知るかバカ!そんなことより侵略だ!   作:ブラッキオ

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花粉がきついのだ。目がかゆいのはもちろん、鼻も詰まってしまってつらいです。


第21話 始まりの鐘が鳴り渡る

Side in

 

「んふふー♪」

 

今日は弟の遥輝を幼稚園までお迎えする日だ。大体は両親のどちらかが幼稚園まで迎えに来ているのだが、今日のようにどちらも忙しい時は、俺が来る。黒歌に頼むわけにはいかんしな。事情が事情だし。

 

という訳で、俺は幼稚園まで来た。今はお片付けも終えた我が弟の遥輝が俺にくっついている。

 

「むー」

 

その遥輝の後ろにくっついているのが遥輝の幼馴染の龍巳ちゃんだ。どっちも向け合う矢印が大きすぎるくらいで、幼稚園の先生達も心配するほどにいつも一緒にいるそうだ。

 

余りに女の子に近い遥輝なので、俺が紳士としての英才教育を施している。結果、女子にすごくモテるようになった。モテすぎて泣いたこともあるそうだ。人気者も辛いね、遥輝。

 

しかし、龍巳ちゃんが遥輝にくっついたまま動かない。うーん、困った。これでは帰れない。俺が彼女を連れていくのもいいが、世の犯罪のことを考えると、俺がそこまでの責任を負えるとは思えないし、困ったものだ。

 

「遅くなりました……って大地ちゃん?」

 

俺の知り合いが一人やって来た。寿水さんだ。さしずめ、龍巳ちゃんのお迎えに来たんだろう。

 

「寿水さん。龍巳ちゃんの迎えで?」

 

「そうなの!姉上から許可が下りてね!」

 

寿水さんは悪い人じゃない。ただ、ちょっと愛が強いだけ。それは龍巳ちゃんも分かっている。分かっているんだけど、それはそれとして色々強いから怖がることもある龍巳ちゃん。今も、ちょっと複雑そうにしている。

 

「龍巳ちゃん、お迎えが来ましたよ」

 

「ん……」

 

幼稚園の先生に言われて、しぶしぶ帰りの準備を始める龍巳ちゃん。そこからは先生と俺、寿水さんと普段の遥輝と龍巳ちゃんの様子を聞いた。特に問題もなさそうだ。『遥輝がいつか女の子に刺されかねない』ってこと以外は。

 

「「先生、さようなら」」

 

「さようなら。また明日ね」

 

「「うん」」

 

こうして、俺達は帰路につく。俺が望んだ幸せがこんな形で手に入るなんて思いもしなかった。冷たく乾いた心が癒されていく。不思議なもんだな、愛ってのは。

 

寿水さんとも黒歌のことを話したりした。彼女も彼女でうまくやっているようだ。それは良かった。

 

何でもない幸せ。俺が求めたもの。手放したくないけれど、いざとなったら手放すかもしれないもの。

 

面倒だが、アザゼルさんが言うにはこの世界には面倒ごとが多いらしい。その中には俺に牙を剥くものもあるとか。ならば、俺は戦わねばならない。全てを擲つ覚悟でだ。それまでは大切にしていこう。

 

そう思った矢先だった。あんなことになったのは。

 

 

○○○

 

 

学校が始まって少しは日が経った。兵藤が『彼女が出来た』とか可哀そうな幻覚を見ていたこと以外は特に何もない。平和な日常だ。

 

俺はと言うと、本日結菜と一緒にデートしていて、夕食も誘われている。『何で?』って叫びたいけど、何回もお邪魔しているので慣れてきた自分もいる。そんな自分が怖くなってくる。

 

で、帰宅道にいる俺が持っているのは食料品。女性が持つにはちょっと重い奴なので、俺が持つことにした。結菜にはいつもお世話になっているし、これくらいどうってことはない。てか、そもそも今日は結菜ん家にご飯を誘われているのだ。これくらいやらせてくれ。

 

