知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
「今日はもう終わりだ」
相も変わらずドキンダムXと言うバケモンのシバキに耐える結菜と四条。よく頑張っているわね。俺、尊敬しちゃうよ。特に四条。お前は元々ただの一般人だったってのに、こちらについてきてくれている。
俺はと言うと、ただ眺めていたり結菜のサンドバッグになるだけなのも癪だったので、こうして片腕で腕立て伏せをしている。
「おーい、終わりだぞ女好き」
そういや今、何回やったっけ?
「聞いてんのか?」
うーん、多分これで967回か?どうだっけ?
「おい、デカチチしか脳みそにないスケベ、話を聞け」
「随分ひどい言い様ね……」
「まぁ、事実だと思いますよ、斎藤先輩」
そういや、アルジェントさんの家に何を持って行くんだっけ?
「おい、結菜。貴様のバストサイズとカップ数を言ってやれ。ドキンダムも四条も気になるであろう」
「アレクサンドル賛成」
「いや、流石に先輩の女にセクハラはどうかと……」
「あなた達は何を言っているの!大体、何でそんなことを言わないといけないのよ!」
カンノーロは結局油を多く使うからってことで却下したんだっけ?んじゃ、ティラミスか。
「ったく、結菜がバストサイズとカップ数を言わねぇってなら、この手しかないな」
ティラミスかぁ……そうなるとコーヒーとクリームチーズがいるな。
「悪く思うなよ」
悪く思うなよ。
……ん?
「チェストォオオ!!」
瞬間、俺の脇腹に強い衝撃が走り、俺の体は宙を舞った。
おほほーい!どういうことだってばよ?
自由落下の後、そのままドスンと音を立てて俺は地面へと落ちていった。
○○○
どうも、脇腹がいまだに痛みます。岸波大地です。ここ最近、結菜のお母様から『斎藤にならねぇか』と言う上弦の鬼のお誘いみたいなのが来ます。何が悲しくて俺が結菜の弟にならねばならんのだ。
と言う訳で、俺はいつもの鍛錬が終わった後、ティラミスの材料を買いに町へと駆り出しました。
一気に量を作るので父さんも父さんで材料を買っておいてくれたようだが、ちょうどコーヒーだけが切らしていたので、それを買いに来た。
両親達にもアルジェントさんのことは話した。父さんはニコニコとしていたが、母さんは『こいつまた女を誑し込んだのか』と言う旨のことを言っていた。残念、彼女とはそんなもんじゃないのだよ。若い頃の父さんと一緒にしないでもらおうか。
遥輝も遥輝でアルジェントさんのことが気になってどんな人物か聞いてきたので、『ウルトラマン・コスモスのルナモードみたいな優しい人』って言ったら目を輝かせて納得していた。やっぱヒーローってのは偉大だな。
それと、寿水さんと黒歌には神器についても話した。俺が神器について知っていたのも意外そうにしていたが、そこはまた今度と言うことにしておいた。二人の興味を引いたのはアルジェントさんが回復の神器持ちだと言うこと。寿水さん曰く『普通の教会だったら、どんな手段を使ってでも監視下に置くものよ』と言っていたし、黒歌も『悪魔も治癒出来る代物なら、普通はああだこうだ言い訳を付けて手元に置くもんだけど』と言っていた。要するに、アルジェントさんを追い出した教会が無能だって。
それから、バックに堕天使がいることも話した。それを聞いた二人は『これは連絡ね』『どうぶんどるか相談にゃ』なんて言っていた。連絡?上司にかな?彼女らより上なら、神器とかにも造詣が深いに違いないし、そうするのがいいやろ。
あと、『何かあったらうちの組織で保護する』とも言っていた。彼女らのバックがつけられるなら安心だろう。どんな組織かは知らんけど。
そんな風にアルジェントさんが割と好意的に受け入れられたってわけ。
そう言えば、堕天使の組織ってことはアザゼルさんは認知しているってことなのかな?あの人の保護ならいいんだが、アルジェントさんの様子を見るにアザゼルさんがあんな辺鄙な場所で待たせるなんてことをするようには思えないんだが……それに、堕天使なら四条のこともある。正直言って、今の堕天使への信頼はアザゼルさんとバラキエルさんだけで成り立っているようなもんだ。不安にもなるが……いざとなれば俺が出張ればいいか。
話を戻そう。俺はと言えば、コーヒーを買った帰りに腹が減った。まぁ、あれだけ動いたしな、カロリーを寄こせってなるのもしょうがないだろう。なんて、言い訳をさせてもらおう。
ともかく、腹が減って仕方ないので夕食までの時間稼ぎをすることにした。目指すは肉屋。狙え、唐揚げかメンチカツ。
ってなわけで肉屋まで来ました。いつも通りのラインナップを見る。うーん、唐揚げはあるな。メンチはあと一つか。困ったな、どっちも魅力的だ。この際両方買う……のはどうなんだ?
隣にいる人に目を向けてみる。美女だ。おっぱいのデカい綺麗なお方だ。ここら辺で見ない顔だ。旅行にでも来たのか?
