知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
という訳で今日も今日とて投稿です。
Side in
ラヴィニアと思う存分イチャイチャした後、俺はバラキエルさんに連れられてとある部屋へと来ていた。
――『エッチなこと、したんですよね?』
してないです、ユノハ様。流石にあの空気でおっ立たせるのは無理がある。
で、俺はと言うとソファーに座ってコーヒーをいただいている。
「なるほどな、
机を挿んで向かい側、目の前には髭ことアザゼルさんと銀髪の少年、バラキエルさんがいる。
俺はと言うと、ソファーに座ってのんびりとラヴィニアを救った晩の話をしている。
一応なんだが、ユノハ様のご命令で転生特典のこととかは隠しておけって言われた。何でも、『ユノハと言う超越した女神のこと、そしてその力を貰ったお前の真実を知ったら、世界がお前に怠惰することになるぞ』ってことらしい。それはいかんな。俺のせいで酷いことになるなら黙っておこう。
それと、一番最初に『アザゼルさん達と敵対する意思はない』『基本的に面倒ごとを起こさなければ味方であるつもりだ』と示しておいた。余り荒事を起こしに行くのは好ましくないし、何よりそれで家族が巻き込まれたらいやだからな。
世間一般では悪側の堕天使に味方するってのもおかしい話だが、アザゼルさんはそう言う感じではない、気がする。だから、こうして安心して話せている。
そうだ、一つ言いたいことがあった。アザゼルさん、妙に俺のことを『英雄様』って言ってくるんだ。俺、別にそんな大層なもんじゃないし、何より英雄ってのはなろうとした時点でアウトだからな。てか、fate履修者ならその地位が碌でもないことくらい分かっているはずだ。
ただ、あちらも本気で言っていないだろうし、あくまで冗談として受け入れることにした。にしては、妙に薄っぺらくないと言うか……なんつーか、本気で言っている感がある。後で抗議するか。
「言っておくが、謝罪はいいからな。ブラックゾーン……お前の所在を知れただけでも神滅具以上の価値がある。それこそ、天界とかなんて内部分裂させられるほどにな……」
色々話していたら、アザゼルさんがそう言い出した。おや?もしかして謝罪はいらないパターン?先に手を打たれたな。
俺がアホ面を晒しているとアザゼルさんが変なものを見る目でこちらを見る。
「なんだ?何か文句でもあるか?」
「い、いえ。てっきり、今回は謝罪の場を用意してくれたのかと。その、何でしたっけ?神滅具って奴のことでやらかしたのですし」
そう言うと、大きな声で笑うアザゼルさん。え、何かおかしいこと言った?
「アザゼル、ブラックゾーン殿が困惑しているぞ」
「はぁ……ああ、そうだな。悪い、ブラックゾーン。いや、ちょっとおかしくてよ」
俺が困惑しているとバラキエルさんがアザゼルさんを止めた。てか、何がおかしいねんって話や。別にギャグを言ったつもりはないんだけどなぁ。
「最初に言っておくが……お前に頭を下げるのはどっちかと言えば俺らの方だ」
「はい?」
急に立場を変えだすアザゼルさん。その顔はにやけている。
「俺達堕天使は『三大勢力』っつって、天界の天使、そして冥界の悪魔と対立してドンパチしていた。今は休戦状態だがな。そんな俺達だが、あいにく他二勢力に比べて力は大きくない。冥界での覇権は悪魔が中心だし、数を増やすにも時間がかかる。天使は天使で俺達を抹殺出来る力を持っている。面倒なポジションなんだよ、俺達は。尤も、数が減る一方の天使に比べたら未来は明るいがな。それでも現状は暗いままだ」
おーっと、何だか難しい話の予感。ユノハ様を利用してでももうちょっと予習してくりゃ良かった。
「そんな俺達が……しかも堕天使組織の
コーヒーに口を付ける。何だか俺ってとんでもねぇことをしたんだなって思う。もしかして、ドキンダム達は知ってた?