正直、緊張するし逃げたい気持ちもいっぱいだ。結菜のお母様がすごくいい人かつ美人すぎて、ちょっと胃に穴が空きそうになる。が、それでも行かねばなるまいよ。

 

「やっぱり私も持つ?」

 

「いい。俺だって男の子だ。これくらいやらせてくれ」

 

「そう?それならいいけど」

 

そんなやり取りをしていると、俺の中のセンサーが強く反応し、アラートが鳴り響く。しかも警戒音じみたもの。さっきからセンサーが反応していた。が、『誤作動だろうよ』『あとでユノハ様に報告するか』とドキンダムにも聞かずにスルーしていたが、どうやらそうはいかなくなったらしい。

 

センサーの方向は後ろ側。公園とかがある方だ。何か複数の影の反応がある。

 

センサーが反応する。つまり、何か敵がいるな。今すぐ戦闘態勢を取りたいが、こんな状況で出来るか?一応一般人の結菜がいる。派手に暴れるわけにもいかない。てか、どうやっても逃げる以外の選択肢がない。

 

どうする?どうすればいい?ここで荷物を預けて、俺だけその敵とやらの対処に行くか?

 

そう思っていると、曲がり角から誰か出てきた。走って来たのか、息を荒げている。

 

「せ、先輩!」

 

それは俺の後輩、四条だった。息を荒げていて、こいつもこいつで運動するのかぁ……なんて思うことはない。表情がいつもと違う。余りに鬼気迫ったものだ。

 

「結菜、ちょっとこれ」

 

「え、あ。ちょっと待ちなさい!」

 

俺は結菜に荷物を押し付けて、四条の方へ駆け寄る。

 

「おい、四条。何があった?」

 

いつもと違う異常事態を感じ取った。その上、センサーが滅茶苦茶強くなっている。厳密に言うと、こいつ自身には反応していない。だが、こいつがセンサーに反応する何かを持って来たのは確かだ。

 

「はぁ……はぁ……!先輩……!岸波先輩……!」

 

「どうした、落ち着け。聞けるものも聞けん」

 

俺がそう言っても聞かず、必死になって言葉を続ける四条。

 

「イッセーが……!」

 

「あん?」

 

「イッセーが!!」

 

四条がそう言ったその瞬間、ドスンと音がした。見れば、四条の胸に一本の光の槍が刺さっていた。

 

……は?

 

「何とか始末は出来たが……余計な仕事まで増やされるとは……」

 

声のする方に視界の隅を分けると黒い翼を生やしたおっさんが一人宙に浮いていた。

 

四条の胸からは血があふれている。おいおい……嘘だろ……そんな……。

 

光の槍が自然消滅する。そこには、不自然に胸を貫かれた後輩だけがいた。四条が力無く俺に倒れ込む。足元には血だまりが出来出した。

 

後輩が、死んだ。

 

「ごめん……イッセー……」

 

俺の耳元でそう呟き、力尽きる四条。どうやら、兵藤の方も何かあった様子らしい。色々気になるが……とりあえず落ち着け、俺。今は殺意に振り回されている場合じゃない。やることをやるんだ。暗い感情の処理は後でやればいい!!

 

「う、嘘……?」

 

結菜が、力が抜けて座り込んでしまう。それもそうだろう、こんな殺人事件の現場を見させられたらそうもなる。落ち着いている俺がおかしいのだ。

 

俺は膝立ちしながら、その膝を支えにして四条を横抱きにする。右手が空いたので、その右手を四条の傷に翳して治癒をかける。頼む、間に合ってくれ。俺の回復の力は蘇生じゃないんだ。死人を蘇らせるってなると非常に面倒なことになるって俺に組み込まれたデータが言っている。だから、諦めるな。生きることを諦めるな、四条!

