知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
トンネルを抜けると、そこは採石場跡地みたいな場所だった。
なんて知識人ぶってみたけど、どうかな?
――『キモイダム』
――『『同意』』
うわーん!ひどい!
悲しみに沈む俺はさておき、穴から出てきた俺にサタンさんとクーシュナさんが続く。俺の足元にはぴょんぴょん跳ねているスコルと体をこすりつけてマーキングをしているハティがいる。可愛い。黒い毛並みがとてもきれいだ。
「どうやら予定の場所に来られたようだ」
サタンさんはそう言うと、斧を構える。俺達の目の前にはロキ達と戦う皆がいた。スコルとハティが俺達をここまで導いてくれたんだ。
「よくやったぞ、お前達。よーしよしよしよし」
俺は頑張った二頭を撫でた。目を細めて気持ちよさそうにする。ほんと、この子たちを虐げたロキの野郎が許せねぇよ、俺は。
……もしやフェンリルも同じか?ともすれば、俺は出来る限りフェンリルを助けてあげたいが……そう簡単にはいかんよな。
俺は目の前の光景に意識を向ける。タンニーンさんがフェンリルに押されてボロボロだ。それを見て『はい、許す』と言えるほど俺は遊馬先生じゃない。
ごめん、フェンリル。あいにく俺はそんなに気が長いタイプじゃないんだ。君は来世でいい主に出会うといい。
いや、よく考えたらあいつって『黄昏』で重要な役割を持つじゃん。じゃあ、殺せねぇか。
――『一人で納得するなダム。だからお前はアホなのだ』
いいよ、別にアホでも。人間らしくあれれば。
――『その開き直りをもっとラヴィニア達にもしてやらんか』
アポロヌス、明日の朝食は抜きな。
――『嫌だぁあああ!』
叫ぶアポロヌスを無視して前を見よう。そこにいるのはフェンリルと巨大な蛇の群れ。北欧……蛇……もしかしてあれが噂のミドガルズオルムって奴か?にしては数が多いな。
そのミドガルズオルムもどきの群れがタンニーンさんと戦っている。なら、俺達の敵はあいつか。
拳をゴキゴキと鳴らす。
「さて……サタンさん、クーシュナさん。行くぞ」
俺がそう言ってちらっと二人を見る。二人とも臨戦態勢になった。
「っし。じゃあ、付いてこい。スコル、ハティ」
「「あおぉおおおおん!」」
俺は頭の管から炎と轟音を立てて、突っ走った。俺を追いかけるようにスコルとハティが遠吠えをして、巨大化しながら全力疾走をして付いてくる。流石は神話生物だ、簡単には俺に引き離されないってか。
後方には、サタンさんとクーシュナさんも全力で飛んでいるのが分かる。木場以上の速度で来る彼女達も上澄みだってのをひしひしと感じる。
ミドガルズオルム達までもうすぐだ。さぁ、行こうか。
「っしゃおらぁああああああああああ!!」
拳を振りかぶる。『ゴウンッ!』と言う音を立てて、ミドガルズオルムの群れを吹き飛ばした。肉片や胴体から離された蛇の頭が宙を舞う。
「タンニーンさん!大丈夫っすか?!」
俺がタンニーンさんにそう言うと、彼は力強く頷いた。
「俺を誰だと思っている。これでも昔は竜王と呼ばれた身だ。この程度、傷にも入らん」
「それは良かったです」
どうやら強がりが出来るくらいには男の子らしい。
遠くからは『我らが親子の絆を見ろ!!』なんて大声でバラキエルさんが叫んでいるのが聞こえた。うんうん、どうやら足を引っ張ることをしてないようで何よりだ。
「はっはっはっ!しかし、お前にも見せてやりたかったな。自分の考えが筒抜けなことを知ったロキのあの表情は見ものだったぞ?」
「俺は全部筒抜けだったことが怖くて仕方ないですけどね!何でこうも都合がいいんだよ!」
タンニーンさんが笑いながらそう言う。俺としてはこれ以上期待されないためにも、ここでドジ踏んでおきたかったんだけどな。これじゃあ、いつか取り返しのつかないドジを踏みそうで嫌だよ。
「それにしても……お前、あの二頭はどうした?」
タンニーンさんの視線の先には蛇の群れ相手に無双をするスコルとハティ。まぁ、気になるよね。
「懐柔した?そんな感じです。はい」