――『あの時は俺もアポロヌスも目覚めていないから意見しがたいが、しいて言うなら『せやな』だな』
そっかぁ……。少しくらい教えてくれても良かったじゃん。
――『言った所でお前は信じぬであろう』
酷いこと言うね、アポロヌスちゃん。
「神滅具一つ、お前に比べればどうとでもなる。俺達は神に仕える天使じゃねぇからな」
アザゼルさんの話が続く。
「そんなお前に貸しがあるグリゴリだが、俺達がお前に頭を下げられると非常に困る」
「と言うと?」
俺がそう返すとアザゼルさんはにやけ面を変えずに語る。だが、その瞳は笑っていないように思える。結構深刻な問題らしい。
「シンプルなことだ。俺らが恩人に頭を下げさせたことを大義名分にして、他勢力が俺達に攻撃しかねない。最悪、滅ぼしに来るかもな」
「それはちょっと野蛮すぎません?」
率直に思ったことを言う。アザゼルさんは話を続けた。
「お前がそう思うのも無理はない。だが、そうも言っていられないのが現実だ」
俺が頭を傾げるとアザゼルさんは解説してくれた。
「最近堕ちてきた奴の情報を聞くに、天界ではミカエル筆頭の穏健派に、完全に独立した過激派、そしてガブリエルがまとめているブラックゾーン派に分裂して渾沌としているらしい。しかも、勢力の割合で言うなら、大体6:1:3らしい。お前、今天界で相当デカい影響力を持ってるぞ?天使の3割にいちゃもんつけられたら、いくら俺達が天界にいた頃は武闘派だったと言っても流石にたまったもんじゃない」
「おぉ……」
は?俺マジで何かやった?いや、な〇うのイキリじゃないよ?シンプルな疑問だよ。本当に何してんのよ、天使様達は。てか、俺の一派ってなんだよ。しかもその筆頭がガブリエルさんってどうなっちゅーねん。
思わず頭を抱える俺。その姿が余程面白いのか、アザゼルさん、大爆笑。それを諫めるバラキエルさん。そして無言の少年。
「あー、おもしれぇ!お前、そんなに面白い奴だったんだな、ブラックゾーン」
「あいにく、人間社会での生活が長いもんで……。家族も常識的な一般人ですし」
そう言うと、アザゼルさんが話題を少し変えてきた。
「ま、そう言うことだ。謝罪云々は抜きにしよう。……さて、次だ。ここからは個人的なことだ。お前の家族って奴の話を聞きたい」
家族のことか。駒王町にいるってことはラヴィニア救出劇の時に言ったし、大体調べはついているんだろうなって思っている。
「お前が最初に言っていた面倒ごとについても、そいつらが関わってんだろ?だとすれば、こちらもお前の家族についてある程度口から言ったことも確保しておきたい。あれだ、『書面だけでは分からないこともある』って奴だ」
「世の中大変っすね。楽して生きたいもんです」
「分かるぜ。俺も酒と女だけの生活がいいしな」
この人、自堕落すぎやしないか?いや、自堕落って言うか、享楽主義がすごいって言うか。とりあえず質問に答えよう。
俺はコーヒーを啜り、答えた。
「そうですね。父と母、そして弟の四人家族です」
「報告通りだな。んじゃ、その家族についてだ」
アザゼルさんもコーヒーを啜って問いてきた。
「あの戦いは、大体今から何百年も前の……途方の無い昔話だ。そんなお前が、一体どうやってこの時代にいやがる?どうやって、日本の一般家庭に潜り込んだ?」
「まずですが、この時代には寝ていたら流れ着きました」
「そうか、寝ていたのか……は?」
残念だったな。その問いは予め考えていたのだよ。ユノハ様たちと『大体こんな質問くるんじゃね?』って話し合っていたのさ!
