【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩 作:まだら模様
あと犬みたいだから…ワンワンワン(TDN)
キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意下さい。
評価付与、感想は野獣先輩のこ↑こ↓を実際に体験できます
やっぱ改めて考えてもこのワープ無法すぎる…
夜が明けきらない時間。
野獣先輩は屋上で索敵を広げていた。
相澤が隣にいた。今日は昨日より早い時間から二人で出ていた。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
通常の三倍。前線のヒーローたちの位置が入ってくる。
エンデヴァーが動いている。ホークスが——
その時。
索敵の端に——何かが引っかかった。
大きい。
昨日の死柄木とは違う「大きさ」だった。死柄木は「気配が異常」だった。これは——「物理的に巨大」な気配だった。
「ちょっと待って!何これ?」
野獣先輩が言った。
「どうした」と相澤が言った。
「ありますあります」
「……大きいか」
「ありますあります」
「……人か」
「ありますあります」
「……「人ではない」か」
「ありますあります」
「……どのくらい大きい」
「たまげたなあ」
野獣先輩が言った。
「……それは——「驚愕」か」と相澤が言った。
「ありますあります」
「……索敵でも測れないくらいか」
「ありますあります」
相澤が「……ギガントマキアか」と言った。
「ありますあります」
「……動いているか」
「ありますあります」
「……方向は」
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
野獣先輩は絞った。
方向——
こちら。
「ありますあります」
「……こっちへ来ているか」
「ありますあります」
相澤がスマートフォンを取り出して「——緊急報告、ギガントマキアが移動中」と打った。
雄英に警報が鳴った。
朝のHR前だった。A組全員が廊下に出た。相澤が走ってきた。
「聞け。ギガントマキアが超常解放戦線の命令を受けて移動を開始した。規模は——」
相澤が少し間を置いた。
「……田所の索敵で「たまげた」と出た」
「「たまげた」!!?」と上鳴が言った。「先輩が「たまげた」んですか!!」
「ありますあります」
廊下の端から聞こえた。
「それが答えだ」と相澤が言った。「田所の索敵でも「たまげた」と出る規模の個体が動いている。お前たちに指示する——全員で避難誘導だ。近隣住民、雄英のサポートスタッフ、教師陣の家族を安全圏に移動させる」
「ありますあります」
野獣先輩が廊下の端で言った。
「……田所の転移を使う。田所——何人同時に動かせる」
「30分で、5万!」
野獣先輩が言った。
全員が止まった。
「……5万は無理だ」と相澤が言った。「だが——「今日は全力で行く」ということか」
「ありますあります」
「……今日、初めて転移の上限を試す。分かったな」
「ありますあります」
「……全員集合。田所を中心に動け」
全員が野獣先輩の周りに集まった。
その時、遠くから——地面が揺れた。
低い音が聞こえた。
デクが窓の外を見た。
地平線——
何かが、来ていた。
「総理大臣の誕生か?」
野獣先輩が言った。
「先輩!!」と上鳴が言った。「「総理大臣の誕生」って言いました!! 初めて聞いた語録です!! 語録まとめ戦場版②——開始!!」
「今は走れ」と相澤が言った。
雄英の正面玄関前。
サポートスタッフと周辺住民が集まっていた。二十人、三十人。
野獣先輩が走ってきた。
最初の一人——サポートスタッフのおばさん。
「自分、指いいすか?」
野獣先輩が言いながら肩に触れた。
「え?」とおばさんが言った。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
転移。
安全圏——雄英から二キロ離れた公園に、おばさんが移動した。
次。
「自分、指いいすか?」
子供。肩に触れた。転移。