そんな彼女も悩んでいる。知らぬ人とは言えども、流石は美人だ。様になる。大人のお姉さんいいね。
そんなことを考えている暇なんてない。俺は唐揚げにするかメンチカツにするかどうか考えねば。
うーん…………ここはメンチで行こう。今日はパン粉の味も感じることにした。
「「すいませ、あっ」」
俺が店員さんを呼ぼうとした時、隣の女性と声が被ってしまった。とりあえず、無言で『どうぞ』と先を譲ることにした。
「ありがとうございます。では……」
随分品のいい方だ。日本人離れしているようなきれいな顔立ち。その手に目を向けると、タコが出来ている。ペンのものだけじゃない。多分、剣とか握っているタコ。不思議な方だなぁ……。
「このメンチカツを一つ」
「ほぉおおおおおおお!!」
「え?」
「いえ、何でも」
まさかの俺が買いたかった奴と被り。思わずビックリしちゃった。突然ガチャでドキンダンテを捲った時みたいな声が出てしまったよ。
俺の奇声を受けて、若干引いているのか分からないが考え事をし出すお姉さん。すると、突然面白いことを言い出した。
「もしよければ、私のメンチカツを半分差し上げましょうか?」
「いいの?」
「ええ、勿論です」
突然のお裾分け宣言。やったな!ただ、このまま施しを受けるのは癪なので、俺も俺で対価を出そう。
「それだったら、俺は唐揚げの方を買うんで、そちらを一つと言うのはいかがですか?」
「いいですね。その話に乗らせてもらいます」
そんなわけで俺と見知らぬ大人のお姉さんとの契約は結ばれた。
何事もなく……とは言えず、顔見知りの店主に『また女か?』『お母さん達が泣くぞ?』なんて揶揄われたが、もう気にしないことにした。そんなこともあった後に、俺達は買う物を買って、そこら辺にあったベンチに座ることにした。
「それではどうぞ」
「ありがとうございます。では、こちらも」
「ありがとうございます」
メンチ半分と唐揚げ一個を交換する。余り等価交換に思えないのはどうなんだ?やっぱもう一個買っておくべきだったか?
そんな風に不安に思ってちらっとお姉さんの方を見る。何やら表情が暗いご様子。悩みでもあんのか?それとも唐揚げが苦手だったとか?
「もしかして、唐揚げ苦手?」
そう訊くと首を横に振るお姉さん。
「いえ、少し悩み事をしていただけです」
悩み事、かぁ……。
「こんな若造で良ければ、お話だけでも聞きますが……」
何でもない気遣いをしてみる。すると、お姉さんは少し考えた後、ぽつぽつとお話をしてくれた。
何でも彼女は大企業の所属で、今回はその所属する企業の裏切り者を処罰するためにここ駒王町に来たとか。そんな裏切り者だが、見つかっていないそうだ。
で、ふと思ったのが自身の父親のこと。何でも、お姉さんのお父様が彼女の企業の社長やその他重役と同期にも関わらず、彼ら全員につばを吐いて裏切って企業から去ったんだとか。
そのことについて彼女を咎めることを社長たちは一切しなかったんだけど、それはそれとして自分の責として感じてしまうとか。今もそれが忘れられないって。
何と言うか、真面目な方だ。親の呪いを自分が引き受けて解決しようだなんて。真面目と言うか、クソ真面目って言うか。そんな感じの人だ。
あ、途中で名前も言いましたし、教えてもらいました。朝倉和泉さんって言うんですって。
さて、そんな朝倉さんに言えることと言えば……
「軽い気持ちで適当に向き合ってみる程度でいいじゃないですかね、朝倉さん?」
「はい?」
俺がそう言うと虚を突かれたような表情をする朝倉さん。
「ほら、言うじゃないですか。『運命を変える!(クロム並感)』とか『変えるぜ、運命!(ジード並感)』とか。無理にその思考を変えろとは言いませんけど、俺に言わせれば親の呪いや宿命、決められた運命に抗って、変えてしまうのはその子供の特権って奴っすよ」
「運命を変えることが、特権……」
「それに、その親父さんも今じゃ朝倉さんにコンタクトを取って引きこもうとしているわけじゃないのでしょ?だったら、陰でぼろくそに言うのもありなんじゃないんですかね?『あのクソオヤジ、余計なことしかしねぇな』とか」
そう言うと何か感銘を受けたかのように表情が明るくなっていく朝倉さん。
「今も言いましたけど、無理にとは言いません。ただ、いつかは変わらないと肝心な時に首を絞めかねないように思えます。だからこそ、向き合うだけ向き合ってみるってのもいいんじゃないんですかね?なんて、若造なりの意見ですけど」
メンチを一口で食べる。うん、美味しい。
少しだけ無言の空気が続く。俺は別に構わない。朝倉さんが朝倉さんなりに必死に考えているって証拠だからね。
しばらくして、朝倉さんの口が開かれる。
「ありがとうございます」
「ん?」
「何だか、悩んでいた自分があほらしく思えてきました」
「あほらしくって……」
随分前に進んだな。俺とは大違いだ。強い人だ。初対面じゃなきゃ惚れ甲斐があったよ。
「アザゼ……社長たちはいつも私を過保護気味に扱っていたので、そう言ってもらえたのは初めてです」
「お優しい社長さん達だったんだな」
まぁ、今回はそれが仇となったわけだが。
「ええ、私もようやく自分が温室で育って来たことを理解出来ましたから」
そう言うと立ち上がる朝倉さん。
「ありがとうございました、岸波君。あなたのおかげで前に進めそうです」
「そ、それはどうも」
とんでもないよ。こんないつまでも進歩しない俺なんかに比べたら、あなたはずっと立派ですよ。
「今日だけの出会いか、それともまた出会えるかは分かりませんが、また今度会えた時は一緒にコーヒーでも飲みましょう」
「いいですね」
俺はそう返事をすると、朝倉さんは『それでは』と一言言って去っていった。美人とお話出来て役得だったなぁ……。
俺は空を見てみる。気が付けば夕暮れも終わりに近い。さっさと帰るか。
鞄を持って、唐揚げを食べきる。何てことのない日常ではないけれど、それでも誰かの為になれただけ幸せだと思える。
Side out
前作再利用回でした。今後も少しだけ再利用回はあります。