【完結】ヒロアカレ⚪︎プ!語録使いになった先輩   作:まだら模様

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投下します
キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊注意です。
ワードは野獣先輩の個性の要ですが、そんな先輩の相手は…?


期末試験編
第8話「なんで?(期末試験)」


 

 

 職業体験が終わり、次に待っていたのは期末試験だった。

 

 筆記三日間。そして演習試験。

 

 相澤がHRで告げた。

 

「演習試験の内容を言う。今年から変更した。対ロボットではなく——教師と戦ってもらう」

 

 クラスが静まり返った。

 

「2人1組で教師1人と戦う。脱出か、教師への手錠装着で合格だ。ペアと対戦相手は後ほど発表する。当日まで相手は非公開だ。尚——」

 

 相澤が一拍置いた。

 

「理由は二つ。一つ目、先日のUSJ事件を受けて、対人戦闘の実践的な評価を行う必要があると判断した。二つ目、ヒーロー科への外部からの干渉があった今、生徒たちの実戦対応能力を正確に把握しておく必要がある。プロの前に立つ経験を早めに積ませる」

 

緑谷が手を挙げた。

 

「あの、先生も本気で来るんですか?」

 

「当然だ。ただし」

 

相澤が付け足した。

 

「教師陣は全員、超圧縮重りを両手足に装着して臨む。各自の体重の約半分に相当する超高密度おもりだ。身体能力を大幅に制限した状態で戦う。お前たちに『教師を拘束する』か『脱出ゲートへ到達する』可能性を現実的なものにするためのハンデだ」

 

「体重の半分……」

 

 クラスがざわついた。上鳴が「半分って…先生方どんだけ重くなるんすか」と呟いた。

 

「赤点は補習。補習の間は林間合宿に参加できない。全員受かってこい」

 

 それだけ言って相澤が出て行った。

 

 

 

 筆記三日目の夜、野獣先輩は一人で廊下を歩いていた。

 

 頭の中で演習試験のことを考えていた。

 

 ペアは誰になるか。対戦相手は誰になるか。

 

 語録個性の弱点を考えると——発声が止められると何もできなくなる。音を封じられる相手は最悪だ。

 

「やべぇよやべぇよ」

 

 独り言で呟いた。誰もいない廊下に語録が響いた。

 

 危機察知が発動した。

 

 何かを察知した。でも何を察知したのかは分からない。試験の相手のことを考えながら発動したせいか、漠然とした「まずい」感覚だけが残った。

 

 野獣先輩は足を止めた。

 

「ダメみたいですね」

 

 誰もいない廊下に向かって言った。

 

 

 

 演習試験当日、相澤がペアと対戦相手を発表した。

 

「切島・砂藤——セメントス。梅雨・常闇——エクトプラズム。轟・八百万——俺だ。飯田・尾白——パワーローダー。麗日・青山——thirteen。芦戸・上鳴——根津校長。葉隠・障子——スナイプ。峰田・瀬呂——ミッドナイト。デク・爆豪——オールマイト」

 

 デクと爆豪のペアが発表された瞬間クラスがどよめいた。緑谷が「え」という顔をした。爆豪が「あ゛?」という顔をした。

 

 相澤が続けた。

 

「野獣・耳郎——プレゼントマイク」

 

 野獣先輩が止まった。

 

 耳郎響香が振り返った。黒髪のショートカット、クールな目。

 

「……そう」

 

 耳郎が短く言った。それ以上は何も言わなかった。

 

 野獣先輩は耳郎の横顔を見た。耳から長いイヤホンジャックが垂れている。音系の個性だ。

 

 対戦相手はプレゼントマイク。

 

 音の衝撃波で全てを制圧する、音系の最上位個性。

 

 耳郎がこちらを見た。

 

「野獣先輩さん、語録って声に出さないと発動しない?」

 

 野獣先輩はうなずいた。

 

「……なら、かなりまずいね」

 

 耳郎が静かに言った。感情を見せない口調だが、状況の深刻さを正確に把握している。

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「そういうこと。あの人の音量、私の完全上位互換だから。声潰されたら終わり」

 

 耳郎が腕を組んだ。

 

「作戦会議しよ」

 

 

 

 空き教室で二人が向かい合った。

 

 耳郎がホワイトボードに書いた。

 

「プレゼントマイク——個性「ヴォイス」。音の衝撃波で広範囲攻撃。耳を塞いでも鼓膜が破れる音量。私のイヤホンジャックで心音を衝撃波にしても正面から打ち負ける。声も音も全部上回られる」

 

 野獣先輩は黙って聞いた。

 

