ケース1:プロローグ
「爆弾設置 隠れろ」
「3…2…1」
「行くぞ…」
刹那、斬撃が飛び出る。
一つの首は無くなった。
「っ、怯むな!」
「ですが…相手は…!」
"夜の残光"。
…戦場では、そう呼ばれていた。
「う…ちょこまかと…!」
姿を隠し、よく聞く。
「いいか…俺たちが相手にしているのは、英雄なんかじゃない。ましてや伝説でもない。ちょっぴり優秀なだけだ、だから」
「隙あり」
…なんてね。
「…えっ、はっ?たい、ちょう…?」
「…ごめん」
狙いをつける。
もう苦しまないようにと、祈りながら。
隕石が降って来た。
戦争を終わらせた。
「…ふあ、ぁ〜…」
そして今、彼女……『ソラ・グリーム』に宿るのは祝福。
果てには呪いと成り果てるもの。
「う、んん…な、何これ?」
散らかり切ったリビングを見ながら、疑問を呈した。
どうして、と呟こうにも。昨日のことを思い出せば自ずと分かることだ。
「…あー、そうそう。そうでした」
彼女と言うのは、人"に"懐かれやすい生物である。
とはいえ彼女自身が懐くことはあまりなく。数少ない友人たちを家に呼んでみたら、これだ。
だがこの都市自体、流れ者の最盛の地だ。
治安が悪い、と思われがちだが…いや実際そうだが…ここを統治する勢力がいくつかある。
救協会、アンダーグラウンド…そして全てを総括する、エンドレス・ドリーム。
まぁ今は、注目すべき問題がある。まず床を片付けるところから始めよう…そう思い、箒を手に取ってガラクタ類を隅に追いやっていた時。
「…ん?はーい」
唐突に『ピンポーン』などと表される呼び鈴が鳴る。彼女はそれに返事し、玄関を開ける。
…私が言うのもあれだが、少しは警戒しないのか?
「はいはい、どな…た…」
…
「…フフッ…いや、何…」
「私がいる事が、そんなに不都合かな?」
そこにいたのは…。
「…えっと、確か…」
「ルナイ・ルーメンさん」
ルナイ・ルーメン。
エンドレス・ドリーム(長いから今後はEDと呼ぶ)総統。
及び、現最高戦力。
及び、超有能で超カワイイ私に次ぐ頭脳と美貌を持つ最高最善最大最強王…王ではないか。魔王でもないし。
「あなたみたいな人が、なんでこんなところに…?」
「…まぁ、ほら。"なんでも屋"、だろう?つまり依頼をね、しに来たんだ」
言ってなかったが、実は彼女はなんでも屋である。割となんでもやってくれる…らしい。
「そうですか…とにかく、依頼というなら、どうぞ中へ。…かなり擁護できないほど汚いですケド」
「座れるなら構わないよ」
この懐の大きさ。うーん、さすが私のじょ…。
…。
曰く、依頼は行方不明の人探し。
「二人いる。一人は…救協会の聖女。詳しい話は当時仕えていた聖堂騎士に聞いてくれ」
救協会には、それぞれ『神父』『シスター』『聖女』とそれに仕える『聖堂騎士』がいる。
荒廃した近未来的感覚からは少々珍しい時代錯誤のような役職だが、どうしてかその名に反して悪名が少し広まっている。それもたった一人の人生ギャンブラーシスターによって。
「そしてもう一人は…異名くらいは聞いた事があるんじゃないか?"夜の残光"を」
夜の残光。
この話の冒頭にあったように、巻き込まれ戦争を"生身で"制しつつあった者。
だが、あの軍事会社が潰された日…隕石が降った日に…彼女は消えた。跡形もなく、最初からいなかったように。大事なのは、関わりのあった全員が覚えていた…存在がまるごと消えたわけじゃないこと。
「これに関しては、見つけられなくても構わない。あの日から数年経ったんだ。…もう、この世界にはいないかもしれない」
…。
「とにかく…とにかくだ。まず救協会の方からあたってくれ。『エストレンジ・ジーメン』という名前だ。多分有名だからすぐ分かると思うよ」
「ふむふむ…了解です。エストさんですね」
「ん…そうだね」
…ルナイは少し親しげに呼ぶのが気になったようだが、気にしないことにしたらしい。