知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
なぁ、ドキンダム。
――『何ダム?』
あのさ、今シュナさんを眷属にした時にさ、記憶が少しだけ蘇ったんだ。チクッとした痛みが頭を走って、そしたら俺の過去の記憶がすごいクリーンになった。
――『へぇ、あれにそんな機能があったダムか』
――『おそらくだけど、ドキンダムとアポロヌスが岸波大地の眠った記憶から産まれたもので、ドキンダム達の力が加わった駒やカードが眷属化御使い化で目覚めて、一定量目覚めるたびに記憶が蘇っていくって仕組みなのかしらね。それと、今までのは記憶の混濁かしら?その辺も詳しく調べてみたいわ』
ユノハ様、そんなことはどうでもいいんです。重要なのは、俺の初恋が『おねがいティーチャー』じゃなかったってことですよ。
――『『クッソどうでもいい』』
てめぇら、俺の初恋を何だと思ってやがる……!
まぁ、いいでしょう(1000%並感)
「言っておくけど、皆の質疑応答では『岸波大地に女として惚れているか』とか聞くなよ」
「それはクーデターものですぞ、大地様!」
「我も気になることだ」
「これから増えていくあなたの伴侶を思ってのことです」
「コイバナさせろー!」
「何でだよ!仲良しはいいことだけど、もうちょっと俺の味方になってよ!」
「「「「却下!」」」」
皆の馬鹿!もう知らない!
さて、面接も終わりが見えて来た。俺の胃の終わりはいつでも目の前にある。
お次の方の紙を見る。おっと、これは相当な問題児だったな。
「それではお入りください」
俺がそう言って、中に促す。入って来たのは小さいピンクのツチノコ。泣きながら椅子の上へと座った。
「……お名前をどうぞ」
「く、クーシュナ・アスタロト、デス……」
いつの間にか人型に戻っていた。面白い。
さて、皆もお気付きだろう。そうだ、『アスタロト』だ。彼女は俺が面倒なことになった原因の家の娘だ。
「あなたの実家には恨みしかないので、クーシュナさんって呼びますけどいいですよね?」
「いいデス。私もアスタロトは嫌いなので」
俺、今結構嫌われそうなことを言ったはずなのにまさか乗ってくるとは。しかも、ガチトーンだった。ちょっと闇が深そうだ。
「えーっと、クーシュナさんは実家に随分恨みがあるようで」
俺がそう言うと、視線を下に落として陰のオーラを出すクーシュナさん。
「私、アジュカの腹違いの妹なんデス。なので、いつもあいつと比べられて、認めてもらえなくて。そんなアスタロトが嫌いなのデス。しばらくしてから、アスタロトに捨てられて、ベリアル家に拾ってもらいマシタ。今いるベリアル家はとてもいい所デス。ちゃんと真っ当な評価をしてくれマス」
そっかぁ、お兄ちゃんへのコンプレックスを拗らせたかぁ。俺、カウンセリングは門外漢なんですよなぁ。
「ほら、スマイル」
俺は何となくそう言ってみる。クーシュナさんはその言葉にきょとんとしていた。
「折角の可愛い顔が台無しだ。どうせ何だから、笑顔でいた方が君の良さが出ていいと思う」
俺はそう言う。両隣からの視線が痛くなった。何でだろうか。
「可愛い……うぇへへ……」
クーシュナさんはクーシュナさんで満足そうで何よりです。
「それで、ベリアル家にはどれくらいいるんですか?」
俺は話を戻した。クーシュナさんもすぐにさっきまでのきちっとした態度に戻った。
「今回のボンボンが生まれるずっと前からデス。サタン様やルゥリン様程長くないデスが」
じゃあ、ずっと昔からいるってことか。それならベリアル家への信頼ってことで、俺も安心できるな。
「とりあえず、実力ならサタンさんとステラネスさんに訊いた方が早そうだな」
俺は二人の方を見る。何やら厳しい視線を向けている。
「サタンさん?ステラネスさん?」
俺は不安になり、二人の名を呼ぶ。すると、サタンさんが口を開いた。
「大地様、確かにクーシュナは強いと思う。ルゥリン程ではないが、それでも十分な実力はある。ただ、自分で言うのもあれだが……彼女を採用すると、ベリアル家との癒着を疑われないか?」
サタンさんがぶっちゃけたことを言い出した。俺はどう思っているかって?
「俺もそう思う」
いや、ね。ここまでの眷属を見直すとさ、
サタンさん→ベリアル家の傘下のアムドゥスキアス家
ステラネスさん→ベリアル家そのもの
ルゥリンさん→ベリアル家傘下のハルファス家
幽さん→ベリアル家に関係あるお方
うん、黒歌以外皆ベリアル家に何かしら縁があるね。
「正直、不安はある。絶対裏で文句言われるってのも分かる」
「しかし、クーシュナはアジュカ・ベルゼブブの妹だ。パイプ作りとしてはいいのも確か。難しいことになると思うが……」
「それも分かる」
クーシュナさんはすごい欲しい人材だ。履歴書を見ると、どうやらベリアル家で研究だったり開発だったりをしているお方だそう。それに、実力もアジュカさんと比べられてきただけで、十分強いとのこと。そうなると、欲しくないわけがない。ベリアル家と関係していることを除けば。
うーん……
「採用!(脳死)」
仮眷属だし、あんま関係ないよな!そうだ!別に仮なんだからいいだろ!