「私だけじゃ勝てない。野獣先輩さんの語録が使えれば話は変わるけど、問題はあの音量の中で声が通るかどうか」

 

 耳郎がこちらを見た。

 

「試したことある? 大音量の中で語録って発動する?」

 

 野獣先輩はペンで紙に書いた。

 

「わからない」

 

「正直だね」

 

 耳郎が少し考えた。

 

「じゃあ一個ずつ整理しよう。私が音を索敵に使って位置を把握する。野獣先輩さんが転移で距離を詰める。問題はその間マイク先生の音量が来たら語録が封じられること——」

 

「ちょっと歯ぁ当たんよ~」

 

 野獣先輩が言った。

 

 耳郎が止まった。

 

「……今の、何の効果?」

 

 野獣先輩はペンで書いた。

 

「相手の攻撃が外れやすくなる。軌道がズレる」

 

「音波の軌道がズレるなら——」

 

「多少はね?」

 

「多少でも、当たる範囲がズレれば声が通る隙が作れるかもしれない」

 

 耳郎が立ち上がった。

 

「もう一個聞く。「こ↑こ↓」で私も転移できる?」

 

 野獣先輩はうなずいた。

 

「じゃあこうしよう」

 

 耳郎がホワイトボードに作戦を書き始めた。

 

 クールな外見のまま、でも目が真剣だった。

 

 野獣先輩はその横顔を見た。

 

 切島とは違う種類の頼れる感じがある。うるさくなく、余計なことを言わず、でも必要なことを的確に言う。

 

「……なに見てんの」

 

「ないです」

 

「ないってどういう意味」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 耳郎がため息をついた。でも表情は柔らかかった。

 

 

 

 試合は順番に行われた。

 

 切島と砂藤はセメントスの壁に何度も阻まれながら、最終的に二人で同時に突撃して突破口をこじ開けた。合格。

 

 轟と八百万は相澤の消去を逆手に取って、八百万の創造した道具で逃げ切った。合格。

 

 デクと爆豪はオールマイト相手に、最後の最後で二人が噛み合って脱出口を突破した。合格。

 

 プレゼントマイクはモニター越しに映っていた。DJのような雰囲気で試合エリアに立っている。腕に錘をつけているが、全くそれを感じさせない動きをしていた。

 

 野獣先輩はそのモニターを見た。

 

 あの人物が職員室で毎晩録画を見ていた。語録が出るたびに肩を震わせていた。

 

 そして今日は敵として戦う。

 

「喉渇いた…喉渇かない?」

 

 野獣先輩が言った。

 

 隣で順番待ちをしていた耳郎が「水ならそこに」と自分の水筒を差し出した。

 

 野獣先輩は受け取って飲んだ。

 

 耳郎が前を向いたまま言った。

 

「……緊張してる?」

 

「ないです」

 

「嘘くさい」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「どっちが当たり前なの」

 

 耳郎が小さく笑った。

 

 

 

 試合エリアは森林地帯に近い広いフィールドだった。

 

 木々が並んでいる。遮蔽物になりうるが——音は木を貫通する。

 

 フィールドの向こうにプレゼントマイクが立っていた。

 

 サングラスにロングヘア。首元に指向性スピーカー。錘をつけた腕が少し重そうだが、立ち姿に余裕がある。

 

「へーい!リスナーズ!!今日は俺のライヴにようこそ!!」

 

 プレゼントマイクがマイクを向けながら言った。

 

「いやァ、野獣選手と耳郎さんのペアかあ! これは——」

 

 プレゼントマイクの視線が野獣先輩に向いた。

 

 一瞬、プレゼントマイクの表情が動いた。

 

 ほんの一瞬。サングラスの奥で何かが揺れた。

 

「……加減はしないぜ?」

 

 声のトーンが少し変わった。

 

 開始の合図が出た。

 

 

 

 プレゼントマイクが即座にヴォイスを放った。

 

 広域の音の衝撃波だ。フィールド全体に音が響き渡る。木々が揺れた。地面が振動した。

 

「TARGET…CA——」

 

 野獣先輩の声が音波に飲み込まれた。

 

 発動しなかった。

 

 耳郎が耳を押さえながら叫んだ。

 

「声が通らない! 予想通り! 作戦通りに!」

 

 耳郎がイヤホンジャックを地面に刺した。地中経由で音の振動を探知する索敵だ。プレゼントマイクの位置を把握しようとしている。

 

「でもそっちもお見通しだぜ!!」

 

 プレゼントマイクが別方向に移動しながら再びヴォイスを放った。今度は指向性を絞った一点集中の音波だ。耳郎のイヤホンジャックが地面から引き抜かれた。

 