「そうかそうか。それは実に面白いな。きっとオーディンも驚くぞ?まさか『誰にも懐かず、ロキ以外に操れぬスコルとハティが、一人の男に心から従った』などと。どんな力で従えた?」
随分人聞きの悪い言い方をするな、タンニーンさん。別に俺は何もしてないよ。しいて言うなら、太陽の力で安心させただけだ。
俺がそう言おうとすると、俺の後ろに一匹のミドガルズオルムが現れた。大きく裂けた口を広げて、俺に襲い掛かろうとする。
別にこんな奴の攻撃なぞ痛くもかゆくもないが、タンニーンさんも巻き込まれそうなので、倒すことにしよう。
俺は迎撃態勢を取る。すると、ミドガルズオルムの全身を雷が包み、その頭がすっ飛んだ。
「スコルとハティが雌だったんデスよ。だから、大地様に従ったのデス」
「ある種、我らと同族だな」
そう言って現れたのはクーシュナさんとサタンさんだ。
「卿よ、油断したな」
「俺だって人間だ。油断もするさ」
サタンさんは一体俺を何だと思っているのだ。俺が抗議の言葉を言うと、フッと笑ったタンニーンさん。
「そうか、お前の女たらしは獣すら通じるか。全く、面白い男だ」
「もしかして、今かなり失礼なこと言われた?」
「そんなことはないぞ」
釈然としないが、タンニーンさんを信じることにしよう。釈然としないけど。
「タンニーンさん、二つほど伺いたいことがあります」
「何だ?」
「俺が殴った蛇、まさかとは思いますが、ミドガルズオルムって奴ですか?」
俺がそう訊くと、タンニーンさんは否定することなく言葉を返した。
「あれらは量産型ミドガルズオルム。厳密に言えば、あいつの『模造品』と言った所だ。いくら殺した所で『黄昏』に影響はない」
「なるほどね」
模造品か。だからこんだけ数がいるってことなんだな。
「もう一つは何だ?」
「ああ、そうだった。もう一つですが、こいつら、殲滅しちゃっていいですかね?見た感じ、あっちでも苦労してそうですし」
俺はそう言って指さすのはバラキエルさん達がいる方。よく見ると大混戦になっている。皆無事なのか不安を覚える。
「構わん。俺とて曲がりなりにも元龍王だ。かつての同僚の劣化コピーなど、見ていて恥ずかしくなってくるからな。出来るなら早めに片づけてくれ」
「うーっす」
タンニーンさんにも共感性羞恥ってのがあるんだ。ドラゴンって不思議だな、まるで人間みたいだ。いや、ちょっと乱暴者でアウトレイジなだけで、本質はドラゴンも『人間』なのかもな。
「スコル!ハティ!」
俺は二頭の名前を呼ぶ。すると、しっぽを振りながら、こちらに走ってきた巨大な二頭。すぐに俺を舐め出すスコルはほんと可愛いものだ。もちろん静かにお座りしているハティも可愛い。
「お前ら、あの蛇共を『全員』食い殺していいぞ。他はやめておけよ」
俺はそう指示した。すると、明らかに目の色を変えて量産型ミドガルズオルムの方を向いた。
「スコル、ハティ。行け!!」
語気を強めに指示を飛ばすと、二頭はばねが跳ね飛ぶように走り出してミドガルズオルム達を食い殺していく。その光景は中々すごいものがある。
「さて、我々も新参者には負けられぬな」
サタンさんはそう言って飛び出し、斧を振りかぶってミドガルズオルムの頭をかち割っていく。
「わ、私も大地様に褒められたいデス!あ、でも私なんて……」
何やらぶつぶつ言いながらゆっくりと飛んでいくクーシュナさん。何か問題でも発生したのか定かでないが、ミドガルズオルム達をどんどん屠っているので、今のところ大丈夫そうだ。
「さて、それじゃあ俺も負けないように頑張ると……」
「おい、ブラックゾーン」
俺も出撃しようとしていると、タンニーンさんが呼び止めた。
「何でしょうか?」
「どうせなら赤龍帝のガキの方を手伝ってやってやれ。いくらあいつが俺に鍛えられた男かつ、ミョルニルのレプリカを持っているとは言え、神の相手は骨が折れるだろうしな」
その視線の先には赤と白とロキとフェンリルが戦闘をしていた。てかミョルニルってお前、トールのハンマーじゃねえか。そんなもん持ってんのかよ、兵藤。
――『お前、話聞いてなかったのかよ』
どういう事よ、ドキンダム。
――『ミドガルズオルムに会いに行ったのは、ロキを倒す方法を聞くため。そこで聞いたのがオーディンがミョルニルのレプリカを持っているってこと。それを使ってしばくってことだよ。前に言ってたじゃねぇか』
