知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
「えー、皆さんにこうしていただいているのは他でもなく、駒についてのことです」
ヴァーリ逃走後、俺は仮眷属の皆を集めてその前に立っている。今言った通り、駒についてのお話をするためだ。
「実は言うととっても嫌な予感がしています」
「どういうことっすか?」
四条がそう言うので、俺は俺の考えを話す。
「皆さんに駒を渡した時なんですけど、あれ、俺が全部選んだわけじゃないんですよ。駒が自分で『こいつなら眷属にしてもいい』って考えて、動いたんです」
「そうね、そのことは聞いていたわよ?」
寿水さんがそう言う。
「はい、寿水さんの言う通り説明したことなんですが……その非常に言いにくいことなんですが……」
「大地様、随分煮え切りませんな」
幽さんがケツを蹴とばしてきた。分かったよ、はっきり言いますよ!
「俺の駒、もしかしたらストライキ起こして仮じゃなくて本当に眷属にするまで帰らない可能性があります。なので、念のため今から皆さんの駒に帰ってきてもらうよう指示をします。」
所々から漏れる『えっ』と言う声。
「あ、ルゥリンさんは別件と言うことで今回はなしで。ああ、安心してください。あなた方が嫌であれば、こっちもこっちで本気で帰って来てもらうんで」
皆さんを安心させるために俺はそう言う。ドキンダム、アポロヌス。その時は手伝えよ。
――『本当に来るのかねぇ、その時って』
――『我はないと思うぞ』
二人とも、どうしたの?
――『『何でもない』』
?
まぁ、いいや。今は目の前のことを片付けよう。
俺は手を前に出し、オーラを纏う。さて、遊びは終わりだ。全員戻ってきてもらうぞ。
「では、指示を出します」
俺はそう言い、オーラを強める。皆さんの下にあった駒たちが浮かぶ。何なら、アイシャとエレナさんに渡したカードにも同じ指示を出した。
そして、駒たちが戻って来た。
『兵士』が一つと『戦車』が一つだけ。
「……」
俺は認めんぞ、こんな現実。
一層力を込めて帰還命令を出す。それに対して、駒とカードはバチバチと音を立てながら反抗した。
「にょぉおおお!いやだぁああ!こんな形で眷属を集めるなんてぇええ!」
俺の悲痛な叫びが響くが、そんなことをお構いなしに動かない駒とカード。
「ごす、諦めたらいいのに」
「黒歌様、それを本人に直接言ってはなりませんぞ。きっと発狂します故」
「あぁあああああ!!」
だ、ダメだ!全然動かない!あいつら、本気で動く気がない!
――『なぁ、大地。一ついいことを教えよう』
お?この状況を打破する方法か?それなら今すぐ教えろ。
――『諦めろ☆』
ちっきしょぉおおおおお!!
俺は手に纏うオーラを止めて、肩を落とす。
そっかぁ、諦めるかぁ。今の俺に必要なことってそう言うことなのかなぁ。人体で壊していいものって何もないのに、俺の胃腸がキリキリするよ。
「はい。皆さんおめでとうございます。私の駒とカードに選ばれました。私の眷属と御使いって十字も効かないし堕天もしないんで、マジで従来の悪魔と天使になれると思ったら大間違いってことを覚えていてください」
深呼吸を一つ。
「その上で言います。俺の眷属、御使いになる気のある方はいつでも連絡をください。マジで少しでも嫌なら断ってくれていいんです。本当に……俺の人生に付き合う必要なんてないんだ……」
俺は地面に寝転がって、丸くなる。何で俺の人生こんなんなんだよ……。
俺が嘆き悲しんでいると、こちらに歩み寄る足音がいくつか。
顔を上げて立ち上がる。そこにいたのはクーシュナさんと四条。
「お二人とも?」
俺が背中と脇に汗をかいていると、二人は言う。
「眷属になりマス」
「俺を眷属にしてください」
――『お、意識飛んだダムね』
――『それ、太陽の不死鳥の気付だ』
はっ!?俺としたことが、一瞬意識が飛んでいた。
「ま、マジですか?」
俺がそう訊くと二人は頷いた。
「お、烏滸がましいデスけど……誰よりも優しいあなただから私は眷属になりたいと思いマス」
クーシュナさんはそう言う。俺は四条の方を見る。
「クーシュナさんは悪魔だからまだハードルが低いとしてさ、お前はどうすんだよ。親御さんにどんな顔を向ければいいんだ」
場合によってはケジメ案件すぎる。俺が不安にかられながらそう言うと、四条は鼻で笑った。
「俺の肉親はもう看取る以外ない祖父母だけなんで。あのクソ両親なんざ知ったことではないです」
ああ、そう言えばそんな奴だったなお前。
――『皆さんにはいずれお話するダムが、四条は四条で面倒な家庭なのだダム』
ドキンダム、お前誰に何を言っているんだ?
