知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
遂にゲロ以下野郎との決戦の日が来た。
面接後に、アーシアには『僧侶』の駒を渡した。というか、『僧侶』の駒が出ていった。まるで『俺に任せろ』と言わんばかりの気迫を出して。俺はそれを信じることにした。
眷属と仮眷属の皆にもゲロ以下野郎が土壇場でやらかすこととそれに伴い
―「悪魔の名家が悪魔社会に牙を剥く。しかも、テロリストである『禍の団』と手を組んでだ。それが起これば、間違いなく冥界は揺れるし、その家の出身であるアジュカさんは無事じゃ済まない。俺だって考えたくないが、それが一番納得してしまう現実が目の前にある」
でも、ゲロ以下野郎を疑うに至った経緯を説明したら、皆納得していた。正直、アーシアがやる気を見せたのが一番デカかったと思う。
「ダイチさん」
隣にいるアーシアが俺の手を握る。
「私、頑張ります」
「無理はするなよ。あくまでも、今回はアーシアを守るための戦いだ。君が傷ついたら元も子もない」
「はい……!」
俺も俺で不安はある。あのゲロ以下野郎がどのタイミングで仕掛けてくるのかは正確には分からない。皆と話し合って、転移直後に仕掛けてくる可能性が高いと見た。その程度でしかない。
さて、どうでてくる?ゲロ以下野郎君。
俺達の周囲が光り出した。ゲーム会場への転移が始まった。言っておくが、俺は真面目にゲームなんてしてやるつもりはないからな、ゲロ以下野郎。
「皆、行くぞ」
俺がそう一言言うと、視界が光で包まれた。
目を開くと、そこは巨大な神殿の手前辺りに俺達は立っていた。どうやら、転移は成功らしい。
俺は準備運動をする。さーて、アキレス腱でも伸ばしてー…………。
俺は準備運動をやめた
「おい、幽さん。おかしかねぇか?」
「ええ、そうですね。今回の審判役はグレイフィア様が取り仕切るものです。彼女に限って遅刻などありえない。ともすれば……」
思わずため息が出た。待ってよ、流石に素人の俺の予想が当たるとは思っていなかったよ?そこまでプロじゃないし。
すると、俺達の周りに魔方陣が浮かび出した。その数は計り知れない。
百や千を超えるそれの中から出て来たのは悪魔の皆様。
「『禍の団』の旧魔王派に傾倒した者たちですね」
ステラネスさんがそう言う。ってことはよぉ……俺の予想が当たっているってことだよなぁ?
「忌々しき偽りの魔王の旗印にして下賤の英雄、ブラックゾーン。ここで散ってもらおう」
うっわぁ、三下ぁ……。これ、アザゼル先生がいたら、速攻で死んでいただろ?なんて呑気な方々なのでしょう。
「キャッ!」
悲鳴が一つ。アーシアのものだ。彼女の方を見ると、そこにアーシアはいなかった。
「ダイチさん!」
お空の方からだ。上を見るとそこには、アーシアを抱えたゲロ以下野郎がいた。まぁ、彼女を守るためにやっているわけじゃないのは見え透いている。
「やぁ、ブラックゾーン。アーシア・アルジェントはいただくよ」
ごめん、そのセリフ中に俺はお前を6回殺せたんだけど?何でそんな棒立ちなの?アホなの?
「そりゃないだろうよ。俺はわざわざお前のクソみてぇなノリに乗ってやってんだぞ?少しくらい礼をしたらどうなんだ?ゲームだってしてやってるって立場なのが俺なんだぞ?」
とりあえず、事前に考えておいた挑発をしてみた。乗ってくれはしない様子。死ね。
「馬鹿じゃないの?そんな価値が君にあるとでも?君はここで『禍の団』のエージェントたちに殺されるんだよ。いくら英雄と持て囃される君だろうと、この数の中上級の悪魔には敵わないだろう?ハハハ、君は僕とアーシア・アルジェントの未来に邪魔だ。死んでくれ。速やかにね」
そう言って、どこかへと消えていったゲロ以下野郎。
後ろに気配が出た。他に比べて強い気配だ。まるで神か何かのような感じ。振り向くとそこにいたのはおじいさんだった。
「ほぉ、流石は天下の英雄とそれが集めた眷属。こちらの気配に気づくとはな」
「あんた、誰?」
ちょっと苛立っているので思わず強い語気で言ってしまった。
「オーディン様ですか」
寿水さんがそう言う。え、オーディン?斬鉄剣のあの人?
