違う。明後日は違う。

 

「大会近いからね、しょうがないね」

 

 野獣先輩は空に向かって、静かに言った。

 

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