知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
ついに決戦の時が来た。今は夜。オーディンさんが日本の神様と会談をすると言う都内の高級ホテルの最上階にいる。結構高層なホテルなので、今いる屋上では風が強く吹いている。
周囲のビルにはシトリー眷属が配置されている。但し、匙君を除いて。彼は何やらグリゴリで特訓をしているそうだ。これで遅刻だったらしばく。
グレモリー眷属も皆気合が入っている。兵藤とヴァー君も随分仲良さげに話している。
「お前、苦労してんだな」
「この程度で同情するな。お前とて、かの二天龍がこのザマなのは思うものがあるだろう?」
「んまー、それはそうだな。ドライグ、肝心な時しかアレだし」
アザゼル先生はと言うと、オーディンさんと日本の神様の仲介のために席を外している。なので、代打としてバラキエルさんがいる。お空に浮かんでいて、調子がよさそうで何よりだ。
それと、ロスヴァイセさんもいる。鎧姿の、いかにも『ヴァルキリー!』みたいな感じだ。
上空にはタンニーンさんもいる。冥界からの援軍としてやってきてくれたのだ。彼がいれば何とかなるだろう。
そしてその冥界からの援軍はタンニーンさんだけじゃない。
「サタンさんにクーシュナさん。マジで助かります」
そう、サタンさんとクーシュナさんが援軍として来てくれたのだ。どうやらディハウザーさんがその辺のことを機転を利かせてくれたらしく、二人の手が空いたとのことで、俺の手伝いに来てくれたのだ。ルゥリンさんとステラネスさんはベリアル家でお留守番だ。サタンさん曰く、『ステラネス様は血涙を流していた』とのこと。
「構わない。これも仕事の一つだ」
「わ、私もデス」
謙遜してそう言う二人。いやぁ、ほんとありがたい。何せ、こっちの想定だと俺はハティとスコルと相手をしないといけない可能性があるからな。人員はいるだけいればいい。
「二人とも来てくれて助かるねー。ごすからフェンリル関係の話は聞いてる?」
黒歌がそう訊くと、二人は頷いた。
「些か臆病がすぎるとも思ったが、その線がないわけじゃない。万が一があれば、我が全てを蹴散らそう」
わ、わぁ……!サタンさんがかっこよすぎる……!
「クーシュナさんも一緒に頑張りましょう!」
「うおっ、まぶしっ!」
アーシアとクーシュナさんも平常運転っぽい。クーシュナさんはコミュ力に難ありかと思ったけど、実際は結構お話出来るタイプだ。根っこが陰の者なだけで、とてもいい子なのだ。
俺は空を見上げ、月を見ているとリアスの声が響いた。
「時間よ!」
どうやら会談がスタートしたらしい。つまり、ロキが来る。アザゼル先生に『奴がこっそり内部に侵入する可能性は?』と兵藤と共に聞いたが、その可能性はないらしい。なんでも、『そもそも今回の一件がプライドの高さから来たものだから、そんなやり方をロキが出来るはずがない』とのこと。
空からバチバチと音が立つ。そこには穴が開き、中からロキとフェンリルが出てきた。
「作戦開始」
小型通信機からバラキエルさんの声が聞こえた。作戦とは、ロキとフェンリルを別の場所に転移させて思いっきりやり合うってことだ。実際、本気の兵藤とヴァー君が暴れたら辺り一帯が吹き飛ぶからな。
転移の魔法陣が展開する。そうしているのはソーナさん達生徒会組が頑張っているから。彼女らの頑張りに応えられるように、俺も頑張ろう。
「その程度、このロキが見通せないとでも!!」
そう言うと、ロキは俺の足元に魔法陣を展開した。あー、うん。そうだよね。そんな世の中うまくいかないよね。
「黒歌!アーシア!頼んだぞ!」
俺はそう叫ぶ。二人が何を言っているかは分からないが、納得した様子なのは分かる。リアスの方を見ても、こちらの行動は分かっているようだった。これなら、とりあえずは一安心だ。
こうして俺はソーナさん達とは別の魔法陣の光に包まれた。
「うおっと」
光が止むと、そこは何とも言えない殺風景な場所だった。
「「グルル……!!」」
そして目の前には黒い体毛の二頭の巨大な狼。どこかフェンリルに似た雰囲気を持っている。
「大地様!」
「大地様ー!」
後ろから声が二つ。振り向くと、武装したサタンさんとクーシュナさんがいた。
「二人とも無事か?」
「ああ。しかし、目の前にいるのは……」
サタンさんは斧を握る力を強めた。あ、やっぱりぃ?俺、見向きしないようにしていた現実なんだけどなぁ。
「こ、こいつらがスコルとハティ、デスか?」
クーシュナさんがそう言いながら、ギターを鎌に変形させた。そうだな、俺は否定したいよ。まさか目の前にいる狼二頭がスコルとハティだなんてさ。
「俺もね、ここまで自分の考え通りにいくと怖いものがあるよ」
「卿の聡明さは一体何が由来なのか気になるものだ」
「気にしなくていいよ」
そんなものなんてないのだからな!今回だって運がよかっただけだと思いたいよ!
