【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩   作:まだら模様

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デクがイッてしまうようです…
野獣先輩がなんとかしようと(意味深)するかもしれません…

キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意下さい。

評価付与、感想は貴方が闇堕ちして出ていきそうになった時に野獣先輩が「ターミナルざん!?まずいですよ!」と言って出ていくのを必死に止めてくれます。


黒デク編
第44話「手紙(デクが雄英を去る朝)」


 

 

 夜明け前だった。

 

 いつも通り索敵を起動した。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 A組の気配を順番に確認した。

 

 切島——眠っている。上鳴——眠っている。爆豪——眠っている。轟——眠っている。耳郎——眠っている。お茶子——眠っている。梅雨——眠っている。飯田——

 

 デク——

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩は自分に向かって言った。

 

 デクの気配が——部屋にあった。ちゃんとある。でも「眠っている」気配ではなかった。「何かをしている」気配だった。

 

 索敵を絞った。

 

 デクの部屋に気配が一点ある。動いていない。でも起きている。何かを——書いている、気配がした。

 

「He didn’t…he begin…」

 

 野獣先輩が言った。

 

 一人だった。

 

「ありますあります」

 

 何かが始まっている。

 

 

 

 

 

 夜明けの光が差し始めた頃。

 

 デクの気配が——動いた。

 

 部屋から出た。廊下を歩いた。階段を下りた。玄関を通った。キャンパスの外に出た。

 

 野獣先輩は索敵でその動きを追った。

 

 デクが歩いている。荷物を持って歩いている。振り返っていない。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 索敵を広げた。デクの気配が校門を出た。街に入った。まだ歩いている。

 

 野獣先輩は部屋から動かなかった。

 

 索敵だけで追い続けた。

 

 デクの気配が、遠ざかっていく。

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩は自分に向かって言った。

 

 まだ見えている。まだ索敵の中にいる。

 

 

 

 

 

 

 朝のHRの時間になった。

 

 デクの席が空だった。

 

 相澤が教室に来た。普段と変わらない表情だった。でも索敵の中では「覚悟を決めた人間の気配」があった。

 

「……緑谷から手紙が届いている」

 

 相澤がA組に向かって言った。

 

 教室が静かになった。

 

 相澤が手紙を読んだ。内容の細部は聞こえなかったが——「一人で行く」「心配させたくない」「戻ってくる」という気配が部屋全体に広がっていった。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 野獣先輩は索敵を動かし続けた。

 

 デクの気配は——今、どこにある。

 

「微粒子レベルで存在している…?」

 

 野獣先輩が小さく言った。

 

 隣にいた切島が「……先輩」と言った。

 

「ありますあります」

 

「……デクくんの気配、見えてますか」

 

「ありますあります」

 

「……どこですか」

 

「微粒子レベルで存在している…?」

 

「……遠い、ということですか」

 

「ありますあります」

 

「……でも、いる、ということですか」

 

「ありますあります」

 

 切島が「……よかった」と言った。小さい声で言った。

 

 

 

 

 

 

 HRが終わった後。

 

 廊下で切島が立ち上がった。

 

「俺、追いかけてきます!!」

 

「おいやめルルォ!」

 

 野獣先輩が言った。

 

 切島が止まった。

 

「……先輩」

 

「ありますあります」

 

「……「やめろ」ということですか」

 

「ありますあります」

 

「……でも!!」

 

「おいやめルルォ!」

 

 もう一度言った。

 

 切島が「……なんでですか」と言った。

 

「ありますあります」

 

「……「理由はある」のか」

 

「ありますあります」

 

「……「デクくんが行かせてほしいと思ってるから」ということですか」

 

「ありますあります」

 

 切島が拳を壁につけた。強くは叩かなかった。

 

「……分かった。でも——先輩、索敵ずっと続けてください」

 

「ありますあります」

 

「……絶対に、ずっと」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 

 廊下の反対側から爆豪が来た。

 

「……俺は行く」

 

 爆豪が言った。声が静かだった。珍しく静かだった。

 

「えっ、そんなん関係ないでしょ」

 

 野獣先輩が言った。

 

 爆豪が止まった。

 

「……「関係ない」って言ったか」

 

「ありますあります」

 

「……どういう意味だ」

 

「ありますあります」

 

「……「行くのは止めない」か」

 

「ありますあります」

 