「自分、指いいすか?」
老人。手首に触れた。転移。
「自分、指いいすか?」
「自分、指いいすか?」
「自分、指いいすか?」
連打が始まった。
「先輩「自分、指いいすか?」を連発してる!!」と上鳴が叫んだ。
「整列させろ!」と切島が言った。「先輩の前に一人ずつ並べ!」
「ありますあります」
「「正解」って言ったんで整列!! 先輩が正解と言った!!」
「やるぞ!!」と切島が叫んだ。
A組が動いた。デクが先頭で「こっちに並んでください!! 大丈夫です!!」と叫びながら人を誘導した。麗日が「急いでください!!でも押さないで!!」と整列させた。爆豪が「後ろ詰めろ!!」と怒鳴った。
野獣先輩が転移し続けた。
一人触れるたびに——触れた瞬間に分かる。
体幹の強さ。筋肉の密度。緊張の仕方。
サポートスタッフの若い男性——
肩に触れた。
肩甲骨の動きが——整備の仕事で腕を使っているから、肩周りの筋肉が発達している。僧帽筋が厚い。
「拓也は戦車にひかれても死なないんだよな」
思わず出た。
「先輩!!」と上鳴が叫んだ。「今の人が「拓也」ですか!!」
「ありますあります」
「肩の筋肉!!」
「ありますあります」
「語録まとめに「拓也:肩甲骨周り・耐久力あり」と記録します!!」
「走れ!!」と爆豪が叫んだ。
転移が続いた。
デクが最後尾の人を送り込んで、野獣先輩の前に来た。
「自分、指いいすか?」
デクの肩に触れた。
触れた瞬間——
全身が鍛えられている。均一ではない。場所によって密度が違う。しかし「使い込まれた」質感が均一だ。肩から腕にかけての筋肉が、柔らかい人間のそれではなく、何度も壊して直した跡が——
「ありますあります」
転移した。
次。切島。
「自分、指いいすか?」
切島の背中に触れた。
背中が——
硬化個性の影響で表面が変質しているが、その下の筋肉の反発力が強い。脊椎沿いに均一な筋肉の張り。転移した瞬間に「ありますあります」が出た。
次。砂藤。前腕。
「自分、指いいすか?」
磁力の常時制御で発達した前腕の緊張。細かい筋肉の緻密な使い方。
「拓也、また胸でかくなったな!」
思わず言った。
「先輩!! 砂藤くんが「拓也」になった!!」と上鳴が叫んだ。
「誰が拓也だ」と砂藤が転移先から言った。
二十人を超えた頃。
消耗が出始めた。
転移の「射程」が——縮んでいる。最初は安全圏まで送れていた。今は——少し近い。
「DJDJ…」
野獣先輩が言った。
「先輩、何が「届かない」んですか!!」と上鳴が言った。
「ありますあります」
「転移の距離ですか!!」
「ありますあります」
「近くなってるんですか!!」
「ありますあります」
「相澤先生!! 先輩の転移距離が縮まってます!!」と上鳴が叫んだ。
「分かった」と相澤が言った。「目標地点を修正する。田所、今何メートルまで届く」
「ありますあります」
「……まだ余裕があるか」
「ありますあります」
「続けろ。無理になったら即座に報告しろ」
「ありますあります」
転移が続いた。
三十五人目。轟。
「自分、指いいすか?」
轟の背中に触れた。
触れた瞬間——
左側と右側で体の密度が違う。左側(炎)と右側(氷)で筋肉の緊張の種類が違う。二つの個性を使いながら均衡を保っているために、背骨の左右で微妙に異なる筋肉の緊張——
「ステでもやっているのでしかね?あの乳首は」
出た。
「先輩!!!」と上鳴が叫んだ。「「ステでもやってるのかあの乳首は」って言った!!!」
「何が乳首だ」と轟が言った。転移先から落ち着いた声で聞こえた。
「ありますあります」
「……乳首については答えてくれないのか」
「ありますあります」
「……そうか」
四十人を超えた頃。
地面の揺れが大きくなった。
遠くにギガントマキアの輪郭が見えた。
爆豪が前に出た。
「俺が出る。足止めする」
「そんなことしなくていいから」
野獣先輩が言った。
爆豪が「……何で止める」と言った。
「ありますあります」
「「ある」のか、俺が出ない方がいい理由が」
「ありますあります」
「……転移で全員逃がせると思ってるのか」
「ありますあります」
