【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩 作:まだら模様
原作シナリオは悲惨になりますが、野獣先輩はどうなるのな…
キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意下さい。
感想、評価付与は少し前に流行った野獣先輩が励ましのya ju のダンスを踊ってくれます
朝、目が覚めた。
索敵を起動した。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
いつもと違った。
違うのは「気配の数」だった。
雄英のキャンパスに人の気配がある。A組の気配がある。相澤の気配がある。それは変わらない。
でも——外が、静かだった。
索敵を広げた。キャンパスの外側——街の方向に広げた。
人の気配はある。でも「動いている気配」が少ない。街が動いていない。朝の時間帯なのに、人が外に出ていない。
「ないです」
野獣先輩が言った。
一人で言った。
「ありますあります」
自分で確認した。
ヒーローの気配が——減っていた。
相澤が教室に来た。
いつもより早かった。表情がいつもと同じだった——でも索敵の中では「いつもと少し違う」気配があった。
教室のモニターにニュースが流れた。
ヒーロー事務所が、また閉まった。
今週で十二件目だった。
エンデヴァーの辞退。ホークスの謹慎。ミルコの長期入院。各地の事務所が相次いで廃業を発表している。「ヒーロー不足」という言葉がニュースのテロップを流れていた。
A組が静かだった。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
野獣先輩は教室全体を索敵した。
全員の気配を順番に確認した。
「顔がね…」
野獣先輩が小さく言った。
誰かに言ったわけではなかった。
デクが下を向いていた。爆豪が腕を組んで窓の外を見ていた。轟が「……」と目を細めていた。切島がスマートフォンを机に置いたまま動かしていなかった。上鳴が珍しく何も言わなかった。
「顔がね…」
もう一度言った。
相澤が「……田所」と言った。
「ありますあります」
「……索敵で全員の状態は分かるか」
「ありますあります」
「……どうだ」
「顔がね…」
相澤が「……そうか」と言った。それ以上は聞かなかった。
昼食の時間だった。
食堂の空気が重かった。
野獣先輩はいつも通り食べた。
今日のメニューは定食だった。ごはんと味噌汁と焼き魚と小鉢が二つ。
「うん、おいしい!」
野獣先輩が言った。
切島が「……先輩」と言った。
「ありますあります」
「……今日もおいしいですか」
「ありますあります」
切島が少し笑った。
「……そうですよね」と切島が言った。「先輩がそう言うと、なんかホッとする」
「ありますあります」
野獣先輩は焼き魚を食べながら索敵を続けた。
デクが食事をほとんど食べていなかった。上鳴が「食えよ」と言っていた。
「なんか足んねぇよなぁ?」
野獣先輩が言った。
「……何がですか」と切島が聞いた。
「ありますあります」
「……「何かが足りない」か」
「ありますあります」
「……ヒーローの数、ですか」
「ありますあります」
「……でも、足りない分を誰かが埋めなきゃいけないんですよね」
「ありますあります」
切島が「……俺は埋めたい」と言った。「絶対ヒーローになって——埋めたい」
「ありますあります」
野獣先輩は焼き魚の骨を丁寧に除けた。
昼食後。
廊下を歩いていたら相澤に呼ばれた。
「……壊理のことだ」
「ありますあります」
「……今は施設に戻っている。しばらくは顔を出せない」
「ありますあります」
「……残念か」
「遠距離は辛いもんなぁ…」
野獣先輩が言った。
相澤が「……そうだな」と言った。「索敵で届くか」
「ありますあります」
「……届くか」
「ありますあります」
「……「届く」のか」
「ありますあります」
「……そうか。それなら大丈夫だ」
「ありますあります」
相澤が少し間を置いた。「……壊理が「ありますあります」と「ヘーキヘーキ」を覚えた。田所から伝わったものだ。——分かるか」
「ありますあります」
「……「分かる」のか、「分からない」のか」
「ありますあります」
「……どちらだ」
「ありますあります」
「……田所。お前の語録は残る。遠くても残る」
「ありますあります」
-
夕方、屋上に切島が来た。
索敵で切島の気配を感知していた。いつも来る時の気配の近づき方と違った。少し迷っている気配だった。
「先輩」
「ありますあります」
「……聞いていいですか」
「ありますあります」
「先輩は——ヒーローになろうとしてますか」
野獣先輩は少し間を置いた。
「おう、考えてやるよ」
言った。
「(返すとは言っていない)」
言わなかった。でも——そういう語録だった。
切島が「……「考えてる」か」と言った。
「ありますあります」
「……先輩がヒーローになったら——俺、安心するな」
「ありますあります」
「索敵があるじゃないですか。先輩の索敵があれば——誰かが死なずに済む場面が増えるじゃないですか」
「ありますあります」
「……先輩は、ずっとそれをやってきてるんですよね」