「……でも「切島は止めた」のか」

 

「ありますあります」

 

「……俺は違うということか」

 

「ありますあります」

 

 爆豪が少し間を置いた。

 

「……なんで俺は違うんだ」

 

「えっ、そんなん関係ないでしょ」

 

 爆豪が「……二回言うか」と言った。

 

「ありますあります」

 

「……「お前が行くのはお前の問題だ」ということか」

 

「ありますあります」

 

「……「止めない」か」

 

「ありますあります」

 

 爆豪が「……行ってくる」と言った。

 

「ありますあります」

 

「……戻ってくる」

 

「ありますあります」

 

 爆豪が廊下を歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 爆豪の背中が廊下の向こうに遠ざかっていった。

 

 索敵でその気配を追った。

 

 爆豪の肩が——今日は少し前に出ていた。前傾気味の姿勢。走る前の体勢に似ていた。肩甲骨が開いている。背中の広背筋が——張っていた。

 

 緊張ではなく、決意の張り方だった。

 

「おいゴルァ!降りろ!免許持ってんのか!」

 

 野獣先輩が言った。

 

 切島が「……何ですか今の語録」と言った。

 

「ありますあります」

 

「……「爆豪くんへの何か」ですか」

 

「ありますあります」

 

「……「免許持ってんのか」——「一人で行く資格があるのか」ということですか」

 

「ありますあります」

 

「……でも止めなかったですよね」

 

「ありますあります」

 

「……先輩的には「ある」ということですか、資格が」

 

「ありますあります」

 

 切島が「……爆豪くんなら大丈夫か」と言った。

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 

 午後になった。

 

 野獣先輩は屋上に出た。

 

 索敵を最大まで広げた。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 デクの気配を探した。

 

 ある。

 

 遠い。雄英からかなり遠い方向にいる。でも——動いている。生きている。動き回っている。

 

「いきますよーいくいく」

 

 野獣先輩が言った。

 

「ありますあります」

 

 デクが動いている。日本中を動き回っている。気配が大きくなったり小さくなったりしている。戦っているのかもしれない。走っているのかもしれない。でも消えていない。

 

「いきますよーいくいく」

 

 もう一度言った。

 

「ありますあります」

 

 まだいる。まだ動いている。

 

 デクの気配の「動き方」が——野獣先輩の索敵の中で見えていた。どこかに向かっていた。目的がある動き方だった。迷っていなかった。

 

「ありますあります」

 

 それだけ確認できれば——今日は十分だった。

 

 

 

 

 

 夕方。

 

 相澤が屋上に来た。

 

「……索敵で追っているか」

 

「ありますあります」

 

「……見えるか」

 

「ありますあります」

 

「……追いかける気はあるか」

 

 野獣先輩は少し間を置いた。

 

「これがなかなか…難しいねんな…」

 

 相澤が「……そうか」と言った。

 

「……「行かせてあげたい」のか」

 

「ありますあります」

 

「……でも「追いたい」のか」

 

「ありますあります」

 

「……どちらも本音か」

 

「ありますあります」

 

「……「難しい」か」

 

「ありますあります」

 

 相澤が「……そうだな」と言った。「俺も同じだ」

 

「ありますあります」

 

「……一つだけ聞く。今日、緑谷の気配が消えたことは——あるか」

 

「ありますあります」

 

「……「ない」か。消えたことは」

 

「ありますあります」

 

「……ずっと見えているか」

 

「ありますあります」

 

「……それでいい。それだけでいい」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 夜。

 

 索敵の中でデクの気配が——激しく動いていた。

 

 戦っている。消耗している。気配の密度が下がっている。でも消えていない。まだ動いている。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 索敵を絞った。デクの一点だけに集中した。

 

「お前初めてかここは?力抜けよ」

 

 野獣先輩が言った。

 

 誰もいない屋上に向かって言った。

 

 届かないかもしれない。索敵は一方向だ。こちらからデクに何かを送ることはできない。

 

 でも——言いたかった。

 

「ありますあります」

 

 言いたかったから言った。

 

「お前初めてかここは?力抜けよ」

 

 もう一度言った。

 

「ありますあります」

 

 デクの気配が——少し落ち着いた。

 

 たぶん、関係ない。たぶん戦いが一段落しただけだ。

 

 でも野獣先輩は「ありますあります」と言った。

 