「うむ。話すと長くなるが、短く言うと『禍の団』にこのゲームを乗っ取られた」
ため息が出た。俺は決して悪くないはずだ。
「今は運営側と各勢力が協力体制を組んで迎撃しておる。どこかの英雄が警備の強化を諫言していたせいか、あちらの攻略はだいぶ苦労しているようじゃがな」
その一言に周囲の馬鹿共がざわついた。まさか、あんな分かりやすい状況で奇襲しないと思っていたの?馬鹿なの?
「ディオドラ・アスタロトが手引きしていたのも、ついさっき判明したことじゃ。これもそこの英雄が予想して、サーゼクスに言っていたことじゃな。どいつもこいつも、己を知らなさすぎて見ていて恥ずかしいわ」
「だろうな。俺が今一番頭を抱えたいよ」
「じゃろうな。このゲームフィールドには強力な結界が張られておっての、そんじょそこらの連中じゃ突破は無理じゃ。特に、破壊はお主の力でないと無理じゃろうな、ブラックゾーン。内部で結界を張る装置か何かを破壊するしか、真っ当に外に出る手段はない」
どひゃー、随分面倒なことになってんな!
「流石は片目を差し出しただけの価値があるってことか」
俺がそう言うと、ちょっと驚いた様子で俺を見る。
「お主、随分わしらに詳しいの」
「最近はネットで調べりゃ、そう言う情報はすぐに出る」
「じゃが、調べることと調べたことを覚えることとは別じゃ。アザゼルの小僧に乗せられて来たが、いやはや面白いのぉ」
満足そうで何よりです。
「相手は北欧の主神だ!討ち取れば名を揚げられるぞ!」
誰が叫んだかは知らんが、周囲から魔法が飛んできた。落とすか?どうする?ここはステラネスさんが動いているようだし、彼女に任せるか?
俺が悩んでいると、ボンと音を立てて魔法が消えていく。オーディンさんが『ホッホッホッ』と笑っているから、多分じいさんがやったんだろう。
「本来ならば結界を解くことなど余裕なのじゃが、はてさてどれほどの使い手か気になるのぉ。おぉ、そうだった。ブラックゾーン。アザゼルの小僧から言われて遣いを頼まれての。何でもこれを渡せとのことじゃ」
そう言って渡されたのは俺達の人数分のイヤホン。どうやら、通信機っぽい。
俺はそれを耳につけて、周囲を見渡す。
「さて、準備運動だ」
俺はブラックゾーンになり、槍を引っこ抜いた。俺の中での殺人スイッチも入った。もう甘さを与えることはしない。
「死の覚悟は出来たな?」
そう言って、俺は槍を地面に突き刺す。瞬間、『禍の団』の足元からブラックゾーンの槍が次々と生えてきて、奴らを串刺しにしていった。
「な、何だこれはぁ!?」
「聞いてないぞ、こんなのぉ!」
そう言いながら空に逃げていく悪魔達。見渡すと、ざっと100以上の悪魔が串刺しになっている。なお、急所は外してあるから、彼らにはこのままサーゼクスさん達の生贄になってもらおう。
「これぞホントのヴラド三世ってな」
我ながら残虐になったもんだ。でも、怒らせたお前らが悪い。
随分な光景を作った中、こちらに足を運ぶ音が一つ。そちらを見ると、そこにいたのは銀髪の神父。あれは……
「よ、おひさ~。待ちきれず来ちゃった」
「お前誰?」
「フリードだよ!!相変わらずイラつくな~、その小さな脳みそよぉッ!」
何か急にディスられた。悲しい。で、そっちにいるってことは、こいつも殺していいんだよな?
……おい、待て。
「お前、『何』だ?人間じゃねぇな」
俺の気配センサーで、目の前の馬鹿だけが悪魔でも人間でもない何かの反応をしている。
俺がそう言うと、狂気に染まった笑いを上げる馬鹿。
「ヒャッハッハハッハハハハッハハッハッハッ!そうだよ!てめぇの後輩君に切り刻まれた後、俺はヴァーリのクソ野郎に回収されて、腐れボンクラアザゼル君にリストラくらってよぉおおおお!!」
馬鹿は異音を立てて、体を変形させていく。いや、正しく変態と言ったところか。角みたいなものを生やし、腕が何倍にも膨れ上がる。
てかアザゼルってあんたグリゴリの人だったんか。
「行き場を失った俺を拾ったのが『禍の団』!奴らさぁ、俺に力をくれるって言うから何かって思ったらよぉ……
滅茶苦茶で気持ち悪い作りとなった馬鹿。ぐえー、ちょっとサイズ大きいンゴねー。どうするンゴ?これ、普通に殴って殺すンゴ?