――『いや、一応言わなきゃいけない気がしたダム』
そうか……よく分からんな。
俺は四条のドライさに困り、頭をかいた。
「四条、せめて『お前らとは縁を切る』くらいは両親に言っておいた方がいいんじゃないか?」
せめて筋は通してほしいなと思い、そう言うが四条は笑う。
「去年の時点で言ってますね、それ」
「お前ぇ……せめて、もう二度と交わらないことを祖父母さん伝いで言っておけよ。それからでも遅くないからな?」
「うーっす」
こいつ、どこまでガンギまったら気が済むんだ……。
とりあえず四条の時間稼ぎは出来た。ほなら、どうする?本当にクーシュナさんを眷属にしちゃうの?でもほら、こう言うのってもっと大切にしていくべきで……。
――『うぜぇダム。さっさと眷属にしたらいいだろ』
だからなぁ、相手の人生のことも考えたらそう言うのはもっと重要視をした方がいいだろうがよ。
――『おい、大地』
何だよ。
――『眷属増やせや』
何だよ何だよ、そんなの乗らねぇからな。
――『……』
「やってやろうじゃねぇかこの野郎!!」
俺は禁断のことを遠回しに説明するいつもの奴をやり、クーシュナさんの許可を得た。俺と地獄を行くことに躊躇いはないって。何ならその地獄を制圧する気満々です。
「そ、それじゃあ……」
俺は駒に力を送った。クーシュナさんの胸に『兵士』の駒が入っていく。
「こ、これで俺の眷属、っす」
苦悶したいけど、しちゃダメだよな。クーシュナさんだって覚悟を持って俺の眷属になりたいって言ってくれたんだから。その輝きを無下にしちゃいけない。
「眷属……へへっ……」
ニヤついて満足そうにしているクーシュナさん。俺には彼女の考えがよく分からない。
こうして、俺は眷属を増やした。俺の胃にどんどんプレッシャーがのしかかる。俺は、本当に王子みたいな超絶最強メンタルが欲しい。
「ッ!ダイチさん!」
俺は天を仰いでいるとアーシアの声が聞こえた。どうしたのだろうか?
「んあ?何、アーシア?」
俺は彼女に要件を尋ねた。
「私も、眷属にしてください!」
「……」
――『あ、今回は意識が飛ばなかったダムね』
ま、まぁな。このタイミングでアーシアに声をかけられたら流石に分かる。
「アーシア。恩義とかそう言うので眷属になりたいって言うのなら、俺は君を止めなければならない」
きっと優しい彼女のことだ、今回の一件で責任を感じているんだろう。だからこそ、自分の身を差し出そうとしてる。俺にはそう思う。
だったら、そんな自己犠牲は止めるべきだ。そもそも今回の戦いはアーシアの自由のために戦ったわけだし、彼女をしばるようなことは余計によくない。
俺は大人としてアーシアを止めた。すると、アーシアは頬を膨らませて、俺のことをぽかぽかと叩いてきた。
「ダイチさんのおバカさん!」
「え?」
アーシアのそれは俺には全くダメージが入らないが、妙に精神的にダメージが来ている。
「私は、ダイチさんとずっと一緒にいたいんです!それも、守られるだけじゃなくて、共にありたいんです!眷属になるのは、その一歩なんです!」
「アーシア……」
「私、ダイチさんとなら、どこだって怖くないです……!どんな絶望が覆うことがあっても、心から光は決して消えません……!だから、だから……!」
……なぁ、ドキンダム。
――『何ダム?』
彼女は勇気を出して、こう言ってくれたんだ。ここで応えなかったら……俺は男じゃねぇよな?
――『だろうな』
ならば、答えは一つだ。
○○○
「ってことがあったんよな」
『それはすごいことです』
お家に帰ったその晩、俺はラヴィニアと通話していた。今は俺の眷属が増えたことについてお話していたところだ。
クーシュナさんとアーシア以外の皆は保留と言う形になり、駒とカードをそのまま持って行ってもらった。ルゥリンさんは事前に話していた通り、そのまま採用に至った。
いやぁ、ラヴィニアはいいね。その綺麗な声がプレッシャーで不毛の大地と化した俺の心を潤してくれる。
『それにしてもダイチはどんどん立派な王様になっていきますね』
「そんな柄じゃないんだけどなぁ」
ラヴィニアの言葉にそう返す。ほんと、どうしてこうなったんだろうね。俺としては普通に暮らしていければ十分だったってのに。気が付いたら『王』だぜ?しかも妙に品格とか求められる。嫌なもんだ。
それでも、中途半端に投げ出すのはよくないよな。嫌な運命だけど、それでも受け入れ、抗うか。
「まぁ、無難に『王』をやって、眷属の皆を幸せに出来たらそれでいいさ。それ以上は望まないよ」
『ふふっ、ダイチらしいのです』
ラヴィニアに褒められた。とってもうれしい。
『所でダイチ?』
「ん?何だい、ラヴィニア?」
『『女王』の駒はもう決まっているそうですが、『Q』のカードの候補はまだ見つかってないのですよね?』
「にょ?」
『私、ダイチの『Q』になってダイチの奥さんになりたいのです』
「おぉん!(ニャンちゅう)」
Side out
ラヴィニアが『Q』になったら大地君に色々とどめが刺さっちゃう件。