知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
「うわぁああああ!!」
ベンチで寝ている後輩こと四条零児が起きる。随分ご機嫌な目覚めだ。
「こ、ここは?俺、確か死んだんじゃ……」
「よぉ」
「うわぁああ!だ、誰!?」
「俺だよ」
「俺って……もしかして岸波先輩?」
後輩である四条が恐る恐る聞いてくるので無言で頷いた。それを見て少し安心した様子。
さて、俺達はと言うと、あの馬鹿堕天使の襲来の後、近くの公園に逃げ込んだ。買い物した中には幸いなことに足の速いものはなかった。こうして結菜も気持ちを落ち着けるためにベンチに座っている。
俺達を見て落ち着いたのか、何かを思い出したかのように立ち上がる四条。
「そうだ、俺は……!」
鬼気迫る表情となる四条。どうやら、俺達と合流する前にただならないことがあったらしい。
「四条、お前がどうしてあそこにいたのかは分からん。だが、俺達は間違いなくお前が殺された場面にいた。ここまでは現実だ。その上で言うが……お前、何を見た?」
そう言うと、俺に圧されたのかベンチに座り、語り出す四条。
「イッセーが、殺されたんです」
はい?あいつが殺されただぁ?
「おい、四条。流石に馬鹿なことを……」
『馬鹿なことを言っているんじゃない』。そう言いかけたが、踏みとどまった。四条の目が普通じゃない。明らかに真剣さと恐怖が入り混じっている。つまり、兵藤は……本当に死んだ。
「……そんなことをどうやって知った?」
俺が考えを改めてそう訊くと四条は続ける。
「あいつに彼女が出来たって知ってますよね、先輩?」
「ああ、あのとち狂った結果だろ?それがどうした?」
「あいつ、本当に彼女がいたんです」
はぁーん、兵藤の妄言は真実だったってことか。となると、その女が今回の騒動の中心になりそうだな。
「それがどうお前の状況につながる?」
「はい。あいつに彼女がいたってのは確かだったんですが、その女が問題でした」
「まさかとは思うが、『黒い翼を生やして、光の槍で兵藤を殺した』とかか?」
そう言うと、頷いた四条。
「さ、流石っす、先輩。その通りっす」
「お前が殺された状況をまとめたらそう思っただけだ。俺だって全知全能じゃない。そんな目で見るな」
話を聞く限りは兵藤も四条と同じように堕天使に殺されたようだな。ったく、アザゼルさんはどれだけ面倒ごとを持ち込んでくるんだ……。一回、本気で抗議した方がいい気がしてきたな。
「一応言っておくが、お前を殺したのは堕天使って奴だ」
「だ、堕天使?先輩、いくら何でもそれは……」
「なら、あの黒い翼は?謎の力は?ファンタジー世界の産物だと切り捨てるなら、それこそ奴らの姿形、行動の全てはファンタジー世界のものだろ?」
そう言うと、静かになる四条。少しは分かってくれたようだ。
そんな中で結菜さんが俺に質問をする。
「何で大地は堕天使のことを知っているの?」
ああ、そうか。そうだったよな。一般人にはその存在は知られていないんだよな、そう言うファンタジー世界の奴らって。
「ちょっとした知り合いがいてな。その話を聞いただけだ」
あやふやにしようとした結果、何だかよく分からない返答になってしまった。
「てか、そもそもお前はどうして兵藤の死に際にいたんだ?」
俺がそう訊くと、四条は答える。
「本当に偶然だったんです。ゲーセンに行った帰りにイッセーが女と一緒に歩いているのを見て、それを尾行してたら……あいつが殺されてて……それで……」
四条に自販機で買ったコーヒーを投げる。うまくキャッチした四条。ただ、手先がおぼついていない様子。少しだけ疲労が見えているな。余り長く話をするのも不味そうだ。
「もういい。辛いならそれ以上は大丈夫だ。……なるほどな、それで見つかって、あのおっさんが追手としてきたって所か」
そう言うと無言で頷いた四条。こいつ、相当メンタルが追い詰められているな。中々に情愛の強い男なのがこの四条零児って男だ。だからこそ、今回のことは相当堪えたわけか。
ったく、厄介なことが次々に来やがる。
「先輩、イッセーは……イッセーはどうなって……?!」