……ごめんなさい。次からは気を付けます。
「分かりました。じゃあ、こっちは任せます。サタンさん!クーシュナさん!俺、あっち行くからここは任せる!」
「承知した!」
「了解デス!」
二人の返答を聞いた俺はロキの方へと走っていく。奴は俺に気が付いていない。俺とロキの距離がどんどん縮まる。
「おのれおのれおのれ!!どいつもこいつもこの神たるロキを愚弄して!!」
俺はロキの正面に立った。
「なっ!!?貴様は……!!」
「じゃあ死ね」
俺はロキの頭にげんこつを入れた。余程ミッドレンジに入られることに慣れていないのだろうか、簡単に殴れたし、結果ゴミみたいに叩き落されたロキ。
「うっす、兵藤にヴァー君。無事か?」
「先輩!」
「ヴァー君じゃないヴァーリだ」
二天龍二人の様子を確認するが、どうやら無事そうだ。俺は目の前で転がっているロキとビビっているフェンリルを見る。さて、どう処すか。
俺が考え事をしていると、フェンリルに咥えられたヴァー君が口を開いた。
「岸波大地、兵藤一誠」
俺達は痛々しい姿のヴァー君を見る。
「このフェンリルは、俺が殺そう」
「んだと?」
兵藤がそう言う。それもそうだ、そんな無様な姿でどうするって言うんだ。まさか、今からラヴィニアに助けを求めるのか?彼女に助けを求めるのは俺の特権だぞ。
――『何でこいつ、こんなに情けない所で堂々としているんだよ……』
――『聞いている我の方が恥ずかしい……』
「それってどう言う……」
兵藤が何かを言おうとしたその時だった。ヴァー君の鎧の宝玉が七色のゲーミングカラーに光り出した。うおっ、水冷式の輝き!
「我、目覚めるは――」
<やだぁああああ!!ブラックゾーンと戦いたくないぃいいいいいい!!><何で俺達がぁああああああ!!>
……。
「ねぇ、ドライグさん。今の叫びって……」
『……歴代白龍皇』
聞いちゃいけないことを聞いた気がしたんだが、どうなんだ。
怨念とかそう言うのじゃなくて、恐怖とか拒絶とか、主にストライキじみた何かを、その歴代の方々って言う存在の声から感じた。
「覇の理にすべてを奪われし、二天龍なり――」
<にゃぁああああ!!(大号泣)><もぉおおおおおお!何であんな奴と戦わなきゃならないんだよぉおおおおお!!>
「ドライグ、一応聞くけどさ、
『……』
「無言は肯定になるぞ……?」
「無限を妬み、夢幻を想う――」
<僕はね、最近仏教の悟りが素晴らしいものだと思うんだ。あんな奴と目を合わせなくて済みそうだし……><何で死後の思念なのに胃がキリキリすんだよ>
「我、白き龍の覇道を極め――」
<あ、まずい。ヴァーリの強い意思に俺らが持っていかれる><考え方を変えよう。少なくとも今はあのバケモンと戦わなくて済むんだ。ならいいじゃないか>
「「「「「「「「汝を無垢の極限へと誘おうッッ!!」」」」」」」」
『Juggernaut Drive!!!!!!』
ジャガーノート?もしかして今のって……。
「おい、ドライグ。ヴァーリの奴……」
『ああ、そうだな。よく見ておけ、相棒。あれが俺達の成れの果てである……
ドライグさんがそう言う。『覇龍』。それはアザゼル先生が前に言った、『禁断の技』。確か理性とかを対価に暴れ散らかす暴走形態だったか?そんなものでフェンリルと戦おうってか?
すると、フェンリルの足元に魔法陣が現れた。それは、俺達がよく使う転移のものに似ている。
「行くぜ、ヴァーリぃ!」
孫悟空がそう叫ぶと、ヴァーリが光に包まれていく。どうやら、子の魔法陣は奴が展開したものらしい。
その光は次第に大きく、そして強くなり、俺と兵藤までも包んだ。
「うおっ、眩しっ!」
兵藤の声が聞こえた。それを最後に、俺の視界を光が染めていった。
Side out
最近カードゲームをやるにも体力がいると感じて自重の筋トレをよくしているのですが、結構面白いと言いますか、やってみてよかったと思えています。皆さんもレッツ筋トレ。健全な魂は健全な肉体に宿る、と言う奴です。
真面目になりすぎました。ふざけます。ラヴィニアのおっぱい万歳。