 

 

 

 

 

 夜中だった。

 

 索敵を広げた。

 

 A組の気配を確認した。

 

 切島が眠れていなかった。上鳴が眠れていなかった。お茶子が眠れていなかった。飯田が眠れていなかった。轟が眠れていなかった。耳郎が眠れていなかった。梅雨が眠れていなかった。

 

 爆豪は——外にいた。雄英の外に気配があった。デクを探して動いていた。

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩は自分に言った。全員の気配を確認した、という意味で。

 

「パッソ…」

 

 野獣先輩が言った。

 

 部屋を出た。音を立てなかった。気配を消した。

 

 廊下を歩いた。誰にも気づかれないように歩いた。

 

 まず切島の部屋の前に立った。

 

 索敵で確認した。切島が起きている。でも動いていない。横になって天井を見ている気配だった。

 

「パッソ…」

 

 通り過ぎた。

 

 お茶子の部屋の前に立った。梅雨の部屋の前に立った。耳郎の部屋の前に立った。一つ一つ確認して、通り過ぎた。

 

 全員、まだ生きていた。全員、眠れていないが、消えていなかった。

 

 

 

 

 

 

 屋上に出た。

 

 夜中だった。星が出ていた。

 

 索敵を最大まで広げた。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 デクの気配——ある。今は止まっていた。どこかで休んでいるのかもしれない。気配が落ち着いていた。

 

「ありますあります」

 

 野獣先輩は自分に向かって言った。

 

 少し間を置いた。

 

「いつしか雨はやみ、そこには虹がかかるんだよなぁ…」

 

 野獣先輩が言った。

 

 誰もいない屋上に向かって言った。

 

「ありますあります」

 

 止まっていない。デクはまだ動いている。今夜は休んでいるだけだ。

 

「いつしか雨はやみ、そこには虹がかかるんだよなぁ…」

 

 もう一度言った。

 

 今度は——A組全員に向けて言った。届かないけれど言った。

 

「ありますあります」

 

 終わらない夜は——ない。

 

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

 相澤が野獣先輩のところに来た。

 

「……今朝の索敵は」

 

「ありますあります」

 

「……緑谷は」

 

「ありますあります」

 

「……見えているか」

 

「ありますあります」

 

「……どこにいる」

 

「微粒子レベルで存在している…?」

 

「……遠いか」

 

「ありますあります」

 

「……昨夜から動いているか」

 

「ありますあります」

 

「……昨夜は」

 

「ありますあります」

 

「……「止まっていた」か。休んでいたか」

 

「ありますあります」

 

「……分かった」

 

 相澤がスマートフォンに何かを打った。

 

「……緑谷に連絡が取れる可能性がある。何か伝えることがあるか」

 

 野獣先輩は少し間を置いた。

 

「流行らせコラ!」

 

 野獣先輩が言った。

 

 相澤が「……「ありますあります」を流行らせろ、ということか」と言った。

 

「ありますあります!!」

 

「……緑谷に「ありますあります」を言えということか」

 

「ありますあります」

 

「……分かった。伝える」

 

 相澤が「……田所。一つだけ確認する。お前は——緑谷が戻ってくると思っているか」

 

「いつしか雨はやみ、そこには虹がかかるんだよなぁ…」

 

 相澤が「……そうか」と言った。「俺も同じだ」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 上鳴が来た。

 

 目が少し赤かった。眠れていない目だった。

 

「先輩」

 

「ありますあります」

 

「……昨日、デクくんの気配、ずっと追ってましたか」

 

「ありますあります」

 

「……今朝も」

 

「ありますあります」

 

「……夜中も」

 

「ありますあります」

 

「……語録まとめ、昨日から止まってます」

 

「ありますあります」

 

「……先輩の語録を記録する気になれなかったんです。でも——「いきますよーいくいく」って言ってたの聞こえてました。屋上から」

 

「ありますあります」

 

「……「デクくんが動いている」ということですか」

 

「ありますあります」

 

「……「いきますよーいくいく」って——先輩がデクくんを追いかけていたんですよね、索敵で」

 

「ありますあります」

 

 上鳴が「……先輩が追い続けてくれてるなら——俺たちは待てます」と言った。

 

「ありますあります」

 

「……語録まとめ、再開します。昨日の「お前初めてかここは?力抜けよ」——あれは誰に言いましたか」

 

