知るかバカ!そんなことより侵略だ!   作:ブラッキオ

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ちょっと最近における精神的老いが加速していることに危機感を感じています。若くなりたい。


第27話 初めてのマイフレンド

Side in

 

「この力について、聞いたりしないのですか?」

 

「力?」

 

そんなことを聞いてきた可愛らしいシスターさん。

 

力って、その神器だったか何だか分からんものか?いや、別になぁ……そんなに興味ないし、俺も同じことが出来るし、何より聞いたら不味そうな気がしてならないんだよなぁ。

 

「聞いた方が良かったか?」

 

とりあえず冗談めかしてそう言うと、少し陰りのある表情を見せるシスターさん。あ、これ長くなるパターンだな。

 

「……ちょっとついてこい」

 

「あ、はい……」

 

俺はシスターさんをベンチまで連れていき、座らせた。隣には俺も座る。のんびりとコンビニで買ったものの入った袋を漁ってみる。さて、と……これでいいか。

 

俺はエビカツサンドをシスターさんに差し出した。

 

「こ、これは?」

 

「サンドイッチ。日本のな」

 

そう言って、エビカツサンドを手渡した。不思議そうに見つめるシスターさん。

 

「もしかして、開け方が分からない?」

 

「は、はい。初めて見たものでして……」

 

俺はエビカツサンドを取り返し、袋を開けて、またシスターさんに渡した。ついでにフルーツティーも。これでいいやろ。

 

「腹が減っていたら人間ってのは不安にもなるもんだ。食べな」

 

「そ、そんな……!」

 

シスターさんが遠慮しようとするが、そこに響いた可愛らしい腹の虫の鳴き声。思わず微笑んでしまった。

 

「遠慮はいらんさ」

 

「うぅ……そ、それでは……」

 

そう言って一口。すると目を輝かせるシスターさん。どうやら口に合ったようだ。

 

んじゃ、色々話をするか。

 

「名乗っていなかったな。俺は岸波大地って言う。シスターさん、名前は?」

 

「アーシア・アルジェントと言います」

 

アルジェントさんね。オッケー。

 

「で、アルジェントさん。さっきの光のことだけど……」

 

そう言いかけるとサンドイッチを運ぶ手が止まるアルジェントさん。おっと、そんなに気にしていたか。なら、弁明しないとな。

 

「正直、別にいいんじゃないの?」

 

「え?」

 

そう言うと、面食らった様子のアルジェントさん。

 

「奇跡だろうが何だろうが、そこにあったのはアルジェントさんの優しさだ。別に咎めるようなものでもなければ、軽蔑するものでもない。ましてや、君は機械じゃないんだ。心がある『人間』だろ?」

 

俺も俺でカツサンドを食べ出す。うん、いつも通りのチープな味だ。

 

アルジェントさんにかけた言葉に偽りはない。傷を治したのはそりゃ不思議だけどさ、あれは悪の力とかじゃないだろ?誰かを傷つけて悦楽に浸るようなものではない。どっちかと言えば、普遍的な正義って奴だろう。それを遠ざけるような真似は出来んだろう。

 

そうなら、俺はどれだけ遠ざけられれば済むか分からないし。

 

ただまぁ、普通の人からしたらちょっと怖いかもしれないよなぁ。

 

「誰かの傷を癒して、笑顔にする。悪いことじゃないだろう。そりゃ、悪人とかを癒せばまた悪事を働くかもしれないリスクはある。だけど、その想いまで悪と断じるのは、余りに非道だよ」

 

いつの間にかカツサンドが手元からなくなっていた。我ながら早食いだと思うレベルでカツサンドを食べきった。ハムカツは家に帰ってからにすっか。

 

「それに、俺が弟と見ている番組のヒーローも似たような力を持っているしな。あれくらい慣れたもんだ」

 

君のことだぞ、ウルトラマン・コスモス。まぁ、彼の場合、優しさが行き過ぎた結果がエリガルって言う悲劇を生んだわけだし、メカレーターと言う『さっさと殺すのが慈悲だったのに』なんてことになるのだが。

 

そんな風に色々と自論を述べていると、アルジェントさんの頬に一筋の涙。おっと、これはやらかしたか?

 

「えっと、気に障ったなら申し訳ない」

 

そう言うと、涙を拭って首を横に振ったアルジェントさん。

 

「違うんです……今までこうして私のことを思ってくれた人がいなくて……」

 

そして、アルジェントさんはぽつぽつと語り出した。それは彼女の過去。

 

それは、『聖女』として祭り上げられた『ただの女の子』のお話。

 

彼女は幼い頃に捨てられて、教会兼孤児院に拾われた。そこで彼女は育った。

 

信心深い彼女が八つの時、癒しの力……すなわち神器の力に目覚めた。

 

負傷していた子犬を癒していた所を偶然にもカトリックの連中に見つかり、そこから人生が変わった。

 

カトリックの本部に連れていかれた彼女は『聖女』として祭り上げられ、彼女の下に訪れた信者を加護と称して癒していった。

 

その噂はどんどん広がって、多くの信者から『聖女』と称えられた。そこに、アルジェントさんの意思などなかった。心を許せる友達もいなかった。自分を『人間』として見られていなかったことも理解していた。ただただ、寂しい時間を過ごした。

 

ある時、転機が訪れた。アルジェントさんの近くに現れた悪魔を、彼女は治してしまったのだ。あおの悪魔が彼女の優しさに付け込んだのかは知らない。だが、彼女はそんな傷ついた悪魔を見捨てられなかった。

 

それがいけなかった。

 

悪魔と堕天使を癒せるはずがない。そんな常識が教会内にはあった。実際、アルジェントさんに似た力を持った者が各地にいて、そいつらが証明していたからだ。

 