「ありますあります」
「……名前がなくても」
「ありますあります」
「……カッコイイですよ、先輩」
「ありますあります」
野獣先輩は空を見た。
索敵はずっと動いていた。
切島が空を見ながら話していた。
夕方の光が横から当たっていた。
切島の肩幅が——逆光でシルエットになっていた。
硬化個性は使っていない。でも日常状態でも切島の肩の筋肉は常に一定のテンションを保っている。背中の大円筋が——肩甲骨を安定させるために常時機能している。
夕方の光が、その境界線を浮き上がらせていた。
「ウレシイ…ウレシイ…」
野獣先輩が小さく言った。
切島が「……何ですか」と振り返った。
「ありますあります」
「……また語録まとめに追加されますね」
「ありますあります」
「……先輩がウレシイって言ったのは珍しいですね。何が嬉しかったんですか」
「ありますあります」
「……「ある」ことがですか」
「ありますあります」
「……俺が来たこと、ですか」
「ありますあります」
切島が「——ありがとう」と言った。
「ありますあります」
夜。
廊下で爆豪と鉢合わせた。
爆豪は眠れない夜があると廊下を歩く。それは索敵で知っていた。今夜もそうだった。
「……先輩」と爆豪が言った。
「ありますあります」
「……ヒーロー社会がグダグダになった。俺が目指してたものが——形が変わってきてる」
「ありますあります」
「……俺は変わらない。絶対No.1になる。それは変わらない」
「ありますあります」
「……でも、何かを失ったような気がする。何かを——分からなくなった」
「俺もソーナノ」
野獣先輩が言った。
爆豪が止まった。
「……先輩も、か」
「ありますあります」
「……先輩が「俺も」って言うのか」
「ありますあります」
「……百年以上生きてて、それでも「分からなくなる」のか」
「ありますあります」
「……そうか」
爆豪が少し黙った。
「……でも先輩は——続けてるんですよね」
「ありますあります」
「……何があっても、索敵を続けてる」
「ありますあります」
「……それだけでいいのか、それだけでいいんだろうな」
「ありますあります」
爆豪が「……おやすみ」と言った。野獣先輩に言ったのか、廊下に言ったのか分からなかった。
「ありますあります」
爆豪が廊下を戻っていく。
索敵でその背中を追った。
夜の廊下だった。光が少ない。でも索敵の中では見える。
爆豪の背中が——歩くたびに、少し揺れていた。肩が上がりすぎず下がりすぎず。でも今夜は少し——「張り詰めている」感触があった。
肩甲骨の位置が普段より少し内側に寄っていた。緊張の時の爆豪の姿勢だ。
「普通に赤ちゃんみたいでかわいいと思う」
野獣先輩が言った。
廊下に誰もいなかった。
「ありますあります」
自分で返した。
爆豪の背中が角を曲がって見えなくなった。
深夜、相澤が来た。
今夜は定期報告の夜だった。
「……索敵の状況は」
「ありますあります」
「……大きな動きはないか」
「ありますあります」
「……死柄木の核は」
「ありますあります」
「……「ある」か。感知できているか」
「ありますあります」
「……遠いか」
「ありますあります」
「……それでいい」
相澤が書類に何かを書いた。
「……今日は全員どうだった」
「顔がね…」
「……重かったか」
「ありますあります」
「……夕方以降は」
「ありますあります」
「……「持ち直した」か」
「ありますあります」
「……そうか。それでいい」
相澤が「——今日の報告は以上でいいか」と言った。
「早く帰って宿題しなきゃ」
野獣先輩が言った。
相澤が「……お前には宿題がないだろう」と言った。
「ありますあります」
「……「ある」のか」
「ありますあります」
「……何だ」
「ありますあります」
「……教えないのか」
「ありますあります」
相澤が短く息を吐いた。「……お前の「宿題」が何か分かった気がする」
「ありますあります」
「……「ないです」と言いたいところだったか」
「ありますあります」
相澤が「……今夜の報告書に「田所は今日も全員の顔を確認していた」と書く」と言った。
「ありますあります」
「……それだけでいい。おやすみ」
「ありますあります」
相澤が去った後、屋上に出た。
夜だった。
索敵を最大まで広げた。
「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」
A組の気配を一人ずつ確認した。
デクが眠っていた。切島が眠っていた。上鳴が眠っていた。爆豪が眠っていた——ちゃんと眠っていた。轟が眠っていた。
全員を確認した。
「ありますあります」
野獣先輩は自分に向かって言った。全員生きている。全員眠っている。
空を見た。
「腹減ったなぁ」
野獣先輩が言った。
誰もいなかった。
「ありますあります」
自分で返した。
本当にお腹が減っていた。
でも——それだけだった。
お腹が減っていた。夜が来ていた。A組が眠っていた。ヒーロー社会が変わっていた。でも今夜は全員生きていた。
「ありますあります」
もう一度言った。
今夜はそれだけでよかった。
翌朝。
上鳴が走ってきた。
「先輩!!」
「ありますあります」
「昨日、屋上で切島くんに「ウレシイ…ウレシイ…」って言いましたよね!!」