「いいでしょ。ベリアル家との癒着なんて今更だし。本当に眷属になりたいなら、またその時はその時だ」
「そう言うものなのか……?」
余り納得いっていない様子のサタンさん。正直なことを言うなら、クーシュナさんはガチで欲しい人材でもある。開発関係ならグリゴリともパイプが出来るし、そもそもがアジュカさんともくっつくことが可能だ。それに、サタンさんが彼女の実力で眷属化を反対しているわけじゃないってのも実力を認めているってことに相違ないだろう。
「さて、それじゃあ仮眷属になってもらいます」
俺は駒を出す。出ていったのは、『兵士』の駒だ。奴はクーシュナさんの前に浮かぶ。
「それ、俺の駒なんで持っていてください」
「は、はい」
ノリと勢い。それが一番大事。そうでもしないと俺の胃が死ぬ。
こうして、俺は『兵士』を一人増やすことに成功したのであった。
○○○
「んじゃ残りの三人だけど、事前に言ってある通りにまとめてやっちゃうね」
俺は眷属達に改めてそう言う。そう、まとめてやる。三人ってことでお察しだと思いますが、結菜たちだ。彼女達には今回の顔合わせにも出てもらっている。眷属の皆にもすでに駒を渡したことを伝えてある。
「それにしても、ご主人様の中学の時からの女に会うのは初めてね。どんな女にゃ?」
黒歌がそう訊く。そんなに気になるか。うーん、そうだなぁ……。
「戦国武将の嫁」
「何それ?」
我ながら突拍子の無い変なことを言ったな。
「強くて、凛としていて、一本筋が通っている。それでいて意地っ張りで寂しがり屋な女の子」
結菜のことを何となくだが、俺の印象で語ってみた。あ、『美人』ってのもつけ忘れてたな。
俺がそんな感じで言うと、何やら眷属達が俺を信じられない目で見てきている。
「……なんだよ?」
「いえ、大地様も女の寂しさに気が付く心を持っているとは思わなかったもので」
「ステラネスさん、酷いこと言うね」
割とクールで真っ当な感じのステラネスさんにそれを言われ出したら終わりな気がする。
「そもそも、俺って既婚者だからな?嫁の機微くらい察してたっつーの」
顔すら思い出せない嫁のことを想う。こんなにも寂しいことがあるのだろうか。どれだけ求めても、求められても、愛するその手に届かないのだぞ?あの手のぬくもりがあれば、どれだけの絶望があろうと、この心から光は失われない。
俺は水を飲んでいると、周りがやけに静かになる。見渡すと、目を点にしている眷属達がいた。
「……何?」
俺がそう訊くと、幽さんが質問してきた。
「だ、大地様、既婚者であられたのですか?」
妙に震えているその声。少し面白いが、俺の結婚が余程信じられないらしい。
てか、あれか。俺の前世のことは余り聞かされてない感じか。
――『なら、言うしかないダムねwあの嘘をw』
チッ!ムカつくが、信じてない皆を信じさせるためにもドキンダムの言葉に乗ってやる。
「俺、別の世界の人間でさ。そこに故郷があって、その故郷をドラゴンに焼かれた。国民も皆死んだ、クソみたいな国の王子様だったんだよ。で、お妃様がいたの。彼女、身重でさ。そんな彼女もドラゴンに殺されたってわけよ。てか、黒歌と幽さんはサーゼクスさんから聞いてないの?」
俺がそう言うと、首を勢いよく横に振る二人。
「よよよ、嫁までいるとは聞いてないわよ!」
「それがしもそこまで進展していた方がいたとは思いませんでした」
何だろう、そんなに俺が結婚に向いてないように思われているのか?心外だし、傷ついた。泣きたいです。
「さて、切り替えていこう」
「んな無茶なこと言うなって話にゃ……まぁ、ごすのことだからって感じで納得するけどさぁ……」
「ほら始めるぞ、黒歌。三人、入って」
俺がそう言って、中に入るように促す。
ガチャリとドアが開いて、結菜たちが中に入った。
「ほな、さくっと席に着いてもらって」
「あなた、いくら私達が相手だからって緩みすぎていないかしら?」
結菜が笑顔で怒ってらっしゃる。怖いのだ……。
「分かりました。……それでもは皆さんお座りください」
そう言って、三人に席に着いてもらった。
じゃあ、紹介と行きますか。
「俺達から見て右から順に、アイシャ・エクシア」
「よろしくお願いいたします」
「斎藤結菜」
「よろしくお願いします」
「四条零児」
「よ、よろしくお願いします!」
四条め、妙に緊張しやがって。面白いぞ。
「まぁ、こちらの眷属については皆さんも知っているとして……何を話そう。俺から言うことはないのよね」
若干空気が緩む。それと一緒に、安心した四条の緊張もほぐれた様子だ。
「俺としてはそこそこ付き合いがある方々だから特に言うこともない。どっちかと言えば、皆が何かあるんじゃない?そこら辺どう?」
俺が眷属達にそう訊く。すると、幽さんが手を挙げる。俺は頷いて、彼女の質問を許可する。
「失礼します。岸波大地の『騎士』をしている細川です。皆様に質問なのですが、皆様は既に大地様の『悪魔の駒』を受け取っていると言うことは伺っております。また、彼からも信頼を勝ち取っていると言うことも。現に今回の面接は履歴書を経てのものでしたが、それがあなた方はなかった。そのことについて訊きたいことがあります」
そう言う幽さんの目は真剣だった。
「大地様はこの三大勢力において大英雄であられます。文字通り、『世界を動かす』と言うことが出来るのが岸波大地と言う男です。そんな彼からの強い信頼を勝ち取っていると言うことの重大性を自覚していますか?また、仮とは言え、眷属になることが友人関係の延長線なんてものでは済まされないことを承知しておられますか?」
おい、さっきまでの『コイバナさせろ』とかの雰囲気どこ行った?何で急に真面目になるん?温度差で風邪ひきそうなんだけど?