「ぐっ——!」

 

 耳郎がよろけた。

 

 野獣先輩は走った。声は通らない。でも体は動く。

 

 プレゼントマイクとの距離を縮める。転移には接触か、触れられる距離が必要だ。

 

「近づかせるかよ!!」

 

 プレゼントマイクが全方位にヴォイスを展開した。逃げ場がない。

 

「ちょっと歯ぁ当たんよ~!」

 

 野獣先輩が叫んだ。

 

 音波の衝撃が——わずかにそれた。直撃ではなく、かすった。体が吹っ飛ぶほどではない。でもよろけた。

 

「今の声、通った!」

 

 耳郎が反応した。

 

「音量が大きい時は飲まれる。でも指向性を絞った瞬間、一点に集中するから他が薄くなる——その隙間で声が通った!」

 

 耳郎が素早く分析した。

 

「野獣先輩さん、次に一点集中の音波が来たら——声出して!」

 

「お、そうだな!」

 

 プレゼントマイクが再び指向性を絞った。今度は耳郎に向けて。

 

 その瞬間——

 

「やめたくなりますよなんか部っ活ぅ~!」

 

 野獣先輩が叫んだ。

 

 スタジアム観戦エリアで複数の人間が一斉に「部活やめたい」衝動に駆られてその場にしゃがみ込んだ。試合と関係のない見学中の生徒たちが突然がっくりした。

 

 プレゼントマイクの動きが一瞬だけ——止まった。

 

 止まった理由を、後で誰も上手く説明できなかった。

 

 その一瞬の隙に、耳郎がイヤホンジャックを地面に深く刺した。プレゼントマイクの足元の位置を捉えた。

 

「いた! 右から八メートル!」

 

「こ↑こ↓!」

 

 野獣先輩が指を向けた。耳郎が——プレゼントマイクの後方三メートルにワープした。

 

「ッ!?」

 

 プレゼントマイクが振り返った。

 

 耳郎が心音スピーカーを発動した。プレゼントマイクに向けて直接。

 

 音波対音波。

 

 圧倒的に負けた。耳郎が吹き飛んだ。

 

「やっぱ上位互換だろぉ!! でも悪くない作戦だったぜ!!」

 

 プレゼントマイクが叫んだ。

 

 野獣先輩は吹き飛んだ耳郎を見た。まだ動いている。

 

 プレゼントマイクの注意が一瞬耳郎に向いた。

 

 野獣先輩は全力で走った。

 

「菅野美穂!」

 

 神ノ歩が発動した。足裏の感覚が極限まで研ぎ澄まされた。地面の振動をリアルタイムで感知できる。プレゼントマイクが次に足を動かす方向が分かる。

 

 先回りした。

 

「馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!」

 

 天下無双が発動した。全身に力が満ちた。

 

 プレゼントマイクが振り返ったとき、野獣先輩はすでに腕の届く範囲にいた。

 

「……っ——!」

 

 プレゼントマイクが全力のヴォイスを放とうとした。

 

「お前さぁ…」

 

 プレゼントマイクの動きが、止まった。

 

 ツッコミ待ち硬直。一秒。

 

 野獣先輩は手錠を——プレゼントマイクの錘のついた腕に装着した。

 

 装着完了。

 

 試合終了のブザーが鳴った。

 

 

 

 フィールドから出てきた野獣先輩の前に、プレゼントマイクが立っていた。

 

 手錠を外しながら、プレゼントマイクが言った。

 

「……いやァ、やられたぜ。「お前さぁ…」は反則じゃないのかよ」

 

「ないです」

 

「ないってどういう意味だ!」

 

 プレゼントマイクがいつものテンションで叫んだ。でもその目は笑っていた。

 

「声を封じても勝てるかと思ったんだがなァ! 最後の最後でそれか!」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「当たり前じゃないだろ!!」

 

 プレゼントマイクが笑いながら叫んだ。

 

 耳郎が隣に来た。

 

「先生、「やめたくなりますよなんか部っ活ぅ~」って何の効果だったんですか。あの一瞬先生が止まった理由が分からなくて」

 

 プレゼントマイクが止まった。

 

「……それは」

 

「何ですか?」

 

「……な、なんでもないぜ! 作戦上のフェイントだ!」

 

「嘘くさい」

 

 耳郎がクールに言った。

 

「嘘じゃない! プロとしてのフェイントだ! レッツゴー!」

 

 プレゼントマイクが大声を出しながら早足で去っていった。

 

 耳郎が野獣先輩を見た。

 

「……先生、あの語録で止まった理由、知ってる?」

 