「……お前の体力がもつと思ってるのか」
「そのための右手、あとそのための拳?」
野獣先輩が言った。
爆豪が止まった。「……「俺の右手と拳には目的がある」——「今使い切るな」ということか」
「ありますあります」
爆豪がしばらく黙った。「——分かった。後ろ向きで待つ」
「ありますあります」
「礼はいらない」
「そんなんじゃ甘いよ」
野獣先輩が転移しながら言った。
「何が甘い」と爆豪が言った。でも笑っていた。
転移を続けながら——
後方で爆豪が待機していた。
「後ろ向きで待つ」と言った通り、ギガントマキアの方向を向いて立っている。
背中が——
「行きたい」と言っている。今すぐ出たい、とあの肩甲骨が言っている。でも止まっている。「そのための右手」と言われた言葉を飲み込んで、止まっている。
行きたいのに止まっている背中の、筋肉の緊張の質が——
「多分変態だと思うんですけど(名推理)」
転移しながら出た。
「先輩!! 「多分変態だと思うんですけど」って言いました!!」と上鳴が叫んだ。
「ありますあります」
「誰が変態ですか!!」
「ありますあります」
「「ある」のか!! 誰ですか!!」
「ありますあります」
「全員ですか!!」
「ありますあります」
「先輩が全員変態と言った!!!」
「うるさい!!」と爆豪が言った。振り返らなかった。でも肩が少し動いた。
五十人目。
転移の距離が——さらに縮んだ。
体が重い。索敵も同時に動かしながら転移を続けるのは——
「チカレタ…」
小声で出た。
「先輩!!」と切島が言った。転移から戻ってきた切島が野獣先輩の腕を掴んだ。「大丈夫ですか!!」
「ありますあります」
「「ある」のか!! 「大丈夫じゃない」のか!!」
「ありますあります」
「どっちですか!!」
「ありますあります」
「……続けられるか、ってことですよね」
「ありますあります」
「……続ける、ってことですよね」
「ありますあります」
切島が「……先輩の手、冷たいですよ」と言った。
「ありますあります」
「それでも続けるんですか」
「ありますあります」
切島が「……分かった。俺が隣にいます」と言った。
「ありますあります」
五十五人目。
「自分、指いいすか?」
老人の背中に触れた。
転移——届いた。ぎりぎりだった。
戻ってきた瞬間によろけた。
切島が肩を掴んだ。
「先輩!」
「たった一度の過ちであり二度と同じ間違いはしません」
野獣先輩が言った。
「……「大丈夫」ってことですか」と切島が言った。
「ありますあります」
「「失敗は繰り返さない」ってことですか」
「ありますあります」
「……先輩、俺が信じますよ。絶対届かせてください」
「ありますあります」
六十人目。
ギガントマキアが視界に入ってきた。
巨大だった。
「ちょっと待って!何これ?」
野獣先輩が空を見上げながら言った。
「先輩それもう肉眼で分かりますよ!!」と上鳴が叫んだ。
「ありますあります」
「「語録が出た」のか!! 語録まとめ戦場版②に追記!! 「ちょっと待って何これ:ギガントマキアを目視した瞬間に出た語録・二回目」!!」
「走れ!!!」とデクが叫んだ。
残り——あと十人。
「自分、指いいすか?」
転移。
「自分、指いいすか?」
転移。
「自分、指いいすか?」
転移。
体が——本当に重い。
でも——
「30分で、5万!」
野獣先輩が言った。
「先輩!! まだ行けますか!!」と上鳴が言った。
「ありますあります」
「全員行けますか!!」
「ありますあります」
「……先輩が「全員行ける」と言った!!」
最後の三人。
「自分、指いいすか?」
「自分、指いいすか?」
「自分、指いいすか?」
転移——転移——転移。
全員、届いた。
膝をついた。
切島が「先輩!!」と飛んできた。
「チカレタ…」
また出た。今度は声が小さかった。
「先輩……全員届きましたよ」と切島が言った。「全員届いた。先輩のおかげで」
「ありますあります」
「……「ある」のか、「届いた」が」
「ありますあります」
「……「届いた」だな」と切島が言った。「先輩が全部届かせた」