「ありますあります」
「語録まとめ戦場版③に「ウレシイ」初使用・屋上・切島くん来訪時・「ウレシイが何であるかは不明だが本人は認めた」として記録しました!!」
「ありますあります」
「切島くんが「俺が来たことが嬉しかったんじゃないか」って言ってましたけど合ってますか!!」
「ありますあります」
「あってるんですね!! これは記録に値する!! 「ウレシイ=切島くんの訪問への語録反応」として追記します!!」
「ありますあります」
「……あと、昨日廊下で爆豪くんに「俺もソーナノ」って言いましたよね!! 爆豪くんから聞きました!!」
「ありますあります」
「「先輩が「俺も」って言った」って爆豪くんが今朝食堂でうっかり言って——自分で言ってから「うるさい」って言いました!!」
「ありますあります」
「爆豪くんが!! 自分から言ったんですよ!! 語録まとめに「爆豪くん自主報告欄」作ります!!」
「ありますあります」
食堂。
爆豪が「うるさい」と言っていた。
上鳴が「でも自分から言ったじゃないですか」と言っていた。
「うるさい」
「でも!!」
「うるさい!!」
野獣先輩が食堂に入ってきた。
爆豪が野獣先輩を見た。
「……ちょうどいい。昨日俺が「先輩も分からなくなるのか」って聞いたのを、こいつに話すな」
「ありますあります」
「「話すな」という意味か」
「ありますあります」
「……そうか」
「ありますあります」
「……「話す」という意味か」
「ありますあります」
「どっちだ!!」
「ありますあります」
「ありますあります!!じゃない!!」
「ありますあります」
上鳴が「先輩が今日四回連続で「ありますあります」した!!」と語録まとめに追記した。
廊下から物間が様子を見ていた。
「……「俺もソーナノ」か」と物間が廊下で独り言を言った。
「……私も同じです、と言いたくなる語録ですね」
物間が一人で廊下の角に消えた。
「ありますあります」
野獣先輩には聞こえていた。
午後。
相澤が野獣先輩を呼んだ。
「……昨夜の報告書を書いた」
「ありますあります」
「……エンデヴァーに転送するかどうか迷っている」
「ありますあります」
「……転送するか、しないか」
「ないです」
野獣先輩が言った。
相澤が止まった。
「……「ない」のか、転送する必要が」
「ありますあります」
「……なぜ」
「ありますあります」
「……「理由はある」のか」
「ありますあります」
「……教えろ」
「ありますあります」
「……「教えない」のか」
「ありますあります」
「……「教える」のか」
「ありますあります」
「……どちらだ」
「ないです」
「……「そういう話ではない」か」
「ありますあります」
相澤が「……分かった。しばらく転送は保留にする」と言った。
「ありますあります」
「……エンデヴァーが問い合わせてきたらどうする」
「ないです」
「……「対応しなくていい」か」
「ありますあります」
「……田所。お前は時々、正しいことを言う」
「ありますあります」
相澤がスマートフォンを置いた。
その夜。
エンデヴァーから相澤に連絡が来た。
「田所の索敵報告はあるか」
相澤が「今夜は保留にしている」と打った。
五秒後。
「なぜ」
「田所の判断だ」
また五秒後。
「田所に聞いてもいいか」
「聞いてもいい」
エンデヴァーが野獣先輩に直接メッセージを送ってきた。
「なぜ転送しないのか」
「なんか足んねぇよなぁ?」
野獣先輩が返した。
十秒後。
「……「何かが足りないから」か」
「ありますあります」
「足りないのは何だ」
「ないです」
「「ない」のか」
「ありますあります」
「「教えない」のか」
「ありますあります」
「……考える」
「ありますあります」
エンデヴァーがしばらく既読をつけなかった。
三十分後。
「分かったかもしれない」
「ありますあります」
「転送しなくていい。俺自身で考える必要があった」
「ありますあります」
エンデヴァーから最後にもう一つメッセージが来た。
「……なんか足んねぇよなぁ?」
引用して使ってきた。
「ありますあります!!」
野獣先輩が返した。今日一番の勢いで返した。
その夜。
エンデヴァーは一人でいた。
「なんか足んねぇよなぁ?」
エンデヴァーが呟いた。
野獣先輩に送ったメッセージと同じ語録を、一人で呟いた。
「……ありますあります」
自分に向かって言った。
「足りないものがある、ということだ」
エンデヴァーが続けた。「俺に足りないものが何かは——分かってきた」
「……ありますあります」
もう一度言った。
分かってきた。でもまだ「ないです」だった。手元にない。
「……なんか足んねぇよなぁ?」
三度目。
今度は——「足りないものを探すための語録」として使っていた。
翌朝。
相澤から転送が来た。
「——壊理から。「ありますあります」と書いてありました。以上」
「ありますあります」
野獣先輩は部屋で一人、スマートフォンに向かって言った。
「ウレシイ…ウレシイ…」
続けて言った。
「ありますあります」
壊理が「ありますあります」を一人で書いた。施設の中で、一人でスマートフォンに打って、相澤に送った。
「ありますあります」
何度でも言えた。今日は何度でも言えた。