「ありますあります」

 

「教えてくれない?」

 

「ないです」

 

 耳郎がしばらく野獣先輩を見た。

 

「……まあ、いいか」

 

 耳郎がそれ以上追及しなかった。

 

 クールで、でもちゃんと察している。

 

 野獣先輩は耳郎の横顔を見た。

 

 悪くない相棒だった、と思った。

 

 

 

 その夜、職員室でプレゼントマイクが椅子に深く沈み込んでいた。

 

 隣で相澤がメモ帳に何か書いている。

 

「……ショータ」

 

「なんだ」

 

「俺、負けた」

 

「知ってる」

 

「「お前さぁ…」に一秒固まった。一秒だぞ。プロが生徒相手に一秒」

 

「語録の効果だ。仕方ない」

 

「仕方なくないだろ! しかも「やめたくなりますよなんか部っ活ぅ~」で一瞬止まったのを耳郎に指摘された」

 

 相澤がペンを止めた。

 

「……なぜ止まった」

 

「知ってるだろ! お前も同じだろ!」

 

「俺は止まってない」

 

「嘘つけ! 今日の試合モニターで見てたとき、こめかみ動いてたぞ!」

 

 相澤が前を向いた。

 

「……語録の効果で観戦者が影響を受けたんだろう。俺も例外ではなかっただけだ」

 

「都合のいい解釈だなそれ!」

 

 プレゼントマイクが天井を向いた。

 

「なあショータ。あの語録、俺たちの知ってるやつと全部一致してるよな」

 

「……ああ」

 

「100年以上前のやつだぞ。なんであの子が使えるんだ」

 

 相澤が少しの間、黙った。

 

「分からない。だが——」

 

「だが?」

 

「「しかし、修行やってます。いつの日か世界を救うと信じて。」という語録が本物だとしたら」

 

 プレゼントマイクが相澤を見た。

 

「……世界を救う目的で来たってこと?」

 

「そこまでは言っていない。だが目的があって来ている可能性はある」

 

 二人の間に沈黙が流れた。

 

 プレゼントマイクが小さく言った。

 

「「やめたくなりますよなんか部っ活ぅ~」……俺、あの語録、昔ラジオで使ったことあったんだよな」

 

「……知っている」

 

「知ってたのかよ」

 

「お前がラジオで使うたびに、俺は内心で笑っていた」

 

「笑ってたのかよ!!」

 

「止まれとは言わなかった」

 

 プレゼントマイクがため息をついた。

 

「……あの子が試合中にあの語録を使った瞬間、条件反射で動きが止まった。完全にプロとして失格だ」

 

「お前は今日、生徒に正直に負けた。それでいい」

 

 相澤が静かに言った。

 

 プレゼントマイクがしばらく黙った。

 

「……あの子、強くなるな」

 

「なるだろうな」

 

「嬉しいような、複雑なような」

 

「それが教師というものだ」

 

 相澤がメモ帳を閉じた。

 

 職員室の明かりが、しばらく消えなかった。

 

 

 

 翌日、全員の試験結果が出た。

 

 A組全員合格。補習なし。

 

 相澤が教室で告げた。

 

「全員受かった。林間合宿の参加資格を得た。詳細は後日連絡する。以上だ」

 

 クラスが湧いた。上鳴が「やったぜ!」と叫んだ。芦戸が跳び上がった。

 

「やったぜ。」

 

 野獣先輩が静かに呟いた。

 

 隣の席から耳郎が「おつかれ」と言った。

 

「ありがとナス!」

 

「……それ、お礼の言葉?」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

 耳郎が小さくため息をついた。でも口元が緩んでいた。

 

 切島が「野獣先輩さんお疲れ様っした!!」と飛んできた。

 

「マイク先生に勝ったんすね! 語録対音波とか絶対不利じゃないですか! どうやったんすか!」

 

「じゃあ、ぶち込んでやるぜ!」

 

「ぶち込む? 何を?」

 

「ないです」

 

「ないって何が!」

 

 切島のツッコミが教室に響いた。

 

 野獣先輩はその声を聞きながら、窓の外を見た。

 

 次は林間合宿だ。

 

 あそこでは——ヴィランが来る。

 

「大会近いからね、しょうがないね」

 

 野獣先輩が窓に向かって呟いた。

 

 クラスの喧騒が続いている。

 

 誰もその言葉の意味を知らない。

 

 




評価付与が、感想が野獣先輩の語録を加速させます!
投稿頻度が速くやりますねぇ!と言われるように頑張りたいですが
もう一つの作品もあるので
のんびりになるかもです。
確実に進められるよう…ガンバリマス
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