俺に縋るように聞いてくる四条。それについて、俺は調べを付けておいた。
「特に問題ない」
「そ、それは良かっ……」
「勘違いするなよ」
俺がそう言うと、四条の表情が硬くなる。
「人が死んだんだ、多少騒ぎになっていてもおかしくない。だと言うのに、『どこにも問題がない』んだ。誰も、兵藤の死に騒いでいない」
「それって……どういうことっすか!」
「知らん。大方、その殺した女が何かやったか、他の連中がもみ消したか……真相は闇の中だ」
余りに静かすぎるこの町に困り果てて、俺は頭を少しかく。四条も絶望するような表情でベンチに座る。俺もこいつをベンチに寝かせて、対応を結菜に任せた後に町中を走って調べたんだ。だが、問題がなさすぎて、正直困惑した。
すると今度は結菜が口を開く。
「とにかく、今は四条君が無事だったことを喜びましょう」
「……それもそうだな」
結菜の正論とも言えることに賛同する。
「四条、お前は今、少し錯乱気味だ。落ち着くまでゆっくりしろ。案ずるな、お前を殺した野郎を殺した俺がいる」
「は、はい!……え、殺した?」
そう言いながら若干のアホ面を晒す四条。
「ああ、殺した。可愛い後輩を馬鹿にしてくれたんだ。殺した」
「へ、へぇ……」
「世の中には知らん方がいいこともある。今回がそれだよ」
笑顔で対応する四条。いや、笑顔っつーか、頬が引きつった表情だな。別にええやろ、こっちにだって譲れんものがあるんだよ。
「さて、他に質問はあるか?無いなら無いでいいが」
「そ、それじゃあ……」
四条が恐る恐る手を挙げて訊ねてくる。
「先輩、その恰好は?その……バイクのロボットみたいな姿は一体?」
ああ、そうだった。俺、ステルス機能全開にしてブラックゾーンで町を走った後にこの姿を解除してなかったんだ。
「これか?ちょっとした戦装束だ」
「は、はぁ……」
「深堀すると、死ぬぞ」
「うっす」
俺もこの姿をさらすことには抵抗があった。だが、結菜の話を聞いたり、四条についての『あること』を知ったため、このブラックゾーンを見せることを決めた。
とりあえず変身を解除する。いつも通りの制服姿を見て、四条も少しは安心した様子だ。
「あとなんすけど……あれは一体?」
四条はそう言いながら俺の後ろの方を指さす。その方向にいるのは2つの人影。但し、どちらも人外。
「「……」」
無言で腕を組み、向き合っている。あれでも話し合っているんだと。
一つはドキンダム。もう一つはアポロヌス。俺の中からイマジンの如く飛び出してきやがった奴らだ。何を考えているのか分からんが、今は自分達のことを隠す必要がないと判断したらしい。今、この公園に人が誰も寄り憑かないのはあいつらが人避けの結界を張っているからだそう。
「あの白いのがドキンダムXで、赤髪の男がアポロヌス。俺の中にいる奴ら。安心しろ、悪い奴らじゃない」
「はぁ……」
よく分かっていない様子。そらそうだ、こいつは直前まで文字通り『一般人』だったんだ。この事態を飲み込むのに時間もかかるだろうよ。
前からずっと感じていた結菜の中にあった気配。それは、俺も俺で知りたくないような気もする真実をまだ知ることになった。きっかけは、俺が人ならざる力を持っているということから始まる。
四条の奴を公園に運んだ後、結菜に色々言い訳した。
―「私だって魔法の一つくらい使えるわよ」
その一言を言うと、右手に某千鳥の如く雷を纏わせたり、蝶の形をした雷を作ったりした結菜。そうです、結菜も実はこちら側だったんです。しかもお母様もだって。ハハハ、マジか。
結菜さんもこちら側だった。それを知った時はちょっと頭を抱えたと同時に今まであった彼女への違和感が解決した。彼女の中の存在は魔法だったのかぁ……。彼女は魔法も使えたのかぁ……。頭が痛くなってきた。何でこんなにラノベ的なことが一度に起きるの?起きるにしてももうちょっと小出しにしろって。
てか、俺はただの一般人だぞ。こんないかにも『お前はラノベのレギュラー!そうじゃなくても外伝のレギュラー!』みたいなことしないでよ。
さて、俺も俺で錯乱しそうなので、一発かますか。
スゥー……なんでやねん!この世界、おかしいやろ!?何で魔法使いが平然とおんねん!