とりあえず俺はブラックゾーンになる。手を握ったり開いたりして調子を確認する。よし、問題なし。
さて、ブラックゾーンになったはいいが、どうしようか。昨今の情勢を考えると、下手に動物をぶん殴ると俺が炎上しかねない。それに、後ろにいるサタンさんとクーシュナさんが犬派だった場合に嫌われかねない。それだけは嫌だ。長いお付き合いになる二人に嫌われたくない。
――『本音は?』
おっぱい大きい美人さんに嫌われたくない!
――『あなたの頭、兵藤一誠ね』
失礼なことを言いますね、ユノハ様。俺とあいつを一緒くたにしないでください。
とにかくだ、俺とて犬を殴れば痛む心があるってことだ。
「「あおぉおおおん!!」」
俺が対処に迷っていると、暫定スコルと推定ハティが遠吠えをし、こちらに走ってきた。
「来たぞ!」
サタンさんがそう言う。おっと、もう時間がないか。仕方ない、流れでパーッとやっていこう。
俺はゲロ以下野郎の時同様に体を巨大化させる。一瞬で大きくなると、俺はこちらに突っ込んできたスコルとハティを抱きしめるように強引に抑え込んだ。
俺の胸の中で暴れる二頭。うーん、中々にモフモフだ。これはいいな。ただ、二頭が嫌がっているようなのが罪悪感があって苦しい。
「きゃうん!きゃうん!」
若干さっきまでの恐ろしい感じが抜けて、可愛らしいイヌ科の声を上げるどっちがどっちか分からない狼。後ろの方に目を向けると、そこには唖然としているサタンさんとクーシュナさんがいる。
「な、何してるデスか、大地様!?」
クーシュナさんがそう叫ぶ。何ってそりゃ……何だろう。俺も分からん。
「ちょっと抑えているだけだ!っと!二人とも油断しないで!」
抜け出そうとしている二頭を再び抱きしめて抑え込む。
――『可哀そうな二頭ダムね』
ドキンダムが随分憐れむようにそう言う。どういうことだよ?
――『この二頭、人のぬくもりを知らないんダムよ』
はい?こいつらってロキん所で世話されてたんじゃないのか?
――『んなことすると思うか、あれが?してねーだろ』
そんな、じゃあこの子たちは誰かとのコミュニケーションの仕方も分からず、寂しさを埋めるために暴れているのか?