だから即答出来た。
「寝ていたって、お前、もっとこう……あるだろ?なんだ?こう、『長い時を旅していた』とか?アルマロスの嵌っている日本のライトノベルとか漫画とかにはそんな奴があったぞ?」
「そうですね、厳密に言えば『次元の狭間で寝ていて、目が覚めたらラヴィニアの所にいた。その後、次元の狭間に戻って仮眠して、今の家族に出会い、養子になった』って感じですかね?」
嘘は言っていない。肝心なことも言っていない。花代さん方式だ。
俺がそう言うと頭を抱えるアザゼルさん。バラキエルさんも困惑している。
「あー、お前を一回解剖したいが……まずドライグやアルビオンをぶっ飛ばせる奴にメスが通るわけもねぇよな……」
「アザゼル……」
「いい、バラキエル。俺は分かったぞ。『もう、こいつはこういうもんだ』って思うのが一番なんだろうな」
何だか失礼なことを言われた気がする。もうちょっと丁寧な扱いをしていただけると嬉しいなって思う。余り深堀されるのもそれはそれでちょっと大変なので嫌だが。
「オッケー、分かった。お前が無法者なのも、二天龍を倒した時点で理解しておくべきだった」
「さいですか」
俺はそう返答する。そんな時に俺はふとあることを思い出した。家族のことだが、今のうちに言っておこう。折角家族関係の話になったんだし、機会を逃すわけにはいかない。
「言っておきますが……俺の家族に手を出すなよ」
ちょっと殺意を込めて言う。すると、向かい側にいる三人とも警戒態勢を取った。
「もし仮に、お前の家族に手を出したらどうなる?いや、どうするつもりだ?」
真面目な表情のアザゼルさんがそう言う。俺は淡々と答える。
「この世界に、ノアの洪水がどれだけ温情だったのかと思わせるだけです」
忌憚無き意見って奴っす。そう言うとヒューと口笛を吹いて両手を上げるアザゼルさん。
「お前の家族には絶対に手出ししない方が良さそうだ。分かった、こっちもこっちで色々やろう」
おっと、ここもユノハ様達と事前に考えていた所だ。
「そのことですが、俺のことについては余り触れて回るようなことは控えていただきたいです」
「……と言うと?」
値踏みするような視線を向けるアザゼルさん。さて、視線が怖いのでちょっと踏ん張るか。
「今の俺は、あくまでも『一般男子中学生の岸波大地』です。それ以上でもそれ以下でもない。現状を俺は楽しんでいるし、幸せに思っている。一緒に喜びや悲しみを分かち合える家族がいる。些細なことだけれど、今の俺にはとてもうれしいんです。それを邪魔されたくない」
「『一般男子中学生』、か。かの大英雄が求めるものは俺達からの称賛や歴史に名を遺す栄光でもなく、日常。それも些細な幸せってわけか……」
「ッ……」
何やら思うものがある様子のアザゼルさんとバラキエルさん。特にバラキエルさんの表情がやばい。自責の念に駆られた表情レベル100みたいなことになってる。怖いのだ。
「ま、それも悪くない。そもそも、ラヴィニアのことが無ければお前が出てくることも無かったわけだし。あの晩に続いて、今はかん口令を敷いている。分かった、それも続行の形だな」
ラヴィニアを救った時、脅すような形で『皆には内緒だよ♡』をしたんだが、どうやらそれは正解だったらしい。
「それに、です」
「んあ?」
俺は『三大勢力』ってのと天使勢力の現状を聞いて思ったことを言う。
「俺みたいな化石がでしゃばったら、それこそ面倒なことになりません?」
いや、だってさ。500年か1000年かは知らんけど、とんでもない年数やろ?今の日本で言うなら戦国時代もいいとこの時代の人間やで?そんなのが今更出てきたって迷惑なだけや。
そう言うと、また笑うアザゼルさん。
「面倒じゃねぇよ。寧ろ歓迎だ。ただまぁ……快く思わない奴がいるのは確かだな。特に古い悪魔となれば、お前をどんな手を使ってでも消しにくる可能性はある。お前の家族を人質に取るとか、それこそ家族を殺して敵対したお前を『やっぱり敵じゃないか!』なんてクソみたいな言い分をつけたりとかな」
おっと、いきなり敵がいる宣言ですか。これは地雷型ブラックゾーンの槍飛び出し機の製作も考えるべきだな。
「だが安心しろ。俺の考えていることがうまくいくなら、その敵からの魔の手を劇的に減らすことが出来るはずだ。何なら0に近づけることだって出来る。どうしても時間が必要だがな」
不敵な笑みを浮かべるアザゼルさん。ただ、その笑みには妙な信頼性がある。これは、信じていい奴かな?一応、信じておくか。
「その言葉、信じますね」
「請け負ったぜ、その信頼」
何だか不思議な人だ、アザゼルさんって。こう、軽い感じでふざけているように見えて、その実はかなり責任を背負っている。グリゴリのカシラってのも分かるわ。
「さて、真面目な話はここで終わりだ。ブラックゾーン。お前、ラヴィニアと話していたそうじゃねーか」
「まぁ、そうですね。こんな俺でも覚えていてくれてうれしかったです」
「あいつのことをどう思う?」
「はい?」
急にラヴィニアの話になる。彼女が一体何だと言うのだ?アザゼルさんのにやけ面も何だか面白いものを見るような目になっているし。
嫌な予感がするも、俺はコーヒーを啜る。
「そうだな、もっと分かりやすく言おう。お前、ラヴィニアを女としてどう思う?惚れたか?」
「ぶぅーーー!!」
思わずコーヒーを噴き出してしまった。
「きったね!……何だ何だ?英雄様はもしかして童貞か?」
「どどどどどどど、童貞ちゃうわ!」
にやけるな!そんなににやけるな!一応前世では妻がいたんやぞ!それはそれとして心は童貞だが!この肉体的な意味でも童貞だけど!