 

俺の手から放たれる光を見て、不思議なものを見るような反応をするおっさんと静かに息をのむ結菜。四条の傷はふさがっていた。後は、こいつ自身の力だけが頼りだ。

 

俺はそっと地面に四条を置く。息はある。どうやら、まだ大丈夫だったようだ。

 

さて、と。俺はこいつを舎弟のようなもんにしている以上やらねばならないことがある。

 

俺はおっさんの方を見る。よく見ると、その翼はアザゼルさんに似ている。ってことはつまり、こいつは堕天使か。

 

「ほう、治癒の力か。珍しいものだが……珍しいからこそ、我々の目的には邪魔になろう。惜しい力だ」

 

何かごちゃごちゃ言っているが、もう知らん。こいつだけは……

 

「大地?」

 

コロス。

 

結菜の声を振り切って、俺は堕天使のおっさんの背を取り、その両翼を掴む。

 

「なっ!!?」

 

おっさんの反応など知ったことではない。俺はそのまま両翼を引きちぎった。

 

「ぐぁああああ!!!」

 

惨めな声を上げるおっさん。俺はそれにかかと落としを決めて地面に叩きつける。

 

地面に落下したのを見た後、急降下して膝をその背中に入れ、地面にめりこませる。気分はブロリー……なんて言っているような気持ちの余裕はない。今はただ、この野郎にけじめをつけさせるだけだ。

 

「ゴッ!!」

 

俺は立ち上がり、拳を構える。最早立ち上がる力も残っていないこの雑魚にとどめを刺すために、俺は右手に力を込める。禁断のオーラが纏わりつく。

 

――『俺も協力してやる』

 

ありがとうな、ドキンダム。

 

周りの目など最早どうでもいい。こいつは、殺す。

 

俺は右手を振りかぶり、そしておっさんの体を貫くように拳を地面に叩きつけた。気持ちの悪い感覚が手に走る。そんなこともどうでもいいと思えるほどに、今の俺は残虐になっている。

 

貫いた体から拳を引っこ抜く。禁断のオーラも収まっていく。オーラを纏っていたからか、血もついていない。

 

殺しについては前世だったらもっとためらっていただろう。だが、今は違う。アザゼルさんからも許可が出ている以上、殺す以外の選択肢がなくなった。この状況で和解を出せるほど、俺は強くない。

 

死後の痙攣しか出来ないその堕天使を見下しながら、俺は四条の方へと駆け寄る。脈を計ってみるが、問題もないようだ。

 

俺は寝ている四条を背負った。

 

「結菜」

 

「は、はい!」

 

「今日のことは見なかったことに……」

 

どうやら四条を巻き込んだのは堕天使のようだ。ちょっとこればかりは一般人の結菜を巻き込むわけにもいかない。アザゼルさんにも後で報告しておこう。それと、俺の可愛い後輩に手を出したことについても言及させてもらおう。

 

「そんなこと言われても……!私だってどうしたらいいか……!それに、こんな光景を忘れろっていう方が無理よ!」

 

結菜がそう言う。だよなぁ……。こんな光景忘れろって言っても忘れられるわけもないだろうよ。

 

どうしたものかと頭を抱える。そんな俺を見かねてかドキンダムが声を出す。

 

『おい、とりあえずその野郎をベンチなり何なりに寝かせてやれ』

 

ああ、そうだな。

 

 

 

 

 

 

え?

 

「大地?今の声って……?」

 

ドキンダム……お前、ユノハ様に『俺の力を公にしない方がいい』って言われてるのを知っていてやったのか?

 

『お前、まだ脳内で会話しようとするな。俺だってこうしてオープンチャンネルに出来る理由がある。ほら、さっさとしろ。説明は後でする。おい、女』

 

こ、こいつそんなことが出来たのかよぉおお!!?

 

「わ、私!?」

 

『ああ。いいか?今回のことで、お前の人生は大きく変わる。不慮の事故だが、それでも覚悟だけはしておけ。おい、大地。さっさとしろ』

 

「あっはい」

 

突然のドキンダムのオープンチャンネル化に驚きを隠せないまま、俺は近くの公園へと駆けこむことにした。

 

信じたくない。信じたくないが、きっと今回のことが止まっていた歯車を動かすことになったのだろう。俺は、幸せを手放すことになるのだろうか。

 

Side out

 




いつ頃チラシの裏からの移動をしようか思案中。
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