――『まー、そんなとこ?』
それじゃあ、余りに可哀そうじゃないか。スコルとハティ。二頭は本当に
二頭の悲哀に、俺の心は締め付けられた。思えば、結構可愛らしい顔をしている二頭が、そんな悲惨な運命にあっただなんて、思いもしなかった。
――『おい、ドキンダム。何か彼奴、しんみりしているぞ』
――『いや、適当なこと言っただけなんだけど……』
そうかそうか、そうか……。寂しかったのか、こいつらは……。
俺はスコルとハティを抱きしめる力のかけ方を変える。力づくで抑えるのではなく、そっと、されど強く抱擁する形にする。ついでに全身を撫でる。
「よーしよし。いい子だいい子だ」
太陽の力を使って、出来る限り温かみを帯びさせる。最初は抵抗をやめなかった二頭だったが、次第に動きが緩くなっていった。
「へっへっへっへっ」
「くるるる……」
そして二頭は完全に犬と化した。よしよし、いっぱい可愛がってやろう。
「よーしよしよしよし」
気分は動物博士だ。チーターが世間が思うよりもただの猫なように、スコルとハティも思った以上にただの犬なようだ。
俺は二頭を離して、元の大きさに戻る。すると、二頭は物惜しみの視線をこちらに向け、そして体を縮めていった。気が付いたらちょっとデカい大型犬、それこそウルフドッグとか言う奴くらいの大きさまで縮んでいた。
ひょっとして、小さくなってでも俺に構ってほしいのか?
「まだ遊びたいか?えーっと、スコル」
「ワン!」
「ハティ」
「ワン!」
一応、スコルとハティの確認は出来た。そして、最後の最後まで否定したかった『この二頭、スコルとハティ説』が立証された。
ま、いっか。とりあえず殴る蹴るで従えるようなことはしたくなかったから、これで万事解決ならいい。
「そーれなでなでだ」
俺は小さくなった二頭を撫でる。うんうん、動物はいいものだ。最近の黒歌はなでなでするとセクハラ案件になりかねないから、猫の姿になってもらうのは忍びなかったんだよなぁ。
――『我の力の一端を味合わせることで、格の違いを付けたか。面白い奴だ』
何か言ったか、アポロヌス?
――『何でもない。それよりも貴様、その犬の股を見ろ』
ん?
俺はアポロヌスに言われて視線をスコルとハティの下半身に向けた。
「あ、この子たち、メスか」
股に男ならあるはずのものがない。この子たち、女の子だったのかぁ。なら、余計に殴る蹴るはいけなかったな。
……。
「いかんな」
ふと冷静になった俺は可愛い二頭を撫でる手を止めて、立ち上がる。後ろを見ると、そこには微笑んでいるサタンさんとクーシュナさん。
「大地様はほんとに優しい王様デス。だからこそ、余計について行きたいって思えマス」
クーシュナさんがそう褒めてくれる。少し照れくさいな。
「さて、大地様。神殺しの牙たちはどうにかなったが、ここからどうする。いくら卿とてここからロキ達の場所まで行くには骨が折れるだろう?」
サタンさんが俺が思い出した要件を言う。そうだ、俺達の敵はあくまでもロキとフェンリルだ。フェンリルの娘たちじゃない。
「どうしたもんかねぇ」
俺とてホイホイとテレポートできるわけじゃない。だったらテレポートゾーンにでもなっている。うーん、困った。
俺が頭を捻って唸っていると、スコルとハティが俺の足元にピタっとくっついた。
「「あぉおおおおおおん!!」」
二頭の高らかな遠吠えが響く。すると、俺達の目の前に穴が開いた。
もしかして……。
「ここを通れば、ロキ達が?」
そう言うと、テンションが上がったのか、俺の周りをくるくるし出すスコルと、伏せをして静かにくっついたままのハティ。
「どうやら行けばいいらしいな」
まさかあっさりとロキの場所まで行ける手段を手に入れられるなんてな。思わず苦笑いがこぼれる。それを受けて、二人も色々察してくれたようだ。
「なら、行くか。卿とてここで油を売るつもりもないだろう?」
サタンさんの言葉に俺は頷いた。
「まぁね。それじゃあ、行くか。サタンさん、クーシュナさん」
「応とも」
「はい!」
俺達はスコルとハティが作ってくれた穴をくぐった。ついでに言うと、スコルとハティも俺にくっついてきた。いよいよ我が家のアイドルになりそうだな、この子ら。
Side out
前作では飴と鞭でしたが、今作は飴と飴と潜在的鞭で行きました。『本当は敵なんていないんやで』『何故襲ってくるか理解しないまま、倒しはしないンゴ』って奴ですね。