「ひゃはははっ!ところで知っているかい?ディオドラ坊ちゃんの趣味を?これが最ッ高にイカしてて素敵なんだぜ!」
「あん?」
何言ってんだこいつ?あのゲロ以下野郎の趣味なんざクソほどの興味もないんだが?
「ディオドラの女の趣味さ。あの坊ちゃん、大した趣味でさー、教会に通じた女が大好きなんだってさ!そ、シスターとかな!」
……あ?
「しかも狙うのは熱心な信者や教会本部になじみの深い女ばかり!俺様の言っていること分かる~?坊ちゃんの眷属は全員、元信者ばかりなんだよ!自分の屋敷に囲っている女も同じ!ぜーんぶ、元は有名なシスターや各地の聖女様方!ヒーハハハ!マジで趣味いいぜ!」
俺の脳裏に浮かんだのは……アーシア。
「それじゃあ、アーシアちゃんは……ッ!」
寿水さんの言葉を遮るように、馬鹿は言葉を続ける。
「アーシアちゃんが教会から追放されるシナリオは、もとを正せばディオドラ坊ちゃんのものなんだぜ?シナリオはこうだ。ある日シスターとセッ○スするのがだーい好きなとある悪魔のお坊ちゃまは、チョー好みの美少女聖女様を見つけました。一目見た時からブチ○したくてたまらない!でも、教会から連れ出すにはちょっと骨が折れそう。なので、他の方法を考えました」
さて、ドキンダム。ちょっとやりたいことがある。
――『何だ?』
そっちに情報を流す。俺の怒りでこの世界を壊さないようにするためのうっぷん晴らしだ。出来るか判断してくれ。
――『うっす』
「聖女様はとーっても優しいお方。神器に詳しい者から『あの聖女様は悪魔さえ治す神器を持っている』と言うアドバイスをもらいました。そこに目を付けた坊ちゃん、作戦を立てました。『怪我した僕ちんを治すところを他の聖職者に見つかれば聖女様は教会を追い出されるかも☆』ってな!傷跡が残る?んなのエッチ出来りゃモーマンタイ!それがディオドラ坊ちゃんの生きる道!」
――『んあー、この世界が保つか分からんがやってみる価値はあるぞ?』
オッケー。んじゃ試してみるか。
「信じていた教会から追放され、神を信じられなくなって人生を狂わされたなら、簡単に僕の所に来るだろう。……ってな!聖女様の苦しみも、ディオドラ坊ちゃんにとってはスパイス!最底辺まで堕ちたところから救い上げ、犯す!心身ともにな!それがディオドラ坊ちゃんの最高最大の楽しみ!今までもそうしてきた!そしてこれからも!」
さて、やるぞ。
――『ほいさっさ』
「ふんぬぁああああああああああああああッッッ!!!」
俺は憤怒を込めて叫び、全身に力を入れる。すると空間が揺れる。どこからともなく軋む音も聞こえる
「空間が耐えられなくなっておるの。わしもこんなのは初めてじゃ」
――『さぁて、いっちょやって見せろ!岸波大地ィ!!』
押ぉおおおおおおおおおおおお忍ッッ!!
「復活の時だぁあああああああ!!!」
俺の全身が光り出す。すると、俺の体がドンドンと大きくなっていく。最初はあの馬鹿と視線が合うかどうかくらいだったのが気が付けば見下ろす形となる。
光が止む。ここにいるのは、『本来の大きさとなったブラックゾーン』だ。
「……へ?」
馬鹿が素っ頓狂な声を出すが知らん。俺は馬鹿の頭を掴んだ。
「あだだだだ!放しやがれ!」
「お前、誰かは知らんが、死んでもらう」
俺は握る手の力を強くする。骨の軋む音が響く。
「や、やめて!そもそもディオドラ坊ちゃんが悪くて、俺は何も!」
「うるさい」
俺はそのまま握りつぶした。残った体がボトリと地面に落ちる。奴を掴んだ右の掌を見ると血がついている。きったね。
俺は手を払う形で血を拭った。うん、だいぶ良くなった。
さて、ここからはマジでどうしようもない処刑の時間だ。気合入れていこう。
「王の判決を言い渡す。『死』だ」
今、火ぶたが切られた。
Side out
この辺、各所が余りにガバチャーすぎて笑った思い出があります。そりゃ、一介の悪魔だった頃のサーゼクスとアジュカに負けるわな。
あ、それとですが、事前に言っておきます。ディオドラ君の出番は滅茶苦茶少ないです。ゲロ以下野郎にペンのリソースを割いても仕方ないからね。原作も原作でそんなにあるわけじゃないし。