「ありますあります」
地面の揺れが続いていた。遠くにギガントマキアが移動していく音がした。
相澤が来た。「——田所。何人転移させた」
「ありますあります」
「……六十人以上か」
「ありますあります」
「……今日が最大記録か」
「ありますあります」
「……よくやった」
「ありますあります」
「……今日は三回目の「よくやった」だ」と相澤が言った。
「ありますあります」
「……返事が「ありますあります」なのも、もう三回目だ」
「ありますあります」
「……そうだな」
夜。
上鳴がスマートフォンを開いていた。
「語録まとめ戦場版②——今日の記録。総語録使用数:13種。新語録10種以上。「自分、指いいすか?」が今日最多使用語録・推定六十回以上——」
「すごいな」と砂藤が言った。「何回数えたんだよ」
「数えてないですけど体感で!!」
「いい加減だな」
「でも先輩が俺のこと「拓也」って言ったんですよ」と砂藤が言った。しばらく間があった。「……「拓也」って俺のことですよね?」
「ありますあります」
廊下から聞こえた。
「先輩!!」と上鳴が言った。「砂藤くんが「拓也」確定ですか!!」
「ありますあります」
「確定した!! 語録まとめに「砂藤泰厳=拓也」と記録!!」
「誰が拓也だ」と砂藤が言った。でも声が少し嬉しそうだった。
「ありますあります」
深夜。
相澤が報告書を書いていた。
「田所の本日の転移使用記録——対象人数:確認中(推定六十人以上)。転移距離:最大約二キロ→後半縮小。転移精度:全員安全圏への移送完了。疲弊度:膝をついたが意識維持。索敵同時使用:継続——」
書きながら止まった。
「……「自分、指いいすか?」を推定六十回以上言った」と相澤が呟いた。
スマートフォンが鳴った。エンデヴァーだった。
「今日の田所の転移——人数は」
「確認中だが六十人以上だ」と相澤が打った。
返信。
「……六十人か」
相澤が「そうだ」と打った。
また返信が来た。
「「たまげたなあ」という語録——それは今日最初にギガントマキアを感知した語録か」
相澤が「そうだ。索敵でギガントマキアの規模に「たまげた」と表現した」と打った。
少し間があった。
「……「たまげた」のか」
「そうだ」
また間があった。
「田所は今どこにいる」
「休んでいる」と相澤が打った。
「……そうか」
返信がそれで止まった。
相澤が「……エンデヴァーが田所の居場所を聞いた」と呟いた。
廊下から「ありますあります」と聞こえた。
「……田所、盗み聞きするな」
「ありますあります」
「……今日は本当によくやった」
「ありますあります」
「……寝ろ」
「ありますあります」
廊下が静かになった。
翌朝の廊下。
物間が切島に話しかけていた。
「……昨日の転移、六十人以上と聞きました」
「先輩すごかったですよ」と切島が言った。「「自分、指いいすか?」を延々と言いながら一人一人転移させて。途中で膝ついたんですけど、「たった一度の過ちであり二度と同じ間違いはしません」って言って立ち上がって」
「……そうですか」と物間が言った。「「たった一度の過ちであり二度と同じ間違いはしません」——あれは謝罪語録ですよね、本来」
「そうなんですか」
「……田所先輩が使う場合は——「失敗は繰り返さない」という意志の表明として機能していた」
「詳しいですね」と切島が言った。
物間が「……語録の意味は、ある程度把握しています。情報収集として」と言った。
「……情報収集として詳しくなるくらい調べたんですか」
「……職務上の必要です」
「先輩と同じこと言ってますよ」と切島が言った。「相澤先生が「職務上の把握だ」って言ってたんで」
物間が「……それは別の話です」と言った。少し早口だった。
「ありますあります」
廊下の端から聞こえた。
物間が振り返った。野獣先輩が廊下の端に立っていた。
「……「ある」のか」と物間が言った。「「同じ」が」
「ありますあります」
物間が「……おはようございます」と言って、さっさと歩いて行った。
角で——止まった。
「ありますあります」
小さく言った。
索敵に引っかかった。
三度目だった。