「ありますあります」

 

「……デクくんに、ですか」

 

「ありますあります」

 

「……届くんですか、語録は」

 

「ありますあります」

 

 上鳴が「……記録します」と言った。「「デクくんへの遠距離語録送信・「お前初めてかここは?力抜けよ」——届くかどうかは不明だが先輩は信じている」として記録します!!」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 昼。

 

 廊下を歩いていたら物間が壁際に立っていた。

 

「……田所先輩」

 

「ありますあります」

 

「……昨日、相澤先生に「これがなかなか…難しいねんな…」と言いましたよね」

 

「ありますあります」

 

「……聞こえていたんですね、廊下から」

 

「ありますあります」

 

「……私も——思います。「行かせてあげる」か「追う」かは——難しい」

 

「ありますあります」

 

「……A組の人たちは——デクくんを信じているんですね」

 

「ありますあります」

 

「……私には——そういう関係が」と物間が言いかけた。

 

「ありますあります」

 

「……「ある」のか」

 

「ありますあります」

 

「……「ない」のか」

 

「ありますあります」

 

「……どちらですか」

 

「これがなかなか…難しいねんな…」

 

 物間が「……そうですね」と言った。「難しいですね」

 

「ありますあります」

 

 物間が廊下を歩いていった。

 

 振り返らなかった。でも歩き方が少し——軽くなったような気がした。

 

 

 

 

 

 夕方。

 

 切島がまた屋上に来た。

 

「先輩」

 

「ありますあります」

 

「……昨日の夜、廊下歩いてましたよね。俺の部屋の前で」

 

「ありますあります」

 

「……気配消してたけど——先輩の「パッソ…」って聞こえました」

 

「ありますあります」

 

「……全員の部屋を回ってたんですか」

 

「ありますあります」

 

「……生きてるか確認してたんですか」

 

「ありますあります」

 

 切島が「……ありがとうございます」と言った。

 

「ありますあります」

 

「……先輩に聞きたいんですけど——「ありますあります」って、どういう意味ですか」

 

「ありますあります」

 

「……「答えはある」ってことですか」

 

「ありますあります」

 

「……でも毎回違う意味で使いますよね」

 

「ありますあります」

 

「……「YES」ですか」

 

「ありますあります」

 

「……「全部ある」ってことですか。俺たちのこと、デクくんのこと、全部——先輩の索敵の中にある、ということですか」

 

「ありますあります」

 

 切島が「……俺もそう思います」と言った。「全部ある」

 

「ありますあります」

 

 

 

 

 

 

 その夜。

 

 エンデヴァーから相澤にメッセージが来た。

 

「緑谷がいなくなったと聞いた。田所の索敵に影響はあるか」

 

 相澤が「影響はない。むしろ絞られた」と打った。

 

「……「絞られた」とはどういう意味だ」

 

「田所が緑谷の気配だけを追い続けている、という意味だ」

 

 十秒後。

 

「……そうか」

 

「……ありますあります」

 

 相澤が打った。

 

 エンデヴァーが「意味は分かっている」と返した。

 

 また十秒後。

 

「……いつしか雨はやみ、そこには虹がかかるんだよなぁ…」

 

 エンデヴァーが返してきた。

 

 相澤が「……お前はいつ覚えたんだ」と打った。

 

「少し前に調べた」

 

「何で調べた」

 

「聞くな」

 

「ありますあります」

 

 相澤が返した。

 

 エンデヴァーから「ありますあります」が届いた。

 

 

 

 

 

 深夜。

 

 野獣先輩は屋上に立っていた。

 

 索敵を最大まで広げた。

 

「TARGET…CAPTURED…BODY SENSOR…」

 

 デクの気配——ある。今夜は動いていた。どこかに向かって走っている。速い。

 

「いきますよーいくいく」

 

 野獣先輩が言った。

 

「ありますあります」

 

 デクが走っている。

 

 索敵でその動きを追い続けた。

 

 速い。でも方向がある。目的がある。迷っていない。

 

「いきますよーいくいく」

 

 もう一度言った。

 

「ありますあります」

 

 行っている。デクが行っている。

 

 野獣先輩は追い続けた。

 

 今夜も。明日も。

 

 索敵が届く限り、追い続ける。

 

「ありますあります」

 

 それだけで、今は十分だった。

 

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