つーか、これどういう状況だよ!?ドキンダムとアポロヌスも『もう影響が出ていたか』とか言うしさ!もぉおおおお!何だよぉおおおおお!俺だけ置いてきぼりかよぉおおおお!!
あー、すっきりした。とにかく、今この公園は非常にカオスなことになっている。禁断関係者に禁断の使徒が一人ずつ、太陽の不死鳥が一人。ここの戦力だけで世界を滅ぼせそうだ。物語最終盤の敵戦力が最序盤から味方にいるみたいな状況に、俺は頭が痛くなってくる。これどうすんねん……。アザゼルさんに勘違いされるぞ?
いや、今回の騒動はアザゼルさん側から仕掛けたんだ、やることはやるぞ。やってやろうじゃねぇかこの野郎。
「ねぇ、大地」
「ん?結菜さん、どうした?」
俺が遠い目をしていると、結菜が現実に意識を戻してきた。何か用か?
「そろそろあのことについて四条君に伝えた方がいいんじゃない?」
あのこと……ああ、あれか。
「四条」
「は、はい」
俺の言葉に背筋を伸ばす四条。そんなに固くならんでいいんだが、もういいか。この状況で緊張するなってのが無理だしな。
「お前、自分の体に『化け物』を飼っているって知ったらどうする?」
「はい?先輩、何言ってんすか?」
「言い直そう。お前、神が封じた化け物猪がお前の体に封印されていたら、どう思う?」
そう言うと、コーヒーを啜って、俺を心配するような目をした四条。
「先輩、突然の中二病っすか?」
「んなわけあるか」
困った、どうも俺の言葉に真剣みが無いらしい。結菜も若干困った様子。
俺達がどうやって四条に覚悟を決めさせようかと考えていると、一つ声がした。
『おい、宿主』
「ん?先輩、何か言いましたか?」
「言っていない。お前の中に聞け」
「はい?」
『宿主……いや、零ちゃんと言った方がいいか?四条零児』
その声は四条に語り掛ける。
「せ、先輩。これって?」
どうも現実を飲み込み切れていないようである四条。少しばかり強引にいくか。
「おい、『カリュドーン』。お前が何とかしろ」
『荒い奴だ。零ちゃん、とりあえず『一番強い必殺技』をイメージしろ』
「へ?」
「『いいからやれ』」
「あっはい」
俺と謎の声に圧されて何やら構える四条。
「破ぁ!」
そんな寺生まれの掛け声を出す四条。すると、奴の右手が光り出した。
「な、何だよこれぇ?!」
戸惑う四条をよそに、俺達はそれを見つめる。光が止むとそこには槍のようなものを持った四条がいた。何か、ブータンの槍みてぇだな。
「こ、これは?」
『そうだな、まず自己紹介からか。俺様の名は『カリュドーン』。アタランテ共にリンチされた、哀れな猪さ』
Side out
四条君、オリジナル神器持ちになってもらいます。こうした方が、イッセー君の気持ちも分かるだろうけど、修羅の道は避けられないと言う。