「まずは、斎藤様からお願いします」
幽さんは結菜を指名した。それに結菜はすぐに答えた。
「岸波大地に信頼されていると言うことも、何の試験もなく私が仮眷属に指名されたことも、その両方の重大性については認知しています」
結菜の敬語、何か違和感あるな。
「そもそも、私は岸波大地がいなければ存在しえない女だと自負しています。そんな女が、彼に尽くせることであれば、この身を彼に差し出すことも辞しません」
「その先が、地獄すら生ぬるいものだったとしても?」
幽さんが俺の禁断についてのことを軽く言う。それに結菜は強く答えた。
「かまいません。岸波大地が魔王となるなら、私は魔王の正妻となりましょう。彼が一人で狂った覇道を征かぬよう、諫めもしましょう。彼を一人にしないことこそが、私に出来ることです」
その強さと眩さに俺は思わず目を奪われた。結菜、お前そんなに魅力的だったっけ?いや、お前がすごい魅力的な女の子ってのは知っていたけどさ。それにしても、こんなに俺が一発で惚れてしまいそうになるってようじゃなかったような……。
「なるほど……。それでは、エクシア様はどうでしょうか?」
幽さんはアイシャへそう訊く。
「私は
アイシャ、そんなことを思っていたのか。何か無理強いしたような感じでごめん。
「ですが、それ以上に私は彼とは密接な関係です。だからこそ、彼の願いに応えたいと思しました。一人で背負いこもうとすることのない、鉄人形になろうとせずに『人間』であろうとする彼の思いに応えたいと思ったのです」
「ありがとうございます」
アイシャの強い言葉にそう言う幽さん。さて、残るは一人
「それでは、四条様はどうでしょうか?」
さて、お前はどう答えるんだ、四条?
少し戸惑う様子の四条。ちょっとの間があってから、あいつは口を開いた。
「俺、じゃなくて私、岸波先輩にはそれこそ人生を救われたって言葉じゃ足りない恩があるんです。自分が自分らしく、そして人間らしくあれるのは間違いなく、岸波先輩と出会えた幸運があったからなんです。だから、そのことへの恩返しをしたいんです。そこに、重大性とかそんな細かいことはどうだっていいと思っています」
「四条……」
俺、お前にはラーメンを一緒に食いに行ったり、カードゲームしたりしか出来ていないんだけどなぁ。先輩らしいこと出来ていたか不安なんだよ。
「それに、いつも一人で抱えがちな先輩が俺を頼ってくれたことがうれしくて。だったら、理由とか先輩のすごさとか、そんなことどうでもいいでしょうよ」
お前、兵藤とエロ本漁ってた頃から見違えたよ……!俺は鼻が高いよ!
俺が感動していると、眷属の皆は大きくため息を吐いて椅子の背もたれに身を任せた。
「これは、敵いませぬな」
「流石は我々より長くいただけあります」
「我らではこうは出来ん」
幽さんとステラネスさん、サタンさんが諦めたようにそう言う。
「アイシャがそうなのは何となく分かっていたけど……いやぁ、強いねぇ。これ、バルガがいたら感動で涙流すんじゃない?」
黒歌がそう言う。俺も俺で涙を流しそうになっているけどな。
「合格、なんてもんじゃないね、これ。アイシャどうであれ私がよく知っているし、後輩君もご主人様の魂を継いでいる。斎藤なんて、『これ、勝てるの?』ってヒロイン力だし」
黒歌が認めてくれたようだ。それに皆も頷いていく。
「なら、ここは一つ……」
サタンさんがそう言うと、声高らかに眷属の皆は言う。
「「「「コイバナ!」」」」
「却下!」
Side out
執筆速度にムラがありすぎてオニゴーリになってしまいそうです。
クーシュナさんはsin七つの大罪のアスタロトを採用しました。名前の由来も後々言います。