知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
朱乃とバラキエルさんは無事和解……とまではいっていないが、それでもマシな感じになった。
二人にはかなり複雑な事情があった。愛する人を失ったことと、それが自分の弱さが招いたことだったと言うこと。そしてそれをバラキエルさんが全部背負わねば自分を保つことすら出来なかったこと。
だからこそ、そのケジメとしてそんな状況にした故人のお母様を呼び出した。原理としては彼女を『ゴースト』と定義して一時的に侵略者やイニシャルズの類にすることで呼び出したのだ。
結果は何とかなった。未だに朱乃とバラキエルさんの間には何とも言えない堅い空気が漂っているが、それでも今までの憎悪混じりの悲しみに比べたらマシだ。
それと、リアスとアザゼル先生からもお礼を言われた。リアスはともかく何でアザゼル先生までもと思ったが、話によればバラキエルさんが留守になった理由はアザゼル先生が彼を呼び出したせいだからだそう。
要はあの人もあの人で『俺のせいなんだよ!(ライナー)』してたってことだ。
ではここで叫ばせてもらおう。堕天使、めんどくせぇえええええええええええ!!!
はい、落ち着いたので次行こう。
今はオーディンさんが来日して数日経ったある日のことだ。俺はオーディンさんに誘われて夜の馬車遊覧に興じている。因みに、馬車を引いている馬はスレイプニルだ。
オーディンさんがあっちこっち行ったため、護衛の皆は疲れ気味。アーシアに関しては俺の肩に頭を乗せて寝ている。あら可愛い。
そんな俺の満足はさておいて、何で俺とアーシアまで動員されているんだろうな。そんなにも三大勢力ってのは人手不足なのか?俺はただ静かに暮らしたいだけだってのに、何故こうも面倒ごとに巻き込まれるんだろうか。
――『そう言う星の下に生まれたから?』
随分適当なこと言いますね、ユノハ様。いい加減にしてくれよ……。
あと、何か分からんけどロスヴァイセさんが俺の隣にいる。オーディンさんのご指名だ。曰く『ご褒美』だと。何がご褒美なのか、さっぱり分からん。
「そんなだから男の一人も出来ずにいるんじゃろうが」
「私だって好きで独り身じゃないんですよぉおおお!」
目の前ではオーディンさんがロスヴァイセさんと漫才をしている。何と言うか、前世ならセクハラ案件だよなぁ。頼むから、そんな面倒なことをこっちに投げてくるなよ。
俺が未来を憂いていると、馬車が急停止した。その揺れでアーシアも目を覚ました。外にいるゼノヴィアさん,紫藤さん,木場,バラキエルさん達からの連絡はない。
――『どうやら、その面倒ごとが来たらしいダムね』
発狂しなかった俺を褒めて欲しい。
周りの皆が警戒する中、俺は窓を開けて外を見る。前方には何か宙に浮いている男が一人。
うーん、まさかとは思うけど、念のため聞いておくか。
「オーディンさん」
「後生じゃ、ブラックゾーン。あ奴の名はあ奴に言わせてやってくれ……」
さっきまでキャバクラ周りをして満足そうだったオーディンさんが額に手を当てて天を仰いでいる。ああ、なるほど。やっぱりあれが『あいつ』なんですね。
俺もここまで読みが当たると思っていなかったので、思わず大きくため息を吐いた。俺とオーディンさんの様子を見て、何やら奇妙なものを見る目でこちらを見たアザゼル先生とロスヴァイセさん。すぐに前方の奴の方へと目を向けた。
その宙に浮いている男がマントを広げ、口角を上げて名乗った。
「初めまして、諸君!我こそは北欧の悪神!ロキだ!」
「ブラックゾーン、もうよいぞ」
「ここまで読みが当たると、流石に喜べません」
「じゃろうなぁ……。あ奴め、自分のせいでわしら北欧の程度が下がっていることを……知っているはずもなかろうな……」
俺とオーディンさんは揃ってため息を吐いた。
ロキ。その名を知らぬ者はいないであろう超がつく有名な神様。北欧神話でろくでもないことの大半はこいつのせいと言っても過言じゃないレベルだ。これはネットでちょろっと調べただけでも分かりうることだ。
因みにギリシャ神話だとゼウスとポセイドン、アポローン、ヘラだ。何でロキポジがそんなにもいるんですかね、あそこ……。アザゼル先生が言うには『あそこはだいぶ変わった』らしいけど。
オーディンさんがうちに来た時に気付いたのはまさしくロキ。そして、今目の前にいるのは本物のロキ。ここまで予想が当たるかね、普通。
都合がよすぎる。気持ち悪い。よし、現実逃避しよう。作詞がてら最近思い出した仮面ライダーの曲でも書きだそう。
「これはこれはロキ殿。こんな所で奇遇ですな。何か御用で?この馬車にはそちらの主神たるオーディン殿が乗っていられる。それを周知の上での行動ですかな?」
アザゼル先生の挑発を横耳に、俺は手帳を取り出して、メモをし出す。うーん、今日はどんな気分だ。俺はただ、現実逃避をしたいだけだ。
「いや何、その我らが主神殿が、我らの神話体系を抜け出て我ら以外の神話体系に接触するだけでなく、仲良しこよしをしようと言うのが耐え難くてね。我慢できずに邪魔しに来たのだ」
あ、そうだ。おい、ドキンダム。
――『何?』
ロキがテロリスト集団とつながっていると思う?
――『今その話をしている所ダム』
マ?