「にしては随分慌てているな。手、震えているぜ?」
ちょっと動揺しすぎてコーヒーがコップからこぼれるほどに手が震えている。
しかし、アザゼルさんは随分いい笑顔をしてらっしゃる。何が面白いねん、こんな童貞をいじって。
「その様子だと、あいつの恋路は叶いそうだな。良かった良かった」
「恋路なんて、そんな……」
俺はカップを机に置いて、そう言う。とりあえず、コーヒーを何とかしよう。
ハンカチでズボンにこぼれたコーヒーを拭く。これは、クリーニングに出すしかないな……。トホホ……これ、親に怒られる奴だぜ……。
それにしても恋路か。間違いなく『あのこと』だよなぁ……。胃が痛い。とにかく18になるまではラヴィニアにも待っていてもらおう。
「もういいか、アザゼル」
ずっと無言だった銀髪の少年がそう言いだす。
「何だ、ヴァーリ?いよいよ我慢出来なくなったか?」
「そうだな、その通りだ」
「こんな時は正直かよ……」
我慢?一体何のことだ?てか、ヴァーリ?
「もしかして、ラヴィニアの言っていたヴァー君って君のことか?」
「お前がその呼び方をするな!」
「うっす」
ヒン……
「俺はこんな軟弱な奴があの人にふさわしいか知りたいだけだ。アザゼル、こいつと戦わせろ」
「戦う、ね……ん?」
戦う?ファイト?バトル?え、どういうこと?
――『まぁ、この世界ってそう言う所があるから……受け入れろって奴ですね』
ユノハ様が無情に言う。そんな、面倒な……。俺ってとんでもない厄塗れな世界に転生したのぉ?
――『うーん、否定できない……』
「ったく……こいつと来たら……」
ヴァーリ君の言葉に頭をポリポリと掻いてめんどくさそうにするアザゼルさん。すると俺の方を見るアザゼルさん。
「おい、ブラックゾーン。今後のこと、もっと色々俺達に要求していいからこいつと戦ってくれねぇか?」
おっと、どうやらアザゼルさんもお手上げの様子だ。どうも俺は戦いから逃げられないらしい。
「いやしかしですね、ヴァーリ君がラヴィニアの知り合いと言うならヴァーリ君が傷ついた時に彼女が悲しむと言うか……」
何とか俺は言い訳を探す。探すが、どうやら俺の言葉に苛立ったヴァーリ君が俺の胸ぐらをつかむ。
「なんすか(ずんだもん)」
「俺と、戦え……!」
あ、ダメだ。これ、完全に火がついている。どうしようもない奴だ。戦うしかないのか。億劫になるゾイ。
「分かった。ただ、一つ条件がある」
「……言ってみろ」
「ラヴィニアには絶対にこの戦いのことを伝えるなよ」
「いいだろう。あの人に知られれば、それこそ面倒なことになるからな」
そう言って手を離すヴァーリ君。アザゼルさんが椅子から立ち上がる。
「んじゃ、二人ともついてこい。ここで喧嘩されても困るからな、それ相応の場所を用意してやる」
そう言って部屋を出ていくアザゼルさん。取り残されないように、俺も立ち上がって彼を追いかけた。
いやぁ、世の中ままならないね。マジで辛いよ。何でこんな戦いに明け暮れるような蛮族チックなことになってんだよ。
Side out
何とか本文が長いので短くしたいです。個人的にも3000字前後が見やすい気がしますし。