だからこそ、悪魔を癒したアルジェントさんの力はこう恐れられた。

 

『魔女』

 

そこからは呆気ないもので、とんとん拍子で異端扱いをされてカトリックを追い出された。

 

行き場を失った彼女を拾ったのは極東のはぐれ悪魔祓いの組織。そいつらのトップは堕天使。つまり、今までの彼女にとっての『悪』に魂を売らざるをえない状況になったってわけだ。

 

「なるほどなぁ」

 

信心深い彼女は神への祈りを忘れたこともない。それでも、自分に味方が一人もいなかったことにはショックを受けたそうだ。

 

「きっと、私の祈りが足りなかったからです……ほら、私ってドジですから……。こうして、教会にも満足に行けなくて……」

 

どうしてだろう、初対面の相手なのに怒りが湧いて仕方ない。主に神。てめぇ、何してんだ。偉そうに信者にああだこうだ言うなら、怠慢決めてんじゃねぇぞ。それこそ、てめぇの決めた大罪の『怠惰』って奴だろうがよ。

 

「これも主の試練なんです。だから、耐えられます。それに、お友達だって、いつかいっぱい出来ると思っているんです。私、夢があって……」

 

友達、か……彼女にはそんな存在すらも満足にいなかったんだもんな……。

 

「その神、殺すか」

 

「へ……?」

 

思わず言ってしまった言葉。いかん、信心深い彼女にそんなことを言ってはならないよな。

 

「いや、今のは無かったことにしてくれ。どうしてもって言うなら……そのカトリックの連中、滅ぼすか」

 

「そ、そんな不敬なことを……!」

 

あわあわし出すアルジェントさん。随分可愛らしいが、俺は止まらんぞ。この怒りは誰にも止められない。

 

「散々利用するだけ利用して、都合が悪ければ即捨てるとは。とんだ臆病者集団だな、カトリックってのは」

 

そう言うと静かになるアルジェントさん。

 

「俺に言わせれば、悪魔も天使も関係ない。須らく『人間』であり、人間の道を踏み外した者こそが『悪魔』だ。それを当てはめるなら……教会の連中は悪魔だ」

 

握りこぶしに力が入る。いかんな、最近怒りっぽくて仕方ない。

 

「何が神だ。何が救いだ。一人の優しい少女の寂しささえも癒せないくせに、偉そうに教えを説いているなよ」

 

「岸波さん……」

 

八重垣さんの時からそうだ。何故、教会の連中はこうも俺の逆鱗に触れるのだ。それともあれか?お前らの守護天使とやらのガブリエルさん達がそんな教えをしたと言うのか?だとすれば、俺は一体何のためにあの時戦ったんだ。何故あの時、彼女達を奮い立たせたんだ。俺の思いは全部無駄だったってことかよ。

 

失望しかけていたら急に頭がクールダウンしてきた。はぁ……この世界ってのは、本当に嫌なもんだな。

 

そんな風に思っていると、ポンと音を立てるような感覚が脳内に響く。そうだ!

 

「アルジェントさん。君は俺と友達になるつもりはないかい?」

 

「え?」

 

アルジェントさんはずっと寂しい思いをしてきた。本来触れるべきだった温かさも奪われて。それでも彼女は優しさを失わなかった。誰かの為に孤独に戦ってきた。

 

そんな彼女を神が見捨てるなら、神以上の力を持った俺が友達になればいい。そうして彼女を助ければいい。

 

「遠い異国の地だからこそだ。君の過去とかは気にしないし、君の力も恐れない。そんな俺だからこそ友達になれるはずだ。君が望んだものにもなれるはずだ」

 

個人に入れ込むのは良くないだろう。だが、今はそんなことはどうだっていい。さっきも言ったが、たた一人の女の寂しさを癒せずして、何が男だ。ドキンダムにだって反対させない。これは、俺の精一杯の我が儘だ。

 

少し困惑しているアルジェントさん。慣れないことだったのだろう。だが、俺も俺で退かないぞ。

 

「嫌ならいい。それでも、君が寂しい時は隣にいよう。君が助けを求めたのなら、俺は君の敵を討ち払う剣になり、君を守る盾になる」

 

そう言うと、涙ぐむアルジェントさん。そして言葉を紡いでいく。

 

「私……何も知らない世間知らずですよ?」

 

「構わん」

 

「いつもドジをしてばかりで……迷惑だってかけちゃうかもしれないんですよ?」

 

「構わん」

 

「神器だって持っていて、普通じゃないんですよ?」

 

「しつこい」

 

俺はそう言って手をつなぐ。優しさが伝わってくる手だ。この子に試練ばかりを与える神を一層呪ってしまうくらいにはな。

 

「これで友達だ」

 

俺がそう言うと、涙してコクコクと頷くアルジェントさん。どうやら、俺は友達として認められたようだ。

 

それにしても……女の子、泣かせちゃったなぁ……

 

――『ドキンダム、貴様はこれをどう見る?』

 

――『予定調和。女たらしの星の運命だ。こうなることくらいは予想出来ていた』

 

その後は何事もなくアルジェントさんを教会にまで送り届けた。何事もないと言うよりは、色々お話をした。ガールズトークとかはよく分からないけれど、それでも話に花を咲かせることは出来ただろう。

 

ついでに言うと、今度教会にお邪魔することになった。彼女、イタリア人っぽいしティラミスかカンノーロでも作って渡すか。

 

Side out




今はまだですが、労働環境が変わるに伴い、執筆ペースも変わる模様。とりあえず原作12巻までは走り抜けて、そこから色々考えてみようと思う今日この頃。
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