――『マ。因みにつながってない。完全にロキの独断ダム』
わー、じゃあこれ、完全に内ゲバに巻き込まれた感じじゃん。なおさら現実逃避したくなるね。
「ブラックゾーン」
オーディンさんが俺の名を呼んだので、そちらに意識と視線を向ける。
「お主、随分呑気じゃの」
「まぁ、現実逃避って奴です。そのついでにセラフォルーさんから依頼されている作詞作曲の作詞部分もしようかと」
そう言うと、何か少し考え事をするように顎に手をやるオーディンさん。外ではドンパチ賑やかしているが、もう気にしない。
「のう、ブラックゾーン」
「はい」
オーディンさんが何やら聞きたいことがある様子だ。何でしょうか。その目でも見通せないもの?
「お主、神殺しはしたことがあるか?」
「神殺しぃ?」
そんな大層なことは……なんて思いながら、俺は前世を思い出す。それはヘヴィ・デス・メタルやゼンアク、それこそイズモ達だ。とりあえず、パーツごとに1体1体のクリーチャーではあるので、指を折って数えていく。えーっと、今言ったのだけで6体。他にはジャスティスに機械神となった奴らを含めて大体5体以上はいて……そういやスチーム・ナイトにもゴッドがいたな。じゃあ、結構な数になるな。
俺が指を折っていくと、オーディンさんが大きくため息を吐いた。
「もうよい。それだけ殺したことがあることが分かれば十分じゃ」
「あ、はい」
オーディンさんが満足したようで、外の方を見る。
「生憎わしらの所のように、お主の大きすぎる脅威と協力の余地があることを知らぬ者がこの世界には多い。それこそ、頭が固いだけで済む程度を越えているようなの」
オーディンさんが苦しそうにそう言う。何だか、世界の難しさをこの場で教えられている。そんなのはごめんだがな。
「神なんてそんなもんでしょうよ。己の我が儘が通らねば、全てを滅ぼす。そのくせして人の信仰が無ければ存在も出来ない。悲しい存在でしょうよ」
俺がそう言うと、オーディンさんが驚いた様子で目を開き、そして『ホッホッホッ』と軽い感じで笑った。
「そうじゃの。特にギリシャや須弥山はその手のことが多い。ロキの存在に早期に気付いたお主なら、その程度は承知か」
「神はめんどくさい。そんなことは嫌ってくらい知っています」
あんたのことだぞ、ユノハ様。
――『あぁんひどぅい……』
外の方では何やら犬のような声が響いている。見れば、そこにはデカい狼がいた。
……。
「オーディンさん」
「ロキの連れている狼なぞ、一つじゃろうな」
いや、流石に俺だって馬鹿じゃない。そもそも北欧神話に出てくる狼ってもう、あいつくらいじゃん。
「ダイチさん、あのワンちゃんは……」
アーシアがそう言う。君、あいつのことを『ワンちゃん』呼びなの、すごいね。オーディンさんなんて『流石はブラックゾーンの眷属か』って言って笑いをこらえているじゃないの。
「あれはフェンリル。神殺しの牙を持つ、ロキの息子だ。確か、子供にはハティとスコルって言う太陽と月に関係する奴らもいるな」
「神、殺し……?!」
アーシアは敬虔な信者だからこそ、その恐ろしさってのが分かるんだろう。万物を生み出したのが、聖書の神だからな。その神すら容易く殺せるのが、あの狼ってことだ。
『果たしてそんな奴を相手に、皆はうまく戦えるだろうか』と思い外を見る。そこには負傷した兵藤がいた。結構な量の血が流れている。
……はぁ、ったく、しょうがない。
俺は立ち上がると、ブラックゾーンになる。
「オーディンさん、フェンリルは一応『黄昏』で重要な役割を持ちますよね?だったら、殺さない方がいいですか?」
「じゃの。出来れば痛めつけるくらいにしてやってくれ」
「承知。アーシア、君は兵藤の治療を頼めるか?」
「はい!いつでもいけます!」
俺とアーシアは外へと飛び出す。夜風が俺を切る。心地よい感触が走る。
「おやおや、これはブラックゾーンではないか。仲間がやられて、たまらず出てきたか?」
俺を挑発するようにロキが煽る。まぁ、合ってはいるので反論はしない。
「さて、どうしたものか。死なない程度にフェンリルを痛めつけるのは……」
「この我を無視か……!」
いくらフェンリルとは言え、食わぬ動物を傷つけるのは心が痛い。となると、全力で威嚇して追い返すか?ドキンダム、そんな感じなの出来る?
――『出来るダム。それくらいなんてことないダムよ。勢いよく吼えるダム』
オッケー、じゃあ取り敢えず威嚇します。
俺は息を大きく吸う。肺に冷たい空気が満ちていく。
そして俺は勢いよく叫びを上げた。
「パォオオオオオオオ!!」
ガタノゾーアの如き声を上げてみた。我ながら変な叫びだと思う。
――『変とは失礼ダム。これがワイの声ダムよ』
お前のかよ……。とことん世界を滅ぼすような存在だな。
――『その為に生まれたのがドキンダムXって言うもんダム』
それもそうか。本編でもあった例外個体ってのが、まさしく例外だったんだな。
フェンリルを見る。完全に怯えた様子で、ロキの後ろに下がっていた。よしよし、効果はあったようだ。
で、どうしようか。ここから。俺、とりあえず威嚇するまでは良かったんだけど、そこでフェンリルが逃げてくれればいいのに、逃げずに親父の後ろに隠れている。うーん、殴りたくない。ワンちゃんを殴るのは心が痛い。ドキンダム、どうにかならんか?
――『ならない(煉獄さん)』
頼みの綱もダメ。ここから先は俺が何とかしないといけない。どうしたものかなぁ……。
俺が考えていると、空から白い光が落ちてきた。それは俺とロキ達の間に浮かぶ。その白い光の正体は……。
「久しぶりだな、岸波大地」
「ヴァー君」
ヴァーリだった。
Side out
白龍皇登場。そんなわけで